二項証券の「その他の権利」、見たことあります?

どの名刺であってもコンサル仕事をするにあたって大事なのは「人の紹介」もしかりですが、このようなブログをはじめとする、露出というのも大事なようで、そのおかげで時々思いもよらないところからの逆「コールドコール」、いわゆる飛び込みのご相談を受けることがあります。

そういうコールドコールの場合でも、ちょっと(いや、そこそこたっぷりと)お話をして(こちらがちゃんとそれを真摯に取り組みますよ、という知識と経験と実績と見識を「きっちりと」お見せして)その次にちゃんとした報酬ベースのお話を、という段取りを取らせてもらいます。でも、こういう「出会い」だからでしょうか。その手前で突然返事がなくなってしまう、というのも残念ながら少なくないのも事実です。そういうのは、もしかしたら自己解決したのかもしれないし、他に出来ると思わせたところにお願いしているのかもしれないのですが、まぁ報酬の話もしていないところですのでより安いところ、という日本人(の特に金融関係で多い、いやまじで多いんです)特有の「勉強できるかどうか」という要求水準で試されたわけでもないので、「自信なさげに見えたかなぁ」、といつも思うところです。

とは言え、結果的にお金にならない話であっても、その後どういう形で「商業化した」のか、それとも「商業化を諦めた」のか、というプロセスと判断材料、というのは、実は今後の人たちのための糧になる、ということもあり、知りたいことではあるのですが、こういういきなり音信不通になってしまうケースだとそこがわからない。正直に言えば、知的好奇心の観点から困ります。話にオチがつかないことほどむず痒くて夜も眠れなくて(いや、それなりに寝てるはずですが、一応話の流れ的に盛らせていただいています(笑))困るものはない、のです。

ということで、そういう浮遊霊のように行き場を失って漂っている案件の中で、最近あった非常に知的好奇心を刺激されたお話をちょっとご披露しつつ、このウズウズ感も共有してみたいと思います。

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知ってそうで見落としがちな根本的な定義:証券投資信託とそうでない投資信託のお話

ついこの間の事。私が人事労務総務等の雑務一般とウェブマスターをお任せいただいている某社で、その社長と私との間でちょっとした議論が繰り広げられたのです。って、この会社の人たちは基本議論好きなので、ファンドの仕組みから投資戦略といった仕事のことから、ランチのメニューに書いてあった合鴨とマガモ、そして本鴨の定義とその違いまで、あれこれ調べては、あれこれ議論するので普段通り、ではあるのですが、そんな中、最近結論が平行線に終わった、というか私がどーしても納得行かないので平行線にした、というのが一つあります。それが、証券投資信託について、です。

まず、証券投資信託の何が問題か、というと

守秘義務が結構あるので、問題をざっくりいうとすると、外国籍のユニットトラストから外国籍 limited partnership (国内の投資事業有限責任組合でも同じですが)に投資すると、LP持分が日本の金融商品取引法上二項有価証券にあたるので、証券投資信託にならずその取扱上金融機関で面倒になる、というのが本当か、という話、なのです。

で、投資家としての著名な地位にある彼の名誉なぞ知らんので(笑)彼の発言だけかいつまむならば、

  • 証券投資信託の分類は国内籍の投資信託などの分類であり、外国籍投資信託は丸ごと証券投資信託として扱われる。
  • 従って、外国籍投資信託ならば、二項有価証券に投資したとしても一般的な投信の課税ルール(分配金もキャピタルゲインも20.315% の源泉徴収)が掛かる。その意味では厄介なことは起こらない。
  • この点は、外国籍投資信託の権威とされる某弁護士がそういっているのでなんら問題がない

で、当然ながら、それに反対する意見、すなわち、外国籍投資信託でも二項有価証券を総資産の50%以上持たせる(言い換えると、株や債券を50%未満しか持てない)と、証券投資信託にならない、そうすると最終的にその外国籍投資信託の投資家に厄介が起こる、ということで某著名な別の投資家さんとかが昔からこれを回避することをしていた、というのが私の意見。

個人的に、権威とかは税法/税務署や監督官庁の裁量の前には全く意味がない(ので、自分の意見だってその時々ではリスクが潜んでいるのも重々承知している)し、そもそも外国籍投資信託にそんな特例みたいなことをやると、ただでさえ無分配の長期投資商品を作り出すことで税務の先送りをいくらでも出来る、税務署的に厄介な商品と見られているのに、より悪さをする脱税と脱法の抜け穴、と見られるから許すはずがない、(それ以上に、悪いがそれ以上に外国籍投資信託の世界での実務や実情は自分が知ってるぞ、という自負もあるけどね)ということで、そこんところをこれを書いている法律等を引用しながらどちらがより現実的なのか(※ただし、税務ならびに金融当局のその時々の裁量判断が歪めるけどね)、検証してみようかな、と。

ちなみに、この問題に関係ないけど、別の厄介な問題が潜んでいるのでちょっとだけ余計なことを

ちなみに、仮に外国籍のLP持分(でも、ユニットトラストでも会社型でもファンドを経由して)を外国籍投資信託が直接保有しようが、仕組み債などの1項有価証券を経由して間接的に保有しようが、その外国籍のLP持分レベル(言い換えると、本来の海外での投資行為を行うファンド)で発生した源泉徴収についてその裏側にいる最終投資家のステータスに基づく還付を申告するから、全く違いがないので、そこにメリット・デメリットがある、という議論ではないことは同意しています。(というか、そういうものです)

