LPS with LLP-GP なんてVC 投資スキームは実は最先端のストラクチャー

イノベーションはどこで起こる?
イノベーションはどこで起こる?

ストラクチャーのイノベーションはどこで起きる?

ほんの数日前のこと、お仕事を頂戴している方たちから、ファンドのストラクチャリングで最近見ている新しい潮流とその先の影響の議論を伺ったので、ちょっと興味深い話でもあったのでこちらで少し触れてみようかと思います。

金融に特許なし、でもそれで金融は発展した

金融のいいことであり悪いことでもあるのはある目的を達成するためのストラクチャリングが特許権のような属人的な扱いをされることがほぼほぼ存在せず、最先端のストラクチャーを作ってファンドを立ち上げて、そこそこ成功している、なんてのんびりしていると、どういう訳か気付いたらそのストラクチャーは同業他社に早速コピーされてしまう、なんてことは基本的に起こり得るもの、という前提でいなければいけない、わけです。まぁ、そのおかげで初期に開発されたスキームがすぐに特段の前提条件を要しない汎用化されたり、その後の様々な実務上の問題点や法制度の変化などを受けてその解決法を組み込みながら進化したり(言い換えれば面倒なほどに複雑化したり)していくので、特許で守られないことのメリットは業界全部に還元される、というその意味ではいいエコシステムだよな、と思うことも多いです。

で、今回は何よ?

今回聞いた話は、国内の投資法制度の一つ、投資有限責任組合法に基づく組合の設立に絡むことで、普通に考えると、組合をつくるにあたっては無限責任社員が一社、法人格をもったものが通常置かれるのが当然、そうでなければ自然人がリスク取りまくりではあるものの無限責任社員の任に就くことになる、よなぁ、考えるのです。が、今回聞いた話では、サイズも小さいし知り合い同士でお金を出し合っている側面の高いベンチャーキャピタル(VC)投資の世界では、投資の責任を事実上取る案件のスポンサーがLLPを構成して、その LLP が無限責任社員の任に就く、というのが増えつつあるというのです。

確かに、LLP ならば最初の組合設立の登記さえしてしまえば、乱暴な言い方をしてしまえば、登記後は放置しても維持費は言うほどかからず、投資運用の実質は変わらないし、その結果、キャリーを取ろうとすればほぼ全額を山分け可能(笑)という、投資の運営側にとっては会社運営という作業のオーバーヘッドを省けることもあってかなりお得、というものです。

でも、それだけの話?

いえいえ。話の本質はここからなのです。
従来、LLPがGP業務を行うことについては法律上は特段問題はなかったのですが、投資有限責任組合法に基づいて組合の登記を行う際に、GPはLLPではなくLLPの組合員、すなわち実質の運用者が複数名で登記をしていました。その背景としては、LLPは法人格を有しないことから、GP登録したくてもできずLLP の組合員のそれぞれの名前で登記する必要があった、という状態にありました。

しかし、どうやら法務局がその判断でLLPそのものをGP登録できるようにしているそうなのです。実際に登記申請した際に、普通に受け付けているそうなのです。これって、いつの間にかLLPに法人格の付与がされてしまった?と関係者で頭を抱える問題になってしまうのです。

なんで?単なる登記手続き上の法人格の有無だけの問題じゃないの?

ええ、その法人格が実は税金の観点で余計な論議を起こしかねないのです。前述の通り、法人格がないことからビークルとして税務上透過性があるとして、課税すべきポイントが組合の構成員にまでそれぞれ落ちてきていた(構成員課税、と呼ばれています。)わけで、だからこそ構成員レベルでの個別のタックスプラニングに対応出来るというメリットがあるのです。

ですが、これがもし法人格を認めるというと、上記にある課税方法の根拠がなくなってしまうので、他の法人格のあるビークルと同じようにこのビークルで課税できる(ので組合員の取り分が減ってしまう。)、という議論を作りだす素地が出来てしまったのです。

確かに今回は登記手続き上の問題、ではありますが、そもそも登記だって法律に基づく手続きを行うわけですから、LLP を成立させる法の枠組みの中で法人格に関する不整合が起きてしまった、と捉えるべきところかもしれません。

で、どうなるの?

実務上は歓迎されるべきこと、と見ていますので、法人格のないビークルだけど特例でできるように投資有限責任組合法の登記手続きなどを手直しする方が本当はいいのでしょうねぇ。でも、法令の手直しですからねぇ。手間かかるでしょうねぇ。と言っても、税務署がそれまでの間にここに手を出さない no action letter なんかを取るのが安心ですが、やりますかねぇ。

また、これが本当に普及した場合、ベンチャーキャピタルのみならずプライベートエクイティ投資の際の GP として LLP を作ることで運用者自身の会社の GPと実質の運用機能は変わらず「軽い」セットアップで始めて、運営のコストや負担が下がるというのは GP側にとってメリットがいろいろと見いだすことができるはずです。とはいえ、LLP が GP というと、自然人でも法人でもない組織が責任を取れるのか、という形式上の信頼性の問題がどうしても気になる機関投資家はいるんでしょうねぇ。この辺りが、VC と PE との間のプレーヤーの性質の違い、かもしれません。

オフショアって、なあに?今更だけど、ついでにもう一つ。

絶対、人のいない浜辺=オフショアって思うでしょ?
絶対、人のいない浜辺=オフショアって思うでしょ?

前回、諸般の事情、と匂わせたことがありますが、その諸般の事情さまの偉い方からこんなありがたい言葉を頂戴したそうです。きっと読んでいるんだろうなぁ、と思いつつ、晒させていただくならば(晒すんだ、と思ったでしょ?)

「オフショアって、脱税天国とか投資詐欺とか悪いことをする場所というネガティブなイメージが先行する」

ええ、そうでしょうよ。直近で言えば、AIJ 事件は新聞を読んでいれば詐欺の手口がケイマン諸島のファンドを使ったものだったから、という印象だけを植え付けられていましたからね。それに、この脱税天国、tax haven がカタカナ英語で「タックス・ヘイブン」から「タックス・ヘブン」にすり替わった結果という、如何にも音だけで判断する日本人らしい(ベーッ、だ)理由があるわけです。そのおかげで、オフショアを仕事にしている私なぞ常に怪しい人扱い。風評被害です。実際に詐欺師がメインで詐欺を働いたのは日本国内でオフショアの関係者は問題がなかったのは後から出たけどまともにメディアは取り上げなかったし訂正すらしなかったのですから、扱いとしてはひどいものです。

と、言いつつも、期待できないマスメディアに依存せずに、自分からちゃんと発信して理解を得ることが一番大事、と思い、ぐっとこらえて下記のようにまとめてみました。本当は一番最初に書くべきだった内容ですが、今更、でも、今だからこそ。

そもそもオフショアってどこ?

オフショア、という言葉を聞いて、先ほどのような「どう自分が正しい知識と無関係な個人的な感覚と印象論でものを語る」かはさておき、筆者のように金融にとっぷりと身を浸かった人間と、例えば IT の開発に携わる人とでは、その印象は微妙に異なるはずです。こちらの世界だと、オフショア開発といえばベトナムやインドといった「海外の(低賃金な)開発拠点」をさしますよね。(ええ、私自身の1/10 はえせプログラマーのつもり、ですから一応両方を知っているつもりです。)

ファンドや証券化などのストラクチャー・ファイナンスといった金融の世界ですと、ケイマン諸島、ブリティッシュ・バージン諸島(BVI) 、バーミューダ、ジャージー島、ガーンジー島、モーリシャス、セイシェルあたりをまず指し、人によってはオランダ領アンチルス(2008年に既に解体されてましたね、そういえば)やマレーシア領ラブワン、香港、シンガポール、ミクロネシア、パナマ、バハマ、ニュージーランドなどなどを含めたり、あえて外したりします。ファンドの世界ですと、この他に有名なファンド設定地としてルクセンブルク、アイルランド、キプロス、マルタといったEU 加盟国を入れたがる人がいますし、オフショアに共通のあるルールに基づくと、ロンドンが実は世界最大のオフショアなんじゃない、という人すら出てきます。

で、オフショアってなんなの?

