「SWIFT の闇」ってほんと? – お金が国境を超える仕掛けを改めて考える

ちょっと告知、なのですが、 Soldie という金融を分かりやすく説明するニュース・コラム・サイトに寄稿させて頂くことになりました。といって、私が書けることと言えば、「オフショア」金融の話ですので、そのあたりをあれこれ怪しげに書く予定ではあるのですが、これがなかなかチャレンジングなものでして、まずこのサイトの対象がミドルエイジ男性で、目指すことが金融リテラシーを多くの人に、ということなので、当ブログに来るだろう金融に籍を置いて狙ってググった人か、ニュースでわからない「オフショア」とかいう怪しい単語が出たからググったら(運悪く)来ちゃった人か、と言えばどちらかと言えば後者の、金融知識の比較的浅い人向けです。ということは、

「わかってるよね?どれくらい知ってる?まじかぁ(JK風に)じゃあその辺は省きつつも。。。これはね(かくかくしかじかだらだら続く)」

という、金融の知識と私の性格をある程度知ってるだろうことを前提に、無駄な情報てんこ盛りに文字数無制限で、読む人が「これ、いつ終わるの?」、と変な不安を感じさせるかの如く書いている当ブログの性質と真逆の、2,000文字程度、簡潔に分かりやすい言葉でまとめるようにして(無駄なくというより個性を入れる余裕もなく)説明しなければならない、のです。

となると、本来個人的には書きたいと思うことも書ききれず、個性を発揮することもなので。。。すみません、ここでは個人的欲求を発散してもいいですか(笑)

「SWIFTの闇」とは?

橘玲という作家さんがいて、オフショア投資とかマネロンだとかそういうのをあれこれ勉強して書いている方がいます。私も一時期読んでいた時期もありましたが、自分でそこに書かれたことをやってみたりしているうちに読むこともなくなった、のですが、その彼の本の一つ、たしかお金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめの中で、自分がオフショアのとある口座に送金しようとしたら途中で誰にもお金のありかが分からなくなった、ということをして「SWIFTの闇」と称したのを思い出したのです。曰く、オフショアのプライベートバンクの口座は別のオフショアの銀行の下にぶら下がっていて、さらにそのオフショアの銀行は別のオンショアの銀行にぶら下がり、そのオンショアの銀行がやっと大手銀行にぶら下がるから、入れ子の状態になっているため、送金情報のチェーンがどこかで切れると届かなくなる、というのです。2017年の世界ならばブロックチェーンを使って取引情報の監査をしつつ仲介するものを排除しながら送金すればいいじゃないか、とでも言いそうな話ではありますが、銀行には銀行伝統の方法があるので。。。

しかし、そもそものお金の流れを考えるとこの銀行口座の多段構造と呼ばれるものの理由と、性質を理解することが出来、くだんの送金中の消失問題を解決する方法論も見えてくる(というか、そうやってこの10年以上ファンドの買い付けや償還資金に関連する問題を(信託を含めた)銀行員や証券会社員よりも多く解決してきた、というか、言っちゃなんですが海外送金をちゃんと理解する金融マンは残念ながら多くはなく、お金が届かない、とクレームすれば仕事に足りるほうが多い – 文句ある人、いつでもどーぞ、な)のです。

お金を動かす – 何が必要?

本来、送金業務とは為替、と呼ばれていました。今では外国為替という言葉と、それが円を売って米ドルを買う、という意味に理解されることの方が多いのですが、法律あたりを見てもらうと分かる通り、為替とは本来、「現金を授受する代わりに、手形、小切手、証書のようなものを使って金銭のやり取りをすること、またはそれに使われる手形などの総称」とググると出てきます。その意味において、最近で一番身近に使える為替というと、郵便小為替、でしょうか。

送金の一番の基本 – 為替での決済

この図のように、郵便小為替を郵便局で買って、相手に郵送すると、相手が郵便局に小為替を持ち込むと郵便局が小為替にある金額を渡してくれる、というものです。ある意味、郵便局が小為替の裏付けとなる資金を預かって(郵便局の全国に広がるネットワークによって)どこに持ち込んでも預かった資金を引き渡す約束をしているのが小為替、と理解することが出来ます。

でも、これってPaypal と一緒じゃない?Paypal にお金を預けて、それをメールで送るよ、と相手に連絡したら、相手がPaypal に口座を開けて初めてその送金すると言われた金額を引き出せるようし

いやいや、Amazon ギフトを買ってコードをメールで相手に教えることで事実上個人間の資金決済ができるじゃない?

仰る通り。Paypal や今だと Line Pay などの私人間の送金の仕組みは郵便小為替を置き換えたもの、と見ることが出来ますし、その事業者は送金目的だけのために預かっている、という意味で資金決済法にある資金移動業を行っている、ということが出来ますし、それが整備されるまでは銀行法に基づく銀行業の一つ、として扱われていました。また、プリペイドカードも、郵便小為替と同じような証書として使える訳です(ので、ギフトコードの詐欺も多発するからブロックチェーンで多重譲渡を回避する、みたいな話にも展開しかねない話なのです)から、前払式支払い手段ということでこちらも資金決済法に定められたものになっているのです。

いずれにせよ、送金の時に、あとはこの資金移動業者に事実上資金を預けることになるのを理解して任せられるかどうか、(回収した後にどこまで自分で自由に使える資金になるのか、それともLine スタンプに化ける以外ない、という流動性の低いものになるのか?)を判断すべき、なんていうと金融の人は信用リスクだとか(私は格付け会社が嫌いなので信用しませんが、とはいえ一般的には)格付けがどうだとか、色々とうるさいねぇ、と言われる話に突入するのです。

今ならスマホやオンラインバンキングを使って送金できるじゃない? – 銀行の提供する決済手段

さて、資金決済をみんな揃って為替で済めばいいのですが、そうなるとこの記事もここで終わりとなるので、ある意味書いている私が困るものの、それ以上に為替を物理的に紛失したときのリスクが受け取り側にあるのを嫌うこともあるし、一般的には郵便局もゆうちょ銀行になったことも含めて、銀行を使った送金システムを使うことになります。でも、今や円で送金しようとすると、平日の午前9時から午後3時までなら瞬時に送金できちゃうし、同じ銀行内なら24時間いつでも、というところが散見されているし、みんなそういうものだと思ってますよね。でも、ちゃんとこの仕組みを理解しておかないと米ドル送金の問題とかわからなくなるのでちょっとうざいですがステップワイズに説明していこうと思います。

銀行送金の基礎の基礎

まず、同じA銀行で同じX支店に口座を持っている二人が送金する場合、絵的にはこんな感じ。支店さんの事務 – Aさんの残高を減らしてBさんの口座を増やす – ことで送金手続き完了。そうなのです。銀行内では残高を付け替えるだけなので銀行としては預金総額では一緒であり将来の支払い債務総額(=口座残高の合計額)では一緒、という話なのです。だから口座の付け替えだけの手間なので手数料が表を見ると一番安いのです(笑)

ここでいくつか注意したいことがあります。まずは、あまり気にならない話ではあるのですが、銀行にとって私たちの口座残高は債務で、預けた資金は資産になります。一般的な会計と異なるのでたまに間違いそうになるのですが銀行からみるとそうなのです。となると、債務に対しては資産の裏付けが必要になる、のですが、Bさんへの支払いの裏付けは送金指示かそれ以前にAさんから現金を受け取っているかそのほかの人からの送金を受けている結果としての残高として確認しているのでそれ以上はいらないのです。また、Bさんからすれば残高が増えているので、小為替を好きな時に換金できるのと同じように好きな時に現金を引き出せばいいだけなのです。実はこの先の議論で、この資産の裏付け、というのがキーワードになるのでここは(大学受験の勉強と同じく)押さえておきましょう。

銀行内の応用編 – でも、これが分からないと世界はおろか日本に行けない

続いて、同じA銀行だけど別の支店に口座を持っている場合。絵を見ると、AさんのX支店と BさんのY支店の間に本店が挟まっています。なぜでしょう。幾つか複雑な理由が存在します。

まず、X支店では、Aさんの口座残高を減らすことは出来ても、Y支店にあるBさんの口座を直接触ることが出来ません。そうすると、間に何かを挟むことになるのですが、一番手っ取り早いのは前述の同じ支店での口座間の送金と同じように、X支店にY支店の口座を作って、その残高を増やし、「Y支店さん、そちらの残高を増やしたけど、それはBさんへの送金の依頼に基づいてだから、Bさんの残高を増やしてあげてね」という連絡をしてあげて、それを受けてY支店は額の増えているX支店にある自分の口座に相当するだけのBさんの口座残高を増やすことになります。

ここで、ちょっと頭が混乱しそうですね。X支店がY支店の口座を増やすところまでは先ほどの話と似ているからいいかもしれません。でも、それを受けてY支店は何かを減らすわけではなく増やしてますよね。これは、Y支店からすると自分のX支店の口座は資産ですので、資産が増えた=支払いの裏付けが増えたけど、これなんでだっけ?ああ、送金指図でBさんの口座残高が増えたから、なのね、とBさんの口座を増やす(=Y支店の債務も増える)ことで送金完了、となる、のです。

さて、送金がこの一件だけならば、いいのかもしれませんが、そもそも、この銀行がX支店とY支店しかなくて、Y支店がX支店に口座を開けている、から出来るものの、このような一方向な話で銀行業務が済みそうでしょうか。このままでは永遠にX支店にあるY支店口座は膨れ上がっていきそうですし、仮にY支店のCさんがX支店のDさんに送金する、となれば今の逆方向である、Y支店にX支店の口座を作ってCさんの口座残高を減らしてX支店の口座の残高を増やして。。。ということが起きることになります。でも、そうなるとY支店のX支店口座も同じように一方向で膨れ上がりそうです。となると、膨れ上がるのを嫌って、互いが互いにいちいち債権債務を相殺する、なんて手間ですよね。

