なぜプライベート資産への投資ってLPS / 組合方式を使うの?

投資ストラクチャーは喧々諤々やって決まるものです。

最近の私自身の個人的興味が投資信託形式でのストラクチャード・ファンドのようなリテール向けの世界からプライベート資産への投資の世界にそのウェイトが大きくなってきている中で、同様にこのプライベート資産への投資についてはこの投資難のご時世においては機関投資家の注目も上がってきていることもあり、その投資スキームへの問い合わせ、というより、なぜ従来までの上場株式や債券投資で使われている投資スキームが使えないのか、という問い合わせを受けることが増えてきました。

そこで、なぜプライベート資産への投資において、上場株などの慣れ親しんだ投資で使う投信と比べて、会計処理も投資の手続きも異なる組合方式を使うことになるのか、例によって分解しながら説明していこうかと思います。

その前に上場株式や債券投資では何が起きているのかを見ると

さて、いわゆる投資信託とかヘッジファンドといった”パブリック”な資産への投資をするファンドを考えてみたいと思います。

この資産クラス、一番わかりやすいのは上場株式の中でも、日中の取引高が比較的多い銘柄や外国為替あたりのいつでも売り買いできると考えやすいものを手始めに検討するならば、投資戦略として○○な条件に合致する銘柄を一定のルールで分散して(最近ならば厳選した2○銘柄に集中して、とかいうのもありますが)投資します、と設定すれば、よほどのマーケットクラッシュの起きている状況でなければ売買可能ですので、いつでも(戦略の持つ投資許容サイズの範囲ならば)幾らでも投資資金が入ってきても翌日以降の比較的早い段階で投資可能な状態にありますし、投資資金の引き上げに対しても現金化が比較的早く行うことが出来ます。こうなるといつでも不特定多数の投資家がファンドに参加し、また投資から撤退したいと思った時に出来るような仕組みを導入することが投資家にとっても、(投資家の資金には長くいて欲しいとは思うものの)ファンドを運営する側にとってもメリットがあります。

まぁ、この仕組みや取引する市場の流動性の都合、そして税制などのファンドの制度上の都合などからこの都合上お金が入ってきたらすぐに買えるものを買わねばならないことで、戦略で投資できる以上にお金が集まってしまうと戦略上ベストじゃないものを無理無理買ってパフォーマンスを落とさざるを得ない状態に陥る可能性もあるし、例えば全面安が読めるからポジションを全て現金化しちゃえ、とポートフォリオを全部現金にして置いておく、と言った大胆なことをすることが許されていないケース、というのもあるのですが。。。

ファンドの3つ仕組み、信託・ユニットトラスト、会社型、組合形式、で言うならば信託・ユニットトラストや会社型がこれら不特定多数の投資家が随時、その時々のポートフォリオの持分を切り売りするように設計されています。ポイントは、この「ポートフォリオの切り売り」というところで、例えば、その時のポートフォリオの1億円相当の持分を購入する、といってファンドに1億円を払えばその持分が交付されますが、投資家としてはその持分に支払うことで追加の債務や費用負担をすることがありません。もしファンドに取引や維持のための費用が発生するならばそこから支弁されますし、仮に投資が失敗したとしても、その一億円を超えて損失を負担することもありませんし、追加出資の義務もありません。この辺りは投資信託等に投資したことのある人ならばごく普通のこと、と感じるかと思います。

プライベート投資 – いつ投資出来るかわからないことにどう対応するか?

さて、プライベート投資を前述と比較しながら見てきましょう。

プライベート投資は一般的に投資がいつでも出来るものではありません。(誤解を承知で書くならば)上場株のように取引市場が存在して一つの銘柄に対して潤沢な量の証券が発行されていて、いつでも誰かが売り買い出来るように(HFT – 高頻度取引 – マネジャーのような)マーケットメイクしてくれる、なんてことはなく、都心の一等地の土地建物のようにそこに唯一存在する稀少性の高い不動産の取得案件がそう多くないように、気に入った企業のオーナー株主さんに数年かけて頼み込んで(でもいいし、仲良くなって飲みに行って心からの信頼を得てでもいいし、なんにせよ)世の中にそれしかないユニークな企業の株の大多数を引き受け「させて頂く」ことで初めてその企業の所有権と経営権を手にして思い描いた企業運営を始められる、とか、そういう努力の結果においてそんな隠れた私有企業の取得の際に融資を一緒になって行える、という投資機会なのです。

とすると、プライベート資産への投資機会は「年間で、そうだなぁ、うちのチームだと3-4件程度、一件あたりのチケットサイズが2-30億円くらい(すみません、どことは言いません。でもこれくらいのサイズ感の運用者さんとよくお話をさせて頂いていたので。。。)」という将来の予想は語れるものの、今この時点で買います!という確実な取引は存在しない可能性が極めて高い(まぁ、とはいうものの、そろそろ買える案件があるので、ということでプライベート資産への投資ファンドのファンドレイズにおいて説明しながらファーストクローズ – ファンドの最初の買収案件の決済のための資金調達 – を目指す訳なのですが。。。)のです。であれば、この瞬間にお金を預けてしまうより、案件がいついつに決済になるので、その数日前に送金してください、という投資資金がファンドの銀行口座で眠っているより投資家の手元で他に有効利用される方がよさそうです。

とすると、プライベート資産への投資するファンドというのは、パブリック資産への投資でいうならば、投資対象資産とその銘柄選別のための戦略に基づくポートフォリオに投資する、というよりは運用者のストックピックの能力の巧拙を品定めするかのごとく、運用者の投資案件の発掘から投資実行、そして回収といった一連のプロセスに対する投資ということになる一方で、資金の出入りだけ見てしまうと、運用者の作る将来の投資機会に対する出資約束とその実行、という将来債務を最初に負うこと、と理解できます。

この場合、ファンドの3形態のうち、会社型も信託・ユニットトラスト形式も、形は何であれ投資家に対して債務を要求する仕掛けにはなっていませんので、前述のような将来の出資の約束とその実行ということがこれらの仕組を使う限りにおいては実現可能とは思えてきませんね。そこで、組合形式の登場となるのです。

一応組合形式って説明するならば。。。

日本の法体系でお話をするならば、民法において、複数の個人や法人が出資して共同で事業を行うことについて合意する契約を組合契約と言います。これは世の中では任意組合として知られていますが、これに類するもので商行為を行うための商法上で規定されているのが匿名組合、あとはこのブログで何度か紹介している、投資事業有限責任組合法に基づいて設定される投資事業有限責任組合(日本版 LPS)とか、名前的には似ているものの根拠法が別になる、有限責任事業組合法に基づく有限責任事業組合 (世に言うLLP)なんかがあります。

あれ、健康保険組合とか、労働組合、生協だって生活協同組合だし、銀行っぽい信用組合(しんくみ、しんそ)だってそうでしょ?マンションの管理組合とかも組合って名前についてるじゃない?

ですよね。この辺りになると、確かに同じように一定の目的としての事業を行うために組合員から出資を受けて活動している、といえばその通りですよね。これらもそのための特別な法律を根拠にして設立されているのです。が、投資の世界で使うといえば、LPSかクラウドファンディングに使われる匿名組合あたりですので、ここではこれらに絞ることにします。

組合って前述のように、同じ志を持った人たちが一つの契約にみんなで揃って署名捺印して必要に応じて出資し、その結果の投資の果実を配分されて享受する、と言う仕組です。ですので、出資も締結した組合の成立日に全額行う、と定めずに必要に応じて出資をする形でも良いため、前述のようなキャッシュフローに対応できる、と言う訳なのです。

また、組合員の間での利益分配や出資割合についても契約上柔軟に定めることが出来るので、例えば特定の組合員がこの案件の出資は気にくわないからしない/都合上出来ないからしない、と言うような出資しない選択肢を与えることが出来ますし、その結果、その参加しなかった案件からの収益配分に当然に参加させない、といったことが出来ます。これはポートフォリオの持分を均等に配分される信託・ユニットトラストや会社型では実現できないことです。

と言うことは、実は組合ってすごくいいスキームなんじゃないの?なんで投資信託とかに使わないの?

って、そんな声が聞こえてきそうですよね。実際、アメリカからのヘッジファンド投資なんかでは、デラウェア州LPSとかを使うケースも多いそうです。事実、組合を締結したその日に出資約束額の全額を入金すれば通常の投信や会社型ファンドへの投資とあまり違いがなさそうに見えますしね。これはアメリカの税制に依るところが大きくて、ファンドの費用を純資産額の減少として扱うより、自分の支払った費用として認識する方が個人であっても税務上メリットが得られるケースがあるから、のようなのです。って、なぜ投資信託や株式ではそんな費用の計上を投資家サイドでせねばならないようなことが組合だと発生するのでしょうか。

実は、組合は事業共同体と言う性質から法人格が認められないそうなのです。となると、組合で行った事業の収支(と言うことは費用の支払いや資産売却益)や資産・負債の状況はその持分に合わせて投資家自身が直接行っているかのように取り扱わなければならない、のです。

日本でこれを実際に行うと何が起こるかと言うと。。。投資関連費用を毎年損金計上出来るならばする一方で投資対象を売却したらその年にキャピタルゲインとして納税申告する必要がある、のです。と言うことは。。。ほぼ毎年確定申告せねばならない、と言う意味です。

投資信託経由で投資している場合に、こんな手間はそうそうないですよね。なにせ費用は純資産額の減額ですし、保有有価証券は時価評価で純資産額が上下動するだけだし、投資対象が売却されたとしても純資産額の変動からは何が起きているか事細かにわかることもないのです。言い換えると、個別の投資対象の売却益をいちいち税務報告する必要がないのです。自分で税務的にしなければいけないのは、その投資信託を売却した時ですので、投資信託の保有期間に発生したファンドの中でのキャピタルゲインについては税務的にその利益が繰り延べられているのです。多分個人投資家は嫌がりますよね。

まぁ、いわゆるプライベートエクイティ投資と認知されているバイアウト戦略だとどうしても一口10億円(それより小額は要相談)からの、出来るだけプロの機関投資家向けで投資家の数も限定的に、仮にベンチャーキャピタル投資であっても投資額はより小額かも知れないものの10社投資して1社当たればいい、と言う個人が投資するにはハイリスクハイリターンそのものという世界ですので個人が入るには別の意味でも敷居が本来は高い投資ではあるのですが。。。

じゃあ、その逆で、投資信託でプライベート投資って出来ないの?