じゃあ、オフショアってどういう定義なの、と立ち返ればいいわけなのですが、その言葉の本源的なところを捕まえて語るならば、

オフショア(Offshore)は岸(shore)から離(off)れ海に流れる風、つまり「陸風」のこと。 反対語は、「海風」を意味するオンショア(Onshore)(cf. 海陸風)。 転じて陸から離れた沖合や、本拠の外の海外のことをさす。(Wikipedia)

となりますが、ITで使う際には「コスト」の要素も入れる必要があります(シリコンバレーでの開発をオフショアとは呼びませんよね。)し、同様に、金融、特にファンドの世界で見るならば、概して次の条件を満たす自国以外の国や地域を指す、と考えてよいかと思います。

  1. ファンドを設立するための法制度が完備されていて(従って、問題が起きた時に裁判をすることで解決出来る法務インフラや法制度の運営を管理する金融当局が整っている)
  2. かかる法制度に基づいて設立されたファンドに対して(特にその国の非居住者投資家に対する)一定の条件が満たされていると免税もしくは低税率での課税が適用される(ということで、それに満たさないファンドはその国の住人同様に課税されるリスクがある、ということでもあります。)
  3. 設立されたファンドに対する企業向け商業サービスの提供があること(従って、そのサービスを持って非居住者が居住することなくファンドを維持することが出来る、のです。)

この条件で見ると、前述の国や地域、都市であてはまるのは。。。

ケイマン諸島、ブリティッシュ・バージン諸島(BVI) 、バーミューダ、ジャージー島、ガーンジー島、モーリシャス、セイシェル、オランダ領アンチルス、マレーシア領ラブワン、香港、シンガポール、ルクセンブルク、アイルランド、キプロス、マルタ、ニュージーランド、

あたりになります。

オフショアっぽいのにオフショアじゃない。オフショアなのにオフショアじゃない振りしている。

というのも、ミクロネシアは実は法人税が税率が21%と日本のタックスヘイブン対策税制における外国子会社等に該当させないように設定されているので低税率にあたらないのです。ですので、持株会社や金融サービス会社の設立、あとは保険会社の設立には適しているとされていますが、ファンドの設立地には不向きと言えます。

また、ロンドンについては2つの意味でオフショア金融センターだと呼ばれていたのですが、一つは、世界最大のユーロダラー市場、すなわち、米国の外で取引される米ドルの流通市場という国外資産の非居住者の取引(いわゆる外外取引)に対する「場所貸し」、もう一つはファンド・マネジャーのような特定の業種(しかも一般的には高給取りになり得る、と思われている業種)に対する誘致目的での低税率の所得税の導入、や非居住者による不動産取引へのキャピタルゲイン課税の免除、といった、どちらかといえばオフショアの本来の意図というよりは「タックスヘイブン」の側面から来ていた話なのです。ちなみに、後者のうち優遇税制は金持ち優遇の批判が高まったことから終わり、それに伴ってロンドンからジャージー島やガーンジー島、スイスにその殆どが本拠地を移したと言われていますし、不動産取引への課税は2015年4月からそれぞれ始まっていますので、その意味ではロンドンは今では外外取引としてのオフショア市場として世界最大の取引量のある市場としての地位だけ(それでも十分なはずですが。。。)を保持している、と言えます。ですが、ファンドを始めとするストラクチャー商品を組成する本拠地としては非居住者にとってのメリットは見いだせません。

オフショアの偏見を正していただきます。

さて、少し世の中(というか、少なくとも、諸般の事情の某偉い人)にその偏見を払拭してもらわないといけないので、問題を整理しましょう。

1を見ればわかるように、ファンドの設立というのはそもそも当事国における法制度がしっかりしていないと世界中の投資を目的とした資金を集めては、そのファンドの目的の通りに投資が行われて、投資が終わった時に投資家の権利である投資資金と余剰収益を返還する、という約束事を法的に担保する仕組みがないことになり、誰もおっかなくて見向きもしない、という結果に終わるのです。その意味では、この日本語で書かれた文章を読んでいるあなたや私にとって一番安心して信頼できる日本の法律とファンド関連の権利義務関係を定める法制度という意味ではオフショア地域のそれはほとんど変わりがないか、さらに柔軟性や保全性を高めたものがあります。なぜかって?そうでなければ世界中のファンド設立地の間での競争に勝ってより多くの投資資金と投資事業、そしてそれに関連する雇用・ビジネスを誘致できないからです。

そこで絶対にこんな質問が出てくるのは容易に想像できます。

では、そんなにきっちりしているはずなのに、なぜオフショアを舞台にした詐欺案件が出てくるのか?

簡単なことです。同程度の法制度のある日本では詐欺案件がない、と言いきれますか?日本の金融商品取引法の第63条の適格機関投資家向け特例業務を用いて簡易的に設立された個人向けの投資案件で多くの高齢者などが詐欺を働かれた結果この特例業務の適用条件を変更しよう、という動きが起きていますよね?
同じように世界最大の投資家の本拠地であるアメリカ合衆国でも詐欺案件がなかった、でしょうか。Madoff はアメリカのオンショア・ファンドが舞台でしたよね?確かSEC監督下にあった運用会社が問題を起こしてませんでした?

オンショアだから安全で、オフショアだから危険、ではないのです。この辺りは以前の記事で書いていますのでこちらもご参照ください。

オフショア=低コスト、だから低クオリティ?

さて、先ほどの IT のオフショアの時にキーとなったのが「コスト」だと説明しましたが、ファンドにとってコストとはなんでしょう。

上記の3のような金融サービス会社に払う費用、例えば法務費用(弁護士先生ですね)、監査費用(会計士先生ですね)、ビークル管理費用(ファンド・アドミニストレーターや現地当局への登録・年次届け出費用)、資産保有・管理費用(カストディ、銀行、トラスティ)、ファンドの運営・統治費用(ディレクターや管理会社)、資産運用報酬(ファンド・マネジャー)あたりが必然的にかかります。

これもそこそこかかりますが、もっとインパクトのある「コスト」は、税金です。証券取引に関連するキャピタルゲイン課税や利金・分配金への源泉徴収、などなどありますが、利益の10-40% も取られる(アメリカが高税率の所得税から逃げるために国を捨てるのを防ぐために世界中に無理強いしている FATCA に至っては、もしアメリカの納税義務者でないことを証明できない場合には米国関連資産の売却額(利益相当分ではなく、元本も含めて、ですからね)の 30%を課税する)のは前述のサービス会社に払う費用から比べればとんでもないインパクトがあります。

そこで、ファンド設立地の一部、例えば、シンガポール、アイルランド、ルクセンブルク、キプロス、マルタ、ジャージー、ガーンジーあたりは、金融サービス会社への費用収入が設立地の雇用促進、結果として税収の増加につながることから、現地の金融サービス会社を使った場合にのみ取引に係る税金を減免する措置をとりますし、そもそも人の少ない(!)ケイマン諸島やBVI あたりは監査やトラスティは設立地にて当局からのライセンスを受けたもののみが受任することで課税関連を減免し、その他の機能、例えばアドミニストレーターは世界中のどこで行っても良いとすることでファンドの組成・運営に柔軟性を持たせることでより多くのファンド設定(と結果的にそれに伴う当局への当初及び年次の登録費用の支払い)を呼び込む、のです。

ちなみに、言いたくないですが、日本の私募投信を作る方が設立コストだけ見ればものすごく安いです。というのも、届け出書類はほぼ雛形状態ですので内容を埋めてコンプライアンス・オフィサーがチェックしたらおしまい。弁護士費用はほぼなし、なのですが。。。法務と法令遵守とがごちゃ混ぜになっているいい例、というべきかもしれません。それが正しいかどうかは本当に微妙です。

タックス・ヘイブンはタックスヘブン?