しかも、今は2支店だけの話ですが、これが全国100店舗、となったら、X支店は99店舗の口座を開けて、毎日相殺を99店舗とすることになり、また送金指示という意味でもP2Pのセッションが銀行内で99+98+…+1 の5000本が必要となる、ということは送金情報が同じ銀行内であちこちにかなり錯綜することになってしまいます。

そこで、実際にどうするかというと、それぞれの支店は本店に口座を開けておき、Aさんの残高を減らして本店の残高を増やしたのち、

  1. 本店に「送金依頼に基づき、X支店の残高を減らしてBさんの口座のあるY支店の残高を増やしてください」と、
  2. Y支店には「本店のY支店の口座の残高を増やすのでBさんの口座の残高を増やしてください」、という指示を

それぞれにします。そうすることで、

  • X支店は、本店にあるX支店の口座の残高(資産ですね)が減ると同時にX支店にある本店の口座残高を増やし、また同額だけAさんの口座残高が減ります。(ただし、X支店の現金はこの瞬間は動きません。)
  • Y支店は、本店の口座残高が増えたのを見て、同額だけY支店の本店口座の残高を減らすと同時にBさんの口座残高を増やします。(Y支店でBさんが引き出さない限りはY支店の現金は動きません。)
  • 本店は、前述の同一支店内の送金と同じく、X支店の口座残高を減らし、Y支店の口座残高を増やします。(こちらも、本店の現金は動きません。)

こうすると、前述のP2Pのようなセッションが発生することなく(むしろ本支店間のハブアンドスポーク型というか、ツリー型の情報伝達構造になる)、また相殺とか日々せずとも、管理が可能になりそうですね。実際は、システム上銀行全体で口座/勘定を管理しているので、支店間の通知とか実際に起きていないでしょうけど、第X次オンラインシステム導入前の前時代的に情報と資金との移動をみるならば、というところでは、上記が分かりやすい、ということで書いてみました。ちなみに、各支店にある本店口座を今時ですと銀行勘定と呼ぶこともあります。

今後の話の展開として、キーになるところを押さえたいと思います。一つは資金がどこにあるか、もう一つが送金の情報のルートです。

資金の裏付けという観点でみると、現金の移動はこの一連の流れでは起きていませんよね。銀行全体、という観点で裏付け資産であるAさんからの現金がX支店に置きっぱなしなのでオッケー、と考えるのです。Y支店単体で見ると、そこには対応する現金の準備がないまま、引き出される可能性がある、ということですが、預金量に対する物理的な現金の準備というのは別途管理するので、大丈夫でしょう(今どきは他行のATMで引き出したりするので現金の保有管理はさらに難しい問題になっているとは思いますが)、というか、ここでは別の問題ということにして気にしないでおきましょう(笑)

そして情報のルートについては、上記で番号付けした、

  1. X支店とY支店の残高を管理する本店への付け替えの指示、と
  2. Y支店の口座を増やした理由がBさんへの振り込み、というY支店への指示

の二つの指示が飛ぶ、ということです。これが世界規模になっても、実は同じ構造になっていることに、後ほど触れる予定ですので覚えておいてくださいね。

日本国内で円はどうやって送金されるのか?

ということで、次に銀行間を跨いで送金がされる、一般的な送金のメカニズムを見てましょう。絵を見ると分かりますが、銀行の本支店が二組あって、それに挟まれるようにあるのが日本銀行、そして矢印で円を描いているのが送金データのやり取りをする、全銀ネット(全国銀行資金決済ネットワーク)の全国銀行データ通信システム(全銀システム)です。

実際にP銀行 X支店のAさんの口座から Q銀行Y支店のBさんの口座に送金をする、と言う時に、何が起こるかというと、

  1. AさんがP銀行X支店に送金指示を出す。
  2. 送金指示を受けて、P銀行はX支店にあるAさんの口座残高を減らして、本店にある銀行勘定を増やします
  3. 送金指示は全銀システムを通じてQ銀行に送られます。
  4. 送金指示を受けて、Q銀行は本店にある銀行勘定を減らしてY支店にあるBさんの口座を増やします。
  5. 全銀システムは一日の送金情報を集計して、この取引による日本銀行にあるP銀行の当座預金を減らしてQ銀行の当座預金を増やすことを含めたすべての取引の集計結果の残高の増減を午後4時15分の決算尻と呼ばれるタイミングで行います。

実際、送金が1億円を超える場合にはRTGS(RealTime Gross Settlement:即時グロス決済)と呼ばれる、送金手続きをした瞬間に5の日本銀行の当座預金の付け替えを行うのですが、それより少ない場合にはその日の終わりまで事実上Q銀行は送金のための資金を受け取れないことにはなっています。が、そこは最長8時間ということと、1億円未満と少額(?)であることや、同種の送金が他にもたくさんあるため、P銀行とQ銀行の間で相殺されることもあるので、決済リスク – 支払いの担保となる資金が手元にない – ということで実務上飲み込んでいる、というのが現実なのですが、私たちが通常、平日の昼間にお金が振り込まれた、というのがだいたいリアルタイムに送金されたように感じるのはこのお陰、なのです。

ここでポイントなのが前述のように、資金の担保が同じ銀行ならば支店網のどこかにあればよかったのが銀行を跨いだ時には、その日1日の送金情報をまとめて、結果として相殺された状態ではあるものの、日本銀行にある全国の銀行の名義の当座預金残高の間の付け替えの形で見ることになる、ということと、送金指示の情報が、全銀システムでの、(a)資金移動の情報と、(b)送金先のQ銀行への送金詳細の情報、の二つになる、というところに、同じ銀行の支店間取引との類似性と相違点がみられる、というところです。

さて、今までの話は、実は日本に住んでいる人の間の銀行口座間の円の資金の送金方法についてでした。と、なぜこんなに回りくどく言っているか、というと、実はいわゆる普通の私たちのように日本に住む人の銀行口座から(例えばケイマン諸島のファンドでも、台湾の保険に加入するための口座でも、スイスにあるあなたの隠し資産を管理する(笑)口座でもいいのですが)海外にある円口座に送金をしたり、海外にある円口座の間での送金をする、と言ったように、日本に住んでいない、非居住者に保有する円を送金するときには、前述の全銀システムとは異なる送金システムを使うことで、国内にある円と国外にある円の流れを区別されるのです。

とはいえ、実際の資金と情報の流れは前述の全銀システムで送金情報を管理し、日本銀行の当座預金間の付け替えで銀行間の資金移動が管理される、というのとほぼ似た状況になります。その意味では、送金の流れを示す絵はこのように前回と同じ絵を使うことになります。大きな違いがある、とすれば、

  1. 送金情報を伝達するのが、全国銀行協会の外国為替円決済制度に基づく日銀ネット
  2. 資金移動も、日銀ネットでの送金情報の伝達と同時に日本銀行の当座預金決済を利用した次世代 RTGSによる即時決済を使っている

という二つの点が挙げられます。

と言いつつも、とうとう非居住者の口座の話が出てきたので、海外送金のもっとも本質的な部分に話が突入することになります。

コルレス銀行?なにそれ美味しいの?

例えば、私たちが日本に住んでいれば、その近所の銀行の性質を持つ金融機関なら、よほど特殊な銀行や信金、信組さん、労働金庫にJAさんなどに口座を開けない限り、その銀行等の本店は日銀ネットに参加していますので、送金するときには支店から本店、本店から日銀、という流れで進めばよかったのです。ですが、パッと思いつくところで、海外の銀行の日本支店、例えば、(すでに個人金融部門が撤退した)HSBCならばまだ法人金融部門があることから日銀ネットに参加していますので香港やジャージーなどにある海外のHSBCの支店から円を送金しようと思えばHSBCの東京支店を通じて日銀ネット経由で送金が可能ですが、同じイギリス(笑)系のロイズバンクTSBのような現地ではそこそこ大きいけれども海外展開をしていないけれども円預金を扱う銀行となると当然に日本法人がないので日銀ネットへのアクセスがないので送金できないように思えてきます。それに日銀ネットへのアクセスがない以上に、これらの銀行が円資産をどう保有するか、という問題も発生します。

そこで、日銀ネットに銀行として接続していない銀行は、日銀ネットに接続している銀行に銀行口座を開設してそこで円資産を保管し、それを裏付けとして銀行顧客への送金業務を提供することになります。このような送金の際の中継地点の機能を果たしてくれる銀行を「コルレス銀行(Correspondent Bank)」と言います。
ただ、送金は銀行口座という資金の担保だけでなく、前述の

  1. X支店とY支店の残高を管理する本店への付け替えの指示、と
  2. Y支店の口座を増やした理由がBさんへの振り込み、というY支店への指示

に対応する

  1. 送金元となる銀行とコルレス銀行との間の通信手段、と
  2. 送金元となる銀行と送金先の銀行との間の通信手段

として日銀システム以外の通信手段が必要になることが想像できると思います。今なら「インターネット!」と言いたくなりますが、為替業務はインターネットが始まる前からありますので別の何かがあるのは想像がつきますね。それが、今回の記事にある SWIFT (Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SCRL 日本語訳としては「国際銀行間金融通信協会」) なのです。これは1973年にベルギーで設立された非上場会社ですが、元々はヨーロッパでの証券決済のシステムとして始まったものが金融全般の通信フォーマットの共通化や2005年に本格稼働しているSWIFT Net と呼ばれる、金融版インターネットの提供などが主な仕事になっています。

そこで、円送金ならば送金元とコルレス銀行の間の送金指図を SWIFTのメッセージで送り、それに基づきコルレス銀行が送金先(のコルレス銀行)に日銀ネット経由の外為円決済で送金し、また、送金元から送金先の銀行へもSWIFTのメッセージで送ることで送金指図の詳細を通知する、という流れになるのです。

で、世界でお金はどうやって回っているの?

