AIMA Japan Forum 2018、お陰様で大盛況のうちに終わりました

さて、先日お伝えした通り、今年のAIMA Japan Forum 2018もこれを書いている 2018年5月25日からみて昨日である24日に無事に、盛況のうちに終わりました。

今回はどんな流れだったかというと、まぁ、Forum のプログラムを見れば詳細はわかるものの、私の目線でどんな流れだったかを時系列的に少しご紹介しましょう。

今回は申し込み締め切り時点での参加申し込み数が200を超えて「おお」と思っていたのですが、残り3日間で400にわずかに手が届かないところまで一気に申し込みが来たので事務局が(手作業で!)さばいて当日を迎えました。

当日の流れはというと

当日も前日の雨から一転快晴に恵まれてか、開場してから順調に参加者が来てくださったのもあって、開会挨拶の時点でざっくり会場のキャパシティである 300名弱のテーブルの3/4程度がほどよく埋まる、というグッドスタートを切ることができました。そこからはお約束のオフショア弁護士を軸にしたパネルに始まり(でも、内容は「株のロングショート戦略をするなら、日本、アメリカ、香港、シンガポールのどこで会社を作って運用するのが一番?」というその後の展開をちゃんと踏んだものでしたよ)、そこから(個人的には商業的な背景が透けたプレゼンだったので多くを語らずに飛ばすし、ここに喧嘩売るネタは実は書いているのでそのうち公開する、として)仮想通貨の話に一気に飛んで、そこからは、もし私の instagramfacebook をフォローしてくださっているならばお気づきだったかと思いますが、ほぼほぼリアルタイムで進行をアップし続けていましたのでそのタイムラインからご覧いただけ。。。ああ、大事なところは写真をアップしなかったんだ(笑)ま、この左に掲載したけど、この日の多分一番の注目(で、そのおかげでプレスの参加も過去最高)だったのが、小池百合子東京都知事による登壇と、ゴールドマンサックス証券のキャシー松井女史との対談(そういえば去年は旦那のイェスパー・コールにもビデオで喋ってもらったっけ。。。)。ここがクライマックスで人がすっと帰っちゃうかと思ったら、案外そうでもなく、その後の元フランス首相(この人、フランス史上最も若くして首相になり、もっとも長い間首相を歴任されたという実はすごい人)の(AIMA Japanの会長の国籍を気にせずにアメリカをディスりまくる(笑))基調講演、そしてランチでもまだ人がくるくらい。

午後は選択を迫るForum に(笑)

そして午後にはForum 史上初の分科会形式で展開しました。これは、二つのセッションを同時進行する、という昨年までの educational sessions で採用していた方式で、今年はプログラムを見ての通り色々トピックで盛り沢山になったので、頑張って詰め込んで見た、という感じです(笑)

そして、最後のティーブレイク、いやコーヒーブレイクを経て、国内投資家最大手の方々の投資に関する考え方のありがたーいお話と、そのあとの恒例の市場予想ゲームの結果発表でフォーラム自体は幕を締めて、あとはみんなで夕日を浴びながら、リッツ・カールトンのデッキでワインを飲みながら「長い1日だったねー」なんて言い合いながら名刺交換に勤む、という感じでした。

終わった後の会場風景はこんな感じでしたが。。。うまくinstagram の埋め込みが機能するかな。。。

Party is over. See you again next year at #AIMAJapanForum !

Shinobu Miyataさん(@shinobum1971)がシェアした投稿 –

 今回、なんでこんなに人が集まったのでしょう。

まぁ、一番大きいのは写真の方による登壇、ですよね。図らずも、4月27日に「東京版EMPファンド創設」の発表があったので、東京都知事による金融都市構想やそれに伴うファンド関連事業の話に注目が集まったのは、とても自然なことですよね。この日は都知事だけでなく都の担当部長さんによる詳細の説明もあったので力の入りようと言ったら、というところなのですが、これはその後のコーヒーブレイクやカクテルの時に「で、結局東京都って何するの?」という話が出たので、これは次の記事で解説しようかと思っています。って、なんで私が出来るんでしょう。。。(笑)