ところで、このいわゆるtax haven、正しく翻訳するなら「租税回避地」、ですが、ファンド設立地では課税しません、というだけの話、なのはよく誤解を生むのです。というのも、まず、オフショア拠点の居住者や前述のように非居住者による投資を行うためのファンドが適切にストラクチャーされなかったり手続きミスなどのせいで減免措置を受けられない場合には課税される、ので、まず租税回避地は全く課税しない、わけではないのです。そりゃそうです、現地の政府を維持するには税収が必要なのですから。

また、もっと大事なポイントとして、課税が行われる場所が、(1) 実際の投資活動が行われるところ、(2)投資活動の拠点、そして(3) 投資家の所在地、と3つ可能性があるうち、ファンド設立地が(2) にあたり、そこが租税回避地であり減免措置を受けたとしても、(1) や(3) で課税される可能性が残っているのです。例えば、(1) でいうならば、ケイマン諸島籍のファンドが日本国内で発行される国債や公社債を保有した場合の利金に対しては源泉徴収税が15%かかります。また、(3) について言うならば、単純なケースであれば私たちが日本の証券会社で購入したケイマン諸島籍のファンドを売却して利益が出た場合にはその利益に対して日本で課税されます。とすると、(3) のような最終投資家の課税問題は(2) としてオフショアというか租税回避地を使ったところで最終投資家の拠点で課税されるのです。ですが、(2) で課税されて(3) で課税されるよりは投資効率が高いので好ましいと考えることから(2) にオフショアが選ばれるのです。

お金だって人と同じように効率的に移動する。

結果として、飛行機のハブ空港に地方空港から飛行機が集まって人が集まり、ハブ空港間のフライトが増えることでより多くの人や物が効率よく運べるのと同じように、オンショアからオフショアに投資資金が集まり、オフショアからよりたくさん集まった資金を使って世界中に投資してリターンを上げていくことがより効率的であり、今は少なくともその流れでオフショアに資金が流れ込んでいるの事がある意味合理的な実務の結果による、世界的な流れなのです。

という事で、もし、ここまでちゃんと読みきってもらえたならば、その諸般の事情の某氏にもオフショアがいうほど怪しくも怖くもないところだと理解していただけたのではないか、そう期待してますし、そうでないとしたら、私の説明不足という事で、コメントでご指摘いただければ加筆をしていこう、と思うのでしたとさ。

ファンドって何?今更だけど、基本に帰ろう。

1円が積み重なってファンドになる。
1円が積み重なってファンドになる。
諸般の事情で、過去の記事をこことプライベートのブログと両方共読み返したのですが、そもそもファンドって何?という根本的な話を書いたことがなかったようです。

いや、あるにはあるんですよ。ずいぶん前の大学でのレクチャーを焼き直した記事として一つ。でも、何か整理されていない感じが。。。
なので、ちょっと描き直してみました。諸般の事情で。
どうでしょう。

In a nutshell: ぶっちゃけ、ファンドって何?

法務的な側面はさておいたところで、ファンドとは一体なんでしょう。端的に言えば
  1. 複数の出資者により資財をまとめ、
  2. 一つの目的を遂行するため
の行為、と言えるのではないでしょうか。
どうしても、ファンドというと投資するためにいろいろと作業し、運営していく、というイメージを持ちがちですが、「fund」という言葉を辞書で引けば「基金」という言葉が出てきますが、その際に使われるのは、例えば育英資金の提供であったり、研究費用の援助、というものがまず思いつくところであり、その際には基金として供された資金の運用は二の次、というより、そもそも運用して基金を維持しているなんてあまり思われないでしょう。とはいえ、単に資金援助を行って何も運用をしなければ基金は日々減少していくのも想像に難くなく、となれば資金運用を横で行っているんだろう、くらいにも考えられるわけです。とすれば、私たちが日常思いつく「ファンド」というものは「投資」行為が目的であり、そのリターンを出資者である投資家に返すことが目標になる、ということになります。

ケーススタディに見る、個人投資とファンドでの投資の違い

では、その基本的には比較的シンプルな目的を達成するために、私たちはどうしたらよいのでしょうか。そこで、幾つかのケースを考えていくことにしましょう。

Case 1. ミヤタさんはとあるルールで日本株の投資をすると確実にリターンをあげられる、という秘密の投資のルールを作り上げました。彼はそれを実践するために、自分の名義の証券口座を開けて投資を行いました。

これは、どう見ても個人投資家が自分の思惑で投資を行う、というものですので、ファンドとは呼べるものではないですよね。でも、これではどうでしょうか。

Case 2. ミヤタさんはとあるルールで日本株の投資をすると確実にリターンをあげられる、という秘密の投資のルールを作り上げました。彼はそれを実践するために、自分の名義の証券口座を開けて投資を行いました。彼は、実際に稼いでいる証券口座の履歴をお友達のシオカワくんに見せると「僕にもそのリターンに一口乗せろよ」と、彼の資金をミヤタさんに預け、彼はシオカワくんから預かった資金と自分のそれまでの投資資金を一緒に証券口座において運用を行いました。

多分、こういう話は、株に限らず、FXや、はたまた宝くじの共同購入や競馬の馬券の購入に限らずあちこちで見られる話だと思いますが、先ほどのファンドの基本原理である「複数の出資者の資財」が「一つの目的」に供される、というルールに当てはまるので、一つのファンド、をこれだけで出来てしまう、とも言えます。とはいえ、これでは、私たちの期待する「ファンド」からいろいろな意味で程遠い形ですので、ここに、いろいろな側面から「形式」を入れていく、という作業が必要になります。
例えば、Case 2は単純な「口約束」でお金を預けただけなので、シオカワくんの投資した証拠やいつどうやって預けたお金が返ってくるのか、という約束事が書面上どこにも残りませんし、ミヤタさんもお金を預かってそれを彼の秘密の投資のルールによって投資することを約束することもしていません。そこで、日本の法律でこのような、実際に資金を運用する(実際には事業を行う、ですが)ために、資金を提供する、というケースを契約にする「匿名組合」という法律上のルールがあります。こうすると、

Case 3. ミヤタさんはとあるルールで日本株の投資をすると確実にリターンをあげられる、という秘密の投資のルールを作り上げました。彼はそれを実践するために、自分の名義の証券口座を開けて投資を行いました。彼は、実際に稼いでいる証券口座の履歴をお友達のシオカワくんに見せると「僕にもそのリターンに一口乗せろよ」と、シオカワくんとミヤタさんの間でシオカワくんはミヤタさんにお金を預け、ミヤタさんはその資金と自分の資金を合わせて秘密の投資ルールに基づく投資を、自分の証券口座を通じて行う、という匿名組合契約を締結して、シオカワくんはミヤタさんに資金を預け、ミヤタさんはその資金と自分のそれまでの投資資金を一緒に証券口座において運用を行いました。