では、これが米ドル送金ならばどうなるの?という疑問があると思いますが、基本は一緒です。例えば日本の某SMBC信託銀行の某大手町支店にある米ドル預金から某ジャージー島の某HSBCの自分の口座に送金したい、と某私が思うと、SMBC信託銀行の米ドルでのコルレスバンクであるCitibank N.A. New York に対してSWIFTで送金先のコルレスバンクであるHSBC USA に送金することを指示し、Citibank N.A. New York はそのSMBC信託銀行の口座を減額してCHIPS、もしくは FedWire と呼ばれる米国内の銀行間の送金ネットワークを通じてHSBC USA に送金を実行します。

また、SWIFTで送金先である HSBC Jersey に対してその送金の詳細を伝えることで送金先である口座に入金処理することを伝えるのです。それを受けて HSBC Jersey は、といえば、自分たちの米ドルのコルレスバンクであるHSBC USAにある自分たちの口座に該当する米ドルに着金を確認したら送金先である口座の残高を増やすことになります。

ね?基本は円送金と何にも変わりがないでしょ?ということで、海外に送金をする際には その通信手段としてのSWIFTがキーを握る、というところまでわかっていただけたかと思います。

余談ですが、この米ドルの送金でもう一つ気づきたいことがあります。例えば、日本で今日付で送金手続きをした、としても、Jerseyで米ドルが着金したことがわかるのは早くとも明日のJersey時間が始まってからになる、ということです。

というのも、米ドルの資金移動が実際に起こるのが今日のニューヨーク時間ですので、HSBC USAでHSBC Jersey の米ドル口座が増える時にはジャージー島は今日のジャージー島のビジネスの終わった時間ですので彼らの営業時間のうちには着金作業が出来ない、というよりも知る由も無いのです。ですので、翌日のジャージー島の朝以降にHSBC USD にある自分たちの口座が増えているか確認して、初めて送金当日付で入金があったよ、とあたかも過去日付での記録がされる、という仕掛けなのです。ちなみに、送金手続きの締め切りはファンドなどの世界では結構早く、送金したい日付の2営業日前までの送金指図をしてほしい、と言われることがあります。一つは時差の問題(着金確認が翌営業日になることが多い)、もう一つはコルレスバンクへの送金指図の締め切りが1日一回の通信の中でやることが多いからか、結構早い、ということがあります。

もしこれが豪ドルの送金ならばどうなるの?ともう一つ例を出したいと思います。これは実は私が以前、毎月のごとく、某銀行の投資信託の事務部隊から「お金が届かないのです」と何度となく言われたものの、仕組みをそれ以上に説明したのに全く理解がされなかった、という曰く付きの例です。

某 HSBC Securities Services に豪ドル口座を持つ某ケイマン諸島籍投資信託が某私の古巣の銀行の豪ドル口座を投資信託の買い戻し資金を送金する、とします。その時、某ケイマン諸島籍投資信託(の、実際にはファンドアドミ)は、その買い戻し資金である豪ドルの送金を某 HSBC Securities Services に豪ドル口座から某HSBC 香港と、その豪ドルのコルレスバンクでである HSBC Sydney を経由して某 C●t●bank Sydney に送金し、その送金の詳細を SWIFTで送ることで、C●t●bank Sydney は  C●t●bank 東京支店の豪ドル口座に着金があったことを知らせ、銀行の海外送金部署が投資信託の部署に送金があったことを伝える、というのが送金の際の流れになります。

支払日当日の二日前に送金指図を行い、送金を行って、その証拠としての SWITF の送金指図のメッセージを渡しても、その日の昼前になっても(円送金のように)着金確認ができない、と電話が毎月あったのですが、思い出してみましょう。オーストラリアは日本より一時間時差が先に進んでいて、送金が仮にシドニーで朝一で行われたとしても着金があってそれが某私の古巣の銀行の豪ドル口座に着金したという処理をするのはC●t●bank Sydneyの都合とタイミング、そして、その着金したことを確認するのは彼らの同僚の海外送金部署とそこが使うシステムの確認頻度の問題なので、すでにファンドには手の出せないところなの、むしろ自社グループ内でSWIFTメッセージを使って解決する他ない、のです。というか、外部の人間が出来たら銀行の構造上問題がある話、なのですが。。。最後までわかってもらえなかったですね、内緒ですが。
(関係者の方、読んでも怒らないでくださいね。というか未だに同じことやってないか心配なのですから。)

じゃあ、このSWIFTの何が闇、だというの?

やっと本題です。ふぅ。このSWIFTの闇の話の一つの例をこんな風にしてみたいと思います。

あなたが、資金を日本政府からどうしても隠したくなって、ベリーズという中米の国に会社を作ってそこに送金したくなった、という刺激的な話にします。いや、ベリーズに会社を作って、世界中の面白そうな会社を買収していこうと思い立った、にしましょう。まぁ、送金の話をする都合上はどっちでも変わりはないのですが。。。

その際、あなたはこの記事で何度も陰日なたとなく出てくる某SMBC信託銀行にある米ドル預金口座からこのベリーズに作った会社の口座に送金する、のですが、その際にどうなるか、というと。。。

ベリーズには国際的な銀行が存在しないので、現地にあるプライベートバンクに銀行口座を作ることになります。このプライベートバンク(例えば、Atlantic International Bankというのですが)、これも当然米国内に銀行口座を持っていることもなく、どこかにコルレスバンクになってもらう必要があるのですが、幸か不幸か米国内の大手銀行から小さい銀行に至るまで銀行取引をさせてもらえません。考えてみてください。普通に考えても、日本の銀行さんは非居住者の口座は簡単に開けてくれませんし、仮に居住者であっても、法人だと口座開設のハードルはあるのですから、これと同様で誰もが簡単に米ドル口座を作れるはずがない(と思いたいのだけど、アメリカの本人確認って。。。)、のです。そこで、米国外で米ドル口座の取引のある銀行(この場合、Crown Agents Bankなのですが、個人的に聞いたことはなかったのですが、グループの日本語のサイトのあるNGO等からスピンオフした金融サービスグループの会社のようです。通りで名前からして仰々しいわけだ。)に銀行口座を開くことでコルレスバンクになってもらうことになるのですが、そのコルレスバンクすら実は米国内に銀行法人を持っていないのです。でも、幸い米国内の大手銀行(この場合、Bank of New York)に銀行口座を持つことが出来ましたので、ここがコルレスバンクにとってのコルレスバンクになるのです。絵にしてみるとこんな感じでしょうか。日本国内での送金の時にはみられない多重構造が出来上がっているのがわかります。

この時、送金元である某 SMBC信託銀行は、コルレスバンクである Citibank N.A. に対して、Bank of New York Mellon (BoNY)) に送金指示と、同時にAtlantic International Bank (AIB) にも送金したからおたくのお客の誰々の口座に入金してあげて、という指示をそれぞれ SWIFT経由ですることになるのですが、そうなると問題なのは、BoNYとAIBの間にある Crown Agents Bank にも、おたくの BoNYの口座に入金があったのはおたくの口座の一つ、AIBのものだから入金してあげて、という指示をしなければならない、のです。SWIFTにはそうするために中継地点になる intermediary bank 向けのメッセージも準備されてはいるので、個別にSWIFTメッセージを送るのにコストがかかるなどの理由で送金元のコルレスから伝えてね、的に扱うこともあるので、実はこれによって送金情報のチェーンが見失われることがあるのです。そうなると、先ほどの豪ドルの送金の話同様、送金の担保となる資金は動いているのに、どの口座に入金するのか手間取ったりその情報が適切に伝わらないから、ということで「闇に消えていく」というのです。

しかも、この多段構造、例えば前述のベリーズの会社があなたのただの投資会社ならばいいのですが、これが銀行ライセンスを取って知人たちの資金だけを管理するプライベートバンクを始める、なんて言えば。。。さらに階層が増えることになるのでより途中で送金情報が失われる可能性が高くなる、のです。

では、闇な雲の切れ目はどこにあるの?

さて、これって確かに、オフショアと呼ばれる国や地域に限定される話かというと、そうでもなさそうですよね。例えば香港やシンガポールで設立されたファンドなどにそこの通貨の送金をしようとしたら、前述のような多段構造にはそうそうならないのです。逆に、例えば日本国内でオーストラリアドルを送金しようとしたら(実務的な経験がないことから)多段構造にはなっていないけれどもこれに近い状況に陥りそうです(なので、日本国内で日本円以外を送金するのはできるけれどもかなり嫌がられますよね)。ということで、送金先の現地通貨以外の送金の場合は闇とは言わないけれどもオンショアだろうともすんなりいかないもの、と思う方が妥当なのです。
ではもし、実際に送金することになって、途中で届かなくなった、という時にどうしたら良いでしょう(そんなことになる人はそうそういないと思いますが。。。)。著者の経験から言えば次のステップで解決しています。
  1. 送金を依頼した銀行に既に現地での銀行間での送金が完了していることを確認させる  - 裏付け資産が移動していなければ情報が届いていても入金処理してもらえませんから
  2. 送金先の相手に SWIFTメッセージを渡して、その銀行に対して送金指示の証左があるのだから着金確認しているならば入金しろ、と言ってもらう – 送金指示が届かない、埋もれている、という状態ならば送っている証拠を見せてそれで対応してもらう。SWIFTメッセージが、暗号化された形で送られることもあって、その写しを見せるだけでもその指示の確証性が高いと認知されているのです。
  3. 仮に着金確認ができないから入金できない、と言われたならば、通常この場合は intemediary bank なので、その送金元は既に送金済みだからコルレスに確認しろ、と促す
  4. 最後まで諦めないで相手を動かす(爆)

まとめ

いや、これ、まとまらないって。しかも2000文字にまとめるって。。。どうしましょう(笑)Soldie での記事がどれだけ原型をとどめないか、楽しみにしてください。ってそっちのまとめか?
なんにせよ、送金業務って本来は銀行の根幹業務なのですが、外国送金ってこれまで貿易か投資か、というところで国内送金に比べて件数も多いわけではないので携わる人自体多くはなかったものだと思います。かくいう私とて、自分で送金担当部署にいたわけではないのですが。。。
とは言え、ファンド運営という観点では着金して、投資対象を買うために送金して、というのが出来てなんぼ、ですので、この辺りは他人任せにせず、また、ちゃんとスムーズにいかないことを他人のせいにして怒るのではなく、自分でタイムラインで理解してリスク管理することをオススメします。

同義語 – 金融に創造性は不要、なのか、時代が繰り返されるだけなのか

私を仕事を通じてご存知ならまさに周知の事実ですが、金融の中でも「すみっこ」の領域をいくつも歩いて気付いたら20年も居させてもらっていますが、その時間と領域をあれこれ渡り歩いたおかげなのか、最近いろいろなものに既視感を覚えることがあるのです。多分本人たちは創造性を駆使して作り上げた、というのかもしれませんが、過去に別の領域では普通に行われてきたことで、それが出てくること自体が市場環境の、世にいう「フラグが立った」状態になりつつあるんじゃないか、という数学で言うところのフラクタルというかまるっといえば類似性すら見えてきているんです。最近。いや、人間ディープラーニングやっている訳ではないのですが。。。

ファンドにレバレッジをかけて投資しませんか?

こんな商品アイデアはどう?とちょっと話を聞いたのがこんな話でした。投資対象は担保付きのシニアデットというファンドで一応某公募規制に準じた作りになっている。それをこの低金利時代にセクシーなリターンの取れる安定収益型の商品にしたいから、4倍レバレッジになるようなラッピングをするファンドに仕立てたいのだけど、というのだ。ちなみに、投資対象となるファンドは再投資はするものの、償還期限日を決めているので、投資対象となるシニアデットの償還日もファンドの償還日を超えないようにするそうな。ということは高金利を狙って、新規資金が入るごとにデュレーションを出来るだけ長くしつつも償還日の手前になるものを buy-and-hold するんだろうな、というのが予想できる。

ふーん、と思って聞いていたけど、聞きつつイメージしたのはバランスシート的にはこんな図。

これ、ファンドの人だと、ふーん、そうやってレバレッジが掛かるんだ、と思って眺めてくれると思います(多分)。でも、この商品、どこかで見たことがあるような。。。あ。これだ。

CLO ですわ。ざっくりこんな感じ。

そっくりさん商品、現る(いや、昔からあったから)


一応元利金の返ってくる可能性の高い銀行貸付債権をCLOをやる器(信託でもSPCでも可)に譲渡(といっても、債務者に第三者対抗要件通知をするかどうかは別)して、優先部分を市場金利に色を付けた程度(?)の固定利付商品にして売って、格付け(べーっ)と協議した(貸し倒れリスク等に基づく返済不能可能性)リスクの残りそうな部分に対応した劣後部分を債権譲渡した銀行が抱える、というのがCLO。

構造的にはほぼ一緒。もちろん、シニアデットのファンドへの投資、という意味で一枚器を挟んで、かつその債権の取得の選別を運用者が投資目的や投資制限等の中で行って組み入れて、というのに対して、パススルー型のCLOならば譲渡した貸付債権の元利金をまずは優先トランシェの元利金に、その後劣後持ち分にそれぞれ配分するから違うように見えるものの、仮にパススルーでなかったら利金は優先と劣後に順序良く渡すけど回収元本で銀行からCLOの組み入れ条件に合致した債権をある意味買い取る形で譲渡を受けるようにすることで再投資するようにしていたので、さらに商品の類似性が高まってきます。

しかも、器での債権取得・処分の責任をライセンスを持った運用会社がファンドのガイドラインに基づいて行うか、オリジネーターが案件における表明保証の範囲と格付け等と一緒になって事前に定めた組み入れ債権適合基準で選別して譲渡・引き上げを行うか、という違いと、市場から買ってくるのか自腹の債権を譲渡するのかというソースの違いは確かにあれど、ガイドラインなのか基準なのかってほぼ日本語か英語かの違いでしかない。

さらに構造とかキャッシュフローとかで似てるのと言えば。。。

でまぁ、あまり言いたくはないのですが、これらの構造ってこれにも実はそっくりでして。。。


はい、複数の不動産物件を保有するJ-REITや私募リートですね。ローンを使って取得の際にレバレッジを掛けてしまうと、図式の中では(以前書いた不動産投資の分析の記事の通り)賃料収入が収益源の不動産持ち分が、ただの変動金利な債券と変わらなく見えてきてしまいます。

ちなみに、J-REIT で4倍レバレッジというか、ここでは不動産投資的に言い換えるとLTV (Loan to Value: 総資産有利子負債比率) 75%とここまで高いものはないようですが、ここでは比較のためだけ、ということで。。。

で、思うことは。。。

まあ、最後のが似ているというのは言い過ぎかもしれませんが、最近の調達コストに対する投資リターンの低下に伴うハイイールドアセットへの投資嗜好が高まっている状況において、企業向け債権のキャピタルストラクチャーの違い(優先債権/普通債権/劣後債権/優先株/普通株/劣後株)とか貸し出し手の違い(バンクローン/銀行貸付債権かその他のプライベートレンディング/プライベートデット)か、担保付きか無担保か、企業の格付け(べーっだ)が投資適格なのかそうでないのか、それに伴う流動性の高さというか低さなどの組み合わせをどこまでもどこまでも試し続けて、高金利だというものをひねり出す作業しかやっていないように見え、かつそんな性質のアセットと、キャッシュフローを生み出すから、というだけで不動産(一時期あったMLP-プライベート・エクイティ持ち分で上場したものなどもですね)までもが同じ土俵で利回りの比較をして云々しているのは、昔見た、不動産投資のイールドが不動産特有のリスクプレミアムを度外視してでも国債よりわずかに上回っているから投資していいんだ、と豪語したCMBS の組成販売をしていた外資系証券会社の姿に重なるものがあるんですよ。

また、劣後部分の商品化も、リーマンショックの前夜くらいにとある投資銀行が劣後部分だけをまとめたポートフォリオを投資信託化して富裕層に売りたいんですけど、と持ち込んできては
「このポートフォリオに格付けがついているからファンドの維持費用見合いのキャッシュフローは必ず出ます!」
と、この格付け嫌いの私に説得しようとしている姿がちらつくんですよ。

10年経てば商品のリスク管理能力も高まっただろうし、格付けも馬鹿みたいに後追いで格付けを引き下げることももうない、はずはないか。金融の世界に絶対はないからなぁ。。。

とはいえ、まさか、商品アイデアがあちこちで焼き直されてイノベーティブに提案されるとは。でも、無理はないか。結局金融の世界、出来る事はどんなアセットであってもせいぜい「買い持ち、売り持ち、借り入れ」しかないのですからねぇ。。。そりゃストラクチャリングでイノベーティブな商品が出来ないわけだ(って自己の存在否定をしてみたり)。。。

オルタナ投資関連の業界団体、日本国内にどれだけあったっけ。。。

前回の記事を書いてから随分間が空いてしまいました。ネタ切れを起こしていた、というよりは、CFPの試験勉強に集中したり、その後もバタついていたので私的なブログすらアップできていないという体たらく。。。なのはいつもの事ですね(苦笑)。

オルタナ投資業界の横のつながり、何があったっけ?

さて、実は今週の某日の晩に、ヘッジファンドの投資関連では業界内でとても顔の広い方が主宰されて極めて私的なネットワーキングの会の忘年会がありまして、久しぶりにお邪魔させていただきました。主宰者さまが今年は本業が変わられたこともあってお仕事に忙殺されて会の開催も頻度が減ったりしたらしいのですが、それでも、忘年会ということで、毎度のこと業界内の多方面のビッグネームが数多く参加されている(ので名刺交換と情報交換が盛んにおこなわれている)のを見て

「相変わらず、みんなすごいなぁ」

と末席でお酒をすすりつつ静かに近くにいた(某直近ビッグなポジションに着任された方を含む数名の)方たちと語らっておりました。

その席の最後で、とある業界内の団体の立ち上げが動き出している、という話が出たので、ふと、そういえばこの狭いと言われるオルタナ投資業界、その中でいわゆる業界団体ってどれだけあったっけ、とふと思い、その立ち上がる団体のご紹介も兼ねてつらつらと羅列していこうかと思います。といっても、さして業界に顔が広い訳でもないですから、私も見落としがたくさんあるとおもいます。そんな時はここで紹介してもいいぞ、とご指摘ください。喜んでリンクを張らせていただきます。どれだけ貢献できるかはまた別として。。。

AIMA (Alternative Investment Managers Association)

私も随分長くおせわになっているので、これは最初にご紹介せねばならないでしょう。英国ロンドンに本拠を置く、主にヘッジファンドの運用者と、それに関連した法律事務所や会計士、ファンド・アドミにリスクマネジメントサービスといったサービスプロバイダーが構成して、ヘッジファンド業界の声を各国当局者に届けることを主な目的として設立された団体です。今では、ヨーロッパ、アメリカ(米国とカナダ)、アジア(日本、上海、香港、シンガポール、シドニー)などに拠点があり、互いの情報交換や世界各国の規制当局の動きのまとめを月次で報告したり、ヘッジファンド投資の際には今や標準となった質問票(Due Diligence Questionnaire) の提供などを会員に提供しています。余談ですが、日本語版 DDQ は私めがだいぶ監修をさせて頂きました。いや、日本語のクオリティは大事ですから。。。

ちなみに、元々は先物取引などの運用者の集まりが会の始まりで、それが今ではヘッジファンドの業界団体になっていますが、今後は “Alternative”らしくその他の戦略の運用者の人たちも参加を望んで行こうとしていくようです。が、ヘッジとプライベートエクイティ、ベンチャーキャピタルはそもそも別の生き物ですので交わっていけるのか。。。

CAIA (Chartered Alternative Investment Analysts) Association

AIMAが運用者や投資家の教育を推し進める一環として組織されたのがCAIAというヘッジファンド投資に関する国際資格認定組織である CAIA Association。世界中で 8,400人以上の有資格者がいるのですが、英語での試験ということもあって日本では有資格者が少なかったのですが、今年の6月に CAIA の日本法人も出来てさらにメンバーを増やして行こうとアジアでの拡大路線の一端として日本も入れてもらえているのはちょっと安心です。まぁ、どちらかというと投資家サイドにいる人が多い感覚がありますが、やはり投資判断の一助となるべく、ということなのでしょうか。

ちなみに、この数年、AIMA Japanと CAIAの日本にいるメンバーで忘年会を合同で開いています。

CFA (Chartered Financial Analysts) Institute

CAIA がヘッジファンド投資に特化しているのに対して、日本の証券アナリストの国際資格に位置するのは CFAでそれを国際的に運営しているのが CFA Institute。CAIAとの違いは、というとCFAの守備範囲がヘッジファンドに限定されない、広範囲の知識を要求される、という意味ではヘッジファンド以外の世界でも食べていける強さがある一方で、CAIA にはヘッジファンド特有の専門性が求められるのでその筋では強みが発揮される、というところでしょうか。日本では日本CFA協会さんが運営基盤になっています。

AAIN (Asian Alternative Investors Network)

AAIN さんもロンドン発祥の組織で、ロンドンでオルタナティブ投資をするアジア人のネットワークを作ろう、ということで始まり、それがニューヨークでも集まって、日本でもやろう、と言って3-4年前に数回イベントがあって呼んでもらった記憶があります。
ただ、有志による集まりと言いつつもメンバーシップが結構高額なのと、イベントもメンバーだけ、というところで運営のコストが高いのかな、と思っていたら気づいたらあまり最近聞こえて来ず、今回調べたら本体のウェブサイトにアクセス不可。。。もしかした自然発生したように自然消滅したのかもしれません。
なかなか、この手の組織を作り、運営し、維持するのって資金面でも企画運営の面でも大変なんですよ。 AIMA Japanでだいぶ鍛えられました(笑)

ヘッジファンドの話から、少し別のオルタナの話もしてみたいと思います。特にアドミの世界ではアジアではプライベートエクイティやベンチャーキャピタルにそのビジネスの重きが置かれつつあるようですので。。。

JPEA (Japan Private Equity Association)

日本プライベートエクイティ協会さんはその名の通り、プライベートエクイティの運営者を中心に構成される組織で、この業界の運用側の声となる組織でもあるそうです。以前話を伺ったら、常任理事となる会社さんの持ち回りで事務局も管理する、ということで結構手弁当が大変だろうなぁ、という組織です。
運用者が中心ですので、アドミなどのサービスプロバイダーは賛助会員という形でしか入れない、という本当に運用者に軸足が置かれた組織だということもわかると思います。

JVCA (Japan Venture Capital Association)

日本ベンチャーキャピタル協会さんも、同じくベンチャーキャピタルの運用者を中心に構成される業界団体です。お世話になっている方がつい昨年まで事務局をされていましたが、その際に金融商品取引法第63条の適格機関投資家向け特例業務のルール改正の時に、パブリックコメントを経て施行させず作り直しを求めた時のメインとなった団体さんの一つです。あの時の改正がもろに自身が見せねばならないコミットメントを出せないようにするものでしたので死活問題からあそこまで差し戻させた、という実力のある業界団体さんと個人的には思っております。

JASVE (Japan Academic Society for Venture Capital and Entrepreneurs)

日本ベンチャー学会さんはちょっと毛色の変わったところですが、起業やその後のステージでの会社運営や、それに対するエンジェル投資などについて学術的アプローチで検証しようとする人たちの集まりです。一時期参加させていただきましたがかなり高尚な研究をされていたのでついていけなくなりました。。。

JVPN (Japan Venture Philanthropy Fund)

日本ベンチャーフィランソロピー 基金さんは、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティの投資のスキルと基金や年金と言った投資家の社会的投資、そして余剰利益の社会還元、といったことを組み合わせて所謂ソーシャルインベストメントをして社会貢献をしよう、とロンドンで始まった European Venture Philanthropy Association の、アジア版、Asia Venture Philanthropy Network に触発されて出来た日本版。ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティの関係者が手弁当や勤労奉仕の形で参加していて、その意義などを考えると私もいつかは、なんて思いつつも指をくわえて見ています。

NPEL (Nippon Private Equity Ladies)

NPEL さんは、日本におけるプライベートエクイティファンド業界に携わる女性たちがその互いの知識やネットワークを互助することで業界での女性の地位向上であったり業界内の横断的なつながりを維持していこう、ということで始まったそうです。元々香港に同じコンセプトの集まりがあるそうで、その日本版、ということですが、定期的に集まって、食事会や勉強会を開いて男性の業界内の著名な人に話してもらったり、と有意義に活動されているらしいです。そりゃ、私が男性だから参加できませんから知る由もないのですが。。。

100WHF (100 women in hedge funds)

100 women in hedge funds はニューヨークでヘッジファンド業界に携わる女性が100人集まったら、ということで始まったそうで、こちらも女性の業界内ので地位向上であったり知識の共有であったりを目的として活動を始めたそうで、今や世界全体で18,000人以上が集まっているそうです。リンク先を見ると、今では金融業界全体を包括しているようですが、まだ日本には支部がなく、これから立ち上げようと有志が集まっているそうです。

終わりに

さて、実はここにいくつか出てきていない業界内のネットワークを作っている人たちがおります。例えばヘッジファンドの世界では有名な Tokyo Hedge Fund Club は元Bear Sternのプライムブローカーだった人が在籍中から会社とは切り離して個人的に機関投資家とファンドマネジャーを直接つなげるパーティ形式のイベントを始めたのを端に今も継続的に行っている会ですし、冒頭でご紹介した会も、私的な会、とはいえヘッジファンドの業界を横断的にカバーする会として正直名前とは裏腹に巨大なネットワーキングになっています。また、私が個人的にお世話になっている方が会社名義で行うネットワーキングイベントも微妙にかぶりつつも重ならない人たちとお会いできる会ですし、その人と私とで開催するネットワーキングイベントも小さいながらも密度の濃い人たちとの横のつながりを飲みながら作りだしたりします。

思ったほど大きくない業界なので、人と人がどこでどう出くわすと化学反応が起きるか、それが間近で起こる世界ですのでおもしろいな、と個人的に思いつつ顔を出す日々です。逆にいれば、悪いことも全部あっという間にみんなに知れてしまう小さな世界、とも言えますが。。。

ということで、これを読まれたあなたともどこかでお会いするのでしょうね。きっと。私がこんなことを書いている人間と知ってか知らずか(笑)

なぜ、日本でファンド・アドミニストレーターが流行らず、新しいプレーヤーが出てこないのか?

つい先日のこと、以前より大変御世話になっている方に、お昼をご馳走になりつつテニスの試合、今はちょうどウィンブルドンですので私も仕事に手がつかないのは公然の秘密ではあるものの、そんな話をしながらも、「自分の中での整理がついていないのですが」という前置きをしつつも、「どうして日本ではファンド・アドミが流行らないのでしょう」というご質問を頂きました。

その方はプライベート・エクイティの方ですので、当然その立場と、あとは金融業界の主だったプレーヤーを念頭に置かれて幾つかのお考えを伺ったのですが、当然、お忙しい方でもあり、ランチ時間では議論と検討を深めるには短すぎました。

という事で、例によって、ここで私なりの整理をしつつ、あと、出来る事ならば、そういう認識をされてしまっているこの業界をどうしたらさらに活性化できるのか、そんな整理をしてみようかと思います。

ちなみに、書きあがって読み返したら結構長い文章になってしまいました。ですが、多分ファンドアドミについてここまで日本語で語っている文章もそうそうないですので、ぜひ最後の一文までお付き合いください。損はさせません(笑)

そもそも、ファンド・アドミって何をする商売でしょう。

実は前回のファンド・アドミの中立性に関する記事でまとめてしまっていた記憶があるのですが、ちょっとそこから抜き出してみましょうか。

ファンドの運営に関する事務一般を執行すること、というのが基本にある中で、ファンドの評価や資金や証券と言った保有資産の保有・移転に関する指示(保有自身はカストディアンが行います)、投資家の異動(投資持ち分の購入による保有者としての名義登録や、譲渡に基づく持ち分移動の記録、そして売却に基づく地位喪失といった履歴や個別投資家の持ち分管理自体はトランスファーエージェント、日本で言うところの名簿管理・名義書換業務にあたりますが、通常兼務するか投資家管理に特化した兄弟会社に実務を集約するので、アドミが一元的に窓口になるケースが一般的ですので、厳密にはアドミの仕事ではないものの、広義の意味でアドミの業務としてここでは扱うとします)やそれに関連して投資家の(FATCA/CRS対応を含めた)本人確認などが通常期待されています。

このように定義して、ピンと来て頂けるならばいいのですが、多分それらの違いが分からない、線引きはどこにあるの、という声が聞こえてきそうですので、ちょっと整理してみましょう。

ファンドの評価

これ、案外ファンド・アドミの仕事の根幹である一方で案外軽視されがちな仕事、なんですよね。ファンドの純資産評価の仕事、というと、「簡単に言えば」ファンドの資産と負債のそれぞれの現在の評価額を出して、合算することで得られますから「簡単そう」に見えますよね。これが軽視される背景ではあるのですが、考えてみればそんなに甘くはなくて。。。

負債の計算

ファンドの負債って何でしょう。各種サービスプロバイダーへの報酬やブローカレッジフィーなどの実費、ファンド設定や継続開示のための弁護士費用、年次監査のための監査費用、といったもののの未払い額が主だったところですが、そこにレバレッジを掛けるならば当然そのローンとその利息も入ってきます。問題は、実費や弁護士費用当たりは実際の請求書ベースでかんがえればいいものの、サービスプロバイダーへの報酬、となるとある一定の計算式に「入れるだけ」で計算できる、と思われがちですがその計算式を構成するロジック(日割り計算するの?とか、日割りの端数はどのタイミングで計上する?とか、フィーの計算根拠はグロスNAVで、それとも当期費用控除後?)の確定を契約書とにらめっこして合理性のある形にまとめなければならないのです。監査費用に至っては毎年いくらくらいになるか、見込みベースで計算基準日ごとに期間按分したものを計上しないと最終的に出来上がる純資産価格の動きに費用計上のタイミングでぶれが生じるので好ましくない、という配慮も必要になったりします。ファンドの設立費用も最近だと5年償却が増えてきているようなので、その期間はずっと費用計上しつづけなければなりません。

この当たりはシステムでやるから気にしなくていいんじゃない?なんて声も聞こえてきそうですが、上記を全部システムのパラメーターに出来るかというとなかなか難しい。しかもファンドごとの特殊事情が常に付きまとうので、結局人の手による管理が残ってしまうのも事実だったりします。

資産の計算

これ、公開情報な市場の終値を使えばいいだけなんだから楽勝でしょ?

と思ったでしょ?保有しているのが上場株のうち流動性が高い大型株、だったらね。これが上場していても流動性が低い小型株だったら終値つかないので、どうしましょうね。気配値?それとも最終取引価格?もしその最終取引価格から取引が10営業日も取引がつかなかったら?株ならいいけど国債は?社債は?オプションは?だんだんその資産価格の第三者的公平性の担保が難しくなりますよね。といって、ファンドにとってある意味第三者であるアドミが勝手につけていい訳じゃないですよね。一応ファンドの目論見書やアドミ契約には、上記のような終値が付かなかったら、などなどの状態における価格参照ルールを決めることで、出来るだけ恣意的に価格が決まることのないようにする努力はされています。

とはいえ、悩ましいのは流動性の低い資産、特に取引量が少ない通貨ペア、が市場の終了時に一瞬だけオフマーケット価格でや苦情がついちゃった時、のような形式的に参照できる価格があるけどどうみても実勢価格からはかい離しているものをどう取り扱うか、という更なる問題も存在するのです。

とはいえ、まだ市場性がある資産ならばいいですよね。最後は誰かしらがマーケットメイクする訳ですから。未上場株やプライベートレンディング、不動産といった個別具体性の極めて高いものになると評価方法は人によって大きく分かれることも多々ある訳ですから、これらの価格の妥当性は第三者が仮に算出したとしてもファンドの財務諸表として適切かどうかの監査人の意見も反映されることになり、言い換えれば監査人との不幸で不毛な資産評価の論争が毎年行われることになってしまうのです。

純資産価格の算出へのプレッシャー

更に、算出プロセスに対する挑戦というかプレッシャーも高いのです、実は。例えば日本の公募ファンドがよく取り入れている、いわゆるファンドオブファンズ商品は、公募ファンドが外国ファンドへその資産のほとんどを投資している訳ですが、その結果、公募ファンドが純資産評価をするためには外国ファンドの評価がないと出来ないことになります。公募ファンドはだいたい毎営業日の午後3時までに純資産価格を開示することが求められているのですが、そのためには同日の正午までに外国ファンドの評価が届かないと出来ない、とされています。

前日のファンドの評価でしょ?翌朝の正午なんて余裕じゃない!

と、思うでしょ?もし外国ファンドが米国株を持っていたとします。その終値が出るのがニューヨーク時間の午後5時。日本との時差は14時間(サマータイムだと13時間)なので、東京時間の翌朝7時(サマータイムだと午前6時)。気付けば5時間しか残っていないことになります。

5時間でしょ?余裕じゃないの?

上場株を直接保有するファンドであればまだいけるかもしれません。でも、夕方5時からということはもしニューヨークに拠点のあるアドミだとしてもその作業は残業で行うことになります。しかも毎日。普通に我々が残業だといってやる仕事、正確性を求められたとすると大変ですよね。それを毎日。

では、残業させずに(かつアメリカ人クオリティではない)サービス提供となるとアジアでやるほうがよさそうですが、アジアのファンド・アドミの中心地は香港やシンガポールで時差は日本から一時間遅れ。彼らが現地時間の午前9時から作業しても手持ちの時間は2時間のみ(現地11時が日本の正午)。そんなタイトなスケジュールでエラーなく毎日行え、というのは相当のプレッシャーです。

余談ですが、これを解決するために、日本から4時間の時差のところにあるニュージーランドで評価業務を行えば、残業もない通常業務の範囲内で処理が出来るのでどうでしょう、とあちこちのファンドアドミ会社さんに呼びかけています。が、まだどこも実現できていません(笑)

では、私募は余裕か、というとそんなこともなく、当然ある程度の期限を決められている一方で資産評価等を行うにあたってその評価のためのソースが時間通り来るとは限らないですし、来ても何か足りない、ということもあるので、このあたりも多かれ少なかれ時間との戦いになるのも事実です。

保有資産の保管・移転の指示

前回の記事にて取り上げたように、アドミの仕事のもう一つ大きなところは保有する金銭や証券などの資産の保管や移転の指示を、運用会社等からの指図に基づいて行うこと、でもあります。この時、前回の記事にあったように、ファンドの資産管理を行う運用会社等がいくら指図を行ったとしても、ファンドの本来の目的に合致した指図以外の指図を盲目的に行うのは投資家への背任行為に当たるので行ってはいけない訳ですがそれを除けば(というと、あまりに簡単に聞こえますが、よく考えてください。この指図がファンドの契約書類のどれに該当するものなのか、逐次確認判断する必要がある訳です。それはそれでルーティン化するまでは手間なことには違いありません。)如何に指図に対して適切にアクションが取れるか、がこの業務のキーになるところです。

資産移転は思っているほど楽じゃない

資金移動に証券の決済、それが仕事としたら言われたものを言われたとおりにすればいいのだから楽なんじゃないの?そう思われがちですが、ヘッジファンドはもちろんの事、ただのロングオンリーであっても大量な取引を毎日するようなファンドだと当然処理能力を問われます。証券決済の締め切りまでに手続きを終わらせなければいけないわけですからSTP(straight-through processing: 証券取引の発注から、売買成立、そして決済までの一連の事務処理を人手を介さずに電子的に行う事)の導入と、そのプロセスに対してアドミならずも運用者を含めたすべての関係者が対応する必要が出てきます。

と言って、STPが導入できたらそれに任せきりで良いかというとそんなこともなく、一旦走り出したら修正が効かなくなる危険がある以上、提供された取引情報や約定情報と決済情報が常に一致しているかどうか再照合を行う監査プロセスも並行して行う必要が出てくるため、それでも常に時間との戦いになります。

では、上場株がそうならば、年に数件程度とさほど取引量が多くないはずのプライベートエクイティやベンチャーキャピタル投資のような非上場株式ならばどうか、というと、例えばgo-to-private な買収案件ならば上場廃止手続きが伴うのでその手続きが、とか、もともと非上場であれば払いこみと名義書換えのタイミングや段取り、その前に譲渡承諾を取締役界などから取り付ける、常任株主代理人の選別、などなど、資産譲渡に絡むもろもろの作業を運用者のチームと共同で対応していくことになります。

じゃあ、株や債券でもないファンドの持分は?というと、これも単純にファンドのアドミ/名義書換事務代行者にファンド名義で買ったよ、売ったよ、資金決済しておしまい、というわけには最近ではいかないのも事実。ファンド名義で買うということはファンドのいわゆる本人確認のDue diligence をCRSや FATCA 基準に合わせて証明書類を提出していくことになるのですが、これがまたかなり手間。時にはファンドの投資家や運用者、スポンサーの本人確認資料まで求められるケースも増えてきていますのでこれも時間との戦いになることもしばし。。。

そしてもっと大事なのはその結果ファンドが何を保有しているかの管理であって

今まではどうやってファンドの資産を入れたり出したりするか、という話でしたが、実際にもっと大事になるのは結果としてファンドとして何をどれだけ保有しているのか、が運用者との認識と一致していないと問題になります。当然に一致するだろう、と思いがちですが。。。

投資家の異動やそれに関連して投資家の本人確認

多分今、投資家や運用者が一番「アドミ、ひどくない?」と思っているに違いないアドミの業務が本人確認の冗長的なプロセス、ではないでしょうか。とはいえ、これはアドミが悪いのではなく、US/UK FATCA やそれの派生としてのCRSが投資家やその投資資金に関して従前にないほど多くの情報をファンドに対して結果的に求めるようになったので本当に悪いのはそんな各国の税務当局(笑)、に他ならないのです。ですが、ファンドの事務委任を受けているアドミにしてみれば、その compliance の観点でどこまで資料を徴求するかがどうしても会社ごとに微妙なズレを生じるのでどうしてもコンサバな会社ほど嫌がられる傾向にあるのも事実。しかも、これを投資開始までにあれこれ出さないと投資できない、という無用なプレッシャーの中でストレスを感じながら行われるのでどうしても不幸な会話にならざるをえないのがアドミにとっては更に悪い立場に置かれざる状況にあるのです。

もう一度言いますが、アドミはファンドの事務代行に過ぎず、本源的には税務当局への対応のための手続きなのでアドミが悪いわけではないのですよ。。。

では、このビジネスを日本で立ち上げるとしたら何が必要なの?

だいぶアドミが劣悪な環境でビジネスをしているような表現になってしまっていますが、実は本質的な話をするならば、日本でこのビジネスを始めようとしたら何が必要かというと、極論を言えばPC一台で十分です。ファンド名義で銀行口座と証券口座を開設し、運用者の指図に従って証券や資金を移動出来るようにオンラインで動かせるようにして、各種イベントなどのスケジュール管理はカレンダーに書き入れて、Excel に証券や資金の残高を取り込んで各種フィーの計算を正しく行えばNAVの算出は完了。もし未公開株なら証券口座が不要で単にファンドでございと、譲渡契約にファンド名義で捺印して、名義書き換え人にファンドの代理人として登録してもらうだけでおしまい。財務諸表を作成して監査を受ける必要があるなら、NAVの算出情報を元にファンドが準拠する会計ルールに従った財務諸表を作成(するか会計事務所にアウトソース)して監査人に監査してもらえばいいだけ。事実、ファンド・アドミを監督する関係省庁は存在しないのでライセンスを取る、また取るために人的・資本的リソースを準備しなければならないこともないのです。なぜって?会社の経理処理や財務諸表を作成するのに何かライセンスを取得する必要はないですよね?会社型ファンドと会社との間において、事務上の違いは存在しないのですから逆にライセンスでいずれも縛ることも出来ないのです。

あれ?信託銀行はどうなの?あれは信託形式のファンドを預かるのだし

はい、信託形式であれば受託者として信託会社が受託者となり、また信託業法の求めるところから、アドミ業務やカストディ業務、不動産案件ならプロパティ・マネジメント業務など資産の保全・管理業務全般を自分で行っていますし、それを求められています。これは日本の法規制から受託者に求められている要求の高さから来ているのですが、ただし、これは受託者ならば、という前提があります。

言い換えれば、会社型のファンド有限責任組合スキームに対してもアドミ業務やカストディ業務だけを提供することも技術的には可能でしょうし、実際に信託銀行さんのカストディ業務はその単体だけでも充分海外のプレーヤーと肩を並べるほどの規模になっています。ですが、それだけのスケールを要するカストディを必要とするのは投資信託のようなロングオンリーかヘッジファンドのときがメインで、その際には会社型スキームにアドミとカストディを合わせて提供することになりますが、有限責任組合/LPSスキームを主戦場とするのが非上場株を取り扱うプライベートエクイティやベンチャーキャピタルですからカストディとして求められる機能が世界規模での証券決済よりも一つ一つの証券の全てをきちんと保有しているか、という装置産業と真逆になリ、また、会計システムの取り扱いを一つ取っても、個別投資家に対するキャリー(成功報酬)の計算というかなり柔軟性を求められるものですので、こちらも装置産業で画一的なサービスで対応、とはいかないため、なかなか本格的に踏み込めない領域と化しているところでもあります。

そう考えると、前述のPC一台でできるファンドアドミもあれば、業界標準とされるアドミシステムなどを導入して管理運営していくのもファンドアドミ。その違いはどこにあると考えるべきなのでしょう。

そこで考えてみる。世界中のファンドアドミはどうやって立ち上がって大きくなっていくのか?

世界中を見回すと、結構いろいろなサイズや特色のファンドアドミがいるものでして、例えばジャージー島なら70社程度があると言われていますが、これがルクセンブルクだと130前後とも言われています。その中には世界規模も銀行系ファンドアドミも当然ありますが、小さなファンドアドミも独立してビジネスを継続しています。一番小さいところでは、親密先のファミリーオフィスを数件扱うためだけに、数人で運営しているという会社があります。当然、そのサイズであれば導入に数千万円掛ると言われるシステムを使わなくとも、というよりExcel とカレンダーを使った手作業で管理も十分可能になります。

また、取引量が少ないファンド・オブ・ヘッジファンドやファンド・オブ・プライベートエクイティファンドといったファンド投資系の商品もカストディもシステムやネットワークも不要ですから取り扱い案件数が少ないうちはシステムがなくとも管理可能と言えるでしょう。同じことは不動産投資ファンドも同様です。

とすると、大掛かりなシステムインフラやグローバルなネットワークを要しない低流動性・低頻度取引のファンドのアドミ業務が小規模の頃の事業対象としてはスイートスポットだと言えるでしょう。また、このステージにあるならば、各顧客の顔もニーズもよくわかり、それにきめ細やかに対応しようという余裕もありますし、そうすることが顧客を掴む大きな要素でもあるのです。

そこから事業基盤を拡充していき、システムインフラ投資が出来るようになると、システムを生かした(Excel とカレンダーのようないつ壊れたりするかわからないものを使わない)より企業らしい管理業務にシフト出来るのと他方に、このシステムを最大限に活用できるように案件数と対象ファンド戦略を広げていくことになります。

そうやって顧客ベースが広がると対象となるファンド設定地や運用者・投資家の地理的分散が広がっていくため、世界中の複数拠点への進出や買収(または、買収されることで比較的大きいグローバル展開したフランチャイズの一部に組み込まれる)という形での展開が次のステージである地理的拡大を進めていくことになる、というのが想定されるファンド・アドミの企業としての成長モデルの一つと言えると思います。

成長モデルを考えたときの日本初のアドミがあまり出てこない理由

では、この成長モデルを考えたときに、日本発でアドミを始めた時に何が成長の妨げになるのか、考えてみたいと思います。

まず取っ掛かりとしての低流動性資産を対象にした、低頻度取引のファンド、が日本だとどのあたりが手ごろなのか、という問題があります。というのも、不動産投資ファンドを例にすると、確かに手ごろな事務量になると思いますが、他方で既に会計事務所さんを中心に対象となる特定目的会社に対して記帳業務や決算作成といった一般的な会社向け業務を取締役派遣などと併せて提供し続けてきたため、かなり安価な費用体系が業界の標準となってしまっています。ただし、そこには通帳管理や資金決済の執行に対する業務など上記のような通常の会社向けサービスにないその他の業務代行廻りの対費用でみた評価がその責任に見合わない形で提供されていた為、この業務から撤退しているところも増えているのも確かですが、報酬という点で上昇しているかというとなかなか難しいのが現実です。

次に未公開株取引の伴うプライベートエクイティやベンチャーキャピタルですが、不思議なことにこの二つの似た戦略にもかかわらずファンドアドミの採用という点で大きく違うという現実があります。

ベンチャーキャピタルの場合、企業ベンチャーキャピタルや大学ベンチャーキャピタルというのもあることから、全体的なファンドのスケール感があまり大きくない為にそこに対する専門性のあるリソースを運用者側で抱えられないことから「餅は餅屋に」という発想が強いようですが、プライベートエクイティの場合、ファンドのサイズ感としてはベンチャーキャピタルより大きいものの、全体に対する費用へのプレッシャーが大きいことと、運用チームに自社の経理担当を既に抱えていることからそのリソースにファンドの運営を行わせていることが一般的になっているため、追加費用として見られがちな事務の外部委託、という印象がどうしてもぬぐえないでいるのが現状にあります。

残るはファンド・オブ・ヘッジファンドやファンド・オブ・プライベートエクイティファンドのようなファンド投資のファンドですが、投資家の多くが機関投資家である以上外部委任という発想は当然に持っているのですが、リーマン危機以降、如何せん案件自体あまり多くないのが現実です。

もしヘッジファンドやロングオンリーファンドなどの上場株等を取り扱うファンドをスタートアップしたアドミが受任したとしても、システムでの対応が出来ない、カストディやプライムブローカーとのやり取りの先の作業が手作業になる、といった実務的な観点で疑問が残ることもさることながら、いまどきは投資家もかなり専門性が高くなってきていることから、 operational due diligence (実務廻りの精査)において掛る事業インフラで大量の取引を処理するということに対する懸念がどうしても発生する、という運営リスクとして見られる可能性が高いため、採用されづらいという問題が存在します。といって、起業したタイミングでシステム投資が出来るか、というと、豊富な資金力のある後ろ盾があるのならば、という限定条件が付かざるを得ません。

そう考えていくと、起業という観点でのファンドアドミを考えたときにその生まれ育つ環境としては結構厳しいものだというのが見て取れるかと思います。

また、案外理解されていないことなのですが、例えばオルタナ投資でヘッジファンド、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、不動産投資、インフラ投資、などが括られますが、これらのアドミの実務というのは、インセンティブ・フィーの計算だけの違い、という訳ではなく、それぞれの特殊性が様々なところにあるため、例えば、ヘッジファンドのアドミが出来るのだからプライベートエクイティも普通にできるだろう、ということは決してないのです。実際に業界標準とされるシステムひとつとっても、ヘッジファンド用のものとプライベートエクイティ用のものでは異なる会社がそれぞれ開発した全く別物のシステムです。それくらいワークフローから何からが異なるので、実はすでにロングオンリーを扱っているからヘッジも出来る、とかヘッジファンドの受任をしているからベンチャーキャピタルの受任も問題なくできる、ということはなく、結果として大手ですら新しい戦略に事業を拡大しようとするならば、システムや経験を持った人的リソースも手に入れる必要があるものの、日本国内に限定して話をするならば、そもそも独立系のファンドアドミの数が極めて少ないため、買収対象や人の引き抜きを含めた経験者の採用が困難なのです。

何が日本でのファンドアドミの背中を押すのか?

ではどうしたら、新しいプレーヤーが出やすくなるのでしょう。
端的に言えば、上記で挙げた足枷を解消できればいいのでしょう。それは

  1. アドミサービスに対する適正な報酬体系
  2. アドミを運用者が内製化せずに第三者が適切に行うことを求められる投資環境
  3. ファンドアドミの経験者もしくは周辺業務の経験者の増加

どうみても都合のいい世界ですよね(笑)

1.は特に更に圧力が掛っていますので、逆行するのですが、他方で安いけどクオリティが、という声も散見されますので、そろそろ費用対効果という観点で評価する環境に代わってほしいなぁ、とは思っています。

また、2. については、実は年金投資家によるファンド投資が AIJ 事件で取りざたされた時に、ファンドの評価報告についてアドミから直接受託者に送付されるよう求められていましたが、それでも特にプライベートエクイティの世界ではアドミ=運用者の構図が変わっていませんので、このタイミングでMadoff 事件で米国のファンドのアドミは外部委任することが求められたのと同じようになることを期待したのですが。。。

3. については仮に増えたとしてもファンドアドミのビジネスが魅力的に見えないと増加しても成り手が増えない訳ですので、ビジネスとしての魅力が高めるという自助努力も必要だということは認知しております(笑)

私もこの業界の末席を汚しておりますので、どうにかして盛り上げたいなぁ、と日々思っています。さてどうしたもんじゃろなぁ。。。

パナマ・ペーパーで大騒ぎしてますが、これの本当の問題ってなんですの?

これを慌ててアップしようとしている今日(笑)、その日本時間の早朝(2016/May/10日本時間午前3時)に、いわゆるパナマ文書、とかパナマ・ペーパー、とか言われるパナマの法律事務所から流出されたとされる文書の全貌が公表されました。

あ、ちなみに、一通り見ましたが、ごく普通の人、なんだろうなぁ、という日本人の名前が1000人近くさらされているのもどうなの?と思ったりしましたが、念の為確認しましたが私の名前はありませんでした(笑)

台湾が Province of China という扱いなのに怒っている人がいるだろうな、ということと、日本にいるとされる外国人の名前の多さ、そして多分、知人ひとりの名前を見つけたのはさておいて。

オフショアのファンドを生業の一つとしている私的には、変な風評被害になりかねないなぁ、とずーっと気になっていることではあるものの、なんで世の中がこれにそんなに騒ぎ立てているのか、本質じゃないところで騒いでるようにしか見えないので、「擁護するとはけしからん」という声が聞こえることを前提に、ちょっときわめて個人的な視点でまとめてみようかと思います。

ちょっと注目してほしいと思っている点

  1. どういう訳か顧客の情報機密性の高いはずの弁護士事務所、しかもパナマなんてオフショアの金融センターとしては極めて微妙な国の法律に携わる事務所から情報が出た、というのが個人的には何かしらの悪意があるようにしか思えない。実際、これをリークしたのがジャーナリスト集団ですので、別の意図で追いかけていた流れで見つけたんでしょうけど。。。言い換えると、情報自体が盗難品の可能性があるわけです。信ぴょう性はあるでしょうけれども、その情報ソースと取得方法について誰も違法性を問わないのはなんでしょう。クラッカーたち(世の中的にはハッカーと呼ぶでしょうけど、IT geek 的には人様のサーバーに不法に入りこむ連中はハッカーではなくクラッカーと呼ぶべきと、20年以上前から主張してますので、わたくし。。。)による被害、とされていますが、この連中はいったい誰に頼まれたのか。。。
  2. 確かにパナマは 2000年までは FATF (Financial Action Task Force) のブラックリストに、つい今年の2月まではグレーリストに載っているほど、反マネーローンダリング/反テロリストへの資金供給に対して協力的ではありませんでしたが、今では協力的になっている(というより、最近の方向転換を歓迎されてグレーリストから外れたばかり)なので、いわゆる US/UK FATCA や CSR (Common Standard Reportings) を通じての税務情報交換協定に協力的。ということは、ここに記されている、アメリカが指定した独裁国家の独裁者の家族、のような人を含むいわゆる各国の政府高官関係者など (PEPs: Politically Exposed Persons、ってこの間の記事で紹介しましたよね)が今のこの時代に自己の資金管理のためのオフショアの会社などを作り、取引口座を開ける、というのが難しいのが今のルール。この間ファンドを作った時ですら、かなり厳しい手続きを求められました。言い換えると、ここに名前が上がってきている諸国の政府高官から大金持ち、セレブリティたちは、昔のヨーロッパの富裕層が資金とその秘匿性を守るために作った仕組みに乗っかって、20世紀後半から21世紀の最初の7年の間にその当時のルールに基づいて行ったことの結果である以上、その当時の居住国と口座開設国の双方の国での法制度上の問題点や現在の法制度との違いを問うことをせずに、後だしジャンケンで、今の世の中で解いている倫理上の問題点を突き上げて資産隠しで税金逃れ、といるとみることが出来ます。ぶっちゃけ、最近かなり増えた、自分のその瞬間に感じた主観だけが正義と大声で言えば通ると思い込んでいる、よくいる近視眼的な連中と変わらない、というか、時代遅れの情報を引っ張り出して騒いでいるゴシップと変わらないようにしか見えませんが、そういうと怒られるのかな。
  3. 以上のことをここではパナマに限って話しているものの、私たちが普通にファンドを組成するときのように複数の国の複数の投資ビークルなどを組み合わせた投資スキームを使うのは(日本国内で売られている公募投資信託ですら)普通のことなのです。しかし、パナマ・ペーパーで「も」パナマ以外のオフショアの様々な関与をつまびらかにして、オフショアがいかにお金に汚らしいか、のように見せてますが、オフショアとオンショアを結び、オフショアとオフショアを結び、オンショアとオンショアを結ぶ、世界中の銀行と中央銀行をつなぎ合わせたお金の流れるネットワークは、今や世界中の情報の流れを一手に担っているインターネットと同じ社会インフラであり、またこれと対比する説明をするならば、ウェブサーバーが情報に意味づけをして再配信する役割をするのと同じように、ファンドなどの投資ビークルなどはお金がその力を特定の目的のために使われるように集めて利用する役割を担っているわけです。そこにはオンショア/オフショアの違いはなく、利用する人の意図によって使われ方や影響が大きく変わる、というのは情報インフラであるインターネットが誰もが分け隔てなく使えるがために、人助けにもテロリストの情報発信にも同じように使われるのと変わりがない、のです。(これも怒られるんだろうなぁ。(笑))
  4. ちなみに、今回オフショアの舞台としてあげられている国として、パナマはもとより、BVI、バハマ、(あと、本ブログでもご紹介したベリーズか(笑))のようなカリブ海の島々だけでなく、香港、セイシェル諸島、ジャージー島、ガーンジー島、マン島といった英連邦系オフショア地域、マルタやキプロスのようなEU 加盟国でもファンド設立に使われる国、シンガポール、そして、ニュージーランドやイギリス、ワイオミング州といった、一見オンショアのはずなのに非居住者が設定すると非課税になるメリットを生かせるスキームの存在するオンショアまで、縦横無尽に使われていることがわかります。が、実は日本の信託勘定も非居住者が設立して使うと非課税のメリットがあることが海外では知られています。なので、オフショアがとかオンショアが、という観点で租税回避地をつるし上げるのは早計ではないかな、と。
  5. ちなみに、今回ケイマン諸島とバーミューダがほとんど出てきてませんが、前項のそれぞれの国のビークル管理の観点で比較するとこの二つの地域は個人資産を抱えるには維持費などがかかりすぎる、ので敬遠されていたのかもしれません。

で、結局これで得するのは誰?

各国の税務当局だけ、な気がしてるのは私だけ?でも、こんな租税回避地に逃げたいと思わせる課税ルールを作った自分たちの結果、という反省がないんですよね。ええ、私は働いた人たちが正しく報われて、かつ社会インフラの費用は国民全部が公平に負担する仕掛けを作るべき、と考えているフラット・タックス信者ですので、こんな累進課税の結果のなれの果て、である今回の騒動については、すべては課税ルールが悪いから起きただけじゃねーの、くらいにしか思ってません。はい。
とまぁ、久しぶりに、個人的なブログで書くぐらいの私的感情丸出しになりましたが、ゴシップの人たちから比べれば公平性を保つように書いたつもりですのでご容赦を。

[追記 10/May/2016 23:51 JST]

ちなみに、interactive 版で企業名や名前を入れると関連するオフショアでの会社や他の関連する人物などが図示されます。ある意味わかりやすいのですが、わかりやすすぎて個人の住所とおぼしき情報まで出てきますので、正直こんな社会的制裁を加えることに疑義を覚えずにはいられません。

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