プロの投資家って – 今度はシンガポールのルールも覗いてみた

プロの投資家の定義と、結果的には現地の私募のルールを覗く、と言うのが気付いたらシリーズ化されてしまった感があります。おかげで調べて書けばいい(って、遅筆の私にはそんなに簡単な話ではないのですが。。。)のでネタに困らないものの、何気に法律を読み込む作業になるので、より遅筆に拍車がかかってしまっています。前回の香港から1ヶ月以上で、SlideShareとyoutube にアップ、ですからねぇ。。。まぁ、これには人に言えないいろいろな大人の事情があるのですが。。。

と言うことで、まず、このタイトルでググって来ちゃったけど長い解説のいらない、と言う人のために、手軽に目的の半分以下が果たせるスライドと動画をご紹介します。

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プロの投資家って – ついでに香港のルールも覗いてみた

香港におけるプロ投資家ってなあに?

前回、日本とアメリカのプロ投資家に関する規制について比較してみた訳ですが、そこで分かったことは、プロの投資家に対する保護の考え方であったり、投資家の性質に対する定義の大きな考え方の違いというのが際立って見えた、ということでした。

となると、じゃあ、他の国はどうなの?というのが気になるのが世の常(?)ということで、とりあえず日本から近い、投資家の多い国ということで香港を見てみました。まずは例によって、急いで答えだけが欲しい人のためにこんなコンテンツでも。

いつものように Slideshare でやってみた。
ついでに1分ちょっとでみられる動画にもしてみた。よかったらチャンネル登録してね(笑)
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プロの投資家の定義って? – 日米にみる考え方の違い

このところ某運用会社でバイアウトファンドやベンチャーキャピタルファンドのLP持分の買取なんてやっているので、特に海外のファンドの持分の買取の際に買おうとする自分のファンドの属性を聞かれます。しかも、例えばケイマン諸島籍の組合なのにアメリカの法律に基づいたプロ投資家に関する質問だったりします。ちょっと不思議ですよね?

また、この手の話をしていると、プロの投資家、という投資家の資格で言うと、案外日本のプロなら海外でも、みたいに思われるところもあるようでして、この辺りを日米で比較しながらみていきたいと思います。

まずは、久しぶりに slideshare 用やYoutube用に簡単なものを作りました。

急いでいる人はこれでざっくりとどーぞ(笑)あ、ちなみに、それぞれちょっとバージョンが違いますよ。

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ケイマン諸島の2020年は昨年同様に協調路線へ

2020年1月8日にケイマン諸島政府とケイマン諸島金融当局 (Cayman Islands Monetary Authority – CIMA) は二つのファンドに関する法案のドラフトを公表したそうです。一つはクローズエンド型プライベートファンドの登録を求めるもの、もう一つはミューチュアルファンドのうち、今までCIMAへの登録不要とされていた Section 4(4)ファンドと呼ばれる投資家が15人未満のファンドのCIMAへの設立時の登録と年次監査とCIMAへの年次監査の提出を求めることとなるそうです。

政府とCIMAの狙い

ドラフトと共に発表された声明によると、いずれもケイマン諸島が国際社会の中で協力的な法域であることにコミットすべく、EUその他の国際的な提言に対応すべく、多くの他法域にて既存か提案されている法制度と同等の範囲とするもの、とのことです。

昨年のEconomic Substance の導入と 証券投資業法 (Securities Investment Business Law) の変更の時に感じた通り、EUをはじめとするケイマン諸島の主だったユーザーである国々の法制度や税制、BEPS のような議論に呼応するような法制度や規制を導入しつつある、というのが今回のドラフト公表のメッセージであり、今後のケイマン諸島の方向性を示したもの、と見るべきでしょう。

今回の影響は?

今回公表されたドラフトについては、まだドラフトレベルで議会での審議にかかっていないことから、変更ありきで読む必要があります。とは言え、大筋はこうなるだろう、は見えてくるでしょう。

プライベートファンド法

特に LPS形式のファンドについては従前CIMAへの登録が不要でしたが、これによって届出が必要になると思われます。というのも、届出対象となるクローズドエンド型のファンド、の特徴として

  • その主な事業が、投資資金のプールを目的または効果として意図した投資持分の募集および発行であり、投資リスクの分散を目的とし、かかるビークルによる投資から投資家が利益を得ることを可能としていること。
  • その投資持分が、かかるビークルの利益分配を受ける権利を付与するものであり、かつ投資家のオプションとして償還または買い戻しを受けることができないもの、すなわちクローズドエンド型のもの。
  • その目的または効果が、投資リスクの分散を目的とした投資家資金をプールするものであること。
  • 投資家がかかる投資ビークルに対して日常的支配権を有していないこと。
  • その投資ビークルが、全体として運用者またはその代理人によって直接的または間接的に運用されており、かかる運用者またはその代理人の報酬がビークルの資産または利益に基づき算定されていること。
  • それが本法案の別紙に記載される「非ファンド・アレンジメント」(non-fund arrangement)に該当しないこと。

Maples のニュースレター日本語版から引用)

と、どう頑張っても従来から見られる組合型のファンドのそれ、なのです。日本で言えば投資事業有限責任組合は登記によりその存在が公表され、一般的なケースならば金商法63条特例業務の届出を金融当局に提出して運営されている訳ですのでそれに近づいた、というべきかもしれません(登記のない匿名組合とか任意組合であって、第二種金融商品取引業が持分販売することでのみ流通するので、二種業者の年次事業報告で金融当局の知るところとなりますしね)。

で、これらに対して、年次評価方法や銀行口座、カストディに関する要件も求めていくようです。とは言え、この辺りは現実問題としてはそんなに影響はなさそうな気がしますがまだ固まったわけではないですので予断は禁物です。

ミューチュアルファンド法

こちらは前述のように、Section 4(4) ファンドという15人未満の投資家のファンドには従前までCIMAへの登録が免除されていたのが、登録義務が発生し(当初と年次の)登録費用が発生し、年次監査とそのCIMAへの提出義務も負うこととなる、のです。これは、登録免除の穴を塞ぎにかかっている、というのが見えてきます。

今後のファンド組成への影響は?

個人的には、ケイマン諸島籍の LPSの設立ニーズが日本から増える傾向にあると見ていますが、その費用等が上がることでその傾向に水が差されるか、というと、そうでもないようには思えます。が、設立のスピード感やコスト増加、というのは、新規設立する人よりも、従前から設定・運営してきている人たちにインパクトがより大きく受け止められるように思われます。

ESの時のGPを取り巻く議論は運よく対象外と結論づきましたが、登録義務が発生するのは運営コストの増大に繋がるので、仕方なし、と受け止め切れるかどうか。。。

とは言え、これについてはまだ確定したものでもなく、また今後実際にどう導入されるかのアナウンスを含めて動向を見ていきたいところです。

Economic Substance でケイマン諸島はつまらないオフショアになる?

(書き始めた時には)気づけばもう2019年も残るところ1ヶ月を切ってしまいました。毎度のことながら、今年何か生産的なことをしたかなぁ、新しいチャレンジをしたかなぁ、なんて思い返そうとしますが、今年はオフショア国内のそれぞれで組合型のファンドを立ち上げたなぁ、なんて思えば確かに新しいことをした、といえそうだし、新旧のフラッグシップファンドでの資産取得も時間的なプレッシャーだけでなく取得時のちょっと複雑なストラクチャーを組んでみたり(良い子は真似しないでね。まぁ、詳細はいえないけど多分真似できないけどなw)と、事業的には生産的だったような気はするけど、革新的な何かが出来たか、といえば、まぁ、日本に数少ないセカンダリー戦略ファンド、ってことくらいかなぁ。まぁ、元々そういうことをするチームなわけですが。

と、ある意味事業と企業運営に忙殺されていたような一年っぽかったのですが、それでも、ファンドを作るとか、ファンドを買うとかしていると、日本や米国などの古くからある(と言っても、日本の法規制は2007年ですが、米国だと1940年の Investment Company Act や 1933年の Securities Act とかなり古くからある)投資家に関する法規制への適合性の確認のような問題もあれば、今回のような極めて新しい法規制の導入時期に対応しながら走らねばならない、というところで、やっぱりファンドっていうのは常に法規制との時代の要請への対応の歴史の積み重ねだなぁ、と感じたのです。

近年になるまでの法規制のメインが投資家保護の対象をどうするか、もしくはプロ投資家が投資に対するあらゆる制限をいかに解除していくか、という論点だったのが、近年の各国政府の注目するところが犯罪等の収益資金やテロリスト支援資金の移動防止、脱税・課税回避や資金隠し、という不法行為に対するところが一巡し、その次のステージに移って来ていると見られています。それが今回のお話となり、2019年のファンド業界で誰もが取り組まなければならなくなった Economic Substance のこと、なのです。

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