と、なります。これでなんとなく日本の法律に基づく契約で守られた、ような形になりました。実際、この匿名組合契約を使って投資を組成し、個人投資家に売られるケースも散見されますが、新しい資産などへの投資を行う必要があるために、既存の法整備が追いつかないがために使わざるをえないのか、もしくは、金融庁のホームページに事業停止の勧告をされたと掲載されねばならないようなケースになるか、そう言ったものも含まれるので気をつける必要があります。

より企業化された投資基盤に

ところで。匿名組合契約を見ると、普段見るファンドに比べて投資家保護の観点で欠落しているものがいくつか見られます。
例えば、一番大きな点としては、シオカワくんが預けたお金はミヤタさんのお金と一緒くたになってミヤタさんの証券口座にあるわけですから、シオカワくんが一度預けたお金は表向きはミヤタさんのお金になってしまっています。その結果、シオカワくんのお金が本来の投資以外にも使われてしまう可能性が否定できない、のです。
また、ミヤタさんは秘密のルールで運用する、と言っていますが、自分のお金だけで運用するだけならば、すっからかんになっても自己責任、といえばおしまいになりますが、シオカワくんのお金を預かる、という点で見ると、シオカワくんにとって、仮に秘密のルールで運用した結果として損失を生じたとしても、例えば途中で諦めて運用を中止して残った資金をシオカワくんに返還する方がベストとなる、といった判断が出来るか、という運用者としての判断が適切にできるのか、という疑問が起こりえます。(運用を中止して資金を返しましょう、なんて判断できる運用者は、とはいえ、実際マーケットにどれだけいるか。。。いないことはない、のは知っていますが。。。)
合わせて、ミヤタさんはお友達のシオカワくんにこの投資話をしていましたが、これがシオカワくんだけでなく、別のお友達のシラキさんや、もっと言えば知り合いでもなんでもない人たちにも乗らないか、と言うかも知れません。そうなった場合に、友人や知人のみならず不特定の人たちにこのような投資機会が提供される場合に、それに投資するのは自己責任で、というわけにいかない、という問題が出てきます。

In the end: 結局どんなスキームを使うのが良いの?

これらの問題を解決するのが、前者が集団投資スキームとして一般的に採用されているユニットトラストであり、会社型ファンドであり、またリミテッドパートナーシップ(日本法でいうところの、投資有限責任組合スキーム)になるのです。
二番目の話については、このような運用を生業として行うならば、運用者の能力や運用体制などに一定の条件を課すようにしましょう、という運用業登録という話になります。
そして、最後については、ファンドの募集や販売に関して、一定の規制や手続きを課すことで、ファンドへの投資機会が、投資家の投資判断に相応のものが提供されるようにする、という募集・販売に関する規制、という話になります。
これらはどれも法令等が定められ、それぞれが適用される国や地域の規制当局の監視のもと運営されていくのですが、前者は、ファンドを設立する場所、すなわち、日本国内で設立するなら日本法が、ケイマン諸島で設立するならばケイマン諸島の法律のもとで設立されますし、二番目の場合、運用を判断する運用業者の所在地の国の法律等が適用され、最後については、ファンドの募集や販売が行われる場所、今私たちが念頭に置くのは日本国内で、と思えば日本法が、ということになります。
そうすると、ファンドを作りましょう、運用しましょう、募集しましょう、というだけで、それぞれでターゲットになる場所を検討し決定する必要が出てくる、ということになるのです。

アジア地域ファンドパスポートの話が出てきたのでUCITs とかも合わせて考えてみた

ファンドの世界でのパスポートって?お金が旅する為に必要なの?
ファンドの世界でのパスポートって?お金が旅する為に必要なの?
今日、というかもうすでに昨日(というか、実は先週の金曜である9月11日)、金融庁のホームページでこんな発表がありました。
これは、このページのリンクにあるように、「2013 年 9 月 20 日にインドネシアのヌサドゥアで各国財務大臣が 署名したアジア地域ファンド・パスポート創設のための意図表明文書に全体と して代わるもの」ということで、豪州、日本、韓国、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール及びタイが中心になって、このアジア地域でのファンド・パスポートの制定に向けて協力していく、というそうなのです。

ファンド・パスポートとは?

で、いきなり、ファンド・パスポート、と言われてもピンとこない方もいるように思ったりするので、ちょっと解説させていただいちゃいます。

通常、ファンドを(世界中のどこでもいいのでどこかの国か地域で、ファンドを作るための制度を利用して)単純に設立しても、通常はそのまま世界中にいる投資家に販売というか投資家に勧誘し投資を募るすることは出来ません

そもそも、ファンドを販売するには?

え?と思ったでしょ。ええ、一般的にはファンドの契約書等には投資を募る時の手続きやその資金の運用方法、そのリスク、最後に投資資金を変換するための手続きについて記載するものなのです。そこがファンドの運営にとって一番大事なところですので。

でも、ファンドを作って大事なことはソレだけではないですよね。大事な投資家を募るにあたり、その募集の仕方についていろいろと制限などを明示しなければならないのですが、そもそも、ファンドの契約書はファンド設立国の法律に基づいて作成されるものですので、ファンド設立国での募集ルールを最低でも記載しますが、もし設立国の外で販売するのが最初から予見されるならば、募集行為がファンドの設立国の外で行われるその国独自の募集のルールに基づく記述をして、かつ、ファンドの運用方法や投資家への制限、(この手の話で一番多い)投資持分の譲渡制限の話、といった波及的な影響をその国の法律と照らし合わせて反映させねばならない、という、単純に翻訳すればいいわけではない作業があるのです。しかも、これが複数の国で販売されるとなると、ファンド設立国とファンド販売国の数だけの当局規制や法律の影響の最大公約数の折り合いを見つけなければならない、というかなり苦痛な作業が発生することになります。

で、ファンド・パスポートの概念。

ひとたびファンド・パスポートの基準に合致したら、パスポートの有効な複数の国で共通する、ファンドの募集するための基準を充している、とみなしてもらえるので、上記でいうところの

個別の「国独自の募集のルールに基づく記述をして、かつ、ファンドの運用方法や投資家への制限、(この手の話で一番多い)投資持分の譲渡制限の話、といった波及的な影響をその国の法律と照らし合わせて反映」する

という作業が複数国に対して一瞬にして完了する、ということで、ファンドを設立して運用する側からするとその分のドキュメンテーションの作業が簡略化され、その結果ファンドレイズの意味で効率化が計れるからメリットがある、ように思える概念、です。

これが特に個人投資家向けの公募の基準を満たすファンド・パスポートだとしたら、複数国の公募市場で販売できちゃうからより多くの AUM を積み上げられるのでは、という期待も大きくなる、のでそりゃあ、アセット・マネジメント業界的には期待が大きいですし、ファンドを売るディストリビューター(日本では証券会社や銀行)あたりも商品の幅が期待できるから、と期待を膨らませるでしょうし、当局としても自国市場の活性化が期待できるから頑張って制定しようとする、という(もし銀行員が好きな表現を使うなら)三方よし、なアイデアとされています。

著者の予見するファンド・パスポートの未来とは?

