海外投資家を組合形式で国内株式案件に連れてくる時、どうしても忘れてはいけないあれの話

25%-5% ルール、その超面倒な実務とは?

最近、というか、まぁ、自分自身が国内の組合スキームのアドミ業務の紹介とかを取り扱い始めた頃なのでちょうど 2008-9年あたりから、徐々に海外の投資家を呼び込みたい、という国内の組合形式で投資する人たち、要はバイアウトの人たちとかベンチャーキャピタルの人たちとか、のニーズが高まってきて、そのために国内ファンドとケイマンファンドのパラレルスキームの話とか、国内スキームと海外スキームのメリット・デメリットの話とか、色々と比較検討をするなんてことをある意味ずっとやってきたような気がしています。

他方で、その議論の中で、逆になぜ海外の投資家さんが日本のファンドに投資しないの?(そりゃ、日本語読めないし、日本の法律わからないし)とか、海外ファンド経由でもなぜ入らないの?という話がよく出てきます。その大きな原因として常に挙げられる理由が、税金の話、なのですが、これがなかなか上は上から、下は下まで、今時の表現で「もやる」ので打開策がこう出てこない、という状態が続いているなぁ、というのが個人的な印象です。

で、実際に、その税金の件で最近実務的にあれこれやって、ああ、これじゃあ、という実感することがあったので、いつものようにちょっとピッチブック仕立てで作ってみました。とはいえ、この手の話は個別性が高いことを書くと、やれ税理士法が、とか、やれ守秘義務が、という話になるのであまり突っ込んだ話はできないのですが、それでも自分の備忘程度にはなるくらいの情報量にはなっているはず、なのでちょっとご覧ください。

Shareslideはこちら。

で、これを枕兼前提知識として、もう少し突っ込んだ話はこの本編であるブログの方でだらだらやろうかな、というのが、いつも通りのスタイルですので、もし長い話が気に入らない、耐えられない、つまらない、と言う方、ここらでお引き取りの程を。

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なぜプライベート資産への投資ってLPS / 組合方式を使うの?

投資ストラクチャーは喧々諤々やって決まるものです。

最近の私自身の個人的興味が投資信託形式でのストラクチャード・ファンドのようなリテール向けの世界からプライベート資産への投資の世界にそのウェイトが大きくなってきている中で、同様にこのプライベート資産への投資についてはこの投資難のご時世においては機関投資家の注目も上がってきていることもあり、その投資スキームへの問い合わせ、というより、なぜ従来までの上場株式や債券投資で使われている投資スキームが使えないのか、という問い合わせを受けることが増えてきました。

そこで、なぜプライベート資産への投資において、上場株などの慣れ親しんだ投資で使う投信と比べて、会計処理も投資の手続きも異なる組合方式を使うことになるのか、例によって分解しながら説明していこうかと思います。

その前に上場株式や債券投資では何が起きているのかを見ると

さて、いわゆる投資信託とかヘッジファンドといった”パブリック”な資産への投資をするファンドを考えてみたいと思います。

この資産クラス、一番わかりやすいのは上場株式の中でも、日中の取引高が比較的多い銘柄や外国為替あたりのいつでも売り買いできると考えやすいものを手始めに検討するならば、投資戦略として○○な条件に合致する銘柄を一定のルールで分散して(最近ならば厳選した2○銘柄に集中して、とかいうのもありますが)投資します、と設定すれば、よほどのマーケットクラッシュの起きている状況でなければ売買可能ですので、いつでも(戦略の持つ投資許容サイズの範囲ならば)幾らでも投資資金が入ってきても翌日以降の比較的早い段階で投資可能な状態にありますし、投資資金の引き上げに対しても現金化が比較的早く行うことが出来ます。こうなるといつでも不特定多数の投資家がファンドに参加し、また投資から撤退したいと思った時に出来るような仕組みを導入することが投資家にとっても、(投資家の資金には長くいて欲しいとは思うものの)ファンドを運営する側にとってもメリットがあります。

まぁ、この仕組みや取引する市場の流動性の都合、そして税制などのファンドの制度上の都合などからこの都合上お金が入ってきたらすぐに買えるものを買わねばならないことで、戦略で投資できる以上にお金が集まってしまうと戦略上ベストじゃないものを無理無理買ってパフォーマンスを落とさざるを得ない状態に陥る可能性もあるし、例えば全面安が読めるからポジションを全て現金化しちゃえ、とポートフォリオを全部現金にして置いておく、と言った大胆なことをすることが許されていないケース、というのもあるのですが。。。

ファンドの3つ仕組み、信託・ユニットトラスト、会社型、組合形式、で言うならば信託・ユニットトラストや会社型がこれら不特定多数の投資家が随時、その時々のポートフォリオの持分を切り売りするように設計されています。ポイントは、この「ポートフォリオの切り売り」というところで、例えば、その時のポートフォリオの1億円相当の持分を購入する、といってファンドに1億円を払えばその持分が交付されますが、投資家としてはその持分に支払うことで追加の債務や費用負担をすることがありません。もしファンドに取引や維持のための費用が発生するならばそこから支弁されますし、仮に投資が失敗したとしても、その一億円を超えて損失を負担することもありませんし、追加出資の義務もありません。この辺りは投資信託等に投資したことのある人ならばごく普通のこと、と感じるかと思います。

プライベート投資 – いつ投資出来るかわからないことにどう対応するか?

さて、プライベート投資を前述と比較しながら見てきましょう。

プライベート投資は一般的に投資がいつでも出来るものではありません。(誤解を承知で書くならば)上場株のように取引市場が存在して一つの銘柄に対して潤沢な量の証券が発行されていて、いつでも誰かが売り買い出来るように(HFT – 高頻度取引 – マネジャーのような)マーケットメイクしてくれる、なんてことはなく、都心の一等地の土地建物のようにそこに唯一存在する稀少性の高い不動産の取得案件がそう多くないように、気に入った企業のオーナー株主さんに数年かけて頼み込んで(でもいいし、仲良くなって飲みに行って心からの信頼を得てでもいいし、なんにせよ)世の中にそれしかないユニークな企業の株の大多数を引き受け「させて頂く」ことで初めてその企業の所有権と経営権を手にして思い描いた企業運営を始められる、とか、そういう努力の結果においてそんな隠れた私有企業の取得の際に融資を一緒になって行える、という投資機会なのです。

とすると、プライベート資産への投資機会は「年間で、そうだなぁ、うちのチームだと3-4件程度、一件あたりのチケットサイズが2-30億円くらい(すみません、どことは言いません。でもこれくらいのサイズ感の運用者さんとよくお話をさせて頂いていたので。。。)」という将来の予想は語れるものの、今この時点で買います!という確実な取引は存在しない可能性が極めて高い(まぁ、とはいうものの、そろそろ買える案件があるので、ということでプライベート資産への投資ファンドのファンドレイズにおいて説明しながらファーストクローズ – ファンドの最初の買収案件の決済のための資金調達 – を目指す訳なのですが。。。)のです。であれば、この瞬間にお金を預けてしまうより、案件がいついつに決済になるので、その数日前に送金してください、という投資資金がファンドの銀行口座で眠っているより投資家の手元で他に有効利用される方がよさそうです。

とすると、プライベート資産への投資するファンドというのは、パブリック資産への投資でいうならば、投資対象資産とその銘柄選別のための戦略に基づくポートフォリオに投資する、というよりは運用者のストックピックの能力の巧拙を品定めするかのごとく、運用者の投資案件の発掘から投資実行、そして回収といった一連のプロセスに対する投資ということになる一方で、資金の出入りだけ見てしまうと、運用者の作る将来の投資機会に対する出資約束とその実行、という将来債務を最初に負うこと、と理解できます。

この場合、ファンドの3形態のうち、会社型も信託・ユニットトラスト形式も、形は何であれ投資家に対して債務を要求する仕掛けにはなっていませんので、前述のような将来の出資の約束とその実行ということがこれらの仕組を使う限りにおいては実現可能とは思えてきませんね。そこで、組合形式の登場となるのです。

一応組合形式って説明するならば。。。

日本の法体系でお話をするならば、民法において、複数の個人や法人が出資して共同で事業を行うことについて合意する契約を組合契約と言います。これは世の中では任意組合として知られていますが、これに類するもので商行為を行うための商法上で規定されているのが匿名組合、あとはこのブログで何度か紹介している、投資事業有限責任組合法に基づいて設定される投資事業有限責任組合(日本版 LPS)とか、名前的には似ているものの根拠法が別になる、有限責任事業組合法に基づく有限責任事業組合 (世に言うLLP)なんかがあります。

あれ、健康保険組合とか、労働組合、生協だって生活協同組合だし、銀行っぽい信用組合(しんくみ、しんそ)だってそうでしょ?マンションの管理組合とかも組合って名前についてるじゃない?