そのほかの要因といえば、参加者がみんな満足したのが会場であるリッツカールトン。去年の時事ホールだってよかったんですよ。しかも、6月の株主総会時期によくぞ我々に会場を開けてくださった、と思うようなところなのですが。。。ホテルのホスピタリティにはどうしたって及びません。(カレー含めて)ご飯も美味しかったです。スポンサーさんたちの荷物の搬入出にも本当に親身に対応してくださいました。本当に運営側としては感謝です。とはいえ、今年はたまたまこの日がぽっかり空いていたので使わせていただけましたが来年はどうでしょう。。。早く日にちを決めなきゃ。。。

あと、ちらっと触れましたが、この数年6月開催だったのですが今年は5月開催、ということで比較的気候も良いし株主総会とぶつからないし、というのもよかったようです。とはいえ、実はプライベート・エクイティのパネルの調整をしたのですがこの時期はPEファンドの投資家総会の時期でもあるのでスピーカーの方に結構お断りされたなぁ、という印象もあったりします(実際、今年は自分でもあちこちの投資家集会にお邪魔させていただきましたしね)。おまけですが、2010年までは3月開催だったんです。2011年の地震の影響でその年に6月開催になってから6月に定着していた、という経緯があるんですが、これは5月に移って正解でした。

さらにいうならばトピックが多岐に、しかも今ホットなオルタナティブ投資をよくぞここまで、というほどかき集めたのもよかったのかもしれません。例えば、世界中の仮想通貨の取引量の65%を占める日本ならではの仮想通貨のトピックは金融都市東京の力点の一つ、フィンテックとの兼ね合いもあ理、また、AIMA Japan 自体もこの一年は仮想通貨系のミニセミナーを何度か開催し、AIMA 本体も Alternative Credit Counsel (ACC)で仮想通貨関連の取り扱いを始めたこともあり、今回のセミナーで紹介するのはとても自然な流れになっていました。また、前述のPEもこのところの国内の機関投資家、特にゆうちょ銀行など大型投資家による投資への注目が一気に上がった投資戦略でしたし、VCも金融やメディカル、スマホゲーム(笑)だけでなく、宇宙のような今まで以上にリスクと夢との規模の桁が一気に上がった投資に注目が集まり出しましたし、海外からの日本の規制への注目を集めた戦略としては登録業者制を導入する HFT (High-Frequent Trade) が今年一番だったかもしれません。

中身は多くは語らないけど。。。来年はどーしよう(笑)

ということで、これだけ盛り上がったので、スポンサーの皆様にも喜んでもらいましたし、お声がけしてスポンサーしなかった会社さんには惜しいチャンスを逃しましたね、と耳打ちしつつ、もう来年に目が向いてしまうのは。。。やはり業界の活性化は東京都のEMPもあるけど業界団体を通じてより多くの人たちが集まって声を集めていくという活動が一つのカギであり結果を生み出していく、という過去の実績を思えばこそ、です。というか、大変だけど(って、今年はそんなに働く機会がなかった。。。かな?どうかな。)楽しいんですよね。好きなんですかね、こういうのが(笑)

ということで、”Party is over.  See you next year at #AIMAJapanForum!

今年もやります、手伝ってます – AIMA Japan Forum 2018

気づけばもう8年のお付き合いになっている AIMA Japan。今年は理事ではないものの諸般の事情で運営のお手伝いをしております都合上、今年も開催される年次フォーラムのお手伝いをしております。

AIMA Japan Forumって?

AIMA – Alternative Investment Management Association の日本支部(はい、今年から一般社団法人ではなく、ロンドン拠点の本体の在日拠点での運営に変わっております)である AIMA Japan が今年で13回目となる年次フォーラムを行います。AIMA Japanが設立された時、Alternative Investment と言えば先物やヘッジファンドが主流だったので、AIMA と言えばヘッジファンドの業界団体、という認知のされ方をしておりますが、今やそのカバレッジは広く、alternative investment であればなんでも、ベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティ、プライベート・デットのような未上場資産や不動産、そして今年は仮想通貨までフォーラムで取り扱うようになって来たのです。

そうそう、AIMAではブロックチェーンやデジタル資産に関する部会があって、つい先日もお膝元のUK FCAによる仮想通貨のデリバティブの取り扱いに関する通達について会員に周知していましたね。

今年の見所は?

当ブログでも2016年の時の総括をしましたが

AIMA Japan Forum 2016はこうだった

今年は。。。

東京都知事来たる!