で、お気づきかと思いますが、著者は実は、このファンド・パスポートについては懐疑的な思いで見ています。なので、さっきから語尾が「期待される」だの、「されている」だの、とダイエットの売り口上に対する期待感くらい他人事なのです。その理由とは。。。

ファンド・パスポートの先駆である UCITs が完全なパスポートの役割の機能を果たしきれていないから

UCITs とは、ざっくり言えばヨーロッパ連合版のファンド・パスポートで歴史は古く、1985年に最初の Undertakings for Collective Investment in Transferable Securities Directive = 譲渡可能証券に対する集団投資の引き受けに関する指令がEUで定められたのが始まりです。で、この「譲渡可能証券に対する集団投資」がいわゆるファンド、特に個人投資家等が投資する公募ファンドを指しているので、ヨーロッパにおける公募ファンドの募集・販売に関する共通ルールに関する規定、として認識されています。この指令は今では UCITs IV とバージョンを重ねており、もともと上場株や流通性の高い債券といった証券への投資をターゲットにしていたものが、先物やスワップを許容し、スワップを使った商品のおかげで、間接的にではあるものの、ヘッジファンドへの投資と同等のパフォーマンスを得ることまで出来てきました。

ちなみに、2008年の信用危機により特にヘッジファンドに対する強い規制の要請があったことから、UCITs ファンドに属する公募ファンド以外のいかなるファンドに対して、AIFMD = Alternative Investment Fund Manager Directive = オルタナティヴ投資ファンド運用会社指令が制定されたことで、ごく一部の例外を除くと、ヨーロッパ連合で募集されるファンドは UCITs か AIFMD のいずれかに規制されることになる、とされています。ですので、AIFM になるコストを考えたら、と、UCITs プラットフォームに乗っかって、トータルリターンスワップを使ったスキームで自分たちのヘッジファンド戦略を UCITs 化する流れが最近強まっていたり、投資家サイドも UCITs 化されたヘッジファンドを複数投資する Fund of UCITs Fund に投資する傾向が強まったり、と、UCITs がヘッジファンド業界で再評価されているという話もあったりします。

とはいえUCITSってパワフルですよ。EU域外では

また、UCITs がヨーロッパの公募規制のある意味代名詞となっていることで、何が起きたかというと、ヨーロッパでの公募規制だから、という「イメージ」が先行した結果、ヨーロッパ以外の投資家が UCITs に適合したファンドに投資する、ということが起こって、2013年の終わりには実際には UCITs に適合したファンドがヨーロッパ以外の国含めて86カ国で販売のための当局への登録がなされています(PwC Ireland 調べ)し、ヨーロッパ以外の国の機関投資家の一部では UCITs であることが投資基準の一つにしている、というものすらあります。そのおかげで、UCITs の最大の設立国である Luxembourg と Ireland はアジア各国でファンドを作るなら、運用会社の海外拠点を作るなら我が国へ、と積極的な誘致活動をし、毎年派手なロードショウをしています。

閑話休題。

あれ、と思った読者の方がいると思います。86カ国で、何かしら UCITs 登録されたファンドが現在販売されている、という事実があるのに、他方で著者はヨーロッパ域内でのパスポートとして機能しきれていない、と主張する矛盾。

UCITs の実情

実際は、こういうことなのです。販売登録のためのパスポートとしての概念は EU 域内での資本流通のための基本ルールとしては存在するのですが、各国で公募ファンドに対する要求基準が微妙に異なるため、結果として商品組成の時点で販売のターゲットとなる国に対するカスタマイズがどうしても残る、というものなのです。前述の PwC Ireland の資料の12ページに UCITs が如何に EU 内でパスポートとして機能するか、という説明をしているのですが、ここでも留保している通り

国によっては追加の書類や、サービスプロバイダーを要求するケースがある、

のです。ということは、Luxembourg や Ireland のようなファンド設立の意味では中心的なオンショア国 (や、Malta や Cyprus といった、これらに続くファンド設立を誘致している国)で作るだけでなく、普通に日本で国内投信を作って国内で売るのと同じように France や Germany で作って売る、というケースにおいても国内だけで募集するか、他国でも募集するか、という観点で UCITs-compliant にするかどうか、という検討が必要になり、後者になった場合には、ターゲットになる国の公募規制も合わせて考え、準備する必要がどうしても残る、ということなのです。

そこで、たぶん疑問が一つ出てきます。

じゃあ、UCITs をヨーロッパの外でこれだけ売っているのは、UCITs をそれぞれの国でパスポートとして許容しているから、ではないのか?

よく誤解のある質問なのできっぱり申し上げます。

違います(きっぱり)

日本を例にとるならば、日本国外のファンド商品を日本国内で募集する場合には、日本証券業協会が定める「外国証券選別基準」に合致する必要があります。これは、日本と同様のファンドに関する法規制が定められている国において設定され、かつ日本独自の公募のための投資制限やファンド関係者に対する要請、法的構成に対する要請(例えばユニットトラストならば信託宣言型は不可)、そして当該ファンドを販売する際にそれを日本証券業協会に届け出る代行協会員が必要(言い換えれば、商品の国内における対日本証券業協会の窓口をする日本証券業協会の会員が必要)など、あるので、UCITs-compliant だから顔パス、ということは絶対ないのです。

同じことは、UCITs が大好き、と言われている香港もシンガポールも同じで、運用会社の現地法人がいないとダメ、など、それぞれの国における規制があるため、持ち込む際にはそれぞれのローカライゼーションをきちんとする必要があるのです。

ローカライゼーションとは法令遵守だけじゃない。言葉だって売り方だって現地化しないとだめ。

言い換えれば、販売のための法的要件が整ったらどこでも売れるわけではなく、当然に商品が販売するために魅力的であり、かつ国内で特に個人投資家に販売されるならば、実際に説明し販売するローカルの販売会社(証券会社や銀行など)が責任をもって販売できるための体制も維持されるようにしないといけない、のです。そのためには、実は、開示資料がすべてローカルの言語に翻訳される必要もあるでしょうし、開示内容については、日本ならば昨年末から開始した運用報告書におけるパフォーマンスと一般的な市場ベンチマークとの比較、といったその国特有のルールに適合することも必要になってくるのです。

では、アジア地域ファンドパスポートの話に戻しましょうか。

これはまだ作業が始まったところですので、今後に期待したいところは当然いろいろありますが、日本での公募ファンドにおける「個人投資家を保護するため」という背景でいろいろと導入された開示要求や、根っこのところでいえば商品の受け渡しのルール(資金が申込日に受け渡さずに約定完了してから数日後に行う、という株や債券の慣習を引きずっている点)などが海外のスタンダードと異なること、さらに、海外ファンドですので外国籍投資信託としての登録になることで、日本の証券会社で取り扱える会社数が極めて少ないあたりで、海外ファンドが国内にパスポートをもって入ってくる時の事実上の障害がいろいろ残ってしまうのではないか、という懸念があります。

他方で、日本語以外でのレポーティングや販売サポートを行わねばならない、という点で今までそこに注力を注いできていない国内の運用会社さんが海外市場にパスポートを使って進出したいとどれだけ思えるか、これも引っかかります。その点ではヘッジファンドマネジャーの方が海外投資家への接点が多い分ハードルが低いはずですが、公募化したいか、というところから始まるので。。。

ということで、これを機にあらゆる面で海外と国内との間での違いというものが意識され、そこにどう歩み寄るか、という話が始まればいいなぁ、と個人的には思うのですが、重い話になる、だろうなぁ。。。今後も注視していきたいトピックです。

