あけましておめでとうございます。
本年も当ブログをご愛顧のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、今年から新シリーズを始めてみようかと。。。
前振り(笑)
年の瀬押し迫るある日、久しぶりに Prestia 大手町支店に行きました。というのも、長年使って来た ATMカードの磁気が読み取れなくなったようで、ATMで使えなくなったので再発行してもらうことにしたのです。
隠す話ではないのですが、私が社会に出て金融の世界の第一歩を踏み出したのはこの Prestia の元となるシティバンクの、最初はディーリング・デスクのバックオフィス、そこからリスクに異動して、最後の数年はこの大手町支店を含めた個人金融部門で販売されていた投資信託の輸入や事務サポート、販売支援システムの運営などをしていたのがもう16年も昔のことになっていました。
そんな昔話をちょっとしながら、昔のサインを思い出しながら書いたり(苦笑)しながら、当然対応してくれるスタッフさんは間持たせも含めて、保険商品とか不動産ローンとか何かお手伝い出来ないですか、なんて話を振ってくれるので、一応FPでもあるので、保険商品って投信よりもフィーが高いから銀行さんとかのインセンティブになるよね(だから投信を積極的には売って貰えないじゃない?(笑))、とはいえ勉強のために頂きますよ、と最新の取扱商品の資料などをもらって支店を後にしました。
そこで、ふと、思い出したのです。FPとしての目線は世の中にある資産運用・管理のための商品を理解して提案するところにある一方で、金融商品のストラクチャリングを生業としてやっているもう一人の自分の目線には、如何にして商品のフィーを合理的な範囲で下げることが出来るのか、もしくは、どこに(特に法外な)費用負担が潜んでいるのか見つけ出すことにあるのです。としたら、多分そういうそれぞれの商品に掛かる費用を横断的に分析することはFP的には商品提案としては大事だし、商品設計する側から見ても、どこで比較されるのかを理解することで強みを出していけるようになるのでは、と。
ということで、商品投資のステージごとにどんな費用負担が掛るのか、分解して説明していきたいと思います。本来ならばオフショアファンドを取り巻くネタを一貫してここで紹介すべきでしょうけれども、そんなに新しいことがある訳ではないので、それを期待して本ブログに来る人には申し訳ないと思いつつも、そういう商品の選択範囲のひとつとして海外籍のファンドというのがあって、と思ってもらえれば、幸いです。
さて、その第一回目ですが、折角保険商品の資料を頂いたので、それを読み解きながら保険商品って金融庁の森長官がいうように「コストが法外に高い」(笑)と言えるのか見てみたいと思います。(まぁ、彼が高いと言ったのは変額年金保険という投資信託の性質の強い保険商品なのですが、他方で、あのひとことで保険商品全般に高いイメージを作った可能性もあるので検証すべきところかもしれません。)
今回取り上げるのは、せっかく窓口で紹介してもらったこともあるので、こちらの積立利率変動型終身保険と呼ばれる商品にしたいと思います。あ、ちなみに、リンクを張っていることは私がお勧めする、という意味とは限りませんのでご注意を。
商品性をまず確認
さて、この手の商品を考えるにあたって、ざっとどんな経済効果があるのか見てみようと思います。多分に分かりづらいと言われそうですが、概略を説明しているのが、このリンクの先の契約締結前交付書面(契約概要・注意喚起情報)兼商品パンフレットの23ページ目にある商品の概要を追ってみることにしましょう。
保険商品なので、(1) 保険料をある一定の期間払い続けたのち(2) ある一定のライフイベントに基づき保険金が支払われる、というのが一般的ですが、この商品も(1) 「年払込満了」として、10年間もしくは15年間として一定に定められた期間、もしくは「歳払込満了」として、55歳から90歳までの5歳刻みで指定する年齢まで契約開始から継続して保険料を毎年支払い、(2) 被保険者、すなわちこの保険契約の支払い条件として判断基準となる、契約者、契約者の配偶者、もしくは契約者の二親等以内の血族の人が亡くなるか高度障害を負った時に、一定の保険金が支払われる、というものです。と言っても、イメージが湧きづらいでしょうから、13ページから16ページを見ながらイメージをつくってみましょう。
ここで、あなたが46歳男性、だと仮定すると、男性用のページである13ページの左端にある契約年齢が16歳から70歳までを前提にした表ができていますが、この時、46歳の右横にある数値は5,365.20米ドルという記載になっていると思います。この13ページの他の情報からこの保険商品の前提が「男性、年払いを10回、被保険者の死亡もしくは高度障害を負った時の受け取り保険金額 100,000米ドル」となっていることが読み取れることから、そのような条件の保険商品に46歳男性が加入するには、年に1回ごとに5,365.20米ドルを支払い、それを10回支払う必要があって、そうすればこの「合計最大支払額」 53,652.00米ドルに対して、被保険者が死亡したら 100,000米ドルを受け取ることができる、というように解釈できます。
さて、ここで二つほどポイントがあります。一つは、20ページの一番最初に書いてあることなのですが、上記の年払いを10回行う義務を保険契約者は負っているにも関わらず、もしその10回の途中で被保険者が死亡する、もしくは高度障害を負った場合にはそれ以降の保険料の支払いが免除になって保険金を受け取ることになる、ということです。ですので、上記ではあえて「合計支払額」ではなく、「合計最大支払額」と書いたのです。この点が保険商品とその他の金融商品との大きな違い、と言うところかもしれませんし、その分、金融商品的に言うならばオプションを買っている訳ですので、少なくともそのオプション料を保険料の中から支払っていることを理解する必要も出てきます。
ただ、この保険に入るときにその10年以内に死亡する可能性が予見できるから入ることはあまりなく、むしろ次のポイントがメリットとして検討され(またこのパンフレットでも強く前面に押し出されてい)る点でしょう。それは、「払い込まれた保険料の大半」が解約返戻金の原資に当てられているため、例えば13ページの解約返戻金の割合について、常にこの契約の最低保証利率である3%で運用されたとした場合、契約開始後20年で 120.4%となり、解約返戻金が64,597.00米ドルになる、というものです。当然積立利率とこの資料で称している運用利回りが上昇すればこの解約返戻金の割合は上昇し、契約開始後20年で、常に3.5%であれば132.5%、4.0%ならば145.7%になるという計算結果を提示しています。
ここでいくつか気付くべきところがありまして、もしこの保険商品と同じく毎年 5,365.20米ドルを積み立てながら、積み立てたお金を単純に3%で運用していくならば
- 年目の支払額は10年目の終わりに 1.3439倍に
- 年目の支払額は10年目の終わりに 1.3047倍に
- 年目の支払額は10年目の終わりに 1.2667倍に
- 年目の支払額は10年目の終わりに 1.2298倍に
- 年目の支払額は10年目の終わりに 1.1940倍に
- 年目の支払額は10年目の終わりに 1.1592倍に
- 年目の支払額は10年目の終わりに 1.1255倍に
- 年目の支払額は10年目の終わりに 1.0927倍に
- 年目の支払額は10年目の終わりに 1.0609倍に
- 年目の支払額は10年目の終わりに 1.0300倍に
にそれぞれなるので、10年目の終わりの時点では毎年の払い込み額の 11.8077倍、もしくは総払い込み額の 1.18077倍である 63,351.18米ドルになります。 また、そこから 3%で複利運用が行われていくとすれば、その 1.3439倍である 総支払額の 1.5868倍、もしくは 85,138.69米ドルになるはず、ですが、「払い込まれた保険料の大半」が解約返戻金の原資に当てられる、というのは言い換えればその「大半」の残りは前述に述べた保険期間の途中での死亡等の際の保険金支払いのためのオプション料を含めた手数料等で取られている、という意味でもあるのです。
実際、20年間預けた場合のちょっとバラ色な数値を並べた後で見せるのが微妙なのですが、払い込み期間終了後の10年目の終わりの時の解約返戻金、というのが3%の運用の場合には前述の13-14ページにあるように98.3%、3.5%の運用で初めて101.8%、4%で回ったならば 105.4%と、それでも、3%に全額を投資して運用した場合に比べて13%から 20%ポイント弱減ることがわかります。ということは、毎年色々な名目で28ページに記載された費用として控除されているかが気になります。
理論値として費用を逆算することも可能なのですが、実際のところいつどれくらい、ということまでは不可能ではあるものの、年平均として払い込み期間終了時点(保険契約開始後10年間)で 3.22%が、もし払い込み期間終了から10年置いた(保険契約開始後20年間)場合ですと全期間を通じて 毎年預けている額に対して1.75%を費用として取られている計算になります。
このうち、死亡や高度障害のために支払う保険金額の 100,000米ドルのためのオプション料や保険商品の運用のための事務コスト、そして当然に商品を販売した保険代理店(この場合ならばプレスティア/SMBC信託銀行)への販売報酬などが含まれるのですが、上記のように期間が長くなると平均費用が下がるのは、死亡時の支払い保険金額へのオプション料が、年々解約返戻金が増加することにより実際の保険金額が 「100,000米ドル から解約返戻金を引いた差額」となることで下がっていく(ただし死亡率等が一定である前提ですが年々歳を重ねていくので死亡する確率的には上がっていく要素もないわけではない、のですが。。。)ことの恩恵を受けていることが長期になるほど費用が下がる仕組みではないかと予想されます。
いずれにせよこの商品が、20年間の運用期間と定めた場合に、最初に10年間に5,365.20米ドルを毎年払うことで総額53,652.00米ドルの投資に対して、向こう20年間に毎年 1.75%の費用を支払いながら3%の利回りで運用して64,597.00米ドルとなるか、いざという時は100,000米ドルを受け取る、という資金の流れが見えたかと思います。
また、これが運用期間が10年間に縮めると、費用負担が毎年3.22%で最終的な受け取りが52,739.91米ドルと支払った総額より減ってしまうという商品性も分かりました。ただ、この商品は終身商品なので解約はいつでも可能にはなっていますが、商品開始から10年未満での解約や減額の際には解約控除といって解約返戻金から更に手数料相当額(性別や年齢などの条件により定まるためこの時点でいくらになるのか不明、と更に不透明なもの)が控除される、と言う点も注意が必要です。
商品のまわりにある費用やメリットの検証
続いては、商品に内包される費用だけでなく、その周りに付随する費用やメリットについて検討してみたいと思います。
投資開始時
まず、投資する際のコストとして何が掛かるでしょう。一般的な金融商品と異なり、保険商品は投資対象の対価に付け加えた手数料等や不動産のような登記コストなどは発生しません。
とはいえ、もともと米ドル建てでの支払いですので、私たちが日本円で物事を考える以上、外貨預金や仕組み預金の結果等の事情で米ドルをたくさん抱えていない限りは、日本円/米ドルの為替レートによって日本円ベースでの支払額が左右されることになります。今回の商品は10年にわたって同じ米ドルベースでの金額を支払うことから、どうしてもその時々の為替レートの変動でそれぞれの日本円ベースでの支払額は変動しますが、10年掛けて為替レートを分散して米ドルを取得しているという見方もできますので、時と場合によっては、下記にて紹介する全期前納のために一括で米ドルに変えた時より円ベースで総額が少なくなる場合も起こり得ます。
他方で、今回対象としている保険商品のように長期にわたって分割して支払いを行なっていくタイプの場合、資料の11ページにあるように、契約期間が10年以下の場合、支払う総額を全期前納と言って、一括で支払うことが可能です。その場合、例えば3年後に発生する4回目の支払いについては、全期前納で保険会社に「預けた」保険料の一部を支払いに自動的に充当する、という形式を取ることから、保険会社が自ら設定する金利でこの全期前納で預かった保険料を運用した上で保険料に充当することから、全期前納する保険料の総額は、単純に支払い期間に発生する支払い保険料の総額より割り引かれた金額になる、次の「投資期間中」でも触れますが所得税の計算に(減税という形で)影響する生命保険料控除に対しても、保険料の支払いに充当される支払い期間の間は毎年適用することが出来る、というメリットがあります。
しかしながら、保険料として受理されていないので単純な預かり金に過ぎず、また保険約款(保険商品の一般的なお約束を定めた、申し込んだら否応無く適用される契約内容をまとめたもの)により任意に払い戻しを受けることが出来ないのですが、保険会社が破綻したときには、保険契約が消滅した場合、又は将来の保険料の払込みを要しなくなった場合は、全額返却されますので流動性に制限があるということは理解しておく必要があります。しかも、保険会社が破綻したときに保険料払込期間中に未経過部分の前納保険料を引き出す場合は、早期解約控除制度が適用される可能性がありますので。割引率と保険会社の将来の経営の安定性や信用度とを勘案して(もちろん財布の具合とも相談して)全期前納を選択するか、年払いを選択するか考えることになります。
投資期間中
保険商品ですので、途中で保険内容を変更しない限りにおいては保険料の変動が発生することはありませんので、何かしら追加で費用を負担することはありません。
その一方で、「投資開始時」で触れましたが、支払い保険料は払った年の所得税の計算をする際に、生命保険料控除の対象になります。なお、この保険商品は介護保険でも個人年金保険にも該当しないことから、生命保険契約等の適用になりますが、いずれの商品カテゴリーでもそれぞれ年間 80,000円以上の保険料の支払いはいくら支払っても 40,000円の所得控除となり、もし所得税率が20%の人ならば 8,000円の減税に留まることになります。特に生命保険契約等は生命保険契約ならなんでも適用されがちですので、もし既にこの他の生命保険契約による生命保険料控除を受けているならば当然にその減税メリットはさらに限定され、もしくは全くメリットを享受することができない可能性があることになります。
とはいうものの、減税効果は実質の投資金額の減少にもなるのでないよりはあったほうがお得なのは言うまでもありません。もし仮に前述の前提に従って8,000円の減税効果があったとした場合、年払いで5,365.20米ドル払って 8,000円が戻ってきたとしたら、現在のざっくりレートで1米ドル 115円換算でも、70米ドル弱は帰ってくるので実質負担が 毎年5,295.20米ドルになることから、総額の負担が 52,950.00 米ドルとなり、20年後の早期解約の形で処理した場合20年間3%で運用した成績として 64,597.00米ドルはを回収するとしたら、121.99%と、従来の120.4%とより1.5% ポイント向上することになります。
ちなみに、この計算は、最近はやりの個人型確定拠出型年金をやらないともったいないよ、と言う時に使う計算方法と同じですね。
投資回収時点
やっと、投資が終わって回収するときの話です。これが単純に二つに場合分け出来ればいい話、になればいいのですが。。。
途中解約する場合
元々この商品は終身保険ですので、通常ならば被保険者の死亡もしくは高度障害による保険金の払い出しで終わるのが商品性の意図するところですが、上記で散々書いた通り、かなり貯蓄性の高い商品ですので、被保険者に何かが起こる前に現金化することで運用結果を享受することが意図されて作られていると言ってもいいでしょう。実際、上記でも20年経って解約する場合、と10年で解約する場合、と盛んに計算していますので。。。
では、その場合にどんなコスト等が発生するか見てみましょう。まず、10年を超えた保険契約期間ならば解約手数料相当額を払う必要がないのがこの商品でした。また保険商品ですので、入り口同様特段何か手数料や不動産のような登記コストなどを負担することもありません。
としたら、10年間を最低利回りである3%で運用されていた場合、支払い総額の53,652.00米ドルに対して受取額は52,739.91米ドルになりますので、米ドルで見ると912.09米ドルほど目減りしていますので投資としては損が出たことになります。20年置いた場合には、支払い総額の53,652.00米ドルに対して受取額は64,597.00米ドルになりますので、米ドルで見ると10,945.00米ドルほど増えていますので投資としては利益が出たことになります。
ですが、日本円で考える以上、日本円ベースで損益を計算する必要が出てきます。何故かって?それは所得税の為です。はい、日本にいる以上所得が発生したら所得税の納税義務が課せられます。残念ながら、日本において世の中で一番高い取引コストはこの所得税とそれに関連する住民税です。
では、どうやって円ベースで計算するかというと、毎年の保険料の支払いの際の日本円相当額の合計と、解約返戻金の解約効力発生日におけるTTM(対顧客電信売買相場仲値)の差額で損益を計算せねばならない、のです。解約返戻金の円評価額は単純な掛け算で済むからいいですが、毎年の保険料の支払いはどうでしょう。年払いの場合ですと、過去10回のそれぞれの支払いの際の米ドルを調達した際の為替レートと円で支払った額を全部記録しておく必要があります。もし全期前納した場合は、前納した米ドルの円価相当額を記憶しておきましょう。もし遠い昔の外貨預金や仕組み預金で調達した米ドルを使うならば。。。その当時の米ドルに換えたときのレートで計算してください。外貨投資ってめんどうなのはこれなんですよね。。。
10年で回収する場合、米ドルベースで2%弱の損失ですから、案外円ベースで考えると勝ってしまっているケースもあり得ると思います。20年で回収する場合には米ドルベースで20%以上の利益ですのでさすがに円ベースで負けることは過去10年の円安基調を考えると想定しづらいと思います。
さて、損益が出ましたか?損の場合、一時所得は損失となります。この場合、もし同じ年に他の保険商品の解約などで収益が出たならばそれと合算することで納税対象額を減らすことが出来ますが、そこまで。一応、競馬や懸賞、福引の当選金と合算することは出来ますが、例えば不動産で得た収益(不動産所得や譲渡所得)や給与所得、為替で稼いだ利益(雑所得)などとの合算が出来ません。当然、不動産の譲渡損や、株や債券のように、損失を数年先まで繰越すことも出来ません。
では、利益が出た場合を考えましょう。他の保険商品からの利益などの合算の結果、最終的に利益が出た場合は、その額から最大50万円の特別控除金を差し引いて、それでもまだ利益があるならば、その1/2が所得税の課税対象となって、他の給与所得と合算して累進課税の対象となります。まぁ、利益から50万円さっぴいて、更にその1/2が課税対象なので、今後見ていく株や債券、不動産から見ればかなり優遇されていることになります。例えば、最終利益が30万円だったならば課税されない、ということですし、仮に保険期間の間ずっと為替レートが変わらず1米ドル100円だったと仮定して20年運用した結果は、109万4500円が利益に相当しますので、課税対象は
109万4500円 - 50万円 = 59万4500円
からその半額の29万4500円となり、所得税を20%と仮定するならば58,900円、と利益の5.4%程度に収まる計算になります。有価証券の譲渡益に対する20%課税より全然いいですよね。
余談ですが、なぜ、最大50万円かというと、もし最終利益が30万円だったならば、控除できる額が30万円しかない、と考えるからです。これがもし最終利益が100万円だったならば、最大の50万円を控除してもまだ50万円利益が残りますので最大額を使い切るケースになるのです。
保険金を受け取る時
結構がりがりと計算したりしたので、終わったつもりになっていますし、ここまで読み返すとそれだけも十分飽きるくらいの文章量になってきましたが、このケースもFP的には忘れてはいけないポイントです。というのも、前述のある意味投資目的の使い道が現役世代のための長期投資のツールになる一方で、相続を考えねばならない人たちにとって保険商品はこのケースでの、特に税務上の取り扱いが資産承継の大事なカギを握るからです。
といっても、資料の39ページを見ると分かるように、
契約者:本人 / 被保険者:配偶者 / 死亡保険金受取人:本人
ですと、前述の途中解約の場合と何ら変わりはなく受け取った保険金は一時所得の課税となるので、先ほどの税負担も併せて考えると、これのお陰で保険金殺人事件がなくならない、のかもしれません(苦笑)
とはいえ、これも、例えば、年間110万円の贈与税控除枠を使って向こう10年間、子や孫に60万円ずつ渡してそれでこの保険に被保険者を自分にして加入させることで、資産運用をしながら自分の死亡時に子孫の受取額を大きくする、という戦略に使うことはパンフレットの売り文句にあるようにいい使い道と言えるでしょう。
では、それ以外のまっとうなケースを考えてみましょう。例えば
契約者:本人 / 被保険者:本人 / 死亡保険金受取人:配偶者もしくは子
この場合、税務上の取り扱いは受け取った配偶者もしくは子の相続税としての課税対象になります。この場合、米ドルで受け取るので円価で評価する必要がありますが、その時はTTB(対顧客電信買相場)といって、もしわかりやすく言うならば為替レートが提示されたときの自分にとって安い方(例えば、TTMが100円で、手数料が1円と言われたら、TTBは99円、TTSは101円)になるのですが、この場合TTBで評価してもらえるのは課税対象額を小さくしてくれるという意味ではお得ですね。
また、相続の場合そもそも課税評価額の計算とかそれぞれの相続人に対する課税額の計算が複雑なところ、生命保険金に対する控除の方法はちょっと特殊で、
死亡保険金の総額に対して「500万円に法定相続人の数を掛けた額」を控除した残りが相続税の課税対象となり、個々の相続人への控除額は全ての相続人が受け取った保険金総額に対する自分が受け取った保険金の額の割合分だけ、上記の死亡保険金の控除総額が割り当てられるという計算になっています。ね?概念だけで説明するとめんどうでしょ?(苦笑)
とはいえ、ある程度の資産が見えているならば相続する額と相続税がある程度算出することが可能(というか、しておきましょうね)なので、その相続税の資金負担のために死亡保険金を使えるようにしてあげる、というプランを立てるのも大事です。あ、そうそう、死亡時に銀行口座は凍結されるので相続税の支払いにあてこむのは難しい一方で死亡保険金は直接相続人に振り込まれますので自由に使える、という保険ならではのメリットもあるのです。
あと、最後のケースも考えましょう。
契約者:本人 / 被保険者:配偶者 / 死亡保険金受取人:子
これも、ある意味配偶者の死亡時の資産移転や相続税の支払い対策に使える形ですが、この場合は資産移転が本人から子に行くため相続税対象ではなく贈与税の対象になります。ある意味一番税率の高いカテゴリーですが、他方で、相続時精算課税を使えば(そのためには親は65才以上、子供は20才以上で、予め税務署に届け出ておく必要がありますが)、届け出後親の相続開始までの間の資産の贈与に対してその時々においては総額2500万円までは無税、それ以上は一律20%の課税、そして相続時に生前贈与したという計算に基づき相続額を再計算して税額の精算をすることになります。この保険商品のベンチマークとして使っている死亡保険料が100,000米ドルなので、これだけならば相続時精算課税の枠内で収まる、と考えることが出来ます。
もし、相続時精算課税を使わないで暦年の110万円の控除額だけを使う場合、為替レートを1米ドル100円とすると。。。一番高い、子供が未成年の場合(一般贈与財産用)
(1,000万円 – 110万円) x 40% – 125万円 = 231万円
子供が成人の場合(特例贈与財産用)でも
(1,000万円 – 110万円) x 30% – 90万円 = 177万円
と、17%から23%の税負担を強いられることになります。とはいえ、支払い総額の53,652.00米ドルですから、それ以上の資産の移転が可能になることが分かります。
まとめ
さて、こうやってあれこれつらつらと書いてみましたが。。。保険商品って一般的な金融商品と似て非なるところが多いと感じることが多かった、というのが実際に手を動かしてみて感じたことです。特に最後の贈与のケースでの税引き後ですら単純な資産移転以上の効果がある、と思うと、費用が高いと揶揄される保険商品を回避して自分で3%以上の利回りの商品に投資する以上の意味が費用の支払う対価として評価する必要があるのかもしれません。
さて、こんな感じでいろいろな商品を評価していきたいと思います。
時間はかかると思います。でも、お付き合い頂ければ幸いです。