当然、考えますよね。日本人ですから。まぁ、そこが海外から理解してもらえないところでもあるのですが。。。

実際のところ、出来なくはない、と言う言い方をするしかないのです。かなり色々なところに歪みを生みながら、実際にやっちゃっている人たちがいます。

例えば。。。一番大きいところで、GPIF (年金積立金管理運用独立行政法人)さんの初の海外インフラ投資案件。これはパブリックだから言ってもいいですよね。インフラ投資もプライベート資産への投資の一環でして、初の投資で投資信託を使っているんですね。

私の知人のインド人がインドで株式投資をするにあたって未上場の頃から投資して、上場後も大きく育つまで付き合うと言う戦略を取っているファンドの運営方法を取っている、と言っていましたが、こちらも投資信託とほぼ同じインド籍のオープンエンドファンド。

まぁ、日本の投資信託ですと投資対象の流動性を、特に公募ファンドにおいてはかなり厳しく見ているのでそんなインドのファンドに投資することは出来ないですし、GPIFさんのケースも確か外貨建てですので日本の投資信託では私募であっても実現不可能(信託さんには日本の会計基準で外貨を扱えないですからね)。なので、どれもこれも海外だから出来ている、と言う言い方も出来る、のですが、上記の二つではちょっと事情が異なるのです。

インドが特別、ではなくて、流動性への考え方が異なる

まず、インドのケース。もし上記を見た投資信託協会か信託協会の関係者か、投信会社の人ならば、インドのルールが日本と異なって緩いからだよ、と言って切り捨てそうですが、実際のところ、未上場の時点での各銘柄への投資額はファンドの1%程度。投資後数年見てさらに目が出そうと思ったらアロケーションを増やしていくと言う戦略です。となるとそうやって育った結果、だいたい5年から7年くらいで手仕舞うか、するようなのですが、その頃にはだいたい3-5%程度のアロケーションをしているのです。日本の投資信託の分散どころじゃないですよ。UCITS準拠なくらいです。しかも、そこそこ大きい受託資産を抱えるファンドですので、そうやって成長した銘柄の卒業がちょうど流動性を担保できるような仕組みになっているので。

まさにこれはインドの投資信託が始まってからずっと運用し続けてきただけある、のです。常にプライベート資産への投資ポケットが存在する、だからいつ来ても投資可能、と出来る技なのです。通常なら待機資金をどうするの?と悩むところをこうやって解決するって、ある意味順当な話ではあるのですが。。。

じゃあ、GPIFさんは?

こちらは、実際に担当者に直接聞いたわけではないのですが、関わった関係者や、関わっただろう関係者たちの話を聞く限りでは、キャピタルコールに対応するようにしている、ようなのです。あれ?投資信託/ユニットトラストにはキャピタルコールのような組合形式で投資家が負うような債務というのを投資家が負うことはなかったはず、ですよね。ある意味投資家が自発的に追加投資をしない限り投資信託/ユニットトラストにはお金を入れる理由がない、のです。なので、普通に考えると、当初設定時点に予定投資先のコミットメント額を全額突っ込んでおく、というIRRの低下を無視した方法で実現する、と考えがち、なのです。

しかも、今は投資家の目線で話していますが、ユニットトラストを設定するにはtrustee / 受託者がいるのですが、このようなスキームですと投資対象となる組合に対しては自分が投資家になるのですから、組合員としての債務を負うことになります。片や債務を負い、もう片方に対して遡求できる仕掛けがないので、受託者はそんなリスクは通常取りたくない、のです。これが投資信託/ユニットトラストを使ってプライベート資産への投資を行うにあたって直面する問題、なのです。

さてこれをどうしたか。。というと。。。内緒です。これだけで多分数百万円単位のコンサルフィーを頂けるとお話なので(嘘)

ま、一言だけ言えば、これが出来たからと言って、公募投信には出来ません(やってる人は知ってますが)から、手頃にプライベート資産への投資が個人に手の届くようにできる、という話ではありません。でも、これを使ってプライベート資産への投資をしているのが、本当に国内でちゃんとしている機関投資家たちなので、出来ない話ではない、でもあれこれ関係者たちの苦労が通常より嵩んでいるんだろうな、ということは予想できます。実際、そのおかげでの副次的メリットも享受しているそうなので。。。おっと、これ以上多くは言えない言えない。。。

まとめ

と考えると、個人投資家の方へのコメントとしては。。。未公開株への投資、とか色々と個人、特に高齢の方への誘惑は多いと思いますが、こういう仕組み一つとって見ても、rest of us (普通な私たち)にこの手のハイリターンかもしれないけど、どう見てもハイリスクで投資にはコスト高な投資、というのは実はちょっと割りが合わない、と思って構えて見たほうが安心なんですよ、とFP的には言いたいです。

で、ストラクチャラー的に言えば、まぁ、この領域って実のところ、かなりフォーメーションって固まっているのでこう言ったちょっとしたイノベーションを加えるのって楽しいんですよねぇ。とは言え、関係者の制約条件の中でどこまで頑張ってみんなにとってメリットのある仕組みが作れるか、は腕と知恵の見せ所ですので、そういう機会にまた早く巡り会いたいものです。

東京版 EMPファンド構想を勝手に紐解いて解説しちゃいます

2018年4月27日に東京都が発表した「東京版EMPファンド創設」補助金交付について、オフィシャルで要綱が開示されているのですが、どうしても「EMPファンド」という言葉が先行しているからか、このプログラムに対してなかなか意図されているものが伝わっていないように、先日のAIMA Japan Forum 2018で話した人たちからの印象を受けました。まぁ、実際のところ関与できそうな人は一握り、という感もあるのですが、多くの人のもつ過大な期待をちょっとだけ正常値に戻すべく、一体誰が何をして、結果東京都がどうなるのか、というのをまとめてみたいと思います。

EMPって?

まず、EMPです。 Emerging Managers Programです。某北の国が使うとか言われているElectro-magnetic Plus – 電磁パルスではありません。Emerging Manager、すなわち新興運用者を発掘して育成するプログラムです。どういうことか、というと、ヘッジファンドのような腕に覚えのあるファンド・マネジャーが、例えば大きな組織にいるものの自分の腕を試したい、企業でもらう給料以上に稼ぎたい、一生に一度は自分が自分のボスになりたい、などの理由で自分のファンドを立ち上げたい、という夢を実現しようとするのですが、そのためには自分の会社を作って、その会社で資産運用業の登録を行って、投資家を募り(ということは相手にお金を出してもらえるように説得して)、ファンドを設定して、やっとファンドが運用できるようになるのです。

でも、自分で会社を設定して、資本を入れて人を集めて会社のルールを定めてファンド運用に必要な投資運用業のライセンスを当局に届け出て、とするだけで最低でも半年以上の時間と数千万円の会社の資本含めた元手が必要になります。

閑話休題 – いい機会なので一言

なので、適格機関投資家向け特例業務を使って資産運用業の登録をせずにファンドを安く立てたいとか言っちゃう人は常に一定数いらっしゃるようで、またそんな問い合わせを時折受ける(しかも丁寧に返事しても返事しないんですよ、大抵の場合。。。)のですが、人様のお金を預かって正しく運用して、適切なリターンを返すのが運用者の仕事なのでそれなりの運用の体制や環境、そして法令遵守へのコミットメントを示せない運用者に対しては、少なからずまともな投資経験を持つ機関投資家の多くはお金を預けるに足らず、と言う判断をし、そうでない(と言うことは良からぬ意図を持つか、投資ということに本源的な意味で無知な)機関投資家が名前貸しのような形でファンドの組成に手を貸し、その大半が残念ながら財務局のホームページで行政処分や悪質な無登録運用者として名前を挙げられて、二度と表で資金調達が出来なくなるか別の詐欺的手法を使って資金集めを行うかのいずれかの道を歩むことになるのです。自分は違う、ちゃんとやる、という人が実際ほとんどですが、その後そのほとんどが消息不明になっているのも事実です。

ですので、少なくとも当方にコンサルを、とおっしゃる前に、上記を踏まえて方向性をご検討ください。もし手頃に特例業務を届ければいいや、程度ならば、適当なコストを払うことで適当な書類を何も考えずに出してくる行政書士や弁護士などはいくらでもいますので、そちらの方が早いと思います。その後どうなるかは知りませんが。。。

投資家から見た EMPって

さて、投資家から見た場合、見ず知らずの人間に10億なりをお金を預けて運用させよう、なんて思える特異な人って。。。そうそういなさそうですよね。実際に、AIMA Japan Forum 2018の最後のパネルであった投資家パネルで登壇された国内大手投資家であるゆうちょ銀行、みずほ銀行、年金基金連合会、と言ったオルタナ投資については陣容も経験値も国内有数の人たちでしたが、そんな彼らですら、今回のEMP構想に対しては協力したいが諸手を挙げて参加する、とはその場では言いませんでした。それくらい投資家というのは慎重に投資対象を選ぶものなのです。

ですので、著名なヘッジファンド運用会社などで成功を収めて、そのトラックレコードを再現できる環境ができる、というならばまだ預けてもいいかも、と思うかもしれませんけれども、そんな過去の栄光すらない場合なかなか難しいのが現実ですので、こう言った「起業をしよう!」という人の気持ちをペキペキに折り、スタート時は自分たちの退職時の蓄えと、もしいいスポンサーがいればその人たちからの投資(このようなファンドのスタート時に設定のためにいれてもらう資金をシードマネー、といいます)で、スタートすることになるのです。

