拡張する概念 – パフォーマンス計測の裏側を数学的に考えると

あまり知られていないことなので自分で言わないと知られないことの一つに、自分の経歴、というものがあります(笑)

算数って難しい。。。

気づくと偉そうに日本のオルタナ業界のメインストリーム、というニッチな世界でも戦略関係なくあちこちの人たちとお話しさせていただける程度に認知されてしまっていますが、その前に証券化商品に手を染めていた、とか、さらに昔はデリバティブの人だった、とか、履歴書を表立って出さない限りは分からない、くらい昔の話になった、とも言えると、学生の頃に何を学んでいたかなんて想像も出来ないし、当然自分の知人が何学部だったかなんて、ぱっと見で想像なんて出来ませんから、自分が他人様に当てられることなどほぼ不可能、なはずなのです。

で、今の仕事から想像されると、どうしても法学部か経済学部、と思われがち、なのですがまさか理工学部で数学が専攻だった、って思わないですよね。でも、その数学の考え方で、昨年の証券アナリストジャーナルの記事が書けた、と言ったら、みなさん、どう思うでしょうか。

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知ってそうで見落としがちな根本的な定義:証券投資信託とそうでない投資信託のお話

ついこの間の事。私が人事労務総務等の雑務一般とウェブマスターをお任せいただいている某社で、その社長と私との間でちょっとした議論が繰り広げられたのです。って、この会社の人たちは基本議論好きなので、ファンドの仕組みから投資戦略といった仕事のことから、ランチのメニューに書いてあった合鴨とマガモ、そして本鴨の定義とその違いまで、あれこれ調べては、あれこれ議論するので普段通り、ではあるのですが、そんな中、最近結論が平行線に終わった、というか私がどーしても納得行かないので平行線にした、というのが一つあります。それが、証券投資信託について、です。

まず、証券投資信託の何が問題か、というと

守秘義務が結構あるので、問題をざっくりいうとすると、外国籍のユニットトラストから外国籍 limited partnership (国内の投資事業有限責任組合でも同じですが)に投資すると、LP持分が日本の金融商品取引法上二項有価証券にあたるので、証券投資信託にならずその取扱上金融機関で面倒になる、というのが本当か、という話、なのです。

で、投資家としての著名な地位にある彼の名誉なぞ知らんので(笑)彼の発言だけかいつまむならば、

  • 証券投資信託の分類は国内籍の投資信託などの分類であり、外国籍投資信託は丸ごと証券投資信託として扱われる。
  • 従って、外国籍投資信託ならば、二項有価証券に投資したとしても一般的な投信の課税ルール(分配金もキャピタルゲインも20.315% の源泉徴収)が掛かる。その意味では厄介なことは起こらない。
  • この点は、外国籍投資信託の権威とされる某弁護士がそういっているのでなんら問題がない

で、当然ながら、それに反対する意見、すなわち、外国籍投資信託でも二項有価証券を総資産の50%以上持たせる(言い換えると、株や債券を50%未満しか持てない)と、証券投資信託にならない、そうすると最終的にその外国籍投資信託の投資家に厄介が起こる、ということで某著名な別の投資家さんとかが昔からこれを回避することをしていた、というのが私の意見。

個人的に、権威とかは税法/税務署や監督官庁の裁量の前には全く意味がない(ので、自分の意見だってその時々ではリスクが潜んでいるのも重々承知している)し、そもそも外国籍投資信託にそんな特例みたいなことをやると、ただでさえ無分配の長期投資商品を作り出すことで税務の先送りをいくらでも出来る、税務署的に厄介な商品と見られているのに、より悪さをする脱税と脱法の抜け穴、と見られるから許すはずがない、(それ以上に、悪いがそれ以上に外国籍投資信託の世界での実務や実情は自分が知ってるぞ、という自負もあるけどね)ということで、そこんところをこれを書いている法律等を引用しながらどちらがより現実的なのか(※ただし、税務ならびに金融当局のその時々の裁量判断が歪めるけどね)、検証してみようかな、と。

