ファンドの基本- 会社型ファンドとその関係者

前回の宣言通り、今回からファンドの形態やその関係者、その結果としてのガバナンスについて、と、少し意欲的という、まぁ欲張った方針で書いてみようと思います。

そのおかげで毎週月曜にアップ予定でしたがペースが遅くなりました。ごめんなさい。
なにせ、貼付けられる絵を書くのが苦手でして(汗)というか、このところ仕事の休暇中のはずなのに妙に忙しくて。。。

さて。最初は、日本人に親しみのあるユニットトラスト、ではなく、会社型ファンドから始めようと思います。と、言いますのも、この読者ならば株式会社に務めたことのある人が殆どの筈ですから、ファンドの機能やガバナンスと言う点での会社との対比、ということで、進めるほうが判りやすいと思ったからです。きっと誰もこの観点で語った人も居ないだろうし(笑)

会社とは

さて。会社型ファンドの前に会社とは、ですね。
発起人が

  • ある目的(事業)を行う為に
  • 投資家から投資を募って
  • 事業を行う

主体が、株式会社ですよね。

で、これをちょっと細かく書いてみると

  • 会社の目的とか取締役や監査人の数、事業年度や株主総会の開催ルールなどなどを定款に決め、
  • その定款に従って事業を行う為の取締役を決め、株主総会で承認を受けて、
  • 取締役の指示に従って事業を行う為の専門性のある従業員を雇うことで事業を行い、収益を上げ、
  • 年度が終わって監査人が監査の上、株主総会で年度での事業を報告し、承認を受けて、
  • 収益を分配する、
  • 事業が上手く行かなければ従業員を変え、もしくは取締役を変える

などして、事業を達成しようとする、という感じ、ですよね。

で、事業を運営するために、資本金を管理し、必要に応じて支払いや売上を受領する為の銀行口座も開設して資金管理をし、必要に応じて証券口座も開設して運営することもありますよね。

更には、事業活動を記録する、という意味で日々経理処理が発生し、それを最終的な年次の財務諸表の形にし(監査人や、もし上場企業なら外部の監査法人が適切に事業を運営されたか、という監査を経て)株主(や、債権者など)に開示する、ということもしますよね。

そして、誰がどれだけ株式を保有している(言い換えれば、出資した)か、適切に管理する必要もありますよね。上場企業なら株主名簿管理人として信託銀行のどこかが任命されたりしますね。

会社を最低限で作ると

多分、上記がどんな事業を運営する会社であっても最低限、必要となるもの、のはずです。これを図にするとよくあるこんな感じ。

当然、私の作ってきた会社のような非上場の零細企業、いわゆるMBAを取ったタイプの人間(ベーっだ!)が「papa’s and mama’s」と蔑むあれ、あたりでは、金も人もないので

  • 株主名簿管理人なんて居ないし(株主がひとりですが何か?)
  • 外部の監査なんてないし(一人株主、債権者もほぼなしですが?)
  • 取締役自ら仕組みを日々試行錯誤しながら、構築し、変更し、を繰り返して従業員と変わらず(いや、それ以上に)働く(低予算で最大の収益を上げてますが、any question?)

と、絵に描いてみたらこんな感じの

会社のステークホルダー(この場合、利害関係者)が限定少数ならばこそ、ガバナンスがどうの、と、問うことも多くは無い訳ですが、取引が広がって、また、借金して債権者が増え、上場はせずとも株主が増え、日本なら最優先される債権者こと従業員も増えれば、どうしたって会社が適切に運営されて、適切に経理処理されていることがステークホルダーに共通の利益になる(というか、適切にされていないとステークホルダーの誰かしらの不利益になる)ということで、コーポレート・ガバナンス、社内統制というのが大事ですよ、なんて話がこの10年近く叫ばれてきた訳です。(知ってますよね?やってますよね?)

ファンドでは?

で、ファンドに目を向けてみましょう。
ファンドを簡単に立ち上げよう、なんて考えると、最低限ってなにかといえば

運用者が

  • ある投資目的を行う為に
  • 投資家から投資資本を募って
  • 投資運用を行う

主体が、ファンドですよね。

ならば、

  • ファンドの目的とか取締役や監査人の数、事業年度や株主総会の開催ルールなどなどを定款に決め、
  • その定款に従って事業を行う為の取締役を決め、株主総会で承認を受けて、
  • 取締役の指示に従って事業を行う為の専門性のある運用会社を雇うことで投資事業を行い、収益を上げ、
  • 年度が終わって監査人が監査の上、株主総会で年度での事業を報告し、承認を受けて、
  • 収益を分配する

とすればいいわけで、そのために

資産運用を運営するために、投資元本を管理し、必要に応じて証券決済の支払いを収受する為の銀行口座も開設して資金管理をし、証券投資ならば必要な証券口座(先物なら先物口座などなど)も開設して運営することもありますよね。

更には、事業活動を記録する、という意味で日々経理処理が発生し、それを最終的な年次の財務諸表の形にし(外部の監査法人が適切に資産運用が運営されたか、という監査を経て)投資家(や、レバレッジしているならばローンの出し手である債権者など)に開示する、ということもしますよね。

そして、誰がどれだけ投資持ち分を保有している(言い換えれば、出資した)か、適切に管理する必要もありますよね。

 

会社とファンドの違いとは?

 

あれ?これって会社のそれとどこが違うんでしょうね。固有名詞の入れ替えはあれど、基本的にはほとんど変わらないですよね。
ですが、ファンドを簡単に作っちゃおうとすると、こんな絵になっちゃうんですよね。。。

取締役が自分で運用判断をして、実際にそれを執行して、決済して、自分で帳簿つけて資産を評価して、ファンドの純資産を計算して、投資家に報告。いわゆる自己運用、という形態です。これって、企業としてやったら MBA の方達ならば mama’s and papa’s と揶揄するのですが、案外 MBA 出て投資銀行やってそれからファンドを立ち上げよう、なんて始め立ての頃って普通にこれでやっちゃうというかやらざるを得ないんですよね。自分たちとその家族の資金運用で運用戦略のトラックレコードを作らなきゃ行けないのですから。

もっと企業らしいファンドの形とは?

でも、これって、ファンドの内部統制が利いてないですよね。どうみたって。papa’s and mama’s (って順番が入れ替わったけど、どっちでもいいや)なんですから。でも、これが実はまかり通っていた時期ってつい最近までだったんですよね。Madoff が self-administration で問題を起こすまでは(しかも、この場合は監査が入っていたにも関わらず、ですが)。。。

じゃあ、これじゃあ、ってんで企業らしい形態だとどうなるの、というと、一般的にはこんな感じになってきます。
会社が専門性のある従業員を雇うのと同じく、
運用業務を専門性のある運用会社に
資産保有を専門性のあるカストディに
経理/資産評価を専門性のあるアドミニストレーターに
投資家管理を専門性のあるトランスファーエージェントに
監査を外部監査に
と、会社ならば従業員を雇うところ外部のそれぞれのサービスプロバイダーに任せることで、相互監視の中運用業務を遂行していく、というのが会社とファンドの違い、かもしれません。
で、この絵を見ると、もうこれで安心、って思えますよね。全部外部だし。
でも、ファンドの成り立ちを考えると、ファンドのガバナンスという観点でまだ足りていない、絵には見えない問題があったりします。それは。。。

 

ファンドとガバナンス

 

ファンドを作りたい、と思う人は二通り居て、一つは世の中にあるファンドに投資する為のファンドを作りたい、という投資家側のニーズ、もう一つは資産運用したいから投資家から資金を調達したい、という運用者側のニーズがあります。
前者ならば、投資家に近い取締役を集めてファンドを作ります。後者ならば、運用者に近い取締役を集めてファンドを作ります。例えば、運用会社の内部の人間がファンドの取締役を兼務する、など。
前者ならば、投資家の保護、という観点ならば投資家に有利な判断を常にすることになるはずなのでまだ良いのですが、後者の場合、投資家の利益よりも運用会社にとって利益となる判断をしやすい立場に取締役が置かれていることが多いとみて間違いないです。一般には、そうであっても、fiduciary duty があるからしない、と言い張ると思います(笑)が、雇い主が誰であるか、という影響力が高いのは、会社の親子関係における取締役の派遣による人的支配という議論で世の中的に認知されていることから明らかなのです。
となると、会社型ファンドの取締役においても普通の企業と同じく、社外取締役が投資家の利益を守るべく働く事が求められてくるのが必然と見られてきます。
で、よくこの形態になると聞かれる事があります。
「取締役会に、ファンドマネジャーがいないことになって取締役会が機能するのか」
と。確かに、ファンドの目的が運用である以上、ファンドマネジャーの代表がいない会というのが成立しえるのか、という疑問はあるかもしれません。とはいえ、取締役会で運用の巧拙を吟味するよりは、定款や目論見書に定められた運用方針が正しく行われているかをカストディやアドミからの情報で確認し、もしおかしければファンドマネジャーを呼んで説明を求める、という、会社の運営を取締役会でどう取り扱うか、と同じように考える方がすっきりするかもしれません。会社型ファンドと会社との間で、基本的にそう違いはないのですから。。。

 

次回はユニットトラスト

 

ということで、今回は会社型ファンドについての説明でした。
次回はユニットトラスト形態をご説明しようと思いますが、こんなペースなので、もしかしたら1週間以上掛かるかもしれません。そうなったらごめんなさい。ではでは。

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