実際に2008年の信用不安に端を発した市場の混乱(ええ、あえてリーマン・ショックなんて言いません。)のあと、米国の銀行等への自己勘定での投資に対する規制により事実上退社を迫られた、腕利きのトレーダーたちの多くは自分でファンドを立てるべく独立するよりも、大型のファンド運用会社に入ってそのファンドの受任残高の一部を管理する形を取ることでより多くの投資家の信頼を(大型ファンド運用会社の名前と信用力で)得ながらファンド運営をして言った、という現実すら存在するのです。

インキュベーション・プラットフォームという存在

とはいうものの、運用業界もそんなスターマネジャーばかりの立ち上がりに期待したのでは先細ってしまうので、可能性のあるありそうな運用者を発掘して育成しないといけない、という意識も業界の中ではあるのも事実です。投資家の一部で、そんな駆け出しの運用者に早い段階で運用者自体に投資して大きく成功した経験を持つ人も少なくないのも事実でして、かくいう著者も2006年から2007年にかけてそう言った前途有望なファンド運用者の卵を発掘して育てて(その分の見返りをたっぷり稼がせてもらおう!)というインキュベーション・プラットフォームの設立と当初の数ファンドの運営に携わっていました。そのプラットフォームには、そういうファンド運用者の卵と数多く面談して、その中でも有望と思える人をプラットフォームに連れてきて運用する、という目利きの機能と、そういう運用者たちが負担なくファンドを立ち上げ(て、同時に投資する人たちやプラットフォームが将来的に儲けられ)る仕組みを兼ね備えているのです。

でも、このプラットフォームであれば運用者も投資家も世界中のどこにいたっていいんですよね。実際にそんなインキュベーション・プラットフォームは世界の主要な都市で投資家や目利きたちによって立ち上がっていますし、私が関与したプラットフォームでもケイマン諸島籍のファンドに仕立てて、アジア拠点の現地の投資運用ライセンスを持つ会社を通じてファンド名義で証券の売買執行をしていました。その時の証券の売買のアイデアを見つけていたのは日本にもいましたし、香港やシンガポールにいても場所は関係なく同じように機能するようになっていました。

EMPを東京がやる – なぜ?

さて、今回の東京都には金融都市機能の再生、という大前提があります。そのため、この数年間、JIAMという海外の運用会社や fintech企業の国内誘致を行うコンソーシアムが欧米からアジアの金融都市で東京への誘致活動をしてきています。そこに平仄を合わせるべく、東京都と金融庁とが2017年4月に海外運用会社による国内拠点に対する運用業の届出に対する英語での対応や届出プロセスの迅速化の制度を立ち上げています。その結果を受けて、昨年一社、確かイギリスで大手の生保系の運用会社が国内拠点の立ち上げと運用業の届出をこの仕組みをフルに使って行った、というアナウンスが出ていました。

しかし、このような大手運用会社の日本拠点が立ち上がっても、実質的には国内の投資資金がこの拠点の作る海外ファンドのフィーダーを経由して海外で運用される巨大なファンドに取り込まれるだけですので、運用拠点と言ってもさほど大きな体制を要することもありません。単純に右から左に流すだけ、の運用の頭を使わない仕組みを作るだけです(って、お前が昔ジャージー島やケイマン諸島でやっていた外国籍投資信託だって、単一資産を持ち続けるだけの頭を使わない仕組みだったじゃないか、と言われそうですね。ええ、その意味では全く同じです)。

となると、もし金融都市としての東京に拠点を置いて運用スキルを持つ運用者事業を育成したいとなると、そう言った腕に覚えのある運用者で東京に会社を立ち上げたいという野望を持った人や海外の運用会社で東京にオフィスと実質的な運用拠点を置くことで国内資産の投資運用したいという企業のプールに対して、東京で運用ビジネスをするメリットを感じさせるものを提供することが早道、のようです。そして、その運用者が喉から手が出るほどほしいものとは。。。投資資金への比較的容易なアクセスする手段、と言えるでしょう。

とはいえ、東京都が直接投資家と運用者のプールを闇雲にマッチングする、というのは、運用者からすれば紹介して話す機会がもらえるのでラッキーと思えるものの、投資家からすれば東京都の紹介とはいえ、素性のよくわからない運用者を片っ端から会って検討するなんてことは現実的ではない、ただのうざい話になるので、運用者のプールに一定のフィルターを掛ける目利きが入ることでより現実的な投資ストーリーに繋がるのではないか、と考えたのでしょう。

ということで、これらの運用者の卵から優秀なタレントを発掘し育成する目利きとなるゲートキーパー、そして早期投資に慣れた投資家がいて、そんな投資家と新興運用者とをマッチさせるためのゲートキーパーによるファンド・プラットフォームが必要になる、というストーリーが出来上がります。

ここで一つ疑問が出てくるかと思います。東京都の役割は?

前述のストーリーの中で二つほど疑問が出てくることになります。

一つは、東京都が投資家になっちゃえばいいんじゃないか?という疑問です。これ、「東京都のEMP」だから、東京都がシードマネーを出すのでは、とみんなが思ってしまうわけですが、実は東京都はシードマネーを出しませんし、出せません。大きな声ではいえないのでザクっと書きますが、きらぼし銀行の一部となった新銀行東京の一件があって出資ができない一方で補助金を出すことは可能、という縛りがあるそうです。

そこで、もう一つの質問の答えに繋がります。それは、出資しないのに東京都はどうやって誘致をしようというの?

それは、東京都がファンドプラットフォームの運営費用の一部を補助金の形で負担する、のです。ここでポイントなのが、ファンドプラットフォームを通じて投資される新興マネジャーの運営費用や新興マネジャーのファンドの運営費用ではなく、ファンド・プラットフォームの運営費用です。これは本来シードマネーを提供する投資家がゲートキーパーに対する運用手数料やファンドの維持費用を負担するところの一部を東京都が肩代わり、ということなのです。

確かに運用費用はパフォーマンスを押し下げる要因とは言えるものの、その負担が最大半分軽減されるから、といってもファンドの運用成績が思いっきり下がったら軽減された費用なんて意味がない、と言えるかもしれませんが、リスクマネーを供給する投資家へのできる限りのサポート、というところ、でしょうか。

で、最終的にEMPって誰が東京都に申請するの?

ということで、この構図が見えてくると、東京都が申請を受けるのは投資家と目利きとなるゲートキーパーがペアになって、EMPを立ち上げるので補助金を申請します、という形になってくるというのがわかります。しかもポイントがゲートキーパーと投資家のマッチングは自分たちで頑張ってやって、というスタンス、というか、ゲートキーパーに投資家を捕まえて連れてこい、と言っているというか。。。でも、投資家がキーになるこのプログラムとしては仕方のないところかもしれません。

じゃあ、新興マネジャーはどうしたらいいのでしょう。

EMPの申請の通ったゲートキーパーに「シードマネーを出してくださいよー」、と働きかける他になさそうです。東京都には今年4月以降に運用業の届出をした企業に対する補助金プログラムがあるのでそれには申請可能でしょうけれども、それはEMPとは異なる話ですので、シードマネーが欲しい場合には、ゲートキーパーが誰になったかをまず調べてから、ということのようです。なお、東京版EMPレベルでは戦略に縛りはありません。ゲートキーパーが掛けるかも知れませんが、ここでヘッジ限定とかすると対象となる新興マネジャーの選択肢を自ら敢えて狭めることになるのでしないだろうな、と思う一方で目利きの効く戦略の都合もあるので、最終的にどこまでバラエティに富む新興マネジャーのラインナップになるのかも興味のあるところです。

まとめ

さて、この仕掛け、ここまでよくぞこぎつけたものだ、という評価もあります。なにせ、この手の試みは今までここまで公開されたことすらなかったのです。そこから見れば頑張った、というべきでしょう。あとは実際に機能するか、というのは世の中のプレーヤーたちにこれが響いたか、という結果を見る他になさそうです。

さて、誰がゲートキーパーになるのかな。私も新興マネジャーとして売り込みに行く準備をしなきゃ(笑)

今年もやります、手伝ってます – AIMA Japan Forum 2018

気づけばもう8年のお付き合いになっている AIMA Japan。今年は理事ではないものの諸般の事情で運営のお手伝いをしております都合上、今年も開催される年次フォーラムのお手伝いをしております。

AIMA Japan Forumって?

AIMA – Alternative Investment Management Association の日本支部(はい、今年から一般社団法人ではなく、ロンドン拠点の本体の在日拠点での運営に変わっております)である AIMA Japan が今年で13回目となる年次フォーラムを行います。AIMA Japanが設立された時、Alternative Investment と言えば先物やヘッジファンドが主流だったので、AIMA と言えばヘッジファンドの業界団体、という認知のされ方をしておりますが、今やそのカバレッジは広く、alternative investment であればなんでも、ベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティ、プライベート・デットのような未上場資産や不動産、そして今年は仮想通貨までフォーラムで取り扱うようになって来たのです。

そうそう、AIMAではブロックチェーンやデジタル資産に関する部会があって、つい先日もお膝元のUK FCAによる仮想通貨のデリバティブの取り扱いに関する通達について会員に周知していましたね。

今年の見所は?

当ブログでも2016年の時の総括をしましたが

AIMA Japan Forum 2016はこうだった

今年は。。。

東京都知事来たる!