ちなみに、この問題に関係ないけど、別の厄介な問題が潜んでいるのでちょっとだけ余計なことを

ちなみに、仮に外国籍のLP持分(でも、ユニットトラストでも会社型でもファンドを経由して)を外国籍投資信託が直接保有しようが、仕組み債などの1項有価証券を経由して間接的に保有しようが、その外国籍のLP持分レベル(言い換えると、本来の海外での投資行為を行うファンド)で発生した源泉徴収についてその裏側にいる最終投資家のステータスに基づく還付を申告するから、全く違いがないので、そこにメリット・デメリットがある、という議論ではないことは同意しています。(というか、そういうものです)

昔、外国籍投資信託で外国籍の保険商品に投資すると、その保険商品で取り扱う某米国内の投資に付随する源泉徴収義務がなくなる、という言いっぷりで商品企画を持ち込んできた人がいたのですが、よくよく調べてみると、ただ単に源泉徴収義務を保険商品サイドで吸収します、だから事務的に楽になります、という程度の話だった、というのがありました。

まぁ、これ以外の事情もありこの話は結局商品化されなかったのですが、これも、結局のところ、保険商品ということで、保険会社が間に入っても税務上の違いが発生せずに源泉徴収が発生したので、事務をどこに任すか、程度の違いにしかならなかったわけですけど、根本的な話として、この辺り、実は投資先の国で源泉徴収された税金の還付がもし出来てしまうと、その取り扱いについては色々と悩ましい話があるのです。

実際、この還付って、例えばこの某米国を例にすると、源泉徴収されてから最短でも9ヶ月、長いと21ヶ月以上掛かるケース(x年の利益に対する源泉徴収が還付されるのがx+1年の9月以降、なのでx年1月の実現利益への課税の還付がどうしても21ヶ月掛かる、のです)が存在するのです。

これを、公募投資信託に当てはめようとすると、このx+1年の9月を迎える前にファンドの償還・清算を行うと、その後随分経って、忘れた頃に還付された資金が来るのでその受け皿すらない、という状態になったり(ま、その受託者がポケットに入れる、というのが実務でしょうけど)、還付前提なので未収利益のとして計上しても分配金でも買い戻し代わり金でもファンドが支払うキャッシュの回収が21ヶ月も先、となると、未払い収益ベースでのファンドの持分の買い戻しや分配金に対応しようにもキャッシュが不足して全額払えない可能性がありえたり(ま、分配金ならば保有するキャッシュを上限にすればいいだけですが、買い戻しですと、例えば全額買い戻しを受けると大変なことに。。。)、といって、実現ベースとして還付されたら利益として計上しようとすると、還付の原因になったx年の資産売却による投資回収の時にいた投資家がx+1年の還付前にファンドから出ていたら還付分を支払えない一方で投資回収後に新規で入った投資家に対して(その投資回収に関係ないのに)還付をファンドの利益の一部として支払うことになるので、投資家間で不公平では、という意見が出るのです。

ま、これはファンドに入った/出たタイミングに依存する以上仕方ないもの、とするのが現在の現実的な取扱なのですが。。。

証券投資信託に話を戻して、まず何が問題になるのか?

さて、この問題、何が問題か、というと、この投資信託に投資した投資家に関する税の取り扱いに最も影響がある、というのがポイントなのですが、いつもこの辺りの正確なところがうやむやだったので、今回、税法を紐解くことにしました。

で、まずわかること:分配金に違いは?

一般的に、(証券)投資信託に投資していると、税金がかかるのは信託からの分配に対する20% (2037年までなら、復興税の影響で 20.315%)が源泉徴収されて掛かる、売却時も譲渡収益の20%(2037年までなら、復興税の影響で 20.315%)の源泉徴収がされているけれども、確定申告をすることで申告分離課税か総合課税のどちらかも選択できる、 という認知がされていると思います。言い換えると、投資信託のポートフォリオの中で発生した個別の譲渡収益に対しては課税がなされず、投資家が投資信託の売却の時点まで譲渡収益が先送りにされている、という税の繰り延べ効果を享受することが出来る、というメリットがある、という説明が多分あちこちでされていると思います。

ちなみに、一般的な投資信託、というと、公社債投信か株式投信との二つに大きく分かれ、公社債投信はその中身が公社債しか入っていない、株式投信は、ポートフォリオの全部が公社債ではないものであればなんでも、要は、株と債券の混ぜ合わせのようなものから、純然たる株式100%のポートフォリオのものに至るまで、ある意味バラエティに富んだ商品、になります。となると、公社債投信の分配の原資は基本公社債の利金から発生したもの(実際には債券の償還差益/売却時と取得時の元本価格の利差も、ですが)なので、個人の所得税の観点で入ればこの投信の分配金は利子所得に該当し、株式投信については債券が入っていても株式という以上株式の配当が源泉になっていると考えて配当所得扱いをする、という違いがあります。

この違いは、というと、源泉徴収対象という意味では同じ、かつ2016年度からは損益通算の対象に入るので上場株や投資信託の損と相殺して源泉徴収を回収する、ということも同じように出来るので、違いが見えづらいのですが、唯一であり大きな違い、といえば、株式投信の分配金は配当所得(所得税法第24条)扱いなので、配当控除の適用があるけれども、公社債投信の分配金は利子所得(所得税法第23条)なので配当控除の適用がない、というところですが

そもそも配当控除ってなに?という人もいると思いますので解説するならば所得税法の第92条にある規定でして、

もともと株式の配当というのは、その会社の法人税を払った後の利益を処分するため、株式の配当に対する税金というのは、法人税と合わせて2回税金がかかっていることになります。そこで、その二重課税を回避すべく、そこそこ複雑な式を使って、その配当にかかる税金の控除をしてもらえる、というのが配当控除、というものです。

ちなみに、配当控除と損益通算はどちらかしか出来ないことになっています。とはいえ、そのような選択肢があるというのが株式投信の分配金のメリットとも言えるかもしれません。

で、この配当所得か、利子所得か、という定義には証券投資信託であるかどうか、の条件が入っておらず、むしろ

利子所得:… 公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託 [著者注:証券投資信託以外の投資信託のうち、信託財産として受け入れた金銭を公社債等(公社債、手形、指名金銭債権(指名債権であつて金銭の支払を目的とするものをいう。)その他の政令で定める資産をいう。] に対して運用するものとして政令で定めるもの)の収益の分配

所得税法第23条

配当所得:投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く。)… の分配 … に係る所得

なので、(特に個人)投資家の観点で見ると証券投資信託であるかどうかが問題ではないといえます。

当然、投資信託の元本相当に当たる部分が返還される時に課税することもありませんから、投資家にとって実は証券投資信託かどうかなんてそんなに問題はないのでは?と思ってしまいますね。

税務は、分配金への課税だけにあらず。なぜなら。。。

先ほど、配当控除の説明の中で、二重課税、という話が出ました。会社の株主から見ると、配当に所得税が掛かり、その前に会社の収益に対して法人税がかかっているのは二重課税だ、と。他方で、ずいぶん前のブログ記事に書いたのですが、ファンドってある意味「投資をする」という事業目的の法人、である、と。とすると、ファンドの器にだって法人税の課税が起こったっておかしくはないですよね。でも、ずっとファンドの器には課税されない、という前提で話をし続けてきました。なぜでしょう。

これもずいぶん前のブログで書いた話ですが、投資において一番のコストとは、運用報酬でなければ、ファンドアドミの報酬でもなく、超過収益に対してかかる税金、なのです。としたら、まずファンドの器が免税なものが投資するのにもっとも適している、から誰もが使う、ということなのです。だからこそ、ケイマン諸島をはじめとするオフショアの投資主体が免税(実際、投資主体を設立、維持するごとに登録免許を3,000ドル程度毎年払う程度だから年間の維持コストとしては受け入れやすい)であることで投資家や運用者を惹きつけるわけです。

で、同様に、国内の投資信託もどれもこれも信託なんだから免税、とつい思いますよね。でも、信託だから免税、というわけではないのです。実は。どういうことか、というと、法人税法第12条によると

信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなして、この法律の規定を適用する。ただし、集団投資信託、退職年金等信託、特定公益信託等又は法人課税信託の信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用については、この限りでない。

法人税法第12条

ということで、一般的には信託の受益者は信託財産に属する資産と負債を自分が直接保有しているのと同じ効果となり、また信託財産から発生した収益や費用は自分が直接得た収益・支払う費用と同じ取り扱いをせねばならない、のです。言い換えると、その年に発生した収益や費用はその年の自分の収益や費用として取り込まねばならない、というのが原則なのです。

あれ、これだとファンドの特徴の一つである、収益の先送り効果がない、ですよね。でも、これをよく読むと、注意があって「ただし」の後に、集団投資信託などの例外があるというのです。で、さらに読み進めると

法人が受託者となる集団投資信託、退職年金等信託又は特定公益信託等の信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用は、当該法人の各事業年度の所得の金額及び各連結事業年度の連結所得の金額の計算上、当該法人の資産及び負債並びに収益及び費用でないものとみなして、この法律の規定を適用する。

法人税法第12条第3項

ということで、受託者の会計でもない、とされています。実は、この二つのお陰で、私たちが一般に見る投資信託が信託勘定で資産を売買した結果の利益に対して課税がされていない、という法的根拠になっています。では、この適用対象となる集団投資信託、とは何か、というと。。。

集団投資信託 次に掲げる信託をいう。
イ 合同運用信託
ロ 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第三項に規定する投資信託(次に掲げるものに限る。)及び外国投資信託
(1) 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第四項に規定する証券投資信託
(2) その受託者(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第一項に規定する委託者指図型投資信託にあつては、委託者)による受益権の募集が、同条第八項に規定する公募により行われ、かつ、主として国内において行われるものとして政令で定めるもの
ハ 特定受益証券発行信託(信託法(平成十八年法律第百八号)第百八十五条第三項(受益証券の発行に関する信託行為の定め)に規定する受益証券発行信託のうち、次に掲げる要件の全てに該当するもの(イに掲げる信託及び次号ハに掲げる信託を除く。)をいう。)
(1) 信託事務の実施につき政令で定める要件に該当するものであることについて政令で定めるところにより税務署長の承認を受けた法人((1)において「承認受託者」という。)が引き受けたものであること(その計算期間開始の日の前日までに、当該承認受託者(当該受益証券発行信託の受託者に就任したことによりその信託事務の引継ぎを受けた承認受託者を含む。)がその承認を取り消された場合及び当該受益証券発行信託の受託者に承認受託者以外の者が就任した場合を除く。)。
(2) 各計算期間終了の時における未分配利益の額として政令で定めるところにより計算した金額のその時における元本の総額に対する割合((3)において「利益留保割合」という。)が政令で定める割合を超えない旨の信託行為における定めがあること。
(3) 各計算期間開始の時において、その時までに到来した利益留保割合の算定の時期として政令で定めるもののいずれにおいてもその算定された利益留保割合が(2)に規定する政令で定める割合を超えていないこと。
(4) その計算期間が一年を超えないこと。
(5) 受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)が存しない信託に該当したことがないこと。

法人税法第2条第29項

でして、これのお陰で証券投資信託だとこの税効果を受けることが出来る、というわけです。でも、これだと証券投資信託以外だとどうなるのかわからないですよね。では、証券投資信託に該当しないとどうなるかを見てみますと。。。

法人課税信託 次に掲げる信託(集団投資信託並びに第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託及び同項第二号に規定する特定公益信託等を除く。)をいう。
イ 受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託
ロ 第十二条第一項に規定する受益者(同条第二項の規定により同条第一項に規定する受益者とみなされる者を含む。)が存しない信託
ハ 法人(公共法人及び公益法人等を除く。)が委託者となる信託(信託財産に属する資産のみを信託するものを除く。)で、次に掲げる要件のいずれかに該当するもの
(1) 当該法人の事業の全部又は重要な一部(その譲渡につき当該法人の会社法(平成十七年法律第八十六号)第四百六十七条第一項(第一号又は第二号に係る部分に限る。)(事業譲渡等の承認等)の株主総会の決議(これに準ずるものを含む。)を要するものに限る。)を信託し、かつ、その信託の効力が生じた時において、当該法人の株主等が取得する受益権のその信託に係る全ての受益権に対する割合が百分の五十を超えるものとして政令で定めるものに該当することが見込まれていたこと(その信託財産に属する金銭以外の資産の種類がおおむね同一である場合として政令で定める場合を除く。)。
(2) その信託の効力が生じた時又はその存続期間(その信託行為において定められた存続期間をいう。(2)において同じ。)の定めの変更の効力が生じた時((2)において「効力発生時等」という。)において当該法人又は当該法人との間に政令で定める特殊の関係のある者((2)及び(3)において「特殊関係者」という。)が受託者であり、かつ、当該効力発生時等において当該効力発生時等以後のその存続期間が二十年を超えるものとされていたこと(当該法人又は当該法人の特殊関係者のいずれもがその受託者でなかつた場合において当該法人又は当該法人の特殊関係者がその受託者に就任することとなり、かつ、その就任の時においてその時以後のその存続期間が二十年を超えるものとされていたときを含むものとし、その信託財産の性質上その信託財産の管理又は処分に長期間を要する場合として政令で定める場合を除く。)。
(3) その信託の効力が生じた時において当該法人又は当該法人の特殊関係者をその受託者と、当該法人の特殊関係者をその受益者とし、かつ、その時において当該特殊関係者に対する収益の分配の割合の変更が可能である場合として政令で定める場合に該当したこと。
ニ 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第三項に規定する投資信託
ホ 資産の流動化に関する法律第二条第十三項に規定する特定目的信託

法人税法第2条第29項の2

ということで、投資信託だけど、集団投資信託ではない投資信託は法人課税信託に該当することが分かります。この時の課税方法はどうなるかというと

法人課税信託の受託者は、各法人課税信託の信託資産等(信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用をいう。以下この章において同じ。)及び固有資産等(法人課税信託の信託資産等以外の資産及び負債並びに収益及び費用をいう。次項において同じ。)ごとに、それぞれ別の者とみなして、この法律(第二条第二十九号の二(定義)、第四条(納税義務者)及び第十二条(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)並びに第六章(納税地)並びに第五編(罰則)を除く。以下この章において同じ。)の規定を適用する。

法人税法第4条の6

ということで、受託者レベル、というか信託勘定の収益と費用計算に基づく課税が行われてしまう、ということになるのです。だから、数年前あたりに、投資信託が投資先がない、もしくは投資資産の急落が予見できるので現金比率を上げた結果50%以上現金となったことで証券投資信託ではなくなるからということで、この課税問題でちょっとした騒ぎになったことがありました。

で、これらを今回の問題に当てはめるとどうなるかというと。。。

まず、証券投資信託でなくなると、法人課税信託になっちゃうから、信託レベルで毎年課税されてしまう、というのが問題、というのが本質、でした。

で、問題は、確かに、法人税法の定義を見る限り、投資対象が一項有価証券であろうが二項有価証券であろうとも外国籍投資信託といえば集団投資信託の一つですので、法人課税信託の対象外と言えるし、受益者会計ベースでの税務対象にならない、ということでなんとなく社長の言っていることがそれっぽく聞こえる、というのが個人的に問題(笑)でも、ちょっと根拠がちゃうやん、とは言いたいぞっ(って、どんだけ負けず嫌いやねん、自分)

ま、自分の言っていたことである、外国籍投資信託による二項有価証券の保有で問題が起こるか、というと、実際のところ外国籍信託のレベルには国税庁の税務追徴は及べない(海外だから!)から法人課税信託の取り扱いは出来ないし、仮に受益者会計を入れられてしまっても現実問題として外国籍投資信託に投資している国内数万人以上の受益者が毎年個別に英文の年次監査報告書を元に税務報告し、その内容を(こっちは株式でこっちはLP持分で、と)証明できて、国税庁サイドがそれらに個別対応して検証できるか、という実務が待ち構えているならば外国籍投資信託は丸っと有価証券でござい(その代わり、国内信託なら国税の代わりにこの辺りの判断をして、必要に応じて税務申告を正しくさせる圧力をかけられるからする、というかしているという前提で税務申告を受ける)とするのが現実的なのかもしれません。

ということで、これって案外商品設計の上で大事な整理だから、公表したらまずかったかな?ま、調べて整理すれば誰でもわかることだからいいか。しかも、誰もこんな風には書いてないけどね(笑)

ちなみに、法人課税信託であってもいくつかの条件を満たすと「課税額を減らすことが出来る」のは、J-REIT などをみているとわかるのですが、これはどこをみたら出てくるでしょう。法人税法ではないんですよねー

ほんと、税法って面倒に作ってありますよねぇ。。。

最近投資するのに時間がかかるのはなぜ? – AMLとかKYCとか、気づいたら適格投資家まで説明しているぞ

申し込み用紙、これくらい簡単なら

このところ、ちょっと芸風を変えて、コンテンツをまずPowerPointで作って、SlideShare に投げてます。こうすると、本当に要点だけのコンテンツが出来るので、いつものような脱線が起こらない。。。はず、なのですが、ちょっとだけはみ出てますね。

で、その勢いでコンテンツを音声のない動画というかスライド動画にして こんな風にYoutube にあげてみたり。

まぁ、Youtuberになるとは思わないものの、どうも最近このサイトへのアクセスブロックを某銀行さんが始めたらしく、読者が激減。まぁ、それ以上に、記事がアップされたと思ったら食べ物ばかり、では飽きられちゃいますよね。ですので、色々な形でお送りしたらより多くの人に届けられるのでは、と思って試行錯誤中です。

で、本編の AML/KYC の話ですが

タイトルの通り、最近、AML/KYC の手続きが厳格化されているのは、FATF の査察を控えた日本だけに限った話ではなく、OECD諸国をはじめとする世界各国で(それこそ、CRSに入らないと言っていた台湾ですら、2020年9月から日本とAEOIを始めるそうですから)その程度はあれ起こっていることです。

よくオフショアはそういうのが緩い、なんて思っている人もいるのですが、ケイマン諸島は以前の記事の通り、AMLに関する法規制を導入して各ファンドに専任の担当者を置いて当局への報告を直接出来るようにせねばならなくなった、というのは実はオフショアのみならずオンショアですら結構例を見ない、厳しい制度なのです。

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PE問題ってなぁに?

オフショアでファンドを建てて運用するファンドマネジャーにとって、投資先の国における課税問題というのは常に古くて新しい問題です。ある程度小慣れたものも現地政府の都合やその他の国との税制等との平仄を合わせるなどのかなり大人な事情で、しかも突然に変更されるので、それまで盤石だと思っていたものがいきなり崩れて税金という投資コストが上乗せされるリスクを孕みます。

最近の税務は基本厳しい方向で規制が進む

とはいえ、そのリスクの予見は(最近のOECD諸国を中心とする BEPS – Base Erosion and Profit Shifting: 税源浸食と利益移転への対応強化の流れを見ると緩和の方向には絶対にない、という傾向以外は)難しいため、せめてファンドが立ち上がった時には機能する、すなわち合法的な税務対応の最適化、を目指すことになります。

この中で、とはいえ、例えば日本から米国へ、のような単純なクロスボーダーならば二国間の租税条約に従えばいいのでまだ比較的取り組みやすいのですが、日本の運用者がその地の利を生かした日本での投資に対して海外の投資家を連れてこよう、という時に、海外から日本への投資の際の税制を考えるに当たって非居住者の税制のメリットを享受出来るようにしながら居住者として得られる情報に基づく運用等のメリットを提供するか、言い換えれば、非居住者が居住者と同じような資産処分時の源泉所得税の対象とならないようにしてあげるにはどうしたらいいか、という問題に直面すると話が一気に複雑になります。

そんな中のPE問題の歩き方、とは

過日、とある方からこの問題について説明してほしい、と言われたのと同時にちょうど今抱えている案件でもこの問題の取り組みをしていたことから、税理士ではないため考え方の概要を説明するのにまとめる文章を書く機会を得ました。本当はそれをそのまま掲載するのがいいのですが、それではちょっと芸がない。しかも、このブログは無題に長いことで有名だから、たまにはその予想を覆してみよう、と、こんな動画を作ってみました。パワポで。

で、何が言いたいのかというと

ざっくりとまとめるならば、日本国内で日本人だけでやっているならば国内税制の適用があるけど、国外で非居住者だけでやっているなら日本に課税権がないのでスッキリ。でも、国内に拠点があるのに海外からの投資、というのはその中間でどう考えたらいいのか、という話であり、非居住者という顔をするファンド自身が国内に恒久的施設を持って国内で居住者同様に投資活動をしているならば、居住者と同じだけの課税権を持っていいよね?国内の恒久的施設を有しなくても、代理人があたかも海外のファンドと一体化してその一部として活動しているのもダメだよね、という時に、その代理人の独立性とは、とか国内の恒久的施設に当たるにはどういう条件なの?という整理をすればいいのですよ、というのがこの動画におけるPE問題の取り組み方、なのです。

詳細は本編でどうそ。4分程度の動画ですから税金の話とはいえ寝ることもないですよ。

当然のことですが、税務については税理士さんと必ずご相談を。それだって時と解釈が変われば使い物にならないケースも多々ありますので、そう思う前提で(決してクレームは当方に持ち込まれないよう)よろしくお願いします。

ね、たまには文章が短いのもいいでしょ?(笑)

余談

あ、ちなみに、SlideShare にも投稿してみました。

Tokyo Asset Management Forum に参加しつつ、最近の動向に関して雑感など

東京都がそのお知らせとか新着情報に載せずにある意味こっそりと開催した、Tokyo Asset Management Forum。ご存知の方も多いかと思いますが、筆者の最近の仕事の多くがあけぼの投資顧問でのwebmaster 兼総務労務人事経理といった雑務一般、ということもあり、後述の理由にて参加させていただきました。

新興運用会社は金のなる木になれるか?

実は書きかけの記事があれこれあるものの、このブログでの東京版EMPの記事がよく纏まっているので人に紹介しているんです、なんて今日とある方に言われたことから、光栄に思いつつもそうなると結構読まれているんだな、と思い、言葉遣いに気をつけ。。。る必要もないですよね(笑)前回同様、率直なまとめを踏まえつつ、またたまたま執筆する数日前の AIMA の日本支部の定例会で共有されたちょっと驚く話も交えて、たまには旬なタイミングで書いてみようかな、と思った次第です。

Tokyo Asset Management Forumとは?

引用しております告知ページにもありますように

東京都では、昨年11月に、「国際金融都市・東京」構想を公表いたしました。

 今般、本構想において取組の一つとして掲げている新興資産運用業者育成プログラム(EMP)等の導入促進に向け、EMPの認知度向上を図るとともに、新興資産運用業者からのプレゼンテーション等を行うセミナーを開催することとなりましたので、下記のとおり、お知らせいたします。

※ Emerging Managers Programの略。アセットマネージャーを志す候補者を発掘して資金を提供し、若手のマネージャーの育成を支援すること

Tokyo Asset Management Forumの開催について

という趣旨で、機関投資家と報道向けをメインとしつつ、ゲートキーパーのようなアセットオーナーと投資家を結ぶ役割だったり、上記の Emerging Managerに該当するけどプログラムの最後の新興資産運用業者のプレゼンテーションに呼ばれなかった運用会社さん、など150名程度の参加があったそうです。

今年は実は2回目で1回目は昨年。その際には諸般の事情があって参加出来なかったのですが、EMPが発表される前だったことで色々と不明瞭な状況で演目が進んだのに比べて今年は既に EMPの詳細が開示され、EMP に賛同し(EMに対して投資するファンドの運営費用の一部を東京都が補助することが確定し)た「東京版EMPファンド運営事業者」も3社決定していますので、EMPファンド運用事業者の裏側にいる国内適格機関投資家だけでなく、その他の適格機関投資家に対する EM の紹介をするショーケース的意味合いも強かったと思います。

で、そのEMって誰?

前述の東京都政策企画局の Tokyo Asset Management Forum の告知ページのプログラムの最後に、「資産運用業者プレゼン」とあり、国内外の16の新興資産運用会社がプレゼンすることになっております。1時間20分に16社ですので、一社あたりの持ち時間はなんと4分。いわゆるエレベーターピッチ、エレベーターで乗り合わせた人に降りるまでの短い時間に売り込むことが出来る程度に簡潔に縮めたプレゼンを求められたのですが、時間通りに終わらす人、時間が過ぎても少しくらいは、とだらだら話す人、と色々と性格が出るようです。

余談ですが

個人的に、こういう短い時間を区切ってプレゼンをすることでスキルを磨いたり、よりインパクトのあるプレゼンをする機会を作ってみたいんですよね。ロンドンに Ignite London というイベントがあって、そこは一人の持ち時間は5分。時間が過ぎたらマイクや照明の電源が落ちて終了、という仕掛けがあるステージでのプレゼン、観客も立ってすぐそばで見る、という緊張感があるのでいつかやってみたいんですよね。こんな感じで。。。

それはさておき、今回の16社、この告知で名前を出していないので多分表に出してはいけない、ということは、日経やブルームバーグが取材に来ていたのでまずないとは思うものの、まぁ実名を一社だけ出すならば、著者の所属するあけぼの投資顧問。はい、プライベート・エクイティやベンチャーキャピタル・ファンドの持分のセカンダリー取得を戦略とするファンドを運用しております。ヘッジファンドでも伝統的資産の運用でもありません。しかも、会社のメンバーを見ると、私のほか、AIMA の日本支部の副会長の白木信一郎を始めとする、オルタナ運用業界に普通に10年以上いる人間ばかり。平均年齢とか聞いちゃいけないくらい高い(笑)オヤジベンチャーですので、「若手のマネジャー」という言葉が全く似合いません。でも、会社としてはまだ創業から3年、金融商品業法登録から2年ですから、東京版EMP の定義でいうEM にちゃんと当たります。

一応会社名は出しませんが、海外で既に USD 1bil を優に超える運用資産のある企業も数社登場しました。ついこの間ニュースで日本進出が報じられた某運用会社さんもです。当然、本社の創業は20年前、とか普通にありますが、日本拠点の設立が最近かこれから、ということで金融商品業法登録も今年、もしくはこれから、ということですので、EMP的にはEM、なのです。

と考えると、既に報じられている EMPファンド運営事業者の3社がこの16社だけから選ぶことはないものの、とはいえ、実はこの16社に代表されるような、本当に新たに企業を興した、という意味の若手の新興ファンドマネジャーから、当社のような顔ぶれだけは古いが業歴が浅いファンドマネジャー、そして、この数年内に海外から日本に拠点を作り国内の業法登録を済ませたところまで、案外選択肢は広いことが見えてきます。まぁ、これ、裏を返して読むと、本来の目的が見えてくるんですよね。。。制度設計的に野心をよく反映するように出来ているのですが、おっと誰が読んでいるかわからないからこれ以上はやめておこうか(って、これでも十分怒られるか笑)

あと、その定義をちゃんと読むとわかるのですが、知られていないことの一つに、我があけぼの投資顧問が普通にEMの顔をしてプレゼンを出来たように、EMPの制度上、採用される戦略に縛りがない、のです。新興マネジャーの育成プログラム、というとどうしてもヘッジファンド、と思いがちなのですが、実はタイミングさえ合えば(って、PE/VCにはこれが一番難しい)今年以降、立ち上がるビンテージのファンドへの投資だって期待できたはず、なのです。これはJIAMの有友氏のパネルでのプレゼンでも語られていたのですが、PE/VC界隈でのEMPの認知度の極めて低いことが見事に災いしましたが、それ以上に、EMPファンド運営事業者さんにPE/VC関連戦略がそもそも理解して選択できるのか、がもっとハードルを引き上げてしまったようにも思えます。もしこの物言いが失礼、だとしたら、ぜひ理解したことを示すべく、あけぼの投資顧問の来年のファンドへの投資をご検討ください(と、ラブコールしたりして)。

東京がそれなりに盛り上がっているところ、こんなニュースが

さて、AIMAの月例会でさらっと報告があって、みんながそれを聞いて「あーあ」と声にしてしまったニュースでも。

シンガポールの金融当局 (MAS)が、2018年11月13日にプレスリリースしたのが、USD 5 bilをシンガポール政府が投じて、既存、これから立ち上げるを問わずシンガポールにコミットするPEファンドやインフラファンドに資金供給をする、private markets program (PMP)を立ち上げた、というものです。

いつもながらシンガポールというのはその政策の方向性と手法に目を見張るものが有ります。今後伸びているくプライベート市場に、既存の企業とファンドをマッチングさせる MATCHとこのPMPを組み合わせて非上場企業の育成化と共に、資産運用業界の活性化と海外企業の誘致も行っていく、というのが見えてきます。そしてそのための資本リスクをとる、と明言しているのです。

特にこの最後の部分は、過去の新銀行東京の一件以降、議会が絶対に都としての出資を認めづらいところにある、けど補助金ならば、という選択に帰結したことを聞いているものの、これで差がつけられるなぁ、という印象はどうしてもぬぐえません。「あーあ」という声が出るのもわかっていただけたかと思います。

まとめ

ということで、東京版EMP、今後はEMが徐々に採用されていくことになるとは思います。あとは、どれだけの結果が残していけるのか、に次の道筋が決まっていくだけに、気になるところです。それ以上に、あけぼの投資顧問が採用されるのかが、個人的に気になって仕方ないのですが、スキーム上、第二種金融商品への投資そのものが許されているのか(特に国内受託者のポイントとして)など、クリアーにする機会があるのか、今後に注目です。いや、注目してください。

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