今年のプログラムを見るとわかりますが、今年は都知事さんが登壇します。背景としては先日都庁から発表された東京版EMPファンド創設を受けて、国内外の運用者や投資家に東京を拠点として参加してほしい、という意図があることから、AIMA のフォーラムを通じて情報発信してくれるのだと思います。

個人的に一時期絡ませていただいたこともあり、このEMPファンド、このステージまで来たので面白いことになると思いますので当面は目が離せないところです。

フェス的に会場がわかれます

この他、今年はBreakout Sessions – 分科会をフォーラムで開くことにしました。これは昨年までフォーラムの前日に運用業界の若手の参加・育成を意図して行なっていた無料の Educational Sessions で取り組んでいたものを今年からフォーラム本体に組み込んでみよう、というものです。これのいいことはより多くのトピックを取り上げることができること、なのですが、当然並行して行うので片一方を見逃してしまうんですよね。。。

ま、最近はフェスが流行りですので、自分の興味のより近い話を選んで聞くことでより充実した参加にしてほしい、という願いもあります。

取り上げるトピックが一気に広がりました

プログラムを見るとわかるのですが。。。昨年あたりから取り上げているプライベート・エクイティは午前と午後に、しかも業界の超有名人を数多く集めました(えっへん)。そのほかに、ベンチャーキャピタルは宇宙開発への投資、なんて尖った人が来るし、高速取引 – High-frequency trader たちのセッション、そして仮想通貨といった、新しい資産や戦略を取り上げる一方で、オフショアの動向のアップデートやこの数年の上場株式周りでの取り組みであるコーポレートガバナンスを海外投資家目線で評価する、そして、国内のヘッジファンドを運用者と投資家のそれぞれの目線で再評価する、といった従来から継続して取り組んで来たことも引き続き行いますので、まぁ、盛りだくさんです。

で、いつ、どこでやるの?

開催は 2018年5月24日、とこの遅筆な私にしては1日で一気に書かないとやばいくらいもうすぐです。場所はなんとリッツ・カールトン東京。ホテルでの会場です。コストが気がかりになるのは運営だからなのですが(笑)

参加費用は、AIMAの会員(世界のどこでもいいですよ!)になっている会社さんならば一人は無料、それ以上の場合には一人10,800円(税込)です。もしAIMAの会員じゃない、としたら、すみません、会場費用がかさむので43,200円(税込)でのご協力をお願いします。登録はこちらからどうぞ

あ、先に言いますが、私には招待チケットはありませんしスポンサーもしていませんから誰も招待できませんからねっ(笑)

 

Asia Region Fund Passport – アジア地域ファンド・パスポートが本格始動する、らしいけど

ファンドの世界でのパスポートって?お金が旅する為に必要なの?

ファンドの世界でのパスポートって?お金が旅する為に必要なの?NISAのネタを書いて、普通ならすんなりiDeCo の話を書いて、そのあとにそんな税制優遇された長期投資環境を使って投資するなら。。。みたいな話を書くのが流れと言うか予定、のはずなのですが、いつものように、時間がかかり過ぎるし注意力散漫な性格のおかげで、金融庁のホームページにアジア地域ファンド・パスポートの進展を見つけてしまったのと、これを書いている数日前に某米系カストディ・ファンドアドミの会社さんのセミナーで弁護士先生と会計士先生とでこの話を当局に近い立場で話をされていたので、以前このARFPの話を取り上げた経緯もあることからちょっと調べた感じでの最近の動きとそれに対する雑感(と言うか、いつものように放言、ですな)でも書かせていただこうかと。

なお、これを書いている時点において、著者はといえば投資信託な商品からちょっと距離を置いていますので、最新の実務の観点であれこれ言えるわけではない、と言うのはご了承頂ければと。。。

そもそも Asia Region Fund Passport (ARFP) – アジア地域ファンド・パスポートって?

詳細はAPEC の ARFPウェブサイトをご参照いただくとして、ではダメなので概略でも。

“The ARFP aims to reduce regulatory duplication by establishing a standardised set of requirements for fund operators, and benefit investors through broader and more diverse fund offerings while maintaining investor protection.”