今年のプログラムを見るとわかりますが、今年は都知事さんが登壇します。背景としては先日都庁から発表された東京版EMPファンド創設を受けて、国内外の運用者や投資家に東京を拠点として参加してほしい、という意図があることから、AIMA のフォーラムを通じて情報発信してくれるのだと思います。

個人的に一時期絡ませていただいたこともあり、このEMPファンド、このステージまで来たので面白いことになると思いますので当面は目が離せないところです。

フェス的に会場がわかれます

この他、今年はBreakout Sessions – 分科会をフォーラムで開くことにしました。これは昨年までフォーラムの前日に運用業界の若手の参加・育成を意図して行なっていた無料の Educational Sessions で取り組んでいたものを今年からフォーラム本体に組み込んでみよう、というものです。これのいいことはより多くのトピックを取り上げることができること、なのですが、当然並行して行うので片一方を見逃してしまうんですよね。。。

ま、最近はフェスが流行りですので、自分の興味のより近い話を選んで聞くことでより充実した参加にしてほしい、という願いもあります。

取り上げるトピックが一気に広がりました

プログラムを見るとわかるのですが。。。昨年あたりから取り上げているプライベート・エクイティは午前と午後に、しかも業界の超有名人を数多く集めました(えっへん)。そのほかに、ベンチャーキャピタルは宇宙開発への投資、なんて尖った人が来るし、高速取引 – High-frequency trader たちのセッション、そして仮想通貨といった、新しい資産や戦略を取り上げる一方で、オフショアの動向のアップデートやこの数年の上場株式周りでの取り組みであるコーポレートガバナンスを海外投資家目線で評価する、そして、国内のヘッジファンドを運用者と投資家のそれぞれの目線で再評価する、といった従来から継続して取り組んで来たことも引き続き行いますので、まぁ、盛りだくさんです。

で、いつ、どこでやるの?

開催は 2018年5月24日、とこの遅筆な私にしては1日で一気に書かないとやばいくらいもうすぐです。場所はなんとリッツ・カールトン東京。ホテルでの会場です。コストが気がかりになるのは運営だからなのですが(笑)

参加費用は、AIMAの会員(世界のどこでもいいですよ!)になっている会社さんならば一人は無料、それ以上の場合には一人10,800円(税込)です。もしAIMAの会員じゃない、としたら、すみません、会場費用がかさむので43,200円(税込)でのご協力をお願いします。登録はこちらからどうぞ

あ、先に言いますが、私には招待チケットはありませんしスポンサーもしていませんから誰も招待できませんからねっ(笑)

 

今さらだけど、ヘッジファンドってなんだっけ? – 「オルタナ投資」という言葉が氾濫する世の中で改めて

あなたにとっての「オルタナ投資」とは?

数年前のこと、オルタナ投資、という言葉を使う時に皆が必ずしもヘッジファンドを意図せずに使っている、ということに気付きました。その時は、とある米系の銀行さんでカストディビジネスを主に行いながらファンドアドミを提供する、という会社さんなのですが、カストディビジネスを主に行うとなると、資産を保有してなんぼ、のビジネスモデルである以上、ヘッジファンドのような資産が事実上プライムブローカーが保有する戦略にお付き合いすることはほぼない、と個人的に思っていました。

そんな彼らから「最近、オルタナ投資の世界にも手を広げているのですよ」と聞いたときに、これはアドミ勝負に転換したのか?と思いつつも、このパートナー制で極めてコンサバで堅い社風の会社が薄利多売に来るとは思えなかったので半信半疑に聞いてみると、なんと彼らのいう「オルタナ投資」というものは、「不動産ファンド」や「バンクローン」といった、従来ファンドの投資対象という意味ではメジャーではなかったことから取り扱われなかった資産クラスのカストディを行う、という意味だったのです。ある意味納得する一方で、「オルタナティブ」の言葉の懐の深さというか、なんでも当てはめることが出来ちゃういい加減さ、というのを感じつつ、今後「オルタナ投資」という言葉を使う時には気を付けねば、と思った瞬間でもあったのです。

で、そういえばヘッジファンドって

what is your judge?昔は投資信託(ミューチュアル・ファンド)ではないもの全般をヘッジファンドと呼んでいたこともあって、オルタナ投資といえばヘッジファンドを意図するものと解されていた時期もあったなぁ、とふと思い出しました。というのも、私がヘッジファンドに片足を突っ込み始めた頃に読んだ解説書にこうあったのです。

ヘッジファンドは、ミューチュアル・ファンドの抱える以下の当局の規制を回避すべく私募ファンドとして設定されたものを意味するのです。

  1. 借り入れ規制
  2. 空売り規制
  3. 報酬体系

どういうことか、というと、日本の投資信託を例に説明するならば、日本で投資信託を設定する際にその運用方針として

  1. 借り入れは解約代金支払い目的及び分配金再投資型投資信託の分配金支払い目的に限られる
  2. 空売りはその建て玉の時価総額が純資産額を上回らないこと
  3. 投資対象の株式については上場していること
  4. 先物などのデリバティブ取引はヘッジ目的に限る

投信協会のレベルで定められており(実際には今の投資制限は集中投資規制やデリバティブ規制、などかなり複雑で高度化されたもののなっています。)、また、報酬体系についても日次取引等高頻度の投資家の出入りが想定されるため、公平な成功報酬体系を導入することができないのです。

そこで、それらの規制や業界の投資制限等から敢えて外れることで、投資信託の範疇である単純な買い持ちだけの投資戦略ではなく、例えば純資産額の3倍から10倍程度の借り入れを行って買い持ちのポジションを純資産額の数倍にしたり空売りのポジションを作ることで市場の下降傾向においてもリターンを出せることを目指せるような自由な投資戦略の設計と、その原動力となるべく成功報酬制を導入できるようにしたのがヘッジファンド、だとされていたのです。今思えば、単純なロングファンド以外であってもただの私募投信でしかないのですが、確かにいわゆるミューチュアル・ファンドと異なる(オルタナティブな)投資手法を取れるようにしている、と言われればその通りですね。というより敢えて取っているわけですから。

しかも、運用者が自分の資金もそのファンドに入れることで投資家と利益を一にする、という発想を持ち込んだのも興味深いものだなぁ、なんて初学者だった私は思ったのですが、これも国内の投資信託の立ち上げの時にスポンサーである投信会社さんがシードマネーを入れて立ち上げるのを考えれば、案外一緒なのかもしれませんね。

じゃあ、ヘッジファンドって一体どんな運用をするの?

確かに、借り入れや空売り、デリバティブを使った運用をする、と言われて、あれもこれもヘッジファンドに見える場合もありますが、例えば、完全なショート・ファンド、いわば全部買い持ちのロングファンドの真逆で絶対に株価が下落するだろうと思われる銘柄を全部売り持ちするファンド、は、どう見てもヘッジファンド、とは言えなさそうですよね。ヘッジのかけらも見えないのですから。また、一時期流行って、また最近また注目されていると言われている130/30(ワンサーティ・サーティ)も、30%の借り入れをして買い持ちのポジションを投資元本の130%にするものの、同時に売り持ちのポジションを投資元本の30%を作ることで相殺後のポジションがちょうど投資元本になるようにすることで、市場の下落局面では売り持ちのポジションで収益機会をめざしながら、上昇局面では通常のロングファンド以上の収益を確保しよう、という発想のファンド、なども、単純な買い持ちと売り持ちのポジションを掛け合わせただけ、にしか見えませんし実際のところヘッジではないですしね。

じゃあ、そもそもヘッジファンドのヘッジ、という言葉が何を示すのか、改めて見て見ましょう。

ヘッジ (hedge)とは、英語で本来「生垣」とか「垣根」、「防御物」を指し、そこから、保険という意味が出てきたり、動詞として「大きな損失が出ないように手を打つ」こと、という意味合いを持つようになりました。英語で hedgehogと呼ばれるハリネズミは身を守るために全身針だらけ、ですから。

多分、ヘッジファンドを知らなくとも、国内投信に投資したことのある人ならば、例えば米ドル建ての資産に投資するファンドに、「ヘッジあり」コースと「ヘッジなし」コースとが準備されているのに気づいているかもしれません。この時のヘッジ、とは、外国為替リスクに対するヘッジを意味するのですが、どういうことかといえば、投資家が円建てて投資しているけれども、投資対象が米ドル建てなので、仮に投資対象の評価が当初の10,000米ドルから増えも減りもしなくても、円/米ドル通貨レートが1米ドルあたり100円から1米ドルあたり90円や110円に変動するだけでこのファンドの評価額が変わってしまいます。そこで、通貨レートの変動を「ヘッジ」することで、円建ての投資という観点で米ドルの日本円に対する価格変動による投資資産価値の変動が抑えられるのが好ましいと思う人がいるのでファンドがヘッジするヘッジありコースを作ると投資します、という人が出てくるのです。

ちなみに、この「為替ヘッジ」、どうやるかというと、仮に当初の投資金額が100万円、為替レートが1米ドルあたり100円とします。この時に当初の投資金額全額を1ドルあたり100円で交換して10,000米ドルを手に入れて投資するのですが、その為替を取る時に同時に、1ヶ月先に予め1米ドルあたり101円の先渡し取引をして、一ヶ月後の為替レートの変動を先に固定してしまう、のです。この場合、この為替レートで先渡し契約が出来たとしたら、投資元本の10,000米ドルがそのままの10,000米ドルで帰ってきた一ヶ月後まで残ると仮定して、この1ヶ月で、

10,000米ドル x  101 円/ドル = 101万円

に増えていることになります。ちなみに、ファンドも一ヶ月で終わることがありませんので、この約束の一ヶ月後に、予め決めていた 101円/ドルで10,000米ドルを円に売り戻したら、その日のレート、例えば100円50銭とすると、で10,000米ドルをまた買いながら、先の一ヶ月後の先渡し取引に入ることになります。そうすると、101万円が一旦手元に戻るものの、 100.50 x 10,000米ドル = 100万5000円を米ドル調達のために支払うことになります。結果として、実際には二つの取引を相殺することで米ドルの移動はなし、円の移動は、101万円 – 100万5000円 = 5,000円の受け取り、という追加の収益が発生することになりますが、もしその日のレートが101.50円だったならば、逆に 101万円 – 101万5000円 = 5,000円のマイナス、となり支払い義務を負うことになります。