今さらだけど、日本で金融商品を募集する方法を改めて確認してみる

投資家さんを集めるのってこんなに和気藹々ではないのですが
投資家さんを集めるのってこんなに和気藹々ではないのですが
恥ずかしいことを一つ。
つい最近まで、拡大少人数私募のプロ投資家の人数制限が250人のままだった、と思い込んでいました(苦笑)多分2007年以降にちゃんと拡大少人数私募を立ち上げていた人ならば、突っ込むところがあれこれある知識だと言わざるを得ないのですが、考えてみれば 2007年以降は公募ファンドにしか縁がなかったなぁ、と思うとこんなことになるんですねぇ。ということで、各国の規制、法制度は日々変わっていくのはケイマンとかジャージーを見ているとよくわかるのですが、まさか日本で。。。ということがあったので、物知り顔でちょっとこのあたりの整理をしてみたいと思います。実際、周りのプロな人たちもこのあたりの話が微妙だったことがちらちら見られたので。。。

本来の私募の定義とは

そもそも、拡大少人数私募、って書きましたけど、それってなあに、から始めた方がよさそうですね。とはいえ、「拡大」って言葉がついているので、そもそも拡大されていない「少人数私募」から言えば、49名までに有価証券の募集が可能となる、日本国内での募集方法のこと、というのがざっくりとした説明になるかと思います(法律に即した表現は後半で。。。)。

よく縁故債とか言われますが、例えば身内だけでお金を集めてビジネスをやろう、というときに、その資金調達方法に上場株式や公募投信のような高度な規制と要件を求めると無駄な時間と労力がかかりますし、投資先の内容とかリスクとか(リスクは微妙か。。。)は分かっているよね?身内とか近しい人とか、少人数だから別途膝を交えて話してるよね?という前提のもとで、募集のための法的要請を減らしましょう、という制度が「私募」の中でも「少人数私募」の意図するところ、のようです。

気づいたら2007年までの世界では

で、これを「拡大」しよう、というのは、投資を生業としているような人と、普通の人とを分けて考えたときに、普通な人はもし何かあった時の影響を49人に留められるならば良しとするけれども、投資を生業としている人ならば、リスクとかよく理解できるわけだから公募投信ほどの保護をする必要もないので、普通な人を横において、それなりの人数まで投資できるようにしてあげるのもいいのでは、と考えたと思われる結果、投資を生業としている「適格機関投資家」は 250人まで、普通な人、言い換えると「適格機関投資家ではない人」は 49人まで、それぞれ投資できるように「少人数私募」を「拡大」しよう、としたのが、この「拡大少人数私募」という制度「でした」。

そうなんで、調べたら「でした」になっていたのです。しかもなんと2007年に証券取引法が金融商品取引法に変更されたタイミングで。。。

今時の世界では

では、今現在、金融商品取引法上はどうなっているか、というと、該当する第2条3項を丸ごと引用するならば。。。

この法律において、「有価証券の募集」とは、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘(これに類するものとして内閣府令で定めるもの(次項において「取得勧誘類似行為」という。)を含む。以下「取得勧誘」という。)のうち、当該取得勧誘が第一項に掲げる有価証券又は前項の規定により有価証券とみなされる有価証券表示権利若しくは特定電子記録債権(次項及び第六項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第一項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第一号及び第二号に掲げる場合、当該取得勧誘が前項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利(次項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第二項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第三号に掲げる場合に該当するものをいい、「有価証券の私募」とは、取得勧誘であつて有価証券の募集に該当しないものをいう。

 多数の者(適格機関投資家(有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者をいう。以下同じ。)が含まれる場合であつて、当該有価証券がその取得者である適格機関投資家から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)を相手方として行う場合として政令で定める場合(特定投資家のみを相手方とする場合を除く。)
 前号に掲げる場合のほか、次に掲げる場合のいずれにも該当しない場合
 適格機関投資家のみを相手方として行う場合であつて、当該有価証券がその取得者から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合
 特定投資家のみを相手方として行う場合であつて、次に掲げる要件のすべてに該当するとき(イに掲げる場合を除く。)。
(1) 当該取得勧誘の相手方が国、日本銀行及び適格機関投資家以外の者である場合にあつては、金融商品取引業者等(第三十四条に規定する金融商品取引業者等をいう。次項、第四条第一項第四号及び第三項、第二十七条の三十二の二並びに第二十七条の三十四の二において同じ。)が顧客からの委託により又は自己のために当該取得勧誘を行うこと。
(2) 当該有価証券がその取得者から特定投資家等(特定投資家又は非居住者(外国為替及び外国貿易法 (昭和二十四年法律第二百二十八号)第六条第一項第六号に規定する非居住者をいい、政令で定める者に限る。)をいう。以下同じ。)以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当すること。
 前号に掲げる場合並びにイ及びロに掲げる場合以外の場合(当該有価証券と種類を同じくする有価証券の発行及び勧誘の状況等を勘案して政令で定める要件に該当する場合を除く。)であつて、当該有価証券が多数の者に所有されるおそれが少ないものとして政令で定める場合
 その取得勧誘に応じることにより相当程度多数の者が当該取得勧誘に係る有価証券を所有することとなる場合として政令で定める場合

普通は、なんのこっちゃ、ですよね。特に金融商品取引法はいろいろなことの積み上げで出来ているので仕方ないと言えば仕方ない、ですが。。。でも、読み解かないといけないので、やりましょう。

条文を読み解いていく

まず、最初。のっけから長いですが、バラしながら読むと。。。

「有価証券の募集」とは、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘(これに類するものとして内閣府令で定めるもの(次項において「取得勧誘類似行為」という。)を含む。以下「取得勧誘」という。)のうち、

  • 当該取得勧誘が第一項に掲げる有価証券又は前項の規定により有価証券とみなされる有価証券表示権利若しくは特定電子記録債権(次項及び第六項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第一項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第一号及び第二号に掲げる場合、
  • 当該取得勧誘が前項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利(次項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第二項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第三号に掲げる場合

に該当するものをいい、

「有価証券の私募」とは、取得勧誘であつて有価証券の募集に該当しないものをいう。

。。。とりあえず、有価証券の募集に当たらない取得勧誘行為をすると、私たちが先ほど古い考え方で検討した私募に当たる、ということがわかります。じゃあ、有価証券の募集って何よ、となるわけですが、まず

新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘

ということなので、既に発行されている有価証券の譲渡による取得(セカンダリーマーケットでの売買)は含まれない、ということですね。まぁ、ファンドの場合(例外を除くと)通常、ファンドに持ち分を新規で発行してもらうことで取得しますので、継続的に募集なり私募なりしていることになるわけです。で、そんな勧誘行為もろもろをひっくるめて「取得勧誘」と呼ぶそうですが、その中でもある条件だと、引用の後段にあった第一号と第二号に当たる場合、もう一つの条件だと第三号に当たる場合、だと募集に当たってしまう、らしい。じゃあ、それぞれの条件とは何か、というと、最初の方は

第一項に掲げる有価証券又は前項の規定により有価証券とみなされる有価証券表示権利若しくは特定電子記録債権(次項及び第六項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第一項有価証券」という。)

と、この商売をやっている人が時々使いますね、第一項有価証券。いわゆる金融商品取引業者の中でも上場株式とか国債とか、社債とか、投信とか、リース債権流動化商品とか、あと、このあたりが、券面不発行で投資家の管理が電子化されているもの、あたりの、いわゆる流動性の高い有価証券を扱える第一種の取引業者さん達が扱えるもの、をひっくるめていうのですが、その時には第一号と第二号を参照、らしい。じゃあ、その第一号とは何か、というと