ざっくり訳すならば「ARFPはファンド運営者に対する必要条件の標準化を定めることで法規制の重複を軽減することと、投資家保護を守りつつも国境を超えてより多様化したファンドの提供を投資家に対して享受させることを目標にしている。」と感じだろうか。要は国境を超えてファンドが複数国で販売出来るようにファンド商品の条件の標準化を多国間で整備する、と言えばいいかもしれません。

まずはその歴史でも

元々は2010年のオーストラリア金融センターフォーラムでパスポート構想が推奨されて、それを受けて2013年のバリでのAPEC財務大臣間会議に於いてオーストラリア、ニュージーランド、韓国とシンガポールで同意した多国間構想の一つで、2016年にパスポートが機能することを目指していたそうな。その後タイとフィリピンもこの構想に参加を表明したのですが、2015年9月の多国間でのStatement of Understandings に署名したのは、オーストラリア、韓国、ニュージーランド、タイ、フィリピンと日本と言う顔ぶれ。シンガポールが抜けて日本が入ったと言う感じですね。その後2016年に協力覚書をオーストラリア、ニュージーランド、韓国と日本が署名してこのパスポート構想を押し進めてやっと昨年9月にARFPガイダンスのコンサルテーション(日本で言うところのパブコメ)が発表して意見を求めて、12月にパスポート申請手続きが公表された、と言うことなのです。

で、このファンドのパスポートをとると何が出来るの?

ざっくり言えば、パスポートを自国の当局に申請して登録すると、日本、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、韓国、シンガポールに於いてその登録ファンドの販売をする手続きが簡便化される、と言うことが期待されている(ってダイエット商品か?)。

実際に日本でその手続きってどうなるの?

さて、金融庁のホームページでその手続きについて記載があるのでぼちぼち手続き申請が始まるのかと思うのですが、実際のところどうなるのか。書いてあることからちょっと考えてみたいと思います。

日本で投資信託を作って海外で売りたい場合

まずは輸出しよう、と言うケースを考えてみます。

輸出するにはまず作らねばなりませんので日本の投信法に基づいてファンドを設定することになります。

その際に運用会社とその役職員について色々と条件があるようですので、その条件を満たしていることも証明する必要がありそうです。とは言え、取締役に求められる「IOSCO関連の金融サービス業務での経験」って、これを文字通りIOSCO 参加国の当局と読むのか、IOSCOに参加している金融庁の規制下にある金融商品取引業者での勤務経験で足りると解釈するのか。。。普通に考えると後者のはずなのですが、表現が微妙におっかないですよね。

また、ファンドの資産にも制限があり、当然仮想通貨というか暗号通貨はダメで(笑)でも、金の預託証書はいけるのが不思議かも。当然のことながらデリバティブ取引についても色々と制限があります。集中保有規制もあって、通常5%、一定の条件で20%まで単一発行体の証券を保有可能だとか。

また、ファンドからの貸付は禁止、借り入れもAUM対比10%が上限、空売りもだめ、報酬体系としてパフォーマンスフィーは導入不可。まぁ、この辺りは投信協会の運用規定の範囲内、と思われるので多分日本の投信ならクリアー出来るでしょうね。

あ、上記は条件のほんの一部ですからね。で、これらをちゃんと満たすことを確認出来る資料とともに金融庁に申請をします。申請が完了すると、そのファンドはパスポート・ファンドということで、登録コードが与えられます。多分、設定国(ホスト国)での手続き関係はここまで。

その後は販売したい国での商品登録手続きを行い、現地の販売会社さんに販売してもらう、ということになるのでしょう。

海外で作って国内に持ち込みたい場合

では、逆方向の輸入についてみてみますと。。。

まず、パスポート参加国(で、当然日本以外の国)でその現地国の法規制に従ってファンドを設定し、前述の日本でのパスポート申請と同じことをして、登録コードを取得することになります。

登録コードを持って今度は日本での販売のための当局の手続きをするのですが。。。これは外国投資信託の持ち込みの手続きとほとんどと言っていいほど何も変わっていません。この持ち込みの基準等を定める日本証券業協会の外国証券の取引に関する規則の第16条と第17条が公募外国籍投資信託の持ち込み基準を定めていますが、今回のARFPの動きを受けて改正されてARFP対応の条項は出来ていますが、それは、外国投信の持ち込みの際の諸条件の一部がホスト国で確認すること登録コードが与えられているということを踏まえて、省略されているように見えているだけで、結果としてパスポート参加国以外のケイマン諸島の Japan regulations の適用やルクセンブルクやアイルランドのUCITs適合なファンドを持ち込むことと基本的な設計等については変わりはないのです。

当然、(交付・請求)目論見書や運用報告書の義務がARFPで緩和されることもありません。

じゃあ、ARFPのメリットとは一体なんだと捉えればいいの?