ここで、いくつか気づくことや、気づいて欲しいことがあったりします。

まず、今ドルを買って、一ヶ月後に先渡しレートで売る、ということをした結果、今回適当なレートをつけたので、1ドルあたり 101 – 100 = 1円の利益がもたらされたのですが、実際の先渡しレートは、この場合ならば、日本円と米ドルのそれぞれの一ヶ月の金利で自動的に決まります。とはいえ、ある意味、この金利の差によってこのような将来の利益(か損失)がこの瞬間にヘッジすることで確定する、のです。これをもし今ヘッジせずに一ヶ月後の為替レートに運を任せることだって当然出来ますが、その瞬間のレートを見るまでは利益(もしくは損失)額が決まりません。その代わり、為替レートがヘッジした 1米ドル101円より大きく上回って例えば102円まで変動すればその利益(1ドルあたり2円)を享受することになりますし、当然のことながら、100円を割り込んでしまうと損失を計上することになります。

ここでお気づきだと思いますが、ヘッジファンド、というのは、このようなある一定の状況下に於いてヘッジすることで確定できる利益の機会を見つけて投資するファンド、なのです。その意味では、将来大化け(上の例で言えば、一ヶ月後に為替レートが100円から120円に極端な円安に走ったり)する可能性を捨てて確実にあげられる1ドルあたり1円の利益を積み上げていく、という、見た目や話と大きく違ったかなり地道な投資戦略なのです。

もう一つは、今の前提はヘッジをかけたい資産、要は10,000米ドル、が一ヶ月後にそのまま10,000米ドルのまま、というちょっと特殊な状況にある、ということです。どういうことか、というと、この10,000米ドルは債券なり株なり、何かしらの投資資産に化けているでしょうから、一ヶ月後にいくらになっているのかはわからない、のです。例えば10,000米ドル元本の米国債だったとすれば、1ヶ月の米ドル金利分程度は増えているでしょうし、株だったらそれこそ大化けしているか大負けしているか(笑)。とすると、一ヶ月後に10,000米ドルの売りの先渡し契約はその時の投資資産の評価額によって、もし資産が増えて11,000米ドルになっていればヘッジが資産に対して過小であったと言えるし、逆に9,000米ドルになっていたら、ヘッジが資産に対して過大であった、と言えます。

ヘッジが過小であったり過大であった場合の影響を見るならば、(先ほどの先渡しレート101円、実勢レートが100.50円の仮定)

  1. 投資資産が10,000米ドルだった場合、実勢レートでの評価が 10,000 x 100.50 = 1,005,000円に、ヘッジポジションの(101-100.50) x 10,000 = 5,000円の計 1,010,000円 (= 10,000 x 101.00)
  2. 投資資産が9,000米ドルだった場合、実勢レートでの評価が 9,000 x 100.50 = 904,500円に、ヘッジポジションの(101-100.50) x 10,000 = 5,000円の計 909,500円 (=9,000 x 101.056)
  3. 投資資産が11,000米ドルだった場合、実勢レートでの評価が 11,000 x 100.50 = 1,105,500円に、ヘッジポジションの(101-100.50) x 10,000 = 5,000円の計 1,110,500円 (=11,000 x 100.9545)

という仕上がりになります。これを、「ヘッジしていると言っても完璧にヘッジすることは難しい」と解釈するもよし、「ならば期間を短くして為替の変動要因の影響を小さくすればいいんだ」と解釈するもよし、様々ですが、一つここで言いたいことは、「ヘッジ」というのはヘッジした瞬間の前提に対してのみ機能している、ということなのです。
なぜこの話をしているのかって?それが今後の話の展開の鍵を握るから、ですよ(笑)

ヘッジファンドは何をヘッジしまくって稼ごうとするの?

さて、ヘッジの基礎を見たところで、では、実際にヘッジファンドがどこに収益の源泉を見出そうとしているのか、いわゆる投資戦略、というのを見ていこうかと思いますが、ご存知の通り、著者はファンドの組成や運営が得意であって、投資戦略の評価を云々することをある意味放棄した仕事の仕方をしている、のはよく知られたこと(まじかぁ。。。)、ですので、ここから先は結構ざっくりとマユツバ的なことになって、結果、これを読んで実践しても保証の限りではない、というかいつも通りの自己責任で、ということを予め申し上げておきます。

と、いつものちょっとした責任逃れの一文を書いたところで、先ほどの為替ヘッジの本質をまず考えて見たいと思います。この為替ヘッジによる収益は、確かに二つの通貨の金利差から生じるものですが、他方で、もう一つポイントになるのは時間軸における今とある一定の将来の二点というズレがある、のです。実際、収益性を高めるために、金利差を広げる通貨ペアを見つけることも一つで、ミセスワタナベたちが日本円と高金利通貨だったオーストラリアドルのペアでキャリートレードをすることで、日々値洗いと決済をすることから1日分の金利差相当のキャッシュを得て色々とお買い物に興じ、それが高じて取引元本も(夫には内緒で)さらに増えて日々のキャッシュをより多く得ようとして、最後に市場がバーストした時に(以下略)たのがいい例でしょう。でも、もう一つの方法として時間を長くとる、というのも手法としては取り得るものです。まぁ、通常長い時間での案件をやるか、といえば、その間に起こるその他の変動要因を踏まえれば取りづらい、というのが実際ですが。。。

とはいえ、なんとなく、ヘッジでの収益源というのが見えてきましたね。何か二つのズレから生じる価格差を使えばいい(しかも、その差が大きければ大きいほど好ましい)、のです。人によって、また事象によっては、これをヘッジと言わずに時間的な収斂性のある価格差に対するアービトラージ(裁定取引)ということもありますが、ある意味二つの評価の間に生じた価格差が収益源、だとしたら、確かに確実に刈り取れる収益に思えてきます。

  • 例えば、複数の株式市場に上場している株式の価格。異なる通貨での評価であり、また異なる国での企業評価でもあることから一物二価になるチャンスがありそうです。
  • 例えば、為替ヘッジの延長で、現物市場と先物市場。分かりやすくいうならば日経225のETFと最大三ヶ月先の受け渡しの日経225先物の価格差を利用する、というもの。もしくは、一時期マネー雑誌で取り上げられていた、株主優待狙いの「個別株の現物買い+CFDでの売りポジション」の価格差を狙う、なんていうのもありです。

まぁ、パッと思いついたもの、ですのですでに多くの人たちが手がけているはずで、裁定機会というのは参加者が増えれば増えるほど減るもの、とされていますので、このような機会を継続的に見出そうとするのは大変なことです。となると、他の人が手を出さないような裁定機会を探していくことになるのです。

ペアトレード – ヘッジファンドの代表的な取引方法の説明書

さてここまでは、一つの資産の複数の評価方法による価格のズレ、という観点で見てきていた、というのに気づいて頂いていたでしょうか。当然、わかりやすい一方でそれならばより多くの人の目も引きやすいわけですので結果的にそのような価格差の発生するチャンスが取り合いになるし価格差も小さくなりますので、別の視線 – 二つの資産の価格差 – で探す必要があるのですが、ヘッジファンドの取引の説明というと、このペアトレードがよく使われるので、話の流れ的にもちょうどいいのでご紹介して見ましょう。

一つの資産では裁定取引の機会の限度が出てきそうでした。では、複数の投資対象の間にある関係性で考えたらどうなるか、というのがペアトレードです。例えば、ある一つの業界を考えると景気動向などの影響の受け方は基本的には同じですので株価の推移も多かれ少なかれ似たようなものになりそうです。でも、その業界内でも伸び盛りの会社(=評価が相対的に低い会社)と、伸び悩んでいる会社(=評価が相対的に高い会社)とがあるので、その二つの株価の関係が時間が経つと適正になる、と考えて、評価の低い会社を買い、高い会社を売る、という取引を行うのがペアトレード、と呼ばれています。10年前に盛んに使われた実例が、

JALを売って ANA を買う

でした。10年前は航空会社業界は伸びていましたが、実際に JALは一旦破綻しましたしね。今だとどうなんでしょう。

それはともかく、一つの業界(セクター)の中で見ると適正より高値で取引されているものはセクター全体で短期間で上昇したとしてもその中での相対的に高値に見られ、過小評価されているものも同じ上昇の中にあっても相対的に過小評価されるという意味では変わらないでしょう。ただ、これらの過大評価、過小評価は時間とともに(市場における情報の完全性などのおかげで)解消されていく、ということで、このペアトレードはセクターの動きに対して収益性はあまり関係ない、ように思えてきます。このようなセクターの動きに対して収益性が連動しない取引手法(戦略)を、セクター・ニュートラルと呼ぶこともあります。

さて、考えて見ると、世の中はそんなセクターが集まって株式市場が出来上がっていると見ることが出来るので、色々なセクター・ニュートラルな戦略をまとめると株式市場全体の動きに収益性が連動しない投資手法ができそうな気がしますよね。こうなると、株式市場の動きが下落しても収益を上げることが出来るわけですのでロングオンリー戦略からすれば夢のような(?)手法とも言えます。これをマーケット・ニュートラルと呼ぶことになります。

でも、株式市場全体の動き、って何でしょう。日本の株式市場で見るならば、本源的には東証一部・二部、JASDAQなどなど、株式の取引の出来る市場の発行株全部に、それぞれの株価を掛け合わせたものの合計が日本の株式市場全体、と見たら良いような気がします。でも、一般的に見られているのは東証一部の時価総額を1968年1月4日のそれを100として指数化したもの、TOPIX であったり、これまた東証一部で主に取引されている225銘柄を選んでその株価を合計して銘柄数である225で割った単純なもの(実際には、1960年4月を100とした指数なので、その後の株式分割/併合の影響を考慮するため今は24.917になっているそうです。)、日経225だったりしますが、これらの指数が市場全体の動きとして捉えて考えることになります。このような市場の平均的な動き方をベータ(β)と呼びます。

多分、世界中で多くの人が訳が分からなくなるというギリシャ文字の示す世界

さて、ベータの話が出たので(今さら)脱線ついでに、ベータに始まるギリシャ文字の世界の話でも。株を買って稼ごう、という話になると、この市場平均に勝てるかどうか、というのが一つの目安(ベンチマーク)になるのですが、実際に買って(ヘッジ戦略ならば更に売って)出来上がったそれぞれの株のポジションは多かれ少なかれこのベータの動きに連動する値動きをするはずです。というのも、この株単体の動きですら指数の動きに影響するのですから当然に指数との相関性(β値)を見ることが出来ます。とすると、個別株の値動きは、市場全体に引きずられて動く部分、すなわちβ連動部分と、その個別株固有の値動きの部分とに分解することが可能だと考えて、市場の動きに関係しない固有の値動きだけを切り出せば絶対収益になる!と結論づけることが出来たりします。この、個別株固有の値動き部分を、β連動部分と対比してアルファ(α)と呼ぶことがあり、ヘッジファンドは如何にβヘッジをすることでこのアルファを抜き出すことで絶対収益を生み出すか、という話にだんだん変わってくることがわかるかと思います。

(余談しかないこのブログでよく使う接続語ですが)ちなみに、このアルファ、公募投信で特に大和証券さんあたりが取り扱っている商品にαとつくことが多かったのですが、この時のアルファは上述の個別株のアルファやそれから派生した、運用技術の付加価値としてのアルファ(それに対してベータは、運用者の誰もが一般的に市場の動きに伴って生み出すパフォーマンス、を指すことがあります)ではなく、月次分配金を払うために通貨先物やオプションの売りでプレミアムを得よう、などの追加的な運用があることを示すアルファ、のようです。

まぁ、これは自分でそんな商品に加担していうのもなんですが、前述に挙げた為替ヘッジはヘッジと言いつつもポジション/リスク管理の観点で言えば、投資元本相当の為替の先物のポジションを本来の投資に上乗せしているので、事実上投資元本の2倍(これに投資対象の株や株式指数のオプションを入れれば3倍)のポジションをファンドが抱えている訳でして、それを為替のヘッジに使えば値動きは抑えられる効果を得るものが、経済効果の方向を変えるべく通貨の組み合わせを選んでは高金利通貨との金利差を利用したりオプションを売ることでキャッシュをひねり出す道具(α)に化けていた、という訳です。当然、現金化した分だけ将来の(かつ本源的な投資目的とは異なる)リスクは残るので、今や二階建て/三階建て/四階建て商品で月次分配を目指す、というのが過度の月次分配競争に対する当局からの監視に置かれて今では姿をひそめたのですが。。。

さて、本来の(いや、まだ脱線状態か。。。)アルファベータの話に戻すとして、では、このアルファやベータ、ベータ値などなどは正確に測れ、結果として本当にマーケット・ニュートラルでアルファだけ抜き出せるのか、というところにもし持論で述べるならば、まぁ理論的に無理でしょ?とか思ってます。というのも、市場が終わった状態でその日までの値動きと指数との動きの相関性からベータ値が計算され、アルファに相当する部分がこれだけだったんだ、という統計上の計算までは可能です。ですが、それが翌朝の市場が始まった後も引き続き有効な情報なのか、と言えば、いろいろな意味で無理があるのは、それが過去の事実に基づく統計上の情報に過ぎず未来の株価の構成要素の一つになりえても突然の市場介入(REITなんていい例ですよね。)や(未だにこれはアウトだと思っているのですが)テレビで占い師が「あんたの会社の株、上がるわよ」と流言を流布したのにみんなが乗っちゃう、的な意図的かどうかは別にした市場操作、(会計監査の結果からポケモンGOの影響まで)隠れていた事実が明らかになったことで投資家の動向が左右される、などなど、それ以外の要素も当然影響するから、と考えています。とすると、マーケット・ニュートラルって目指して作るけど実際には出来ないんじゃないの?というのが個人的な意見だったりします。ほら、言ったでしょ?ヘッジはヘッジした瞬間の前提に基づいて成立するにすぎない、って。

じゃあ、ベータとかアルファとか、意味はないのか?というとそんなことはないと思っています。市場に連動して投資しなければいけない投資家、というのがいらっしゃいます。例えば私たちの大事な年金を運用している人たちですね。彼らにとっては将来の債務、すなわち私たちへの将来の年金支払い、というのはその支払い時点までのインフレ等が影響してその額が決まるので、インフレ等に動きが近いとされる市場の動き(まぁ、これも日本の株価とインフレ率の長期にわたる相関関係を見ると、どうなのよ、という話もありますけど、じゃあ、代わりに何を投資の基本軸に考えねばならないか、というと予定利率という数値目標は存在するものの、結局市場のパフォーマンスの何かを選ぶほかない、という現実的な選択肢に落ち着いている、ということでもあるようですが。。。)にパフォーマンスを作っていくことの方がALMの都合上よい(というか、仮に絶対収益型の投資でガンガン稼いでも、年金を払い終わって最後に解散するときに余らせても困る、という方が分かりやすいですかね。。。)のでベータ投資が基本になっていく(けどベータ投資もコスト負けするからちょっとは絶対収益系に投資して費用分は稼がないとね、的なことも考えてほしいし、やっているところもあるようです)、のは至極まっとうに思えるのです。他方で、当然市場連動してみんなで大崩れ、も困るので市場に連動しない、アルファ追求型の投資もだからこそ存在する、と思うのですよ。

とはいえ、今時はスマートベータなんてものがあって、幅を利かせてますが、正直いえば、そもそものベータのロジックから考えたらば、スマートベータって、単にベータの本源的単純合算に経済的根拠っぽい色付けをしているだけだから、スマートかもしれないけどベータじゃない、意図的にベータに特徴のあるトラッキングエラーを大幅に起こさせている、もしくはプライベートインデックスの一種、なんじゃないの、とは思ってますが、そんなこと言うと指数ベンダーさんとETF屋さんのお友達から刺されそうなのでこれくらいにします。

アルファベータだけじゃない株式戦略

さて、これだけギリシャ文字の話をしていると、ヘッジファンドっていうのはある意味煎じ詰めるとアクティブ運用のファンドのうちベータヘッジしているものだけなのか、と思われそうなので、もう少し、そうでないものも紹介しておくべきでしょう。

前述で株価の構成要因についてちらっと書いたこと、覚えてますか。

突然の市場介入(REITなんていい例ですよね。)や(未だにこれはアウトだと思っているのですが)テレビで占い師が「あんたの会社の株、上がるわよ」と流言を流布したのにみんなが乗っちゃう、的な意図的かどうかは別にした市場操作、(会計監査の結果からポケモンGOの影響まで)隠れていた事実が明らかになったことで投資家の動向が左右される

これって、理由はさておき、人為的な価格の変動があった状態を指してますよね。よくこの変動を取引量が増えているところから見つけて「ウーェイ」しちゃうのがある意味デイトレさんたちが稼ぐ方法、と言われるのですが、見方を変えると、これってある意味本来の価格とのかい離が発生している状態だから、祭りが終われば元の値段に戻るんじゃない?と考えるのも一つです。まさに本来の価格に収れんする裁定取引(アービトラージ)の考え方ですよね。また、これはさもすればインサイダーとも言われかねないのですが、ある程度の企業調査をしていたりすると近々大化けするような商品やサービスの発表が予想される、となると株価が上がることが容易に想像できる、だから先に仕込んじゃおう、という投資手法もありですよね。イベントで大きく値動きするのを予想して先んじて仕込んで待つ、イベントドリブン、と呼ばれています。

まぁ、いずれも価格のゆがみが発生している、もしくは発生するという仮説に基づく投資手法で、その仮説に基づけばリスクフリーでの収益を目指す、というものです。ということは、当然仮説が正しければいいのですが、仮説が外れていたら。。。というのは前述のセクター/マーケット・ニュートラルとも同じ、というのはヘッジとはヘッジした瞬間の前提にのみ機能する、のですから。。。

で、ヘッジファンドって株しかできないの?いえいえ。。。

さて、まだまだ話が長くなりそうなサブタイトルですね。分ければいいのに、と言われそうですが、まぁ、一気に書いちゃいましょうよ、一気に読んじゃいましょうよ。その前に、株での投資手法、一般的に行けそうなものを書いてみましたが、「俺の独創的で美しい手法が取り扱われてないじゃないか!」というお叱りが聞こえそうにも。。。いや、そんな独創的な手法ならばこんなところで公開されるのはもったいないのでこっそり教えてください。

で、ヘッジ投資手法、株以外はないのか、と言えば当然あります。今時の人たちだと名前を聞いたことのない人も多いような気がする、90年代のヘッジファンドで有名だったLTCM がやっていた金利曲線の歪みに裁定取引の機会を見出す方法とか(そういえば、90年の終わりころにシティにいたころにワラント商品の投資家さん向けのリーフレットの中で、「天王洲図書館分室より」なんて金融よもやま話を好き放題書かせていただいていた時にLTCM の投資手法と破綻した経緯を取り上げたのをふと思い出しました。あの記事、もう残ってませんでしたが、あれも今のブログの原型みたいなものですね。懐かしいなぁ。。。)ありますが、個人的に投資商品のアンバンドリング化について最近えらーい長官様がいろいろおっしゃっていただいている一方で、いや、個人がやろうとしたら現実的に難しくね?と思うところもあるので、そんな投資商品のアンバンドリング化を交えた話でも(って、これだけでも充分一つのネタになるのですが。。。)

CBアーブ – 転換社債を分解する

CB – 転換社債ってご存知ですよね。FPジャーナルでもこの間の号で取り上げられていたので、思わずあれこれ考えたのですが、どういうものかというと、社債、なのですが、ある一定の条件で社債の元本を株に交換できる権利がある社債なのですが、この一定の条件というのが、株価幾らで何株を償還時の元本額に替えて交付する、という条件ですので、この定められた株価(例えば一株1,000円)を市場で上回って(例えば一株1,200円)いれば、この転換社債を持っていればその株を1,000円で調達して1,200円で売却可能ですから儲かりますし、市場価格が900円と条件を下回っていると、これは交換しないで元本を現金で受け取って市場で調達した方が有利だ、ということがわかります。

このような経済効果のデリバティブ、ありますよね。個別株のストライクプライスが1株1,000円のコールオプションですね。ということは、このCBというのは債券にこのコールオプションが組み合わさった商品だということがわかります。

さて、コールオプションを持っている状態、ですので、債券を取得するときに、このコールオプションを買っている状態になっていますので、コープオプションのプレミアムを支払っていることになります。でも、債券に埋め込まれているので払っている実感がありません。でも、ちゃんとよく出来たもので、CBのクーポンレートは同じ会社が同じタイミングで同じ期間で発行する債券よりも通常は低くなります。というのも、経済効果的には金利を低くする代わりにその等価のプレミアムが必要とするコールオプションを債券保有者に対して付与している、と考えるから、なのです。

とすると、CBを保有する、ということは金利が通常より低いとはいえこの債券の発行体の社債を保有しながらその会社の株のコールオプションを保有していることと同じになります。会社の株のコールオプションですが、個別株オプションの市場があれば同じストライクプライスと権利行使日(とヨーロピアン: 行使日のみ行使可能、かアメリカン:行使日までいつでも行使可能、かの違い)が一致すればそのプレミアムがわかりますし、仮に市場の取引がなくとも、株式オプションですので計算は可能といえば可能です。そこで、CBのうち、その価格を低金利社債の部分の価値(ボンドフロアーとも呼ばれています。というのも、CBにとって、株が無価値になってオプションの価値が0になったとしてもこの社債の価値が残ってキャッシュフローを生み出すから、です。)とオプション部分に分けることが出来て、このオプションのプレミアムに相当するものが市場で取引されているならば市場でオプションを売って低く抑えられているクーポンの現在価値に置き換えることで、同じ会社の社債と比較することが可能になります。さらに同じような国債があればショートポジションを作ることでその会社のクレジットリスクを切り出したことになりますので、これとクレジットデフォルトスワップとの間での裁定取引機会が作れる、というものです(と思います、保証しませんが)。

ここでわかることは、CBの構造上の裁定取引をするには、多分にセカンダリーマーケットで債券を仕込むよりプライマリー市場、当初発行の時の引き受けの際のプライシングの隙間を突いて償還まで買い持ちする方がポジションを作るが良さそう、というかセカンダリーで買ってきた時に合わせてあれこれデリバティブを使ったヘッジポジションを組むのが大変です。

でも、それ以上に、このCB戦略に限らず、というか、ヘッジファンドに限らず、ここで強く主張したいのが、複数の資産を組み合わせて作り出した合成ポジションを持っている時に、投資期間完了の途中でポジションを崩すとなるとあれこれ同時にポジションの売却をせねばならないものの、ほぼ同時に売却することが出来ないことから当初意図してヘッジして確保したヘッジ効果による利益が実現化する際に目減りし、場合によっては売却しきれずに損失にすら化ける可能性がある、ということです。ですので、一つの投資商品が複数の商品の組み合わせで出来ていて、かつそれぞれの手数料等が安いからといってその組み合わせを買って商品の合成が仮に出来たとしても(実際、うまく同日、もしくは同タイミングで買って合成するのだって大変なことです)、途中で解約することでお互いの商品の相互作用が崩れるので本当に売却のタイミングがずれて損失に転じるリスクが高まる、というのは、個人でも機関投資家でも複数の商品を同時に取り扱える体制がない限りは理解すべきだと強く言いたいと思っています。

さて、CB戦略については、上記もある一方で、そもそも一銘柄あたりの発行額や発行件数も少なく、そこに隠れている裁定部分がかなり小さいことから、レバレッジをかけながら数多くのCBで裁定取引をしないと儲からないし、こんなものは日次流動性には到底無理な戦略、ということなのです。

その他のヘッジファンド戦略 – バナナCTAはおやつヘッジファンドに入りますか?

ここまで、まぁヘッジファンドといえば金融商品を使った取引、と言うことで株や債券が、と言う話をしてきましたが、そんなことをやっていたらSoldieの連載がストップすることに。ちゃんと次の記事をアップできてなかったのが原因なのですが。。。

グローバル・マクロって最近よく聞くけど。。。

さて、株、債券ときたら、通貨戦略。有名なところで、ジョージ・ソロスが率いていたクォンタム・ファンドが、1992年9月に、その当時イギリスが加盟していたヨーロッパ諸国との通貨連動制度(欧州為替相場メカニズム: ERM)と当時の経済政策の不十分さから人為的にポンドが本来よりも高止まりしているとみて、イングランド中央銀行にポンド売りを2日続けて浴びせ続けたところ、イングランド中銀の買い支え資金が尽きたことからその翌日にERMから脱退して変動為替相場制に移行し、ユーロに併合されることなく今度Brexit するので当面も併合はないだろう、と言うのがありますが、これも通貨レートの景気などの環境から本来あるべき水準と政策誘導による環境との間のアービトラージ、と見ることができます。まぁ、クォンタム・ファンドは、通貨だけでなく、株式、債券、先物などでポジションを作っていたことから、どちらかといえばグローバル・マクロ戦略だ、と認知されています。

で、もっとよく聞くCTAって。。。

そして、通貨やグローバル・マクロまで来るとあとは、金や大豆といった商品取引系、いわゆるCTAとかマネージド・フューチャーズじゃないか、と思うのですが、個人的にだいぶお仕事させて頂いた立場で言うのも何ですが、このマネージド・フューチャーズの戦略というのが、一般的にはトレンド・フォローといって、商品市場や株式指数、通貨などの価格の推移(トレンド)を短期(5日間程度)、中期(20営業日/一ヶ月程度)と長期(90日/一四半期)で見て、上昇トレンドならば買いポジションを、下降トレンドならば売りポジションを、それぞれの市場で見ながら、トレンドの方向が変わったらそれに合わせたポジション取りをする、というものですから、どちらかというとヘッジというよりは、上がっているならちょっと後追いで買いで入って、ピークでは売らないけどピークをちょっと過ぎたあたりで売って利益確定する、という感じですので、個人で株を投資している人からすれば、「それってスイングトレードしてんじゃね?」と思われるでしょう。まさにその通りです。いわゆるシステマティックトレードです。でも、それを株銘柄ではなく、商品先物や株式/債券指数、為替など、以前一緒にお仕事させて頂いた世界最大のCTA (ちなみに、CTAは Commodity Trading Advisor: 商品取引顧問業者を意味するので、ファンドの戦略でCTAと呼ぶのが本来的には。。。というのがあるのですが、それでも結構みんな使ってますのでここでもCTAともマネージド・フューチャーズとも呼びます)さんは世界中の120の市場をモニターし、データを集めて分析しているということですから、規模が違います。とはいえ、基本スイングトレードですから、安く買って高く売っているのでヘッジファンドなの?と言われると個人的には違うと思うのですが、先物取引のようなデリバティブを使っているとどうもヘッジファンドの扱いになるようでして。まぁ、昔から儲かるオルタナティブ投資戦略という意味で括られてきているから、かもしれません。

で、よくCTAとグローバルマクロは同じ括りで比較されるのですが、実際のところは、グローバル・マクロ戦略の中に、ある意味人の介在が入らないシステムトレード系としてのマネージド・フューチャーズが入り、それとは別にクォンタム・ファンドがそうであるようにシステム管理するというよりは人の裁量に基づく取引を基本とする投資をする、というスタイルと二つに分かれるのです。

で、戦略をあれこれ見て行ったけど、実際のところ儲かるの?

さて、投資する側からすれば、ヘッジファンドというのは、ある意味日々ヘッジされたポジションを積み上げて収益をロックインし、投資完了時に収益を実現化していくということを繰り返していくのでまず負けないし、その昔は結構稼いでいたという話を聞くので投資家さんもリーマン・ショックで離れた人たちが戻り、さらに多くの新規の投資家、特に機関投資家が増えたとされていて、投資残高はすでにリーマン・ショック直前の頃を上回っています。さらに、業界関係者もビッグ・ビジネスということで集まったようで、AIMA の最近の調査によると、ヘッジファンド業界に関わる人は、運用者からファンドアドミ、弁護士や監査人など含めて世界中で400,000人いるそうな。おかげで、10年前に比べてヘッジファンドのビジネスが、スタートアップの零細企業にその成長とその結果の両方に対して賭けてみる、というようなものから、投資家も運用者もより「企業的」なアプローチでの投資と関係を求められるようになったようにも感じています。

でも、これだけ多くのヘッジファンド戦略をとる人たちとその投資資金が増え、さらに当然ロングオンリーの投資額もこのところの世界的な低金利でリターンを求めて同様に増えたこと、さらには高頻度取引(High Frequent Trading / HFT) の存在のおかげで市場の裁定取引機会が減っていることや中央銀行等による市場介入が増えたことでの半恒常的な人為的市場形成がなされている、といった今まで想定していた市場を前提とした戦略構成が機能しづらくなってきているようで2015年から2016年は多くのマネジャーたちにとって厳しい時期だったのは確かですし、そのおかげで従前にヘッジファンドの代名詞でもあった報酬体系 – two-twenty – がパフォーマンスが出ていないのに高すぎる、という批判にさらされて値下げの提案やファンドの解散を余儀なくされたものも出てきた、のもニュース等で聞こえてきています。

とはいえ、その環境下でも新しいアプローチの投資機会を見つけてファンドを立ち上げる人も、以前より数は減ったものの毎年います(とはいえ、業界的には絶賛募集中ですが)から、まだこのヘッジファンドに勝機があるとみる人もいます。また、ベータ投資への相関性を外す投資をしながら、市場のダウンサイドリスクを回避したいと考える投資家からすればヘッジファンド投資はポートフォリオに入れるべき投資戦略であることは(前述のメカニズムの説明が正しくなされていれば)納得できるところかと思いますし、もっというならば

単体で投資して大儲けする対象ではなくなった

のだけは確か、かもしれません。

オルタナ投資関連の業界団体、日本国内にどれだけあったっけ。。。

業界皆で輪になって。。。どこに向かう?

前回の記事を書いてから随分間が空いてしまいました。ネタ切れを起こしていた、というよりは、CFPの試験勉強に集中したり、その後もバタついていたので私的なブログすらアップできていないという体たらく。。。なのはいつもの事ですね(苦笑)。

オルタナ投資業界の横のつながり、何があったっけ?

業界皆で輪になって。。。どこに向かう?さて、実は今週の某日の晩に、ヘッジファンドの投資関連では業界内でとても顔の広い方が主宰されて極めて私的なネットワーキングの会の忘年会がありまして、久しぶりにお邪魔させていただきました。主宰者さまが今年は本業が変わられたこともあってお仕事に忙殺されて会の開催も頻度が減ったりしたらしいのですが、それでも、忘年会ということで、毎度のこと業界内の多方面のビッグネームが数多く参加されている(ので名刺交換と情報交換が盛んにおこなわれている)のを見て

「相変わらず、みんなすごいなぁ」

と末席でお酒をすすりつつ静かに近くにいた(某直近ビッグなポジションに着任された方を含む数名の)方たちと語らっておりました。

その席の最後で、とある業界内の団体の立ち上げが動き出している、という話が出たので、ふと、そういえばこの狭いと言われるオルタナ投資業界、その中でいわゆる業界団体ってどれだけあったっけ、とふと思い、その立ち上がる団体のご紹介も兼ねてつらつらと羅列していこうかと思います。といっても、さして業界に顔が広い訳でもないですから、私も見落としがたくさんあるとおもいます。そんな時はここで紹介してもいいぞ、とご指摘ください。喜んでリンクを張らせていただきます。どれだけ貢献できるかはまた別として。。。

AIMA (Alternative Investment Managers Association)

私も随分長くおせわになっているので、これは最初にご紹介せねばならないでしょう。英国ロンドンに本拠を置く、主にヘッジファンドの運用者と、それに関連した法律事務所や会計士、ファンド・アドミにリスクマネジメントサービスといったサービスプロバイダーが構成して、ヘッジファンド業界の声を各国当局者に届けることを主な目的として設立された団体です。今では、ヨーロッパ、アメリカ(米国とカナダ)、アジア(日本、上海、香港、シンガポール、シドニー)などに拠点があり、互いの情報交換や世界各国の規制当局の動きのまとめを月次で報告したり、ヘッジファンド投資の際には今や標準となった質問票(Due Diligence Questionnaire) の提供などを会員に提供しています。余談ですが、日本語版 DDQ は私めがだいぶ監修をさせて頂きました。いや、日本語のクオリティは大事ですから。。。

ちなみに、元々は先物取引などの運用者の集まりが会の始まりで、それが今ではヘッジファンドの業界団体になっていますが、今後は “Alternative”らしくその他の戦略の運用者の人たちも参加を望んで行こうとしていくようです。が、ヘッジとプライベートエクイティ、ベンチャーキャピタルはそもそも別の生き物ですので交わっていけるのか。。。

CAIA (Chartered Alternative Investment Analysts) Association

AIMAが運用者や投資家の教育を推し進める一環として組織されたのがCAIAというヘッジファンド投資に関する国際資格認定組織である CAIA Association。世界中で 8,400人以上の有資格者がいるのですが、英語での試験ということもあって日本では有資格者が少なかったのですが、今年の6月に CAIA の日本法人も出来てさらにメンバーを増やして行こうとアジアでの拡大路線の一端として日本も入れてもらえているのはちょっと安心です。まぁ、どちらかというと投資家サイドにいる人が多い感覚がありますが、やはり投資判断の一助となるべく、ということなのでしょうか。

ちなみに、この数年、AIMA Japanと CAIAの日本にいるメンバーで忘年会を合同で開いています。

CFA (Chartered Financial Analysts) Institute

CAIA がヘッジファンド投資に特化しているのに対して、日本の証券アナリストの国際資格に位置するのは CFAでそれを国際的に運営しているのが CFA Institute。CAIAとの違いは、というとCFAの守備範囲がヘッジファンドに限定されない、広範囲の知識を要求される、という意味ではヘッジファンド以外の世界でも食べていける強さがある一方で、CAIA にはヘッジファンド特有の専門性が求められるのでその筋では強みが発揮される、というところでしょうか。日本では日本CFA協会さんが運営基盤になっています。

AAIN (Asian Alternative Investors Network)

AAIN さんもロンドン発祥の組織で、ロンドンでオルタナティブ投資をするアジア人のネットワークを作ろう、ということで始まり、それがニューヨークでも集まって、日本でもやろう、と言って3-4年前に数回イベントがあって呼んでもらった記憶があります。
ただ、有志による集まりと言いつつもメンバーシップが結構高額なのと、イベントもメンバーだけ、というところで運営のコストが高いのかな、と思っていたら気づいたらあまり最近聞こえて来ず、今回調べたら本体のウェブサイトにアクセス不可。。。もしかした自然発生したように自然消滅したのかもしれません。
なかなか、この手の組織を作り、運営し、維持するのって資金面でも企画運営の面でも大変なんですよ。 AIMA Japanでだいぶ鍛えられました(笑)

ヘッジファンドの話から、少し別のオルタナの話もしてみたいと思います。特にアドミの世界ではアジアではプライベートエクイティやベンチャーキャピタルにそのビジネスの重きが置かれつつあるようですので。。。

JPEA (Japan Private Equity Association)

日本プライベートエクイティ協会さんはその名の通り、プライベートエクイティの運営者を中心に構成される組織で、この業界の運用側の声となる組織でもあるそうです。以前話を伺ったら、常任理事となる会社さんの持ち回りで事務局も管理する、ということで結構手弁当が大変だろうなぁ、という組織です。
運用者が中心ですので、アドミなどのサービスプロバイダーは賛助会員という形でしか入れない、という本当に運用者に軸足が置かれた組織だということもわかると思います。

JVCA (Japan Venture Capital Association)

日本ベンチャーキャピタル協会さんも、同じくベンチャーキャピタルの運用者を中心に構成される業界団体です。お世話になっている方がつい昨年まで事務局をされていましたが、その際に金融商品取引法第63条の適格機関投資家向け特例業務のルール改正の時に、パブリックコメントを経て施行させず作り直しを求めた時のメインとなった団体さんの一つです。あの時の改正がもろに自身が見せねばならないコミットメントを出せないようにするものでしたので死活問題からあそこまで差し戻させた、という実力のある業界団体さんと個人的には思っております。

JASVE (Japan Academic Society for Venture Capital and Entrepreneurs)

日本ベンチャー学会さんはちょっと毛色の変わったところですが、起業やその後のステージでの会社運営や、それに対するエンジェル投資などについて学術的アプローチで検証しようとする人たちの集まりです。一時期参加させていただきましたがかなり高尚な研究をされていたのでついていけなくなりました。。。

JVPN (Japan Venture Philanthropy Fund)

日本ベンチャーフィランソロピー 基金さんは、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティの投資のスキルと基金や年金と言った投資家の社会的投資、そして余剰利益の社会還元、といったことを組み合わせて所謂ソーシャルインベストメントをして社会貢献をしよう、とロンドンで始まった European Venture Philanthropy Association の、アジア版、Asia Venture Philanthropy Network に触発されて出来た日本版。ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティの関係者が手弁当や勤労奉仕の形で参加していて、その意義などを考えると私もいつかは、なんて思いつつも指をくわえて見ています。

NPEL (Nippon Private Equity Ladies)

NPEL さんは、日本におけるプライベートエクイティファンド業界に携わる女性たちがその互いの知識やネットワークを互助することで業界での女性の地位向上であったり業界内の横断的なつながりを維持していこう、ということで始まったそうです。元々香港に同じコンセプトの集まりがあるそうで、その日本版、ということですが、定期的に集まって、食事会や勉強会を開いて男性の業界内の著名な人に話してもらったり、と有意義に活動されているらしいです。そりゃ、私が男性だから参加できませんから知る由もないのですが。。。

100WHF (100 women in hedge funds)

100 women in hedge funds はニューヨークでヘッジファンド業界に携わる女性が100人集まったら、ということで始まったそうで、こちらも女性の業界内ので地位向上であったり知識の共有であったりを目的として活動を始めたそうで、今や世界全体で18,000人以上が集まっているそうです。リンク先を見ると、今では金融業界全体を包括しているようですが、まだ日本には支部がなく、これから立ち上げようと有志が集まっているそうです。

終わりに

さて、実はここにいくつか出てきていない業界内のネットワークを作っている人たちがおります。例えばヘッジファンドの世界では有名な Tokyo Hedge Fund Club は元Bear Sternのプライムブローカーだった人が在籍中から会社とは切り離して個人的に機関投資家とファンドマネジャーを直接つなげるパーティ形式のイベントを始めたのを端に今も継続的に行っている会ですし、冒頭でご紹介した会も、私的な会、とはいえヘッジファンドの業界を横断的にカバーする会として正直名前とは裏腹に巨大なネットワーキングになっています。また、私が個人的にお世話になっている方が会社名義で行うネットワーキングイベントも微妙にかぶりつつも重ならない人たちとお会いできる会ですし、その人と私とで開催するネットワーキングイベントも小さいながらも密度の濃い人たちとの横のつながりを飲みながら作りだしたりします。

思ったほど大きくない業界なので、人と人がどこでどう出くわすと化学反応が起きるか、それが間近で起こる世界ですのでおもしろいな、と個人的に思いつつ顔を出す日々です。逆にいれば、悪いことも全部あっという間にみんなに知れてしまう小さな世界、とも言えますが。。。

ということで、これを読まれたあなたともどこかでお会いするのでしょうね。きっと。私がこんなことを書いている人間と知ってか知らずか(笑)

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