昔、外国籍投資信託で外国籍の保険商品に投資すると、その保険商品で取り扱う某米国内の投資に付随する源泉徴収義務がなくなる、という言いっぷりで商品企画を持ち込んできた人がいたのですが、よくよく調べてみると、ただ単に源泉徴収義務を保険商品サイドで吸収します、だから事務的に楽になります、という程度の話だった、というのがありました。

まぁ、これ以外の事情もありこの話は結局商品化されなかったのですが、これも、結局のところ、保険商品ということで、保険会社が間に入っても税務上の違いが発生せずに源泉徴収が発生したので、事務をどこに任すか、程度の違いにしかならなかったわけですけど、根本的な話として、この辺り、実は投資先の国で源泉徴収された税金の還付がもし出来てしまうと、その取り扱いについては色々と悩ましい話があるのです。

実際、この還付って、例えばこの某米国を例にすると、源泉徴収されてから最短でも9ヶ月、長いと21ヶ月以上掛かるケース(x年の利益に対する源泉徴収が還付されるのがx+1年の9月以降、なのでx年1月の実現利益への課税の還付がどうしても21ヶ月掛かる、のです)が存在するのです。

これを、公募投資信託に当てはめようとすると、このx+1年の9月を迎える前にファンドの償還・清算を行うと、その後随分経って、忘れた頃に還付された資金が来るのでその受け皿すらない、という状態になったり(ま、その受託者がポケットに入れる、というのが実務でしょうけど)、還付前提なので未収利益のとして計上しても分配金でも買い戻し代わり金でもファンドが支払うキャッシュの回収が21ヶ月も先、となると、未払い収益ベースでのファンドの持分の買い戻しや分配金に対応しようにもキャッシュが不足して全額払えない可能性がありえたり(ま、分配金ならば保有するキャッシュを上限にすればいいだけですが、買い戻しですと、例えば全額買い戻しを受けると大変なことに。。。)、といって、実現ベースとして還付されたら利益として計上しようとすると、還付の原因になったx年の資産売却による投資回収の時にいた投資家がx+1年の還付前にファンドから出ていたら還付分を支払えない一方で投資回収後に新規で入った投資家に対して(その投資回収に関係ないのに)還付をファンドの利益の一部として支払うことになるので、投資家間で不公平では、という意見が出るのです。

ま、これはファンドに入った/出たタイミングに依存する以上仕方ないもの、とするのが現在の現実的な取扱なのですが。。。

証券投資信託に話を戻して、まず何が問題になるのか?

さて、この問題、何が問題か、というと、この投資信託に投資した投資家に関する税の取り扱いに最も影響がある、というのがポイントなのですが、いつもこの辺りの正確なところがうやむやだったので、今回、税法を紐解くことにしました。

で、まずわかること:分配金に違いは?

一般的に、(証券)投資信託に投資していると、税金がかかるのは信託からの分配に対する20% (2037年までなら、復興税の影響で 20.315%)が源泉徴収されて掛かる、売却時も譲渡収益の20%(2037年までなら、復興税の影響で 20.315%)の源泉徴収がされているけれども、確定申告をすることで申告分離課税か総合課税のどちらかも選択できる、 という認知がされていると思います。言い換えると、投資信託のポートフォリオの中で発生した個別の譲渡収益に対しては課税がなされず、投資家が投資信託の売却の時点まで譲渡収益が先送りにされている、という税の繰り延べ効果を享受することが出来る、というメリットがある、という説明が多分あちこちでされていると思います。

ちなみに、一般的な投資信託、というと、公社債投信か株式投信との二つに大きく分かれ、公社債投信はその中身が公社債しか入っていない、株式投信は、ポートフォリオの全部が公社債ではないものであればなんでも、要は、株と債券の混ぜ合わせのようなものから、純然たる株式100%のポートフォリオのものに至るまで、ある意味バラエティに富んだ商品、になります。となると、公社債投信の分配の原資は基本公社債の利金から発生したもの(実際には債券の償還差益/売却時と取得時の元本価格の利差も、ですが)なので、個人の所得税の観点で入ればこの投信の分配金は利子所得に該当し、株式投信については債券が入っていても株式という以上株式の配当が源泉になっていると考えて配当所得扱いをする、という違いがあります。

この違いは、というと、源泉徴収対象という意味では同じ、かつ2016年度からは損益通算の対象に入るので上場株や投資信託の損と相殺して源泉徴収を回収する、ということも同じように出来るので、違いが見えづらいのですが、唯一であり大きな違い、といえば、株式投信の分配金は配当所得(所得税法第24条)扱いなので、配当控除の適用があるけれども、公社債投信の分配金は利子所得(所得税法第23条)なので配当控除の適用がない、というところですが

そもそも配当控除ってなに?という人もいると思いますので解説するならば所得税法の第92条にある規定でして、

もともと株式の配当というのは、その会社の法人税を払った後の利益を処分するため、株式の配当に対する税金というのは、法人税と合わせて2回税金がかかっていることになります。そこで、その二重課税を回避すべく、そこそこ複雑な式を使って、その配当にかかる税金の控除をしてもらえる、というのが配当控除、というものです。

ちなみに、配当控除と損益通算はどちらかしか出来ないことになっています。とはいえ、そのような選択肢があるというのが株式投信の分配金のメリットとも言えるかもしれません。

で、この配当所得か、利子所得か、という定義には証券投資信託であるかどうか、の条件が入っておらず、むしろ

利子所得:… 公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託 [著者注:証券投資信託以外の投資信託のうち、信託財産として受け入れた金銭を公社債等(公社債、手形、指名金銭債権(指名債権であつて金銭の支払を目的とするものをいう。)その他の政令で定める資産をいう。] に対して運用するものとして政令で定めるもの)の収益の分配