日本に輸入するメリットってどうよ?

正直言えば、日本にだけ持ち込む上でARFPを使うことのメリットは、UCITSや Japan regulations適合のケイマン諸島のファンドとの差が見えない以上ないと言い切っていいと思います。例えば韓国の運用会社が韓国株のファンドを日本に持ち込むためにパスポート登録して外国籍投資信託として(最大手証券会社4社とプレスティア、三井住友銀行と数少ない)外国籍投資信託の販売インフラを持った国内の販売会社のどこかと組んで販売するための調整をするならば、どこかの国内投資信託のファンドオブファンズの運用エンジンとして既存のファンドに資金をフィードしてもらう方が販売会社の数も段違いに多いし、商品が国内で販売するための商習慣に合わせやすい、などのメリットを享受しやすい、というのは間違いありません。

じゃあ、どうしたらメリットが出るの?

個人的には複数国での販売のためならば、ARFPへの登録は意味と一定の効果を出せるのではないかと思っています。複数国の公募ファンドの規制適応、となると通常は前述のような国ごとの事情に合わせたフィーダーファンドを作り、そこからマスターファンドに資金を集中させることが一般的ですが、フィーダーファンドごとに設立コストも掛かります。それが一つのファンドで複数国にアクセス出来るならば費用的なメリットを見いだすことが出来るでしょうし、そこは参加国が増えれば増えるほど一つのファンドでアクセス出来る国が増える、という意味で魅力的に映るかもしれません。

本当にそれってメリットなの?

どうなんでしょうね。個人的には特に個人投資家が主になる以上、販売される国においては既にある商品との競争になる、ということはその国の商習慣や法規制等で求められている報告書等を現地の言葉に翻訳しながらその頻度等も現地に合わせた上で作成し続けていく訳で、日本を例にとればそのような報告書等の翻訳などは販売会社が特定のファンドの代理人のようなことをやるはずもなく、運用会社などの商品を推進するサイドがそのコストで行うことが事実上のデフォルトであり、他国でも同じと想像して良いでしょうから、作って登録して各国で届け出ればおしまい、では無く、進出する国ごとに販売サポートのリソースの確保とコミットメントが不可欠と言えるでしょう。となると、グローバル展開している運用会社ならば使える、という見えないハードルが置かれてしまうようにも思えています。ま、投資家保護、ということを考えると、規制当局含めて運用会社にそれなりの規模を求めるのも当然かもしれませんが。。。

では、日本の運用会社はこれをビジネスチャンスと思うか、海外からの外圧のゲートが開いたかと思うかと言えば。。。

本当はビジネスチャンス、のはずなんです。国内が販売サイドの縛りも出てきているからAUMが頭打ちになる訳ですし、だから海外展開を始めるべきなのだと思います。でも、国内市場だけですでに疲弊しそうな状況で海外展開にリソースを割くなんて、と出来るところは。。。すでにARFPを使える素地のあるグローバル展開している欧米系の運用会社を除くから、国内勢と考えると数社程度しかないでしょうねぇ(あそことあそこくらいかなぁ。。。)。

だからと言って、外圧のゲートが開いたか、と言えば前述のようにその外圧は外国籍投資信託のチャネルでしか来られないから外圧にはなり得ないのです(これは自分でビジネスを頑張ったから言えることなのですが。。。)。

とすると。。。ARFPが出来ても何も変わらないし変われないように思えるのは私だけでしょうかねぇ。。。ま、これはまた数年置いたところで評価すべきかもしれませんね。

Say something more on ICO: もう少し勉強してみて思う、リパッケージ商品との類似性とETFとの相違点

前回の記事でICOってさー、なんて書いちゃった訳ですが、その後色々とお話をする機会を頂いたり(その流れで今時の MLM – Multi-Label-Marketing – な人たちに捕まりそうになったりしましたが。。。)、Etherがらみのデータ消失による2億ドル以上の資産評価額の消失や、これまたEther がらみのICOによる詐欺事件とか起きて、色々と学びましたので、それを絡めつつ、以前書いた金融商品の非創造性の記事を深めるようなネタでも。。。

本当は NISAとか iDeCo のネタ書いて Soldie 的な読者さんでも増やしたいのに。。。(嘘)

ICO はリパッケージなトークンを発行するのが一般的?