ですよね。この辺りになると、確かに同じように一定の目的としての事業を行うために組合員から出資を受けて活動している、といえばその通りですよね。これらもそのための特別な法律を根拠にして設立されているのです。が、投資の世界で使うといえば、LPSかクラウドファンディングに使われる匿名組合あたりですので、ここではこれらに絞ることにします。

組合って前述のように、同じ志を持った人たちが一つの契約にみんなで揃って署名捺印して必要に応じて出資し、その結果の投資の果実を配分されて享受する、と言う仕組です。ですので、出資も締結した組合の成立日に全額行う、と定めずに必要に応じて出資をする形でも良いため、前述のようなキャッシュフローに対応できる、と言う訳なのです。

また、組合員の間での利益分配や出資割合についても契約上柔軟に定めることが出来るので、例えば特定の組合員がこの案件の出資は気にくわないからしない/都合上出来ないからしない、と言うような出資しない選択肢を与えることが出来ますし、その結果、その参加しなかった案件からの収益配分に当然に参加させない、といったことが出来ます。これはポートフォリオの持分を均等に配分される信託・ユニットトラストや会社型では実現できないことです。

と言うことは、実は組合ってすごくいいスキームなんじゃないの?なんで投資信託とかに使わないの?

って、そんな声が聞こえてきそうですよね。実際、アメリカからのヘッジファンド投資なんかでは、デラウェア州LPSとかを使うケースも多いそうです。事実、組合を締結したその日に出資約束額の全額を入金すれば通常の投信や会社型ファンドへの投資とあまり違いがなさそうに見えますしね。これはアメリカの税制に依るところが大きくて、ファンドの費用を純資産額の減少として扱うより、自分の支払った費用として認識する方が個人であっても税務上メリットが得られるケースがあるから、のようなのです。って、なぜ投資信託や株式ではそんな費用の計上を投資家サイドでせねばならないようなことが組合だと発生するのでしょうか。

実は、組合は事業共同体と言う性質から法人格が認められないそうなのです。となると、組合で行った事業の収支(と言うことは費用の支払いや資産売却益)や資産・負債の状況はその持分に合わせて投資家自身が直接行っているかのように取り扱わなければならない、のです。

日本でこれを実際に行うと何が起こるかと言うと。。。投資関連費用を毎年損金計上出来るならばする一方で投資対象を売却したらその年にキャピタルゲインとして納税申告する必要がある、のです。と言うことは。。。ほぼ毎年確定申告せねばならない、と言う意味です。

投資信託経由で投資している場合に、こんな手間はそうそうないですよね。なにせ費用は純資産額の減額ですし、保有有価証券は時価評価で純資産額が上下動するだけだし、投資対象が売却されたとしても純資産額の変動からは何が起きているか事細かにわかることもないのです。言い換えると、個別の投資対象の売却益をいちいち税務報告する必要がないのです。自分で税務的にしなければいけないのは、その投資信託を売却した時ですので、投資信託の保有期間に発生したファンドの中でのキャピタルゲインについては税務的にその利益が繰り延べられているのです。多分個人投資家は嫌がりますよね。

まぁ、いわゆるプライベートエクイティ投資と認知されているバイアウト戦略だとどうしても一口10億円(それより小額は要相談)からの、出来るだけプロの機関投資家向けで投資家の数も限定的に、仮にベンチャーキャピタル投資であっても投資額はより小額かも知れないものの10社投資して1社当たればいい、と言う個人が投資するにはハイリスクハイリターンそのものという世界ですので個人が入るには別の意味でも敷居が本来は高い投資ではあるのですが。。。

じゃあ、その逆で、投資信託でプライベート投資って出来ないの?

当然、考えますよね。日本人ですから。まぁ、そこが海外から理解してもらえないところでもあるのですが。。。

実際のところ、出来なくはない、と言う言い方をするしかないのです。かなり色々なところに歪みを生みながら、実際にやっちゃっている人たちがいます。

例えば。。。一番大きいところで、GPIF (年金積立金管理運用独立行政法人)さんの初の海外インフラ投資案件。これはパブリックだから言ってもいいですよね。インフラ投資もプライベート資産への投資の一環でして、初の投資で投資信託を使っているんですね。

私の知人のインド人がインドで株式投資をするにあたって未上場の頃から投資して、上場後も大きく育つまで付き合うと言う戦略を取っているファンドの運営方法を取っている、と言っていましたが、こちらも投資信託とほぼ同じインド籍のオープンエンドファンド。

まぁ、日本の投資信託ですと投資対象の流動性を、特に公募ファンドにおいてはかなり厳しく見ているのでそんなインドのファンドに投資することは出来ないですし、GPIFさんのケースも確か外貨建てですので日本の投資信託では私募であっても実現不可能(信託さんには日本の会計基準で外貨を扱えないですからね)。なので、どれもこれも海外だから出来ている、と言う言い方も出来る、のですが、上記の二つではちょっと事情が異なるのです。

インドが特別、ではなくて、流動性への考え方が異なる

まず、インドのケース。もし上記を見た投資信託協会か信託協会の関係者か、投信会社の人ならば、インドのルールが日本と異なって緩いからだよ、と言って切り捨てそうですが、実際のところ、未上場の時点での各銘柄への投資額はファンドの1%程度。投資後数年見てさらに目が出そうと思ったらアロケーションを増やしていくと言う戦略です。となるとそうやって育った結果、だいたい5年から7年くらいで手仕舞うか、するようなのですが、その頃にはだいたい3-5%程度のアロケーションをしているのです。日本の投資信託の分散どころじゃないですよ。UCITS準拠なくらいです。しかも、そこそこ大きい受託資産を抱えるファンドですので、そうやって成長した銘柄の卒業がちょうど流動性を担保できるような仕組みになっているので。

まさにこれはインドの投資信託が始まってからずっと運用し続けてきただけある、のです。常にプライベート資産への投資ポケットが存在する、だからいつ来ても投資可能、と出来る技なのです。通常なら待機資金をどうするの?と悩むところをこうやって解決するって、ある意味順当な話ではあるのですが。。。

じゃあ、GPIFさんは?

こちらは、実際に担当者に直接聞いたわけではないのですが、関わった関係者や、関わっただろう関係者たちの話を聞く限りでは、キャピタルコールに対応するようにしている、ようなのです。あれ?投資信託/ユニットトラストにはキャピタルコールのような組合形式で投資家が負うような債務というのを投資家が負うことはなかったはず、ですよね。ある意味投資家が自発的に追加投資をしない限り投資信託/ユニットトラストにはお金を入れる理由がない、のです。なので、普通に考えると、当初設定時点に予定投資先のコミットメント額を全額突っ込んでおく、というIRRの低下を無視した方法で実現する、と考えがち、なのです。

しかも、今は投資家の目線で話していますが、ユニットトラストを設定するにはtrustee / 受託者がいるのですが、このようなスキームですと投資対象となる組合に対しては自分が投資家になるのですから、組合員としての債務を負うことになります。片や債務を負い、もう片方に対して遡求できる仕掛けがないので、受託者はそんなリスクは通常取りたくない、のです。これが投資信託/ユニットトラストを使ってプライベート資産への投資を行うにあたって直面する問題、なのです。

さてこれをどうしたか。。というと。。。内緒です。これだけで多分数百万円単位のコンサルフィーを頂けるとお話なので(嘘)

ま、一言だけ言えば、これが出来たからと言って、公募投信には出来ません(やってる人は知ってますが)から、手頃にプライベート資産への投資が個人に手の届くようにできる、という話ではありません。でも、これを使ってプライベート資産への投資をしているのが、本当に国内でちゃんとしている機関投資家たちなので、出来ない話ではない、でもあれこれ関係者たちの苦労が通常より嵩んでいるんだろうな、ということは予想できます。実際、そのおかげでの副次的メリットも享受しているそうなので。。。おっと、これ以上多くは言えない言えない。。。

まとめ

と考えると、個人投資家の方へのコメントとしては。。。未公開株への投資、とか色々と個人、特に高齢の方への誘惑は多いと思いますが、こういう仕組み一つとって見ても、rest of us (普通な私たち)にこの手のハイリターンかもしれないけど、どう見てもハイリスクで投資にはコスト高な投資、というのは実はちょっと割りが合わない、と思って構えて見たほうが安心なんですよ、とFP的には言いたいです。

で、ストラクチャラー的に言えば、まぁ、この領域って実のところ、かなりフォーメーションって固まっているのでこう言ったちょっとしたイノベーションを加えるのって楽しいんですよねぇ。とは言え、関係者の制約条件の中でどこまで頑張ってみんなにとってメリットのある仕組みが作れるか、は腕と知恵の見せ所ですので、そういう機会にまた早く巡り会いたいものです。

恒久的施設の定義等の変更がありました、って。。。?