所得税法第23条

配当所得:投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く。)… の分配 … に係る所得

なので、(特に個人)投資家の観点で見ると証券投資信託であるかどうかが問題ではないといえます。

当然、投資信託の元本相当に当たる部分が返還される時に課税することもありませんから、投資家にとって実は証券投資信託かどうかなんてそんなに問題はないのでは?と思ってしまいますね。

税務は、分配金への課税だけにあらず。なぜなら。。。

先ほど、配当控除の説明の中で、二重課税、という話が出ました。会社の株主から見ると、配当に所得税が掛かり、その前に会社の収益に対して法人税がかかっているのは二重課税だ、と。他方で、ずいぶん前のブログ記事に書いたのですが、ファンドってある意味「投資をする」という事業目的の法人、である、と。とすると、ファンドの器にだって法人税の課税が起こったっておかしくはないですよね。でも、ずっとファンドの器には課税されない、という前提で話をし続けてきました。なぜでしょう。

これもずいぶん前のブログで書いた話ですが、投資において一番のコストとは、運用報酬でなければ、ファンドアドミの報酬でもなく、超過収益に対してかかる税金、なのです。としたら、まずファンドの器が免税なものが投資するのにもっとも適している、から誰もが使う、ということなのです。だからこそ、ケイマン諸島をはじめとするオフショアの投資主体が免税(実際、投資主体を設立、維持するごとに登録免許を3,000ドル程度毎年払う程度だから年間の維持コストとしては受け入れやすい)であることで投資家や運用者を惹きつけるわけです。

で、同様に、国内の投資信託もどれもこれも信託なんだから免税、とつい思いますよね。でも、信託だから免税、というわけではないのです。実は。どういうことか、というと、法人税法第12条によると

信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなして、この法律の規定を適用する。ただし、集団投資信託、退職年金等信託、特定公益信託等又は法人課税信託の信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用については、この限りでない。

法人税法第12条

ということで、一般的には信託の受益者は信託財産に属する資産と負債を自分が直接保有しているのと同じ効果となり、また信託財産から発生した収益や費用は自分が直接得た収益・支払う費用と同じ取り扱いをせねばならない、のです。言い換えると、その年に発生した収益や費用はその年の自分の収益や費用として取り込まねばならない、というのが原則なのです。

あれ、これだとファンドの特徴の一つである、収益の先送り効果がない、ですよね。でも、これをよく読むと、注意があって「ただし」の後に、集団投資信託などの例外があるというのです。で、さらに読み進めると

法人が受託者となる集団投資信託、退職年金等信託又は特定公益信託等の信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用は、当該法人の各事業年度の所得の金額及び各連結事業年度の連結所得の金額の計算上、当該法人の資産及び負債並びに収益及び費用でないものとみなして、この法律の規定を適用する。

法人税法第12条第3項

ということで、受託者の会計でもない、とされています。実は、この二つのお陰で、私たちが一般に見る投資信託が信託勘定で資産を売買した結果の利益に対して課税がされていない、という法的根拠になっています。では、この適用対象となる集団投資信託、とは何か、というと。。。

集団投資信託 次に掲げる信託をいう。
イ 合同運用信託
ロ 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第三項に規定する投資信託(次に掲げるものに限る。)及び外国投資信託
(1) 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第四項に規定する証券投資信託
(2) その受託者(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第一項に規定する委託者指図型投資信託にあつては、委託者)による受益権の募集が、同条第八項に規定する公募により行われ、かつ、主として国内において行われるものとして政令で定めるもの
ハ 特定受益証券発行信託(信託法(平成十八年法律第百八号)第百八十五条第三項(受益証券の発行に関する信託行為の定め)に規定する受益証券発行信託のうち、次に掲げる要件の全てに該当するもの(イに掲げる信託及び次号ハに掲げる信託を除く。)をいう。)
(1) 信託事務の実施につき政令で定める要件に該当するものであることについて政令で定めるところにより税務署長の承認を受けた法人((1)において「承認受託者」という。)が引き受けたものであること(その計算期間開始の日の前日までに、当該承認受託者(当該受益証券発行信託の受託者に就任したことによりその信託事務の引継ぎを受けた承認受託者を含む。)がその承認を取り消された場合及び当該受益証券発行信託の受託者に承認受託者以外の者が就任した場合を除く。)。
(2) 各計算期間終了の時における未分配利益の額として政令で定めるところにより計算した金額のその時における元本の総額に対する割合((3)において「利益留保割合」という。)が政令で定める割合を超えない旨の信託行為における定めがあること。
(3) 各計算期間開始の時において、その時までに到来した利益留保割合の算定の時期として政令で定めるもののいずれにおいてもその算定された利益留保割合が(2)に規定する政令で定める割合を超えていないこと。
(4) その計算期間が一年を超えないこと。
(5) 受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)が存しない信託に該当したことがないこと。

法人税法第2条第29項

でして、これのお陰で証券投資信託だとこの税効果を受けることが出来る、というわけです。でも、これだと証券投資信託以外だとどうなるのかわからないですよね。では、証券投資信託に該当しないとどうなるかを見てみますと。。。

法人課税信託 次に掲げる信託(集団投資信託並びに第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託及び同項第二号に規定する特定公益信託等を除く。)をいう。
イ 受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託
ロ 第十二条第一項に規定する受益者(同条第二項の規定により同条第一項に規定する受益者とみなされる者を含む。)が存しない信託
ハ 法人(公共法人及び公益法人等を除く。)が委託者となる信託(信託財産に属する資産のみを信託するものを除く。)で、次に掲げる要件のいずれかに該当するもの
(1) 当該法人の事業の全部又は重要な一部(その譲渡につき当該法人の会社法(平成十七年法律第八十六号)第四百六十七条第一項(第一号又は第二号に係る部分に限る。)(事業譲渡等の承認等)の株主総会の決議(これに準ずるものを含む。)を要するものに限る。)を信託し、かつ、その信託の効力が生じた時において、当該法人の株主等が取得する受益権のその信託に係る全ての受益権に対する割合が百分の五十を超えるものとして政令で定めるものに該当することが見込まれていたこと(その信託財産に属する金銭以外の資産の種類がおおむね同一である場合として政令で定める場合を除く。)。
(2) その信託の効力が生じた時又はその存続期間(その信託行為において定められた存続期間をいう。(2)において同じ。)の定めの変更の効力が生じた時((2)において「効力発生時等」という。)において当該法人又は当該法人との間に政令で定める特殊の関係のある者((2)及び(3)において「特殊関係者」という。)が受託者であり、かつ、当該効力発生時等において当該効力発生時等以後のその存続期間が二十年を超えるものとされていたこと(当該法人又は当該法人の特殊関係者のいずれもがその受託者でなかつた場合において当該法人又は当該法人の特殊関係者がその受託者に就任することとなり、かつ、その就任の時においてその時以後のその存続期間が二十年を超えるものとされていたときを含むものとし、その信託財産の性質上その信託財産の管理又は処分に長期間を要する場合として政令で定める場合を除く。)。
(3) その信託の効力が生じた時において当該法人又は当該法人の特殊関係者をその受託者と、当該法人の特殊関係者をその受益者とし、かつ、その時において当該特殊関係者に対する収益の分配の割合の変更が可能である場合として政令で定める場合に該当したこと。
ニ 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第三項に規定する投資信託
ホ 資産の流動化に関する法律第二条第十三項に規定する特定目的信託

法人税法第2条第29項の2

ということで、投資信託だけど、集団投資信託ではない投資信託は法人課税信託に該当することが分かります。この時の課税方法はどうなるかというと

法人課税信託の受託者は、各法人課税信託の信託資産等(信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用をいう。以下この章において同じ。)及び固有資産等(法人課税信託の信託資産等以外の資産及び負債並びに収益及び費用をいう。次項において同じ。)ごとに、それぞれ別の者とみなして、この法律(第二条第二十九号の二(定義)、第四条(納税義務者)及び第十二条(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)並びに第六章(納税地)並びに第五編(罰則)を除く。以下この章において同じ。)の規定を適用する。

法人税法第4条の6

ということで、受託者レベル、というか信託勘定の収益と費用計算に基づく課税が行われてしまう、ということになるのです。だから、数年前あたりに、投資信託が投資先がない、もしくは投資資産の急落が予見できるので現金比率を上げた結果50%以上現金となったことで証券投資信託ではなくなるからということで、この課税問題でちょっとした騒ぎになったことがありました。

で、これらを今回の問題に当てはめるとどうなるかというと。。。

まず、証券投資信託でなくなると、法人課税信託になっちゃうから、信託レベルで毎年課税されてしまう、というのが問題、というのが本質、でした。

で、問題は、確かに、法人税法の定義を見る限り、投資対象が一項有価証券であろうが二項有価証券であろうとも外国籍投資信託といえば集団投資信託の一つですので、法人課税信託の対象外と言えるし、受益者会計ベースでの税務対象にならない、ということでなんとなく社長の言っていることがそれっぽく聞こえる、というのが個人的に問題(笑)でも、ちょっと根拠がちゃうやん、とは言いたいぞっ(って、どんだけ負けず嫌いやねん、自分)

ま、自分の言っていたことである、外国籍投資信託による二項有価証券の保有で問題が起こるか、というと、実際のところ外国籍信託のレベルには国税庁の税務追徴は及べない(海外だから!)から法人課税信託の取り扱いは出来ないし、仮に受益者会計を入れられてしまっても現実問題として外国籍投資信託に投資している国内数万人以上の受益者が毎年個別に英文の年次監査報告書を元に税務報告し、その内容を(こっちは株式でこっちはLP持分で、と)証明できて、国税庁サイドがそれらに個別対応して検証できるか、という実務が待ち構えているならば外国籍投資信託は丸っと有価証券でござい(その代わり、国内信託なら国税の代わりにこの辺りの判断をして、必要に応じて税務申告を正しくさせる圧力をかけられるからする、というかしているという前提で税務申告を受ける)とするのが現実的なのかもしれません。

ということで、これって案外商品設計の上で大事な整理だから、公表したらまずかったかな?ま、調べて整理すれば誰でもわかることだからいいか。しかも、誰もこんな風には書いてないけどね(笑)

ちなみに、法人課税信託であってもいくつかの条件を満たすと「課税額を減らすことが出来る」のは、J-REIT などをみているとわかるのですが、これはどこをみたら出てくるでしょう。法人税法ではないんですよねー

ほんと、税法って面倒に作ってありますよねぇ。。。

今さらだけど、日本で金融商品を募集する方法を改めて確認してみる

投資家さんを集めるのってこんなに和気藹々ではないのですが
投資家さんを集めるのってこんなに和気藹々ではないのですが
恥ずかしいことを一つ。
つい最近まで、拡大少人数私募のプロ投資家の人数制限が250人のままだった、と思い込んでいました(苦笑)多分2007年以降にちゃんと拡大少人数私募を立ち上げていた人ならば、突っ込むところがあれこれある知識だと言わざるを得ないのですが、考えてみれば 2007年以降は公募ファンドにしか縁がなかったなぁ、と思うとこんなことになるんですねぇ。ということで、各国の規制、法制度は日々変わっていくのはケイマンとかジャージーを見ているとよくわかるのですが、まさか日本で。。。ということがあったので、物知り顔でちょっとこのあたりの整理をしてみたいと思います。実際、周りのプロな人たちもこのあたりの話が微妙だったことがちらちら見られたので。。。

本来の私募の定義とは

そもそも、拡大少人数私募、って書きましたけど、それってなあに、から始めた方がよさそうですね。とはいえ、「拡大」って言葉がついているので、そもそも拡大されていない「少人数私募」から言えば、49名までに有価証券の募集が可能となる、日本国内での募集方法のこと、というのがざっくりとした説明になるかと思います(法律に即した表現は後半で。。。)。

よく縁故債とか言われますが、例えば身内だけでお金を集めてビジネスをやろう、というときに、その資金調達方法に上場株式や公募投信のような高度な規制と要件を求めると無駄な時間と労力がかかりますし、投資先の内容とかリスクとか(リスクは微妙か。。。)は分かっているよね?身内とか近しい人とか、少人数だから別途膝を交えて話してるよね?という前提のもとで、募集のための法的要請を減らしましょう、という制度が「私募」の中でも「少人数私募」の意図するところ、のようです。

気づいたら2007年までの世界では

で、これを「拡大」しよう、というのは、投資を生業としているような人と、普通の人とを分けて考えたときに、普通な人はもし何かあった時の影響を49人に留められるならば良しとするけれども、投資を生業としている人ならば、リスクとかよく理解できるわけだから公募投信ほどの保護をする必要もないので、普通な人を横において、それなりの人数まで投資できるようにしてあげるのもいいのでは、と考えたと思われる結果、投資を生業としている「適格機関投資家」は 250人まで、普通な人、言い換えると「適格機関投資家ではない人」は 49人まで、それぞれ投資できるように「少人数私募」を「拡大」しよう、としたのが、この「拡大少人数私募」という制度「でした」。

そうなんで、調べたら「でした」になっていたのです。しかもなんと2007年に証券取引法が金融商品取引法に変更されたタイミングで。。。

今時の世界では

では、今現在、金融商品取引法上はどうなっているか、というと、該当する第2条3項を丸ごと引用するならば。。。

この法律において、「有価証券の募集」とは、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘(これに類するものとして内閣府令で定めるもの(次項において「取得勧誘類似行為」という。)を含む。以下「取得勧誘」という。)のうち、当該取得勧誘が第一項に掲げる有価証券又は前項の規定により有価証券とみなされる有価証券表示権利若しくは特定電子記録債権(次項及び第六項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第一項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第一号及び第二号に掲げる場合、当該取得勧誘が前項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利(次項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第二項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第三号に掲げる場合に該当するものをいい、「有価証券の私募」とは、取得勧誘であつて有価証券の募集に該当しないものをいう。

 多数の者(適格機関投資家(有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者をいう。以下同じ。)が含まれる場合であつて、当該有価証券がその取得者である適格機関投資家から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)を相手方として行う場合として政令で定める場合(特定投資家のみを相手方とする場合を除く。)
 前号に掲げる場合のほか、次に掲げる場合のいずれにも該当しない場合
 適格機関投資家のみを相手方として行う場合であつて、当該有価証券がその取得者から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合
 特定投資家のみを相手方として行う場合であつて、次に掲げる要件のすべてに該当するとき(イに掲げる場合を除く。)。
(1) 当該取得勧誘の相手方が国、日本銀行及び適格機関投資家以外の者である場合にあつては、金融商品取引業者等(第三十四条に規定する金融商品取引業者等をいう。次項、第四条第一項第四号及び第三項、第二十七条の三十二の二並びに第二十七条の三十四の二において同じ。)が顧客からの委託により又は自己のために当該取得勧誘を行うこと。
(2) 当該有価証券がその取得者から特定投資家等(特定投資家又は非居住者(外国為替及び外国貿易法 (昭和二十四年法律第二百二十八号)第六条第一項第六号に規定する非居住者をいい、政令で定める者に限る。)をいう。以下同じ。)以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当すること。
 前号に掲げる場合並びにイ及びロに掲げる場合以外の場合(当該有価証券と種類を同じくする有価証券の発行及び勧誘の状況等を勘案して政令で定める要件に該当する場合を除く。)であつて、当該有価証券が多数の者に所有されるおそれが少ないものとして政令で定める場合
 その取得勧誘に応じることにより相当程度多数の者が当該取得勧誘に係る有価証券を所有することとなる場合として政令で定める場合

普通は、なんのこっちゃ、ですよね。特に金融商品取引法はいろいろなことの積み上げで出来ているので仕方ないと言えば仕方ない、ですが。。。でも、読み解かないといけないので、やりましょう。

条文を読み解いていく

まず、最初。のっけから長いですが、バラしながら読むと。。。

「有価証券の募集」とは、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘(これに類するものとして内閣府令で定めるもの(次項において「取得勧誘類似行為」という。)を含む。以下「取得勧誘」という。)のうち、

  • 当該取得勧誘が第一項に掲げる有価証券又は前項の規定により有価証券とみなされる有価証券表示権利若しくは特定電子記録債権(次項及び第六項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第一項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第一号及び第二号に掲げる場合、
  • 当該取得勧誘が前項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利(次項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第二項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第三号に掲げる場合

に該当するものをいい、

「有価証券の私募」とは、取得勧誘であつて有価証券の募集に該当しないものをいう。

。。。とりあえず、有価証券の募集に当たらない取得勧誘行為をすると、私たちが先ほど古い考え方で検討した私募に当たる、ということがわかります。じゃあ、有価証券の募集って何よ、となるわけですが、まず

新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘

ということなので、既に発行されている有価証券の譲渡による取得(セカンダリーマーケットでの売買)は含まれない、ということですね。まぁ、ファンドの場合(例外を除くと)通常、ファンドに持ち分を新規で発行してもらうことで取得しますので、継続的に募集なり私募なりしていることになるわけです。で、そんな勧誘行為もろもろをひっくるめて「取得勧誘」と呼ぶそうですが、その中でもある条件だと、引用の後段にあった第一号と第二号に当たる場合、もう一つの条件だと第三号に当たる場合、だと募集に当たってしまう、らしい。じゃあ、それぞれの条件とは何か、というと、最初の方は

第一項に掲げる有価証券又は前項の規定により有価証券とみなされる有価証券表示権利若しくは特定電子記録債権(次項及び第六項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第一項有価証券」という。)

と、この商売をやっている人が時々使いますね、第一項有価証券。いわゆる金融商品取引業者の中でも上場株式とか国債とか、社債とか、投信とか、リース債権流動化商品とか、あと、このあたりが、券面不発行で投資家の管理が電子化されているもの、あたりの、いわゆる流動性の高い有価証券を扱える第一種の取引業者さん達が扱えるもの、をひっくるめていうのですが、その時には第一号と第二号を参照、らしい。じゃあ、その第一号とは何か、というと

 多数の者(適格機関投資家(有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者をいう。以下同じ。)が含まれる場合であつて、当該有価証券がその取得者である適格機関投資家から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)を相手方として行う場合として政令で定める場合(特定投資家のみを相手方とする場合を除く。)

ふむふむ。多数の者、という定義がどこかでされるのですが、それは調べるとして、その多数の者を相手方として取得勧誘する場合として「政令で定める場合」、ただし、

(適格機関投資家(有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者をいう。以下同じ。)が含まれる場合であつて、当該有価証券がその取得者である適格機関投資家から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)

ということは、多数の者に適格機関投資家はカウントしないのね。あと、

(特定投資家のみを相手方とする場合を除く。)

とあるから、特定投資家という人たちのみを相手にする場合も外れるということなのね。というのがわかります。となると、じゃあ、「多数の者」に対する取得勧誘で「政令で定める場合」を見る必要があるのですが、それぞれまた、引用するなら実は一つでまとまっていて

(金融商品取引法施行令)第一条の五法第二条第三項第一号に規定する多数の者を相手方として行う場合として政令で定める場合は、五十名以上の者を相手方として有価証券の取得勧誘を行う場合とする。

なのです。ん?50人以上?だから私募は49人まで、という数字が出てくるんですね。ということは、50人以上への取得勧誘を行う場合が募集に当たる、49人まで(ただし適格機関投資家の数は含まない)は募集ではなくて私募、というようなイメージが出てきます。ん?募集、って公募、だよね。。。でも、第二号も読まないといけない。なんだっけ。。。

 前号に掲げる場合のほか、次に掲げる場合のいずれにも該当しない場合
 適格機関投資家のみを相手方として行う場合であつて、当該有価証券がその取得者から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合
 特定投資家のみを相手方として行う場合であつて、次に掲げる要件のすべてに該当するとき(イに掲げる場合を除く。)。
(1) 当該取得勧誘の相手方が国、日本銀行及び適格機関投資家以外の者である場合にあつては、金融商品取引業者等(第三十四条に規定する金融商品取引業者等をいう。次項、第四条第一項第四号及び第三項、第二十七条の三十二の二並びに第二十七条の三十四の二において同じ。)が顧客からの委託により又は自己のために当該取得勧誘を行うこと。
(2) 当該有価証券がその取得者から特定投資家等(特定投資家又は非居住者(外国為替及び外国貿易法 (昭和二十四年法律第二百二十八号)第六条第一項第六号に規定する非居住者をいい、政令で定める者に限る。)をいう。以下同じ。)以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当すること。
 前号に掲げる場合並びにイ及びロに掲げる場合以外の場合(当該有価証券と種類を同じくする有価証券の発行及び勧誘の状況等を勘案して政令で定める要件に該当する場合を除く。)であつて、当該有価証券が多数の者に所有されるおそれが少ないものとして政令で定める場合

。。。長い。しかもいろいろなケースがある。。。バラすか。とりあえず、

前号に掲げる場合のほか、次に掲げる場合のいずれにも該当しない場合

いろいろなケースがあるけど、前号に該当しないで、かつそれに当たらない場合が募集で、当たっちゃうと私募になるなのね。って何があるのやら。。。まず

 適格機関投資家のみを相手方として行う場合であつて、当該有価証券がその取得者から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合

ん?適格機関投資家にのみ相手方とするし、仮に有価証券が譲渡されるとしても適格機関投資家にのみ譲渡されるような仕組みであれば、募集/公募に該当しない、のか。って、これ、いわゆるプロ私募 (QII-only) じゃない。次は。。。

 特定投資家のみを相手方として行う場合であつて、次に掲げる要件のすべてに該当するとき(イに掲げる場合を除く。)。
(1) 当該取得勧誘の相手方が国、日本銀行及び適格機関投資家以外の者である場合にあつては、金融商品取引業者等(第三十四条に規定する金融商品取引業者等をいう。次項、第四条第一項第四号及び第三項、第二十七条の三十二の二並びに第二十七条の三十四の二において同じ。)が顧客からの委託により又は自己のために当該取得勧誘を行うこと。
(2) 当該有価証券がその取得者から特定投資家等(特定投資家又は非居住者(外国為替及び外国貿易法 (昭和二十四年法律第二百二十八号)第六条第一項第六号に規定する非居住者をいい、政令で定める者に限る。)をいう。以下同じ。)以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当すること。

って、そもそも、特定投資家って、さっきから出てきてるけど、なんだっけ。。。また引用すると結構面倒なので、金融庁のホームページでまとめたものがあるから見ていただきたいのですが。。。適格機関投資家のようなプロから個人でもかなりの金融資産と証券投資の経験の多い人から、結構幅が広い人を対象にしてますね。で、そんな、ある意味裾野の広い「プロ」達の間でだけ流通するような仕組みがあって、かつ一般投資家(アマチュア)になりたくてもなれない人以外に対する取得勧誘行為が証券会社の立場で言うなら相手からのリクエストによるものもしくは「自己のために取得勧誘を行う」って自社の証券の勧誘の場合ということ、なんでしょうねぇ、という条件を満たすと、これも募集/公募に該当しないのか。適格機関投資家の場合に比べてちょっと制限がありますよねぇ。

なんて、思っていたら、実は、この特定投資家向けですが、参照条文等の詳細をちょっと割愛するのですが、投資家への告知義務が金融商品取引法とそれが参照する特定有価証券開示府令、そして、それがさらに参照する金商法の発行体情報の提供と公示のルールを決めていて、って、実はその決めているのが「証券情報等の提供または公示に関する内閣府令」にさらに参照が飛んで、結果、何を言っているかというと、東京証券取引所のプロ向け市場(旧 Tokyo AIM / 現 Tokyo PRO Market)に上場しているものだけが該当する、という仕組みになっているのです。ということは。。。特定投資家向け私募の仕組みってのはこのプロ向け市場のためだけにある、ということなのですねぇ。

ということで、あと一つ、条件が残ってましたね。

 前号に掲げる場合並びにイ及びロに掲げる場合以外の場合(当該有価証券と種類を同じくする有価証券の発行及び勧誘の状況等を勘案して政令で定める要件に該当する場合を除く。)であつて、当該有価証券が多数の者に所有されるおそれが少ないものとして政令で定める場合

って、また政令にお伺いしなければならない。最初の政令で定める要件って何かというと、例の施行令でして。。。

第一条の六法第二条第三項第二号 ハに規定する政令で定める要件は、当該有価証券の発行される日以前六月以内に、当該有価証券と同一種類の有価証券として内閣府令で定める他の有価証券(その発行の際にその取得勧誘が同号イに掲げる場合及び第二条の十二に規定する場合に該当するものであつた有価証券並びにその発行の際にその取得勧誘が有価証券の募集に該当し、かつ、当該有価証券の募集に関し法第四条第一項 の規定による届出又は法第二十三条の八第一項法第二十七条 において準用する場合を含む。)に規定する発行登録追補書類の提出が行われた有価証券を除く。以下この条において「同種の新規発行証券」という。)が発行されており、当該有価証券の取得勧誘を行う相手方(当該有価証券の取得勧誘を行う相手方が適格機関投資家であつて、当該有価証券が第一条の四に定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)の人数と当該六月以内に発行された同種の新規発行証券の取得勧誘を行つた相手方(当該同種の新規発行証券の取得勧誘を行つた相手方が適格機関投資家であつて、当該同種の新規発行証券が第一条の四に定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)の人数との合計が五十名以上となることとする。

長いので要約すると、新規募集のはずだけど同種の有価証券を過去6か月以内に発行していて(同種の新規発行証券って、やつね)、この過去のものと今回のものの取得勧誘相手が合計50人以上になる場合(ただし、イケメンは除く適格機関投資家は除く)、ということらしい。ということは、仮に同種の新規発行証券であっても、6か月以上間が空けば許してもらえるか、というと。。。次の政令のお言葉を聞くならば。。。(これも長いんだよねぇ。。。)

第一条の七法第二条第三項第二号 ハに規定する政令で定める場合は、次に掲げる全ての要件に該当する場合とする。
 当該取得勧誘が特定投資家(法第二条第三十一項 に規定する特定投資家をいう。以下同じ。)のみを相手方とし、かつ、五十名以上の者(当該者が適格機関投資家であつて、当該取得勧誘に係る有価証券が第一条の四に定める場合に該当するときは、当該者を除く。)を相手方として行う場合でないこと。
 次のイからハまでに掲げる有価証券の区分に応じ、当該イからハまでに定める要件に該当すること。
 株券等 次に掲げる全ての要件に該当すること。
(1) 当該株券等の発行者が、当該株券等と同一の内容(株式(優先出資法 に規定する優先出資及び資産流動化法 に規定する優先出資を含む。)若しくは出資に係る剰余金の配当、残余財産の分配、利益を用いて行う出資の消却又は優先出資法第十五条第一項 (第二号に係る部分に限る。)の規定による優先出資の消却についての内容に限る。)を表示した株券等であつて法第二十四条第一項 各号(法第二十七条 において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するものを既に発行している者でないこと。
(2) 当該株券等と同一種類の有価証券として内閣府令で定めるものが特定投資家向け有価証券でないこと。
 新株予約権証券等 次に掲げる全ての要件に該当すること。
(1) 当該新株予約権証券等に表示された権利の行使により取得され、引き受けられ、又は転換されることとなる株券の発行者並びに当該株券、新株予約権証券及び新投資口予約権証券がそれぞれイ(1)及び(2)に掲げる要件に該当すること。
(2) 当該新株予約権証券等(新株予約権証券及び新投資口予約権証券を除く。以下ロにおいて同じ。)の発行者が、当該新株予約権証券等と同一種類の有価証券として内閣府令で定めるものであつて法第二十四条第一項 各号(法第二十七条 において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するものを既に発行している者でないこと。
(3) 当該新株予約権証券等と同一種類の有価証券として内閣府令で定めるものが特定投資家向け有価証券でないこと。
(4) 当該新株予約権証券等(当該新株予約権証券等が新優先出資引受権付特定社債券である場合であつて、特定社債券と分離して新優先出資引受権のみを譲渡することができるときは、当該特定社債券及びこれとともに発行される新優先出資引受権証券)に、内閣府令で定める方式に従い、これを取得し、又は買い付けた者(当該者が適格機関投資家であつて、当該新株予約権証券等が第一条の四に定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)が当該新株予約権証券等を一括して他の一の者に譲渡する場合以外の譲渡が禁止される旨の制限が付されていることその他これに準ずるものとして内閣府令で定める要件に該当すること。
 イ及びロに掲げる有価証券以外の有価証券 次に掲げる全ての要件に該当すること。
(1) 当該有価証券の発行者が、当該有価証券と同一種類の有価証券として内閣府令で定めるものであつて法第二十四条第一項 各号(法第二十七条 において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するものを既に発行している者でないこと。
(2) 当該有価証券と同一種類の有価証券として内閣府令で定めるものが特定投資家向け有価証券でないこと。
(3) ロに準じて内閣府令で定める要件に該当すること。

。。。長すぎる。。。面倒だから要約すると

  1. 特定投資家向けであって、かつ適格機関投資家以外の特定投資家が50人未満であること
  2. 株と新株予約権証券等は対象外

なので飛ばして、、のそれ以外にある、投資信託とかについては、発行体が金商法第24条第1項各号に該当するものを発行していないこと、特定投資家向けでないこと、などなど、って感じで、金商法第24条第1項各号はというと

 金融商品取引所に上場されている有価証券(特定上場有価証券を除く。)
 流通状況が前号に掲げる有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券(流通状況が特定上場有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券を除く。)
 その募集又は売出しにつき第四条第一項本文、第二項本文若しくは第三項本文又は第二十三条の八第一項本文若しくは第二項の規定の適用を受けた有価証券(前二号に掲げるものを除く。)
 当該会社が発行する有価証券(株券、第二条第二項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等その他の政令で定める有価証券に限る。)で、当該事業年度又は当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度のいずれかの末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上(当該有価証券が同項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等である場合にあつては、当該事業年度の末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上)であるもの(前三号に掲げるものを除く。)

なので、まぁ、上場有価証券とそれに類するもの、というイメージでしょうか。書いていてだんだん面倒なのが読み取って頂けると思うのですが。。。

ざっくり言えば、適格機関投資家向け私募、特定投資家向け私募(ただし Tokyo PRO Market だけ)、あと適格機関投資家出ない人が49人まで(適格機関投資家の数はカウントしない)私募、以外は公募になる、と思った方がよい、ということのようです。

ん?そうなると、いわゆる少人数私募と拡大少人数私募の境目がなくなり、かつ適格機関投資家の数は制限なし、ということになっていた、のですね。あら。

そうすると、適格機関投資家向け私募と、私募との違いはプロじゃない人が49人入るのかどうか、でしかない、のだから、適格機関投資家向け私募っていらないんじゃないの?という気分になりますよね。でも、ファンドの観点から言うと、残しておきたいんですよねぇ。投信法の都合上、適格機関投資家向け私募だと運用報告書の交付が不要という取り扱いが出来るので。。。

ということで、綺麗に整理がついたかな?

ん?何か一つ忘れてないか?

あ、あれだ。。。

  • 当該取得勧誘が前項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利(次項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第二項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第三号に掲げる場合

そう、第二項有価証券のときのお話。何が入るかというと、引用すると面倒なのでまとめると、信託受益権、合同会社の社員権(持ち分みたいなもの)、匿名組合や投資有限責任組合の投資持ち分、というところ。これらは流動性が低いので、第二種金融商品取引業者が取り扱える、という仕切りにもなっていますが、これらについては、第三号の場合、って。。。これか。

 その取得勧誘に応じることにより相当程度多数の者が当該取得勧誘に係る有価証券を所有することとなる場合として政令で定める場合

て、また政令のお告げ。じゃあ、また施行令から引用するなら

第一条の七の二  法第二条第三項第三号 に規定する政令で定める場合は、その取得勧誘に係る有価証券を五百名以上の者が所有することとなる取得勧誘を行う場合とする。

そう、投資有限責任組合とか匿名組合だと、49人縛りじゃなくて 499人縛り。いいのか?

実際、これと、金融商品取引法第63条の適格機関投資家向け特例業務の規定を組み合わせることで、

適格機関投資家を一人入れれば、運用等のライセンスを持たなくとも匿名組合や投資有限責任組合を運用し、合計499名までの(個人)投資家を入れることが可能になる

ことになるので、詐欺行為の温床になる、と消費者団体からは突き上げをくらい、とはいえ、ベンチャーキャピタル投資業界からは、それがなくなったり個人投資家に対する保有資産等の条件がつくとベンチャーキャピタル投資をする個人投資家がいなくなるので困る、という痛しかゆしの状況が出来てしまっているのです。

ということで、いろいろとなかなか難しい話ですが、いろいろなケースを想定しながら法律を作るのも大変なんだろうなぁ、おかげで読むほうが大変なんだけど、という話の結論でしょうか。。。

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