さて、冒頭で書いた詐欺事件の話。Ether を裏付けにした、と言うか、Ether と等価交換できると言うトークンをICOで発行して資金調達をしたらそのままトンズラした、と言うことらしいのです。しかも、今時らしく、その発行したチームとは基本 Twitter で情報のやり取り出来るようにしていたがICO以降twitter での反応はなくなり、ICO関連のウェブサイトもなくなり、と言う、夜逃げのネット版みたいな状態なのだとか。

多分、ここでポイントになるのがいわゆるcryptocurrency といったときに、世の中にこの記事を書き初めている(2017/11/30)時点でcryptocurrency market capitalisation によると1326ほどのcryptocurrency が6997もあると言うどこかしらの取引所で取引されている(市場規模で$329,456,400,661、そのうちbitcoinは55%を占めているような)のですが、そのうちcoinと token の二つに大きく分かれるということをまず理解としないといけないようです。

そもそも coin とtoken の違いって?

で、coin と token の違いは、と言うと、coin と言うのは bitcoin がopen source で作られていることから、そのコードを利用して新しい機能等を付け加えられて作られた、いわば bitcoin の親戚、で altcoin とも呼ばれているもの。前回の記事でICOするのにそこまで作るの?と思ったのがこのレベルのもの。それだって916も存在するようだ。。。

で、token と言うのが実は前回取り上げたQash も含まれるもので、これは実はEthereumのような altcoin の blockchain プラットフォームのフォーマットに従って、資産を裏付けにしながら比較的簡単に機能拡張しながら作ることが可能なもの、らしく、ICOに実に適したもの、なのだとか。なので、このtoken を使ってのICOが世の中一般に言われるICOのようだ。だから、Etherと等価交換なtoken での詐欺とか、と言う話になる訳だ。ちなみに、まともに動いているtoken は Qash 含めて409あるそうな。token の方が altcoin より簡単だ、という割に altcoin より少ないのが不思議な気がするが。。。

と言うことは、ICOってある意味altcoinやbitcoin を裏付けにしたリパッケージじゃん、と言うことになるのですよ。実際、最近聞いた話では ICO では詐欺事件等の印象も悪いから、ということで、投資銀行な人たちが TGE (Token Generating Event) という言葉を再発明してイメージを一新して行こうとしている、という話らしい、が、看板を掛け替えたところで、というのはここの読者ならばお分かりだろう。。。

さて、この Token って、資産を裏付けにして兌換性をある意味提供する、となれば株とかの世界ならば、ファンドかETFのようなもの、とも言える訳です。しかも、金融商品と違って、独自の拡張機能が付いてくることもある、というのが open source の世界らしい。金融の場合は、どうしたって(日経225ならば最低5億の最低取引単位のような)原資産の性質の呪縛しかない訳ですから。

といって、普通に金融商品がリパッケージされる、というのは分かりづらいかもしれないのでまずはちょっとその辺りでも解説を。。。

金融商品のリパッケージの手法その1 – 資産ポートフォリオを小口化する

ETFを含めた、ファンド、という商品は、いわゆるバランスシートを見たときに、単純にいえば、資産として投資対象と現金を、反対側には債務は(未払費用を除けば)なく、あとは投資家の持分がある、という状態です。ということは、保有する資産の評価額がそのまま投資家の持分全体の評価額になり、自分の持分については、といえばその全体の持分合計に対する自分の持分の割合だけ(ファンドの保有する資産の何か特定の資産に一対一で紐づけられることなく)資産ポートフォリオを保有している状態にある、といえます。

絵でいえばこんな感じで、よく法律っぽい言葉で言うならば各持分が pari-passu 、各持分の間に優先劣後関係はなく、全てが等しく扱われる、と言うもの。

この場合、例えば日経225ETFを例にするならば、資産ポートフォリオは255銘柄の最小単位である 5.3億の倍数でしか組むことが出来ないのですが、投資家の持分については、商品設計上、例えば10,000円単位の小口で53,000口集めることで 5.3億を募集して投資を募ればいい訳で、そうなると、5.3億円相当の資産ポートフォリオが 10,000円単位の持分 53,000口に細分化されることになるのです。