このところ、みやたべろぐばかりアップしているので、たまには真面目なネタも。。。

国税局というところはご丁寧に色々な刊行物を作成しては登録されているオフィスの所在地に郵送してくれるのですが、そのお仕事の性質上専ら「税金」の話なので微妙に複雑、というかあまり読みたくないような話ばかりなので、どうしても封すら切るのをついぞ躊躇ってしまいます。

実はちゃんと読んでおかないと行けなかった税務署からのお知らせ

とはいうものの、この週末に他にも溜まったクレジットカード会社の月刊誌などを読んで廃品回収に回さねば、とざっと目を通したのが「源泉所得税の改正のあらまし」。ざっとのつもりが案外引っかかるものがあれこれありました。

例えば、4ページ目にある、2020年以降の適用ですが、給与所得控除の10万円の減額、ということはその分の課税所得が増えることで増税効果が発生する一方で、基礎控除の増額が合計所得が年間2400万円以下にだけ適用されて、前述の給与控除の減額と合わせて事実上何も変化がないものの、合計所得が年間2400万円を超えると基礎控除すら減額される、なんて知ってました?これって、給与所得だけの人たちにはほぼ関係ないけど、たとえば不動産所得だけの人とかにはちょっとしたメリット、ですよね。しかも給与所得で年収2400万を超える人って2016年の統計になるものの、この頃で。。。。2400万円という区切りがないのでざっくりした計算をするならば3000万円以上の人で247,970人いて、2000万から3000万の人で195,800人だから半分としても345,870人もいることになります。といっても、給与所得のある人が9,789,362人ですから全体の3.5%程度の人が対象になってくる、のです。それって。。。マイノリティへのペナルティにしか見えないですが。。。

実はかなりやばいルール変更も書いてあった

さて本題。この3ページ目にこっそり入っていたのが表題にもある「恒久的施設(PE)」の定義等の見直し。実はかなり海外から国内への投資を呼び込みたいプライベート投資にとってまずい変更になり得る変更なのです。

恒久的施設って?

まず恒久的施設ですが、ご存知ない方にざっくりとした説明をするならば。。。日本に住んで生活し、活動する私たちにとって、前述の給与所得も不動産を買って売却した時の差額の利益も、株や債券から発生する分配金や利息、これらの取得と売却の差額益、果てはせどりのごとく安く仕入れて売却したものならその差額の利益まで、国税局にその一部を税金として納めなければいけません。ですが、これが海外に住んで生活する人が同じことをやることは、手間はかかるものの出来ますが、その場合には国内に納税する際の住所がないことから日本の国税局からは課税されないのです。

当然ですが、その場合、その住んでいる国で課税されることになるので、ファンドならば有価証券の売却益に対して課税しないケイマン諸島のような所から証券取引を行って利益をできるだけ投資家に還元したい、と考えますし、物販を考えるならば、オンラインで受注を受けて、法人税の安い国に拠点を置いて発送をそこから行う、と考え始めるのです。これが恒久的施設と呼ばれる事業の本拠地、という考え方です。

で、この考え方ってこれだけ簡単な話じゃないの?

本来ならばこれくらいシンプルなはず、だったのですが、色々と考える人がいたり、会社などの都合で色々なケースというのが発生し始めます。例えば、先ほどのオンラインで複数の国の受注を受けよう、と考えた時に、オンラインで受け身に受注するのではなかなか売り上げが上がらないとなれば、海外から営業をかけることは難しいので現地に営業する誰かが欲しくなります。そうなると、国内に営業拠点を置くか、国内に営業の強いビジネスパートナーを置いて営業を任せるか、のどちらかを考えることになります。

後者のビジネスパートナーならば、他のビジネスをやりながら自分たちの商品の売り込みをする、というところで事業展開についてコントロールがある意味自分たちの思うように行かないものの、他方で契約書一枚の関係に過ぎないので国内に拠点があると言われる筋合いもなく今まで通り国内から上がった売り上げに対して課税はされないという税務的なメリットは残ります。

でも、やっぱり本腰で売りたい、ということで国内に資本を入れた子会社を作って営業をさせると先ほどのようなビジネスパートナーとの関係、のような話にはなりません。自分の所の物だけを売るためだけの会社なのですから、国内で在庫を抱えて売っている人と表向きは変わりはなく、仕入れと在庫管理と発送を国外に置いているからある意味国内から利益を隠しているようにも見えるのです。となると、これは実質には国内で活動しているのと同じなのだから国内の売り上げについては課税すべきでは、ということになり、その際に、この国内子会社はこの売り上げのスキームにおいて恒久的施設を国内に有している、なんていう話になるのです。子会社であっても事業の実質的な本拠がどこなのか、というのがポイントになるのです。

で、これを書きながら、私ごとながら、以前やっていたジャージー島の金融サービス業の会社の日本でのビジネスのことがちょうどわかりやすい話かな、とも思ったので少し触れるならば、この場合は海外(ジャージー島やバーミューダ)で行われる金融サービス業、ファンド・アドミ業務やファンドの管理会社業務についてはその事業の性質上などから日本国内に在庫、というかこの場合はサービス提供拠点を置くことは出来ませんが、利用者は国内にいますのでそのサービスの認知から利用のためのアイデア提供などを国内子会社を通じて行いました。しかも、イヤラシイことに(笑)その説明する相手というのが投資銀行や証券会社、投信委託会社、といったところであ流にも関わらず、でもそのサービスの対価を払うのは最終的にファンドに投資した投資家のみなさんが、しかもファンドの費用という形で間接的に、ということで、この国内子会社(というか、以前なら私)は前述のような「ものを売っている」のか、と言われると売っているのかもしれないが、性質上国内に機能を持って同等のことを行うかのごとく課税する、ということはなかなかしづらいものなのである一定のルールを入れることで恒久的施設を有しないと認知される代わりに代替的な形を通じて納税を行うことによって、税務当局とはうまくやっていたのです(私がやっていた頃はね。)。

で、その当時よく言われたことで、「このファンドの投資判断を東京でやってよ」と言われたのですが全部お断りしていました。サービスクオリティ悪くね?とか言われていたようですが、これを東京で(当時なら私が)やってしまうと、ファンドの判断が東京で行われている、ということで外国籍投資信託の管理会社については投信委託会社を脱法で行うことになると認知されるリスクが出るのが理由です。税務とはちょっと異なる話ではありますが、ここも投資家のみなさんにご迷惑をかけないという意味では大事な話でしたので頑固に譲らずにおりました。

この辺を一通りわかっている人、最近を見ていると少なくなったようなんでちょっと書いてみました。

で、ここで出てくる主体的な行動と課税の関係について話が及ぶのですが。。。

さて、今回の話の核心にだんだん入ってくるのですが、前述のケースからわかるように、海外から国内に営利行為を行って収益を上げる、というところで国内の拠点なりビジネスパートナーがどれだけその事業に関与しているかで国内に恒久的施設を有するという議論になる、というのが見えてきた(?)ところで、今回やばいなぁ、と思っているところに入っていこうかと思います。

なお、今回の変更の背景というのが、BEPS (Base Erosion and Profit Shifting – 税源浸食と利益移転)という世界的な国際税務取扱の取り決めに基づく恒久的施設の定義の国際的な統一に動いたことにある、というのをまず話の前提にあること、したがって著者のメインにある金融だけが狙い撃ちで行われている話ではない、のを分かった上であえてあれこれ書いていることをまずご理解いただこうかと思います(笑)

ちょっと歴史のお勉強を

税務の観点で国内への海外からの投資の議論が盛んだったのは2007年から2008年の投資事業有限責任組合法の改正の時でした。当時を思い出すとユニットトラストがメインだったのでLPS法によるこの恒久的施設の議論は影響ないか、と思って眺めていましたが、考えてみればユニットトラストの場合は税務的な整理が確立しているので変更しようがなかったのです。前述のような国内拠点での判断が行われて投資信託の脱法っぽいものが行われたとしてもそれでも投資信託と同等の器での投資である以上税務上の課税ポイントはケイマン諸島では発生することはなく、ユニットトラストの持分の売却時に投資家に対して行う、ことに変わりはなかったのですから。

さて、その当時、LPS法とその周辺、特にこの法律の主だったユーザーであるプライベート・エクイティやベンチャーキャピタルの運用者と投資家たち、そして、それらの人たちによる投資資金を呼び込みたいと考えていた経済産業省、の注目していたことは海外からの投資が税務的な理由で激減していたことにあります。それは何かというと、Shinsei Tax として悪名が知られていた国内企業を海外で保有し、海外で売却したとしてもその譲渡利益にに対して日本として源泉徴収が行える、というものです。なぜ Shinsei Tax と呼ばれるかというと、昔、とある銀行がありまして、諸般の事情で破綻して国有化した際に海外のプライベートエクイティファンドがその株を取得して腕利きな経営陣等を派遣して企業再生を果たす、といった時に、国内の議員さんたちがそんな海外のファンドが血税を使った銀行の株を海外で売却したらその利益は海外に止まってしまって納税者に還元されないではないか、と前述の税法改正をしたのです。その銀行、当時は日本長期信用銀行、今では新生銀行、として知られるところですのでかかる課税のきっかけになったことから、そう呼ばれていたのですが。。。若い人は知らないだろうなぁ(笑)

独立代理人の要件

で、この改正を行って海外からの投資家に対して安心感を与えるように行ったと同時に当時のこの恒久的施設の定義、特に独立代理人の定義を行うことで、海外ファンドが国内への投資を行うにあたっての国内での活動拠点のガイドラインを定めたのです。その際に定めた独立代理人の要件として

  1. 法的独立性: 代理人が代理人として行動する上で十分な裁量が与えられているか?
  2. 経済的独立性: 代理人がその収入を全面的に一人の本人に依存していないか?
  3. 通常業務性: 代理人の行為が慣習的に行われているものであるか?

をあげていました。これは大和総研さんの当時の資料がよくまとまっていますので、深く調べる際いはご参考に。ここで一番のポイントなのが、法的独立性で、実は裁量権が与えられていれば、本人との資本関係が100%であっても、独立性を測るにあたっては無関係であったのです。ということで、2008年以降のプライベートエクイティやベンチャーキャピタル投資、そして不動産投資の一部で海外からの投資資金を受けるファンドのストラクチャーを作る際にはこの独立代理人の要件を満たすように誰もが構築してきたのです。ええ、国内子会社と海外親会社との資本関係が100%であっても大丈夫だ、と信じて。。。

で、ここで独立代理人の定義が変わる、というのです!まさに、資本関係は関係ないよ、といっていたのが、50%を超えると独立代理人として見做されなくなる、というわけです。

やっと、事の問題が説明できました。ま、いつもなら10,000字を超えたところで問題提起しているから、今回はまだ早い方ですね(笑)

で、これってどうなるの?

当局と業界団体との事前の意見交換等も実は昨年末に行われていたのですが、実際のところ当局(といっても、国税庁ではなく金融庁なのですが)サイドとしてはこれの影響ってないんじゃないの、くらいの感覚のようでして、特段金融関係のための手当もされる事なく、年末の税務大綱に上がり、3月末に国会を通過して今日に至っているので、ただただ、この新しいルールに年明けに向けて対応していかねばならない、のです。やらないと、少なくとも海外投資家を抱えるケイマン諸島のファンドを使った投資を通じての投資資産の売却益に対して総合課税がかかってくること予見されます(参照リンクの4-5ページ目)。

とはいえ、先日某国内大手プライベートエクイティ投資会社さんの(比較的事務寄りの)パートナーさんと話をした際にもご存知なかったという反応があったので案外認知されていない事のようにも思えているのです(なので記事にしているのですが。。。)。

で、出来ることって?

スキームの見直し、ではあるのですが、一番影響があるのが独立代理人の定義、ですのでその変更点である資本関係と仕事の割合について見直すべき、という意見が出てくるのが想定されます。となると、国内拠点とファンドとの間の資本関係か、国内拠点の請け負っている仕事のうちファンドなどの資本関係の大きいところからの仕事の割合か、どちらをいじりやすいかと言えば。。。仕事の割合ってそう簡単に外部の仕事がくるはずもないですよね(苦笑)といって、資本関係をいじるべく外部の株主をよびこめるのか、というと。。。どうなのでしょう。

とは言え、規制対応はスポーツ同様事業でも当然に求められることですので、やらねば、なのですよねぇ。。。とりあえず、まずは担当の税理士先生とご相談でしょうね(って、この言葉は誰に向けられているのやら。。。sigh)

[投資のコストと効果] iDeCoのメリットは確定申告で得るあれだけではなくて

以前書かせていただいた、30代から40代までの金融リテラシーを強化しよう、というメディアでオフショアの話というのはなかなか目立たなかったのですが、目立つコンテンツはどうしても、「ふるさと納税制度」、前回の「NISA」といった個人の所得税減税というお得感に訴求するような何か、というものばかりだったようです。その中で、同じように目立ったコンテンツとして、やはり昨年あたりから銀行さんが力を入れてきたのが、今回取り上げる iDeCoなのですが、某りそな銀行さんの店舗に貼られた某カタカナ五文字の喜劇俳優さん以外のポスターで目を引くのはどうしても、減税効果のこと。しかし、iDeCoはそれだけのためにやるべきことなのでしょうか。。。

そもそもiDeCoってなに?

iDeCoとか言って、金融系商品にありがちなアルファベットな言葉ですが、じゃあ、これが何の略かといえば。。。 individual type Defined Contribution Plan – 個人型確定拠出年金の太文字部分だけ取ってキャッチーな言葉にしようとしたんだろうなぁ、ということが透けて見える感じ、ですね。でも、年金、という言葉が出てきちゃったので、どうやら適当に作られて流行った商品ではなさそうなことだけは見えてきました。むしろ年金ですので国の大掛かりな仕掛けが背景にありそうな。

というか、年金って何?

そもそも、この国の年金の仕掛けってこの瞬間、どこまで理解してますでしょう。知ってるよ、という人もいるのは分かるものの、大抵は年金手帳を持ってるけど、給料から天引きされてるけど、で止まる可能性が高いでしょうから、その辺りを基礎から丁寧に始めてみようと思います。

国民年金 – 実は誰もが入っている年金で、その筋ではいわゆる一階部分

(国籍問わず)日本に住み、働く人たちは法律に基づき、国民年金に入らねばならない、という国民年金法、という法律がありましてこれに基づいて、この国に住んで働いている20才以上60才未満の人は大抵この国民年金に入っています。

通常、「国民年金というと自営業の人たちが入るもの、会社勤めは厚生年金」、と思いがちですが、厚生年金の加入は国民年金法では第2号被保険者と位置付けられていまして、厚生年金の保険料として納められたものの一部が基礎年金拠出金という形で国民年金に拠出されて、自営業の人たちなどの第1号被保険者からの保険料とともに、世界最大の年金運用者として知られ(世界中の運用会社にちやほやされるから運用報酬を渋り倒すことでも知られ)る年金積立金管理運用独立行政法人(GPIFの方が分かる人の方がきっと読者では多いでしょうね(笑))運用され、年金受給者への年金としての支払いに回ったりする、という流れになっています。

ちなみに、いわゆる会社勤めの方の配偶者で認定基準年間所得が130万円未満の方は第3号被保険者ということで厚生年金の手続きの時に届出することで加入しますが、この時の保険料はただ。だけど、この第3号被保険者の分も厚生年金で基礎年金拠出金を拠出する時に負担していることになっている、のですから、実は稼いでいる人の配偶者でいることというのは年金の観点で言えば費用負担ゼロで年金をもらえるという非常に美味しいと言えますし、これって実は働く女性の数と労働時間を年額所得130万円で抑制している原因のひとつだということに政府は直視すべき事実だと思うのですがね。(関係者の方、見てますかー?)

厚生年金とか共済組合とか国民年金基金とか – 国民年金の上にあるその筋で言う所の二階建て部分とは

さて、一階部分の次は二階部分の話。第2号被保険者という勤め人な人たちが年金に入ると言えば思いつくのが厚生年金ですが、前述の通り、実はこれは国民年金に付け加えて入っている年金制度、なのですね。ちなみに、勤め人のうち、私企業に働く人は厚生年金法の第1号被保険者に当たって、第2号被保険者な国家公務員な人たちだと国家公務員共済組合や国家公務員共済連合会(後者はアルファベット三文字でKKRKokka-koumuin Kyosai Rengokai -になるので、日本中のあちこちにこれ関係の宿泊施設とか見られますが、プライベート・エクイティ・ファンドの大手、KKRKohlberg Kravis Roberts – とは関係ない、のは業界初心者のネタですな(笑))に、第3号被保険者な地方公務員な人たちだと、地方公務員共済組合や、地方公務員共済組合連合会、全国市町村職員共済組合連合会に、第4号被保険者な私学の先生方には日本私立学校振興・共済事業団に所属する、けどこれらは全部2015年10月以降、第1号とその他が一元化されたことでこうやって一纏めに厚生年金、と説明できるようになったそうな。ちなみに、そういう資金ですので、運用は。。。またGPIFさんが国民年金と一括して、とはならず、第2号以降はそれぞれの組織が運用して、第1号が国民年金と一緒にGPIFさんが運用しているそうな。そりゃ、GPIFの運用資産が大きくなる訳だ。。。

では企業に勤めていない国民年金の第1号被保険者な方に対する2階部分は何になるか、というと、国民年金基金というのがありまして、もし加入手続きをしたことのある人ならば分かるのですが、国民年金に上乗せしませんか、という資料を渡されたことがあるかもしれません。あれです。あ、ちなみに、国民年金の保険料に毎月400円上乗せして払ったら、「200円 x 付加保険料納付月」の額が年金に上乗せされますよ、という話がありますが、あれは国民年金の保険料の話なので、国民年金基金とは別のお話です。しかし。。。日本年金機構のページで説明がありますが、

これを払えば2年で元が取れますよ

とオススメするなんて。。。(汗)

ちなみに。。。第3号被保険者な勤め人の配偶者の皆さんにはこの2階建て部分はございません。そもそも一階部分がただなんだしさ、それ以上に何をタダで期待するのよ(ベーっだ)

厚生年金基金とか、企業年金とか、年金払い退職給付とか、いわゆるその筋のいう所の三階部分

さて、年金制度ってまだまだあって、国民年金に国民年金基金という上乗せがあるように、厚生年金には厚生年金基金という屋上屋のような仕組みがあったりしました。その昔、厚生年金の運用を企業が代行して行う代わりに企業側で独自の上乗せをします、という制度を厚生年金基金ということで1966年あたりから導入されていました。

こいつは勤め人ならば誰にでもあるもの、ではなく、勤めた企業の福利厚生の制度で設定されている企業に勤めるとある、という類のものです。しかも、これがあるときは、一般的にその保険料は企業が負担して雇用される被保険者からの拠出はない、というなんと太っ腹!まさに企業が従業員の退職後の豊かな生活のために準備してくれるとても素敵な制度、ですよねぇ。。

というと、とてもいい話なのですが、当然、これって企業側からすればコスト負担以外の何者でもない話ですよね。しかも、これをその昔は勤務年数や退職時の給与のようなある程度決まった要素で計算することで支給額が決まってしまう仕組みしかなかったものの、90年代に入るまでは株もインフレも自然に上昇するから給付するよりもそんな基金の資金は増えて問題はなかったのです。が、インフレもなければ株や債券の値動きがここまでぶれる世の中においては将来の支払いを約束することは、最悪企業からの追加持ち出しも求められて結果企業すら倒れるリスクも負いかねない、というところまできた基金が増えてしまいました。

そんなある日、リーマンショックも終わったところで、これまたアルファベット3文字で始まるヘッジファンド運用で儲けさせまっせと、詐欺を働いたAIJ投資顧問、という連中がその口車にまんまと乗ったこういった企業系の年金の資金を使い込んで消失させて(ついでに独立系運用会社の信用も失墜させて、メディアにオフショアファンドの信用に泥を塗らせて)しまったことから、かなり損害が広がり、2014年からそんなことを企業に任せてはいけない(じゃあ、国がやればいいの?という疑問はさておき)、ということで、厚生年金基金の新規設立は認めなくなり、また財務内容が悪い所は特に(五年以内に)代行返上して解散しなさい、という方針になったのです。

他方で、2002年に出来た確定給付型企業年金制度を利用して厚生年金の代行をしないけど退職時の条件で年金の支給額が決まる仕組みで3階部分だけの提供をする、という制度が出来ていてこれを利用したり、2001年に出来た、今回のiDeCoを含めた最終的な給付額は運用方法を選択した被保険者のリスクで行う確定拠出型年金制度の企業型(なので掛け金は企業持ち – マッチング拠出とかもあるけどここでは割愛ね)を利用するところが出てきたり、と、実はここには(3階を提供しないからiDeCoやっていいよ、という選択肢を含めて)色々なケースが存在します。

ちなみに、国家公務員など人たちにも同じような3階部分はありまして、特に2015年の一元化のあとでは、年金払い退職給付と一元化による制度移行の間を繋げるための「職域部分」と称するものがあります。これも解説はパスね。長くなるから。

さて、個人事業主などの第一号被保険者の人たちへの3階部分は、2階部分のない第3号被保険者の人たち同様に。。。実はありません、でした。が、2017年1月からiDeCoが一部の例外(制度の重複ということを避けるため、企業型の確定拠出年金に加入している時に、企業型年金規約がiDeCoに加入することを許容していない場合のみ加入不可。)を除いて国民のうち20才以上60才未満であれば誰でも加入できるようになったことで、実は、この3階部分としての iDeCoの守備範囲は広範囲なのです。

で、なんでこんな基本を説明したかというと。。。

これらの年金制度って、考えて見たら、一階部分も二階部分も支払っている保険料はある程度一定(毎年微妙に変わりますけど)ですが、支払われる年金も納付月数などからある程度計算できる一定の額、にお約束されています。いわゆる確定給付年金の仕掛けを利用していますが、前述の通り、年金の運用が上手でなかったり、AIJ事件のような運用以前の問題とはいえ給付金の財源を毀損するようなことがあれば、期待している将来の給付が実現できなくなるか、財源の元となる企業や国の財源に手をつけてしまい、根っこから破綻しかねないリスクがある、のです。また、少子化による保険料の減少と高齢化による年金給付額の増加、という根本的なキャッシュフローの前提の変化に対応していないのも明白ですから。。。まじヤバイんすよ(笑)

となると、個人で年金を守る方法ってこの制度上は三階部分で自分でリスクをとる、か、この年金制度の外で巨額の富を蓄えるか、のいずれかもしくはその両方のようです。とはいえ、年金制度の外で富を蓄積する、というのは、いくら税制上のメリットが期待できる生命保険商品を使ったりしたところですら、結局利益に対して個人の所得税なり法人化した企業に法人税がかかるわけですから運用益の再投資の効果が税金で取られる分だけ悪くなるのが単純に予想できます。としたら、年金制度の中ならば税金はかかりませんから、再投資という時間と利回りのマジックを最大限に利用した富の蓄積を目指せそうな気がしますよね。

このことを理解するにも、この屋上屋な年金制度をまず知っておくべきだと思ったわけです。いや、文字数稼ぎじゃないですから(笑)

で、確定拠出年金ってどういうこと?

ということで、iDeCoの説明にやっと入ります(苦笑)が、まず確定拠出年金の仕組みでも。キャッシュフロー的には、企業型なら企業が、個人型(要はiDeCo)なら加入する個人が、毎月一定の掛け金をこの年金制度に拠出していくのですが、問題は、この拠出したものをどう運用するか、なのです。確定拠出年金の場合は、運用先として複数の選択肢が提示されるのでその中からどれで運用するかを選択して行くことになります。例えば、iDeCo の場合、某りそな銀行だと選択肢として

  • りそな据置定期預金『フリーポケット401k』
  • 「りそなDC信託のチカラ ターゲットイヤー20X0年」など資産分散型投資信託が11本
  • 日本債券型投資信託が4本
  • 日本株式型投資信託が8本
  • 外国債券型投資信託が3本
  • 外国株式型投資信託が4本
  • 国内不動産(リート)が1本
  • 外国不動産(リート指数連動型投資信託)が1本

と、元本確保な定期預金を除くと実は確定拠出型年金向けに設定された投資信託に投資することになるのです。これが、もし日本生命にiDeCoの口座を作ったならば、その投資可能となる商品は

  • 「ニッセイ利率保証年金(10年保証プラス/日々設定)」
  • (なぜか)りそな据置定期預金『フリーポケット401k』

のような元本確保型商品と

  • 株式と債券の比率一定運用型投資信託3本
  • バランス リスクコントロール型投資信託1本
  • 国内/海外株式/債券指数連動投資信託4本
  • 国内株式アクティブ型投資信託3本
  • 海外株式アクティブ型投資信託2本
  • 海外債券アクティブ型投資信託1本
  • 新興国指数型投資信託2本
  • リート指数型投資信託2本

と、いう品揃えだったります。いわば、iDeCoの口座を開ける先である運営管理機関によりその商品の揃えが毎月の掛け金の拠出先の選択肢になり、その中で選んだ投資商品のリターン(それが定期預金だったり、その同等のリターンの生保であっても、もしくはリスクを取りにいっても)がiDeCoの年金積立期間の終了時期であるあなたの60才になった時の受け取り原資になるのです。

さて、運営管理機関によって商品の選択肢が変わるので、この運営管理機関を選ぶか、その取り扱い商品を選ぶか、と言った話になると思いますが、そのあたりの話は後回しにして、いつものようにキャッシュフロー分析をやってみたいと思います。ここから先は、確定拠出年金もiDeCoに話を絞っていこうと思います。

0. iDeCoの運営管理機関を選んで口座を開ける

何を始めるにもまずは口座を開く必要があります。今では iDeCoを提供する金融機関(運営管理機関、とこの場合は呼ばれます)が多くあります。前述のように商品の品揃えは機関ごとに異なりますし、手数料も、国民年金基金連合会への口座開設時の手数料の2,777円や月々の国民年金基金連合会への月次手数料の103円と信託銀行への月次手数料の64円の合計167円を除くと機関ごとに0円(楽天証券やSBI証券、大和証券)から数百円(りそなだと口座が給与振込口座ならば262円かそうでなければ316円、三井住友銀行やSMBC日興で一律255円、野村証券で資産額に応じて203円から283円まで、みずほ銀行で一定条件で0円もしくは255円、など)かなり開きが出てきます。

なお、NISAと同じく、口座を開けられる運営管理機関は一つだけです。複数を開けることが出来ません。とはいえ、管理機関の移動は可能ですが国民年金基金連合会への2,777円の支払いが発生します。その際は買い積み立てた投資信託などを持って移動出来るはず、ですが、移った先の運営管理機関が(系列の都合が主で)取り扱えない可能性が極めて高いので、売却して資金の形で移動することになります。

1. 月々の掛け金を決める

手数料が運用管理機関、ひいてはiDeCoで運用する商品の選択肢を決めるという気はサラサラないものの、月々の掛け金との兼ね合いを考えると、どうしても前述の手数料が投資効率に影響するというのは隠せない事実、でもあります。

さて、この掛け金、この後に述べる税金の効果を考えると、長期投資をしたいポケットだとか、毎月積み立てていくというのが投資を始めたばかりでは投資の効果を実感できない、とかを鑑みて出来るだけ大きく「張りたい」という気持ちになってしまうのですが、残念ながら加入している年金制度(年金制度の一階部分のカテゴリー)で上限額が決まってしまいます。まとめるとこんな感じ。

カテゴリー掛け金の上限額

自営業者等(第1号被保険者)月6万8000円(年81万6000円)(国民年金基金と合算した額として)
企業年金を導入していない企業に勤める会社員(第2号被保険者)月2万3000円(年27万6000円)
既に企業型DCに加入している会社員(第2号被保険者)月2万円(年24万円)
既に確定給付企業年金に加入している会社員(第2号被保険者)月1万2000円(年14万4000円)
公務員(第2号被保険者)月1万2000円(年14万4000円)
いわゆる専業主婦(第3号被保険者)月2万3000円(年27万6000円)

前述を思い出すと見えてきますが、第1号被保険者には国民年金基金以外の2階部分がありませんから、そこを補うためにiDeCoを、という意図があり、同じように3階部分のない企業年金のない企業勤めの会社員にも3階部分代わりを、DCなりDBなりに入っている人や3階もしっかりしている公務員には掛け金を比較的少なめに、ただのりしている(ベーっだ)専業主婦はもともとフリーランチで1階だけはあるので2階がわりに、という意図が見えてきますね。あ、最低掛け金額は月5,000円です。

と思うと、掛け金がいくらであってもそれに追加して月々167円と運用管理機関への手数料が乗っかるということは。。。最低額の5,000円としても3%以上、一般的な20,000円ならば 0.8%、目一杯の68,000円としても0.2% 以上の手数料がかかる(ということはその分パフォーマンスが最初から押し下げられている)ことになります。となると、手数料を払っても、最低でも年率1-3%のリターンを確実に出せる商品に積み立てていかないと手数料負けする(定期預金なんてもってのほか)、ことにな流のが見えてきます。まぁ、この次の税効果を考えるとそうでもない、のですが。。。いずれにせよ、この辺りを考えて運用管理機関の商品リストと手数料率との組み合わせを選択していくことになります。

2. 期中のキャッシュフローと税金

さて、iDeCo における投資期間、すなわち60才になる日まで、の税金の考え方は次のようになります。お待たせしました。みなさんお待ちかねの確定申告のお話ですよ。

iDeCo のために支払った掛け金と手数料(というか、手数料こみの掛け金、と言った方がいいですね)は全額所得控除の対象になります。どういうことかというと、企業年金等のない「協会けんぽ」加入な会社に務める年収が額面で600万円の東京在住の独り者の30代の男性(女性でもいいのですが)、という前提(面倒なのでボーナスなしの12ヶ月均等払い、って外資系みたい(笑))にします。

まず、600万円の額面の給与に対して、給与所得控除が 600万 x 20% + 54万円 = 174万円、となるので所得税を考える時の給与所得が 600 – 174 = 426万円、となります。

次に健康保険と厚生年金がそれぞれ(介護保険が不要だから:今の平成30年前提で)毎月のお給料が50万円なので、個人負担としては24,750.0円、45,750円ですので月額70,500円、年額で846,000円になります。これも丸々所得控除扱いです。

計算が面倒なので、生命保険も地震保険も入っていない、とすると、あとは基礎控除の38万円が控除されて。。。 426 – 84.6 – 38 = 303.4万円の課税所得を得たことになり、これに対する所得税は国税庁のサイトによれば (303.4 x 10%)万円 – 9.75万円 = 20.59万円、になります。

もしここで、月2万、年間24万円でiDeCo でやると、[(303.4 – 24) x 10% 万円 – 9.75万円] = 18.19万円となり2.4万円 (iDeCoの24万円の10%分)の減税効果があった、のです。ちなみに、これ、りそな銀行さんが広告で使う数値の根拠になったと思われる日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社さんの作ったシミュレーションだと 4.8万円になるそうですが、これは多分所得税率が20%適用だった計算なので、多分健康保険と厚生年金を低く見積もったからじゃないかな、と思います。

これが、もし同じ条件で1,100万円の給与だとしたら、給与所得控除が上限を超えているので 220万となり、給与所得としては 880万円になりまる。

次に健康保険と厚生年金が、月給で91.6万円なので保険料は46,035円と56,730円の月額102,765円。年額にして1,233,180円です。また、単純な計算で基礎控除の38万円が控除適用になって、880 – 123 – 38 = ざっくり719万円です。

この場合、税金はといえば、課税所得が695万円を超えていますので (719 x 23%)万円 – 63.6万円 = 101.77万円、となります。ですが、同じように月2万、年間24万円でiDeCo でやると、課税所得が 719 – 24 = 695万円となり、税率が 20%に下がります(控除額も減りますが。。。)ので [(719 – 24) x 20% 万円 – 42.75万円] = 96.25 万円となり5.52 万円の減税効果が出てくるのです。これはiDeCoに拠出した24万円の23%に当たります。これが最終的な課税率出会った20%を超えているのは税率区分を一つ下に押し下げる効果も手伝っているから、なのです。まぁ、このようなケースはちょっと稀ですが、とはいえ、所得税率の高い人ほど毎年の所得税を押し下げる効果が高いことがわかるかと思います。

という事で、もし毎年の所得が一定と仮定すると、所得税率が10%の人ならば10年分の税還付で1年分の投資が可能になります。運用とは別に10%の再投資する資金ができる、とも言えますよね。となると、所得税率が20%の人ならば5年分の税還付で1年の投資ですから。。。ま、そんな再投資、と思うよりも、運用管理機関に支払った手数料程度は回収している、と思う方が良いかもしれませんね。

それだけじゃない期中の税金のメリット

60才の運用期間の終了までは一旦入れた掛け金や掛け金で買い集めた投資信託などの金融商品を現金化したものを引き出すことが出来ません。となると、通常は毎月毎月掛け金を移動して(多分自動的に)とある投信などを買って持ち続けることになるはずです。

ですが、前述の通り運営管理機関はただ一つしか使えず、その取り扱い商品には極めて偏りがあるので、どうしても運営管理機関を移動してでもあの商品に投資したい!という時にはそれまでのポジションを売却して資金化して移動することになります。で、売却する、となると通常はキャピタルゲインが発生しがちですよね。となると、今だと20%の譲渡課税が掛かってきますが、iDeCoの口座の中での売却については非課税です!

なぜか。60才以降に発生する年金の支払いのところで(それでも、老後の生活を支えることを考えると当然に通常の所得税やキャピタルゲイン課税に比べれば課税額が安くなる形で)課税することが出来る、からなのです。いわゆる税の繰り延べ効果を年金の仕組みの中に取り込まれている、のです。

Exit となる年金の支払いの時の税務については後ほど細かく触れるとしますが、売却益への課税がないと思うと、案外気軽に利益の乗った投資対象を売却して、その後の市場環境や運用方針の変更に合わせて別の投資対象に乗り換えることができそうですね。通常の証券口座での取引で頭を悩ませる利益に対するキャピタルゲイン税の取り扱い(例えば同じタイミングで含み損のある投資対象も合わせて売却して含み益と相殺させてキャピタルゲイン税を抑える、など)を考えずに、もちろん買い付け時の手数料も気にせずに、機動的なアロケーション変更が可能になる、と思えば。。。って、投資信託をそんな風に回転売買に使っちゃダメですよ!

60歳を過ぎて年金受給者になった時に税金を納める事になるのですが。。。

さて、ずっと貯め続けてきたiDeCo な年金も60歳を過ぎると運用終了となるので、拠出することが出来なくなり、引き続き投資先のファンドで運用し続けるか、年金として給付を受けるか、と言う選択をすることになります。

ちなみに、何もせずに運用し続けても、年金として月々でも毎年でも継続して引き出していく場合でも、月に64円ずつ信託銀行に支払い続けることになります。また、年金として定期的に引き出しても、一時金として一括で運用資金を一気に引き上げても、一回につき432円が信託銀行に送金手数料として支払うことになります。そう考えると、60才になった月、すなわち確定拠出が出来なくなって最初の月、年金受給者となった最初の月に一時金で全額を引き出してしまうのが手数料的にはもっとも有利、と思えてきますよね。

税制についての比較をしてみましょう。

年金として引き出していく場合、雑所得扱いになります。所得税を知っている人だと、雑所得って一番メリットの少ない所得、と言う印象があるかもしれません。例えばFXや為替の差益だったり、最近ならば仮想通貨だったり。これが一時所得ならば50万円の控除があったりするのですが、公的年金以外の場合は本当に税務上の控除がないので収入金額から経費控除後の利益が20万円以上の場合には、その額を他の給与所得などと合算して累進課税の適用を受けることになります。

では、公的年金については、と言うと、流石にここまで厳しくはなく、こんな整理になっています。

65才未満の場合
公的年金等の収入の合計額割合控除額
公的年金等の収入金額の合計額が700,000円までの場合は所得金額は0。
700,001円から1,299,999円まで100%700,000円
1,300,000円から4,099,999円まで75%375,000円
4,100,000円から7,699,999円まで85%785,000円
7,700,000円以上95%1,555,000円
65才以上の場合
公的年金等の収入の合計額割合控除額
公的年金等の収入金額の合計額が1,200,000円までの場合は所得金額は0。
1,200,001円から3,299,999円まで100%1,200,000円
3,300,000円から4,099,999円まで75%375,000円
4,100,000円から7,699,999円まで85%785,000円
7,700,000円以上95%1,555,000円

これに基づいて計算すると、例えば61才の時に年間iDeCo からだけ 350万円を年金として引き出した場合、350万円 x 75% – 37.5万円 = 225万円が課税所得扱いになります。これがもし、70才になって、厚生年金からの年金支給を上乗せしまくって(65才から70才まで受け取らずにあと送りにすると最大42%ほど年金受給額が上乗せできます。)受け取り始めたら、この350万円に厚生年金保険などを上乗せして計算することになります。

もし、これを一時金として受け取る場合、退職所得と同じ計算が適用されます。どう言うことかと言うと、確定拠出年金の拠出期間に合わせた控除額を適用した退職所得扱いになります。所得控除のテーブルを載せるならば

勤続年数退職所得控除
20年以下40万円 × 勤続年数(80万円以下のときは、80万円)
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)

例えば、21年間iDeCo に拠出したならば、控除額は 800万 + 70万円 x (21 -20) = 870万円となります。

と言うことは。。。税務的にうまくやろうとする一つのアイデアは

21年間、毎月2万円ずつ積み上げたとしたら、2万 x 12ヶ月 x 21年 = 504万円ですので、一時金として引き出す場合には、最終的に拠出額に対して73%勝たないと税金が掛からないことになります。

また、仮に870万円まで勝ち上がったとして、60才から全額控除となる70万円ずつを5年間引き出しても手数料を考慮せずに残額は520万円ですから、65才からの4年間も全額控除となる120万円を引き出し、70才で残額の40万円を引き出せばキャピタルゲイン課税を見事に逃れて全額引き出すことが可能だと言うことになります。

73%のキャピタルゲインを60才まで繰り延べたあと、かかる税制優遇を使うとうまく課税されずに引き出すことすら可能になる、のです。まぁ、実際は、厚生年金や企業年金の受け取りなども発生しますから、ここまで綺麗にいくはずはないですので、これはかなりファインチューンしたケースではありますが。。。

まとめ

本当は、こんなiDeCoにあった投資戦略(前述の例じゃないですが、最終リターンが70%を目指しても無税なのですからね。頑張っちゃいますよね。)とか、それを採用している運用管理機関とその手数料との兼ね合いまで分析するのが筋かもしれませんが、実はこのiDeCo と前回のNISAを使って、個人だから出来る超長期投資の世界的トレンドについて語りたくて仕方がないものですから、今回はここらで終わりにしようかと。

とはいえ、税制のメリットがここまであちこちに散りばめられたこの商品、出来るだけ若いうちに始めた方がオススメなのは確かです。が、NISAと iDeCoで毎月5万円を確実にためていく、と言うのは若い頃には厳しいですからねぇ。。。優先順位をどうつけるか、と言うAFPの腕の見せ所的な話でもありますが、それこそそう言う話は個別でお話すべきですから。。。

[投資のコストと効果] NISAを使った株式関連投資のメリットとデメリットを改めて考える

NISAって何ですか?
気づいたらずいぶん前の記事になってしまっていた ETF(というかファンドに投資することの隠された意義とETFにすることでメリットを受ける人たち)の話のなかで思わず触れてしまった NISA。以前書かせていただいていたSoldie でも、人気のコンテンツの一つはこのNISA。だから多分言葉だけは耳にしたことがある、という人も多いかと思います。

NISAって何ですか?
NISAって聞いたことはありますよね?

実際のところ、証券投資、特に株式投資と投信の投資をしている人ならば積極的に使っていて然るべきツール、のはずなのですが、よくよく仕組みを知らないとただの塩漬け専用口座になりかねないし、とはいえうまく使いたい税制面のメリットがある(ということは、それを使って誘導したい人がいる、という意味でもあるのですが。。。)のをみすみす見逃すこともなかろう((※)ただし、株式投資が制限なくできる人に限る)、ということで、じっくり見直しながら、どんな戦略ならば一番うまくハマるのか、というのも考えていきたい、というのが今回の記事の目標にしてしてみます。

NISAってそもそも何ですか?

NISA とは日本版 ISAということで N-ISAなのですが、じゃあ、ISAとは何か、というと Individual Savings Account の略でして、英語で書かれているとなんのこと?と思われる方もそこそこにいらっしゃると踏むので(ついこの間も私のtwitter をみて帰国子女ですか?と言われたのですが、そんなことはないです。私の英語は足立のヤンキーイングリッシュです。)説明すると、アメリカやイギリスなどの国々で、個人による資産形成のための証券投資に対して一定の税制優遇を与える税法が導入されていて、その条件を満たすための個人向け(=individual)貯蓄(=savings)口座(=account)、なのです。と言うことは、NISA は日本の租税特別措置法の中の株式等に係る譲渡所得等関係、第37条の14に、定められた非課税口座、なのです。

ですので、このファンドやらストラクチャーやら cryptocurrencyやらオフショアやらを扱うブログにしては珍しく、ファンド商品でも戦略の話でもなく、日本の税制に基づく証券口座の一つ、について話をする、とまず理解してくださいな。って、ここに来るような人なら皆まで言うな、ですな。

じゃあ、どう言う条件で非課税になるの?

はい、投資で一番のコスト、税金、特に日本ならばキャピタルゲイン課税が課税されない、と言うのはとても魅力的なことですよね。NISAの口座での取引ならば全ての株式の取引で発生するキャピタルゲインに対する課税がない。。。なんてそんなに都合のいい話でもなさそうでして

利用できる方日本にお住まいの20歳以上の方(*1)(口座を開設する年の1月1日現在)
非課税対象株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益
口座開設可能数1人1口座(*2)
非課税投資枠新規投資額で毎年120万円が上限(*3) (非課税投資枠は最大600万円)
非課税期間最長5年間(*4)
投資可能期間2014年~2023年
  1. …0歳~19歳の方は、ジュニアNISA口座をご利用いただけます。詳しくはジュニアNISAページをご覧ください。
  2. …NISA口座を開設する金融機関は1年単位で変更可能です。ただし、開設済みのNISA口座で既に株式・投資信託等を購入している場合、その年は他の金融機関に変更することはできません。
  3. …2015年以前分は100万円。未使用分があっても翌年以降への繰り越しはできません。
  4. …期間終了後、新たな非課税投資枠への移管(ロールオーバー)による継続保有が可能です。

と言うことが金融庁のホームページの NISA特集にありましたので引用してみましたが、ちょっとイメージがつきづらいと思いますので、少し例を交えながら説明していこうかと思います。

NISAのイメージってこんな感じ

例えば、株式の取引を検討しているミヤタ君がいるとします。彼が株式取引をするのに、当然ながら証券会社に取引口座を空けねばなりません。

今ですと、1月から12月までの取引を全て自分でリストにして提出して、その他に得た年間の所得と合わせて確定申告しなければいけない「一般口座」か、証券会社が各取引の利益に対して源泉徴収を行い(負けたら源泉徴収しすぎている金額を返してくれて)、年に一回の報告書を纏めてくれるので確定申告は書類提出だけで追加の納税も発生しないし格段に楽チンな「特定口座」の二つしか選べなかったのですが、今はこのNISAという口座も開設することが出来るです(しかも2018年からは「つみたてNISA」という選択肢も!)。

このNISAは、1月から12月までの1年間における国内および海外の株式(と投資信託)の新規購入額のうち最初の120万円については、その株を買った年を含めて5年間は、その株式の売却益が確定しても、株式の分配金にも税金がかからないというものなのです。もし5年経っても売らないでもっと儲けを期待したい、という場合には5年経って終了するNISA口座からその翌年に新しく開設されるNISA口座に全額移管することが出来るので、NISAの制度が存続する2023年の開設/2028年の終了まではその株式が仮に3倍になっても税金がかからない、ということなのです。

また、2018年から始まったつみたてNISA の場合は、1月から12月までの1年間における国が定めた基準を満たした投資信託の定期的な購入に対する、年間の累計購入額の40万円については、その株を買った年を含めて20年間は、その投資信託の売却益が確定しても、投資信託の分配金にも税金がかからないというものなのです。

とはいえ、その代わり、売却損が出ても一般口座や特定口座の売却益と相殺が出来なかったり、損が出そうだからということで相殺させるためにNISAから一般口座や特定口座に株式を(そして、つみたてNISAから普通のNISAに、もしくはその逆方向に、投資信託を)移管したり、逆に、一般口座や特定口座に持っている株式がもう買っちゃったからといって、税金を回避するべくNISAに移管したりすることが出来ません。

また、今ですと一つの口座で120万円の非課税枠がある、と解釈して、複数に口座を開けて例えば120万 x 5口座 = 600万円(つみたてNISAならば40万 x 7口座 = 280万円!)の非課税口座が持てる、わけがなく、最初に口座を開くと他の証券会社や銀行にも並行して口座開設をすることが出来ず、また他の金融機関に口座を開けようとするならば翌年にならなければ開けられないのです。

そして。。。一般NISAを持つとその年にはつみたてNISAを、逆につみたてNISAを開けるとその年には一般NISAを、同じ年の間には開設することが出来ません。

実際の投資の流れ的に見ると(一般NISA編)

そこで、ミヤタ君は某ネット系の証券会社で口座開設をして、この2018年に一般NISAも開設してみました。開設する際には他で開設していないかどうかを含めて税務署と証券会社で審査が行われるので申し込んで最長でも数週間程度待つことに。。。

株式の配当って

で、実際に口座が開いたので、100万円ほど口座に資金を動かしてとある株式の銘柄、ここではAとしましょうか、を100万円で買ってみました。すると、株式の分配金を受け取ったときに源泉徴収額が掛からず全額受け取っていました。さすが非課税口座。

年内に速攻売っちゃった場合

そして、年末を待たずして、A株式が2倍になったことで売却しました。すると、これにも特定口座ならば売却益に対する20.315%のキャピタルゲイン税が掛かるところが掛かっていませんでした。

そこで、売却したことで非課税枠の100万円の枠が開いたはずだから、さっきの200万のうちの120万円でもう一度別の儲かりそうな株式、Bを買おうとしたら。。。非課税枠は残り20万円しか残っていなかったことに気づいた、という感じです。

5年の期限前に売却した場合

では、5年の期間満了前に売却した場合にはどうなるでしょう。2倍になったので売却する、ということで100万円に対して特定口座で起きていた20.315%の源泉徴収は発生せずに終わります。さすが非課税口座。そこで新規投資を始めよう、というならば、その年のNISA口座を開設して購入することになります。

5年経っても売らなかった場合

これが、5年間放置していて2倍になっていた場合、ですが、5年経つとNISA口座は終了になります。でも、2023年までは新規のNISA口座を開設できるので5年が終了する2022年に開設して5年間放置していたA銘柄をこの新規口座で引き継ぐ(ロールオーバー)することにしました。このとき、200万円相当ですが、ロールオーバーの場合には2018年の新規の購入枠を引き継いだことになっているので追加購入することは出来ません。

今の所、この2022年に開始する5年期間の終了時点である2027年に一般NISAの設定が出来るという法律が出来ていません。もしこのままですと、特定口座か一般口座に移管して、売却時に20.315%のキャピタルゲイン税が課せられることになります。

では、つみたてNISAだと、この話がどうなるか、というと。。。

実際の投資の流れ的に見ると(つみたてNISA編)

ミヤタ君は某ネット系の証券会社で口座開設をして、この2018年につみたてNISAも開設してみました。開設する際には他で開設していないかどうかを含めて税務署と証券会社で審査が行われるので申し込んで最長で1-2週間程度待つことに。。。

投資信託の分配って

で、実際に口座が開いたので、40万程度を口座に資金を動かして、月に3万円ほど、ここではXという適格な投資信託しましょうか、を積立で買う設定をしました。すると、この投資信託の配当金を受け取ったときに源泉徴収額が掛からず全額受け取っていました。さすが非課税口座。おかげで再投資にそのままそっくり回すことができました。目指せ複利のスノーボール効果!

配当金が特別配当、要は元本の償還だった場合

そして、年末を待たずして、X投信からの配当が実はパフォーマンスが悪くて特別配当、ということで元本の払い戻しになってしまっていました。

そこで、元本の償還したことで非課税枠の40万円の枠の一部が開いたはずだから、さっきの帰ってきた元本にちょっと上乗せして別の投信 Yでも積立始めようかな、なんて思ったら。。。非課税枠は着実に毎月の3万円のX投信の購入代金で減らして、元本償還されても減ることはありませんでした。

20年の期限前に売却した場合

では、20年の期間満了前に売却した場合にはどうなるでしょう。積立してきたのでドルコスト平均法で適当に低いところで平均取得単価になってくれたおかげで利益が出ていました。

ということで年36万円を継続させた年数分に対してそこそこ利益が乗っていたものの、それに対して特定口座で起きていた20.315%の源泉徴収は発生せずに終わります。さすが非課税口座。そこで仕切り直しで別のファンドに新規の新規投資を始めよう、というならば、その年のつみたてNISA口座の枠を引き続き利用して購入することになります。

20年経っても売らなかった場合

これが、20年間放置していて積立てきた場合ですが、20年経つとつみたてNISA口座は終了になります。で、一般NISAのように、2038年に新規のつみたてNISA口座を開設できるか、というと今のところは不透明。なにせ、つみたてNISAは2037年までの口座開設分の話しかしていないのです。いわゆる時限立法ってやつですね。ですので、今のままで行くと、売らなかったら特定口座か一般口座に移管して売却時にキャピタルゲイン税の課税対象になってしまうのです。

ちなみに、キャッシュフロー的に何か見落としてない?取引コストとか

はい、株式を買うときや売るときには手数料がかかるのが一般的ですよね。ですが、NISAについてはオンライン系の証券会社さんですと無料にしたり、キャッシュバックすることで実質無料にするところが多いようです。前述のように、一人の投資家にとって一般かつみたてかのいずれにせよNISAを取り扱えるのは一年で一つの金融機関だけ、となれば手数料の競争も起こります。

その他のメリットってないの?生命保険の保険料控除みたいなやつとか

実は。。。ないんですよ。税制的なメリットで言えば投資対象が儲かった時のキャピタルゲイン税が掛からないだけで、証券の購入価格に対応して所得税減税が起きるとか、投資対象が負けたときに損益通算出来るとか、翌年以降に繰り越せるとか、そういうのが全くありません。もし所得税減税を狙うならばiDeCoを使う方がいいでしょう。実際、つみたてNISAとの違いってそこくらいでしかないのですから。って、あーあ、これで次はiDeCoの解説が決定だ(笑)

じゃあ、NISAで何に投資したらいいの?

と、いうキャッシュフローや税務的な影響について見たので、これを踏まえて、じゃあ、NISAで何を買いましょう、という話になりますよね。ご存知の通り、ストラクチャラーではあるけれども投資のプロではない私の意見ですので、まぁ、話半分に聞いてくださいね。

そもそも、一般NISAなのか、つみたてNISAなのか?

個人的には、今年から始めるならば、つみたてNISAかな、と思ってます。というのも、iDeCo の年間積立額が通常ならば27万6000円(一般的な会社勤めの人の場合。自営業ならば81万6000円)ですが、実際にこれを積立てみても最初の数年って仮に10%増えても2万円程度。実額で考えると投資額としてかなり小さいですよね。と考えると、iDeCoにつみたてNISAをやれば年額67万円になるので、将来の年金として結構悪くない足しになりそうですよね。ちょうど40才代ならば、65才定年とか70才にならないと年金がもらえなくなるのでは、みたいな話があるとすればこの20年でどこまで年金資金を貯められるかが勝負。ならばコツコツ積み立てるほうが負担も少なくて良さそうじゃないですか?

となると、国の定めた低コストな(ってお役所が言うんですよね。。。)適格性に合致した投資信託か、一部のETFが購入可能な口座ですから、結局投信しか買えず(ETFだって投信ですからね。たかだか上場している程度でしかないんですよっ)、投信を選ぶときの第一の判断基準はこれ、アクティブかパッシブか、であって、その観点で見ると結構商品として並んでいるのがパッシブ系で、ベンチマークとなる指数連動型の商品。長期投資を考えると、どうしたってアルファを取りに行くよりもベータで手堅くインフレに対応できるようにする方が20年間の長いスパンで投資を積立てることのドルコスト平均法でいくならば相対的なコスト感も良いでしょう。

となると、一旦つみたてNISAを始めると、最後までつみたてNISAに魂を預けることになりそうですね。でも、これのおかげで iDeCo と併用して自分年金をどれだけ大きく出来るか、と言う話になるわけですが、iDeCo の方がアクセス出来る商品性がアクティブ系もそこそこある(お勧め等はiDeCoの記事の時にでも。。。)のでそちらに任せて、つみたてNISAは対インフレと言う意味でのパッシブなベンチマーク運用すると言う分散を目指すのがバランスのいい投資スタイル、と言えるでしょう。

あ、そうそう、ちゃんと20年間でポジションを閉鎖することになるのであれば、20年間毎年積立た分を1年分ごとに(ドルコスト平均法の解約版みたいに)解約して行くのもよし、最初の投資分が20年経ったところで、全部のポジションを一気に売り抜くのだって問題ありません。

一般NISAだって捨てきれないものがある

とは言え、一般NISAについては株のキャピタルゲインが最長5年間の保有期間において非課税になり、うまくロールオーバーを使えば、今年と来年から始めるならば10年間の保有期間でのリターンを狙えることになります。とすると、最長10年の持ちきりで株のキャピタルゲインが非課税になることをうまく使うならば、大化けする株式を買ってしまうこと、でしょう。となると、流動性の高い大型株ではそんな大化けを狙いに行きすらできないですから、自然と中小型株に目が行きますよね。それでいいんです。なにせ、狙うのは数倍から数十倍になることを目指すのですから。仮に11倍(笑)になったとしましょう。上がりの部分が投資額の10倍と言うことですから、もしキャピタルゲイン課税があるならば2倍分を国に持っていかれるんですよ。それがNISAには全くないのですから長期戦で仕込んで大物を待つのも悪くない戦略ではないでしょうか。

ちなみに120万円と言う投資枠で買える銘柄は中型株で364社、小型株で3,140社。毎年同じ銘柄を向こう5年で買い集めるもよし、毎年テーマを決めて選んで買うもよし。

まとめ

個人的には、会社自体が当局の規制の外にあったことから、株式の取引は事実上可能でしたが、職業上の倫理観等で株式の取得は控えていて、結果投資信託に投資することもありませんでした(なにせ作っていましたからね。。。)。

ですが、今回調べて見て、またファンドに投資することは自分が投資判断をしていないと判断されることから、金融規制業種にいて、ディーリング出来ない類の仕事をしている人たちにとって株式への直接投資が事実上禁止されていますから、資産形成・運営せねばならないときの回避ツール的意味合いもあるのだな、と感じました。

まぁ、やって損は。。。銘柄選定の結果で起こるかもしれない、ですね。でも、この手の政略系な意味合いがあるので、やらないよりはやったほうがあれこれ良いのだろうと思います。

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