 多数の者(適格機関投資家(有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者をいう。以下同じ。)が含まれる場合であつて、当該有価証券がその取得者である適格機関投資家から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)を相手方として行う場合として政令で定める場合(特定投資家のみを相手方とする場合を除く。)

ふむふむ。多数の者、という定義がどこかでされるのですが、それは調べるとして、その多数の者を相手方として取得勧誘する場合として「政令で定める場合」、ただし、

(適格機関投資家(有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者をいう。以下同じ。)が含まれる場合であつて、当該有価証券がその取得者である適格機関投資家から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)

ということは、多数の者に適格機関投資家はカウントしないのね。あと、

(特定投資家のみを相手方とする場合を除く。)

とあるから、特定投資家という人たちのみを相手にする場合も外れるということなのね。というのがわかります。となると、じゃあ、「多数の者」に対する取得勧誘で「政令で定める場合」を見る必要があるのですが、それぞれまた、引用するなら実は一つでまとまっていて

(金融商品取引法施行令)第一条の五法第二条第三項第一号に規定する多数の者を相手方として行う場合として政令で定める場合は、五十名以上の者を相手方として有価証券の取得勧誘を行う場合とする。

なのです。ん?50人以上?だから私募は49人まで、という数字が出てくるんですね。ということは、50人以上への取得勧誘を行う場合が募集に当たる、49人まで(ただし適格機関投資家の数は含まない)は募集ではなくて私募、というようなイメージが出てきます。ん?募集、って公募、だよね。。。でも、第二号も読まないといけない。なんだっけ。。。

 前号に掲げる場合のほか、次に掲げる場合のいずれにも該当しない場合
 適格機関投資家のみを相手方として行う場合であつて、当該有価証券がその取得者から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合
 特定投資家のみを相手方として行う場合であつて、次に掲げる要件のすべてに該当するとき(イに掲げる場合を除く。)。
(1) 当該取得勧誘の相手方が国、日本銀行及び適格機関投資家以外の者である場合にあつては、金融商品取引業者等(第三十四条に規定する金融商品取引業者等をいう。次項、第四条第一項第四号及び第三項、第二十七条の三十二の二並びに第二十七条の三十四の二において同じ。)が顧客からの委託により又は自己のために当該取得勧誘を行うこと。
(2) 当該有価証券がその取得者から特定投資家等(特定投資家又は非居住者(外国為替及び外国貿易法 (昭和二十四年法律第二百二十八号)第六条第一項第六号に規定する非居住者をいい、政令で定める者に限る。)をいう。以下同じ。)以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当すること。
 前号に掲げる場合並びにイ及びロに掲げる場合以外の場合(当該有価証券と種類を同じくする有価証券の発行及び勧誘の状況等を勘案して政令で定める要件に該当する場合を除く。)であつて、当該有価証券が多数の者に所有されるおそれが少ないものとして政令で定める場合

。。。長い。しかもいろいろなケースがある。。。バラすか。とりあえず、

前号に掲げる場合のほか、次に掲げる場合のいずれにも該当しない場合

いろいろなケースがあるけど、前号に該当しないで、かつそれに当たらない場合が募集で、当たっちゃうと私募になるなのね。って何があるのやら。。。まず

 適格機関投資家のみを相手方として行う場合であつて、当該有価証券がその取得者から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合

ん?適格機関投資家にのみ相手方とするし、仮に有価証券が譲渡されるとしても適格機関投資家にのみ譲渡されるような仕組みであれば、募集/公募に該当しない、のか。って、これ、いわゆるプロ私募 (QII-only) じゃない。次は。。。

 特定投資家のみを相手方として行う場合であつて、次に掲げる要件のすべてに該当するとき(イに掲げる場合を除く。)。
(1) 当該取得勧誘の相手方が国、日本銀行及び適格機関投資家以外の者である場合にあつては、金融商品取引業者等(第三十四条に規定する金融商品取引業者等をいう。次項、第四条第一項第四号及び第三項、第二十七条の三十二の二並びに第二十七条の三十四の二において同じ。)が顧客からの委託により又は自己のために当該取得勧誘を行うこと。
(2) 当該有価証券がその取得者から特定投資家等(特定投資家又は非居住者(外国為替及び外国貿易法 (昭和二十四年法律第二百二十八号)第六条第一項第六号に規定する非居住者をいい、政令で定める者に限る。)をいう。以下同じ。)以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当すること。

って、そもそも、特定投資家って、さっきから出てきてるけど、なんだっけ。。。また引用すると結構面倒なので、金融庁のホームページでまとめたものがあるから見ていただきたいのですが。。。適格機関投資家のようなプロから個人でもかなりの金融資産と証券投資の経験の多い人から、結構幅が広い人を対象にしてますね。で、そんな、ある意味裾野の広い「プロ」達の間でだけ流通するような仕組みがあって、かつ一般投資家(アマチュア)になりたくてもなれない人以外に対する取得勧誘行為が証券会社の立場で言うなら相手からのリクエストによるものもしくは「自己のために取得勧誘を行う」って自社の証券の勧誘の場合ということ、なんでしょうねぇ、という条件を満たすと、これも募集/公募に該当しないのか。適格機関投資家の場合に比べてちょっと制限がありますよねぇ。

なんて、思っていたら、実は、この特定投資家向けですが、参照条文等の詳細をちょっと割愛するのですが、投資家への告知義務が金融商品取引法とそれが参照する特定有価証券開示府令、そして、それがさらに参照する金商法の発行体情報の提供と公示のルールを決めていて、って、実はその決めているのが「証券情報等の提供または公示に関する内閣府令」にさらに参照が飛んで、結果、何を言っているかというと、東京証券取引所のプロ向け市場(旧 Tokyo AIM / 現 Tokyo PRO Market)に上場しているものだけが該当する、という仕組みになっているのです。ということは。。。特定投資家向け私募の仕組みってのはこのプロ向け市場のためだけにある、ということなのですねぇ。

ということで、あと一つ、条件が残ってましたね。

 前号に掲げる場合並びにイ及びロに掲げる場合以外の場合(当該有価証券と種類を同じくする有価証券の発行及び勧誘の状況等を勘案して政令で定める要件に該当する場合を除く。)であつて、当該有価証券が多数の者に所有されるおそれが少ないものとして政令で定める場合

って、また政令にお伺いしなければならない。最初の政令で定める要件って何かというと、例の施行令でして。。。

第一条の六法第二条第三項第二号 ハに規定する政令で定める要件は、当該有価証券の発行される日以前六月以内に、当該有価証券と同一種類の有価証券として内閣府令で定める他の有価証券(その発行の際にその取得勧誘が同号イに掲げる場合及び第二条の十二に規定する場合に該当するものであつた有価証券並びにその発行の際にその取得勧誘が有価証券の募集に該当し、かつ、当該有価証券の募集に関し法第四条第一項 の規定による届出又は法第二十三条の八第一項法第二十七条 において準用する場合を含む。)に規定する発行登録追補書類の提出が行われた有価証券を除く。以下この条において「同種の新規発行証券」という。)が発行されており、当該有価証券の取得勧誘を行う相手方(当該有価証券の取得勧誘を行う相手方が適格機関投資家であつて、当該有価証券が第一条の四に定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)の人数と当該六月以内に発行された同種の新規発行証券の取得勧誘を行つた相手方(当該同種の新規発行証券の取得勧誘を行つた相手方が適格機関投資家であつて、当該同種の新規発行証券が第一条の四に定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)の人数との合計が五十名以上となることとする。

長いので要約すると、新規募集のはずだけど同種の有価証券を過去6か月以内に発行していて(同種の新規発行証券って、やつね)、この過去のものと今回のものの取得勧誘相手が合計50人以上になる場合(ただし、イケメンは除く適格機関投資家は除く)、ということらしい。ということは、仮に同種の新規発行証券であっても、6か月以上間が空けば許してもらえるか、というと。。。次の政令のお言葉を聞くならば。。。(これも長いんだよねぇ。。。)

第一条の七法第二条第三項第二号 ハに規定する政令で定める場合は、次に掲げる全ての要件に該当する場合とする。
 当該取得勧誘が特定投資家(法第二条第三十一項 に規定する特定投資家をいう。以下同じ。)のみを相手方とし、かつ、五十名以上の者(当該者が適格機関投資家であつて、当該取得勧誘に係る有価証券が第一条の四に定める場合に該当するときは、当該者を除く。)を相手方として行う場合でないこと。
 次のイからハまでに掲げる有価証券の区分に応じ、当該イからハまでに定める要件に該当すること。
 株券等 次に掲げる全ての要件に該当すること。
(1) 当該株券等の発行者が、当該株券等と同一の内容(株式(優先出資法 に規定する優先出資及び資産流動化法 に規定する優先出資を含む。)若しくは出資に係る剰余金の配当、残余財産の分配、利益を用いて行う出資の消却又は優先出資法第十五条第一項 (第二号に係る部分に限る。)の規定による優先出資の消却についての内容に限る。)を表示した株券等であつて法第二十四条第一項 各号(法第二十七条 において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するものを既に発行している者でないこと。
(2) 当該株券等と同一種類の有価証券として内閣府令で定めるものが特定投資家向け有価証券でないこと。
 新株予約権証券等 次に掲げる全ての要件に該当すること。
(1) 当該新株予約権証券等に表示された権利の行使により取得され、引き受けられ、又は転換されることとなる株券の発行者並びに当該株券、新株予約権証券及び新投資口予約権証券がそれぞれイ(1)及び(2)に掲げる要件に該当すること。
(2) 当該新株予約権証券等(新株予約権証券及び新投資口予約権証券を除く。以下ロにおいて同じ。)の発行者が、当該新株予約権証券等と同一種類の有価証券として内閣府令で定めるものであつて法第二十四条第一項 各号(法第二十七条 において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するものを既に発行している者でないこと。
(3) 当該新株予約権証券等と同一種類の有価証券として内閣府令で定めるものが特定投資家向け有価証券でないこと。
(4) 当該新株予約権証券等(当該新株予約権証券等が新優先出資引受権付特定社債券である場合であつて、特定社債券と分離して新優先出資引受権のみを譲渡することができるときは、当該特定社債券及びこれとともに発行される新優先出資引受権証券)に、内閣府令で定める方式に従い、これを取得し、又は買い付けた者(当該者が適格機関投資家であつて、当該新株予約権証券等が第一条の四に定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)が当該新株予約権証券等を一括して他の一の者に譲渡する場合以外の譲渡が禁止される旨の制限が付されていることその他これに準ずるものとして内閣府令で定める要件に該当すること。
 イ及びロに掲げる有価証券以外の有価証券 次に掲げる全ての要件に該当すること。
(1) 当該有価証券の発行者が、当該有価証券と同一種類の有価証券として内閣府令で定めるものであつて法第二十四条第一項 各号(法第二十七条 において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するものを既に発行している者でないこと。
(2) 当該有価証券と同一種類の有価証券として内閣府令で定めるものが特定投資家向け有価証券でないこと。
(3) ロに準じて内閣府令で定める要件に該当すること。

。。。長すぎる。。。面倒だから要約すると

  1. 特定投資家向けであって、かつ適格機関投資家以外の特定投資家が50人未満であること
  2. 株と新株予約権証券等は対象外

なので飛ばして、、のそれ以外にある、投資信託とかについては、発行体が金商法第24条第1項各号に該当するものを発行していないこと、特定投資家向けでないこと、などなど、って感じで、金商法第24条第1項各号はというと

 金融商品取引所に上場されている有価証券(特定上場有価証券を除く。)
 流通状況が前号に掲げる有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券(流通状況が特定上場有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券を除く。)
 その募集又は売出しにつき第四条第一項本文、第二項本文若しくは第三項本文又は第二十三条の八第一項本文若しくは第二項の規定の適用を受けた有価証券(前二号に掲げるものを除く。)
 当該会社が発行する有価証券(株券、第二条第二項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等その他の政令で定める有価証券に限る。)で、当該事業年度又は当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度のいずれかの末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上(当該有価証券が同項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等である場合にあつては、当該事業年度の末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上)であるもの(前三号に掲げるものを除く。)

なので、まぁ、上場有価証券とそれに類するもの、というイメージでしょうか。書いていてだんだん面倒なのが読み取って頂けると思うのですが。。。

ざっくり言えば、適格機関投資家向け私募、特定投資家向け私募(ただし Tokyo PRO Market だけ)、あと適格機関投資家出ない人が49人まで(適格機関投資家の数はカウントしない)私募、以外は公募になる、と思った方がよい、ということのようです。

ん?そうなると、いわゆる少人数私募と拡大少人数私募の境目がなくなり、かつ適格機関投資家の数は制限なし、ということになっていた、のですね。あら。

そうすると、適格機関投資家向け私募と、私募との違いはプロじゃない人が49人入るのかどうか、でしかない、のだから、適格機関投資家向け私募っていらないんじゃないの?という気分になりますよね。でも、ファンドの観点から言うと、残しておきたいんですよねぇ。投信法の都合上、適格機関投資家向け私募だと運用報告書の交付が不要という取り扱いが出来るので。。。

ということで、綺麗に整理がついたかな?

ん?何か一つ忘れてないか?

あ、あれだ。。。

  • 当該取得勧誘が前項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利(次項、次条第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第二項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第三号に掲げる場合

そう、第二項有価証券のときのお話。何が入るかというと、引用すると面倒なのでまとめると、信託受益権、合同会社の社員権(持ち分みたいなもの)、匿名組合や投資有限責任組合の投資持ち分、というところ。これらは流動性が低いので、第二種金融商品取引業者が取り扱える、という仕切りにもなっていますが、これらについては、第三号の場合、って。。。これか。

 その取得勧誘に応じることにより相当程度多数の者が当該取得勧誘に係る有価証券を所有することとなる場合として政令で定める場合

て、また政令のお告げ。じゃあ、また施行令から引用するなら

第一条の七の二  法第二条第三項第三号 に規定する政令で定める場合は、その取得勧誘に係る有価証券を五百名以上の者が所有することとなる取得勧誘を行う場合とする。

そう、投資有限責任組合とか匿名組合だと、49人縛りじゃなくて 499人縛り。いいのか?

実際、これと、金融商品取引法第63条の適格機関投資家向け特例業務の規定を組み合わせることで、

適格機関投資家を一人入れれば、運用等のライセンスを持たなくとも匿名組合や投資有限責任組合を運用し、合計499名までの(個人)投資家を入れることが可能になる

ことになるので、詐欺行為の温床になる、と消費者団体からは突き上げをくらい、とはいえ、ベンチャーキャピタル投資業界からは、それがなくなったり個人投資家に対する保有資産等の条件がつくとベンチャーキャピタル投資をする個人投資家がいなくなるので困る、という痛しかゆしの状況が出来てしまっているのです。

ということで、いろいろとなかなか難しい話ですが、いろいろなケースを想定しながら法律を作るのも大変なんだろうなぁ、おかげで読むほうが大変なんだけど、という話の結論でしょうか。。。

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