この場合経済効果は各持分に対して均等にかつ公平に配分される、というのもキーになります。言い換えると、日経225ETFを持ったら、ETFのうち、トヨタが俺のもの、なんてことにはならないのです。これは、よくある馬主ネタ「ああ、俺、あの馬の尻尾のオーナー」のようなことはない、のです(一口馬主だって尻尾だけオーナーに、とはなりませんからっ)

なので、大口投資家がETFをブロック取引がわりに使えることから、大口なだけに5.3億相当のETFを持って現物を引き出せる訳ですが、そのときには好き嫌いにかかわらず上記の例で言えば、トヨタだけ 5.3億円相当引き出せる、のではなく、ポートフォリオの構成銘柄 255を受け取ることになる、のです。

ちなみに、その昔のこと、仕組債のマーケットメイクをしているときに債券が事実上買い集めたけど償還まで持ち続けるのはきつい、といった時に、所有していた仕組債を SPCあたりに持たせて、債券の金利部分をスワップで簡単な固定金利などに変換した上で、このキャッシュフローを担保とした債券を SPCに発行させては別の投資家に売りさばく、なんてことをフロントがやっていたなぁ、なんて思い出すと、実はファンド持分だけでなく、発行体にとって負債だって資産に対して等配分なリパッケージだって出来るんだ、とも言えます。ま、やる側からすれば、マーケットでスプレッドを持って買い集めて、かつスワップでも稼ぎ、オフバランスまでしているのですから誰のための案件だったのやら。。。

金融商品のリパッケージの手法その2 – 資産ポートフォリオへの権利に優先劣後をつける

さて、リパッケージのもう一つのメリット、と言えば小口化の過程で資産ポートフォリオの本来の収益特性を分解して複数のリスク特性の商品を作り出すことが可能だと言うことなのですが、どう言うことかといえば、以前の記事で紹介したこんな感じでしょうか。

資産ポートフォリオのキャッシュフロー、元本や利益、についてその配分方法として複数の投資家の間に優先劣後関係を入れて、安定して先にもらえる人はリターンは低めで、元本を完全に回収できないリスクを追いつつ支払いが後回しになる人にはリターンが高い、とするのです。これによって、複数のリスク特性の投資家に対するアクセスが一つの資産を裏付けにしても作れるのです。

こう書くと、例えばCLOや以前の記事のようなレバレッジをかけて UCITSに投資するファンド、のようなイメージが先行しがち、ですが、マイホームを銀行からお金を借りながら購入したら、転勤させられるから人に貸して、転勤が終わって帰ってきたら家族構成が変わったので手狭だから売る、なんてケース(ってどんなケースだ?)ですと実質的には同じで、取得時に頭金として置く分が上記で言えば元本の毀損リスクが高い劣後証券のポジションで、銀行からのローンが優先証券に値して、売却時には売却金はまずローンの返済に回理、もしローン返済に足りなかったら、頭金は毀損したことになるし、仮にローン返済後に頭金以上に手元に残ったらいい投資だった、といってピンと来るでしょうか。

しかも、最近のアメリカあたりだと、資産ポートフォリオをプライベートエクイティファンドが買いに行く個別の投資先の企業として、優先証券にあたるところに銀行がローンを出せなくなってきたことから、ローンを専業で出すファンドがいてそこから出て来ては担保をしっかり取った形でのローン、劣後証券に当たる部分が案件のスポンサーになるプライベートエクイティファンドからでて、もしこれで足りなかったらメザニンローンを出すような前述のローン提供ファンドから高めの金利で埋め合わせる、と言う構造になり、と言うことは、優先証券やメザニンなんかが束になった(その一の時のような投資家間で均等にリスクを分ける)ダイレクトレンディング・ファンド、のようなプライベート・デット投資の商品として提供されることになるのです。

まぁ、一時期流行ったバンクローンファンドの投資対象も、その意味では格付けで言うところのCとかのような機関投資家的には投資不適格な企業に対して銀行が審査した上でローンを一旦出して、バンクローンの取引市場を通じて売却したものを束ねたものですから、似たようなもの、と言えばそれまで、です。とは言え、流動性の違いやローンの貸出先の性質の違い、担保の質や管理、などの点でポートフォリオの質と生み出すリターンが違って来るのでこの辺りはストラクチャーよりも運用者の手腕がもろにでて来るところ、ではあるのですが。。。

いずれにせよ、この優先劣後のストラクチャー、資産がBBBとかBとかいった低格付けのポートフォリオから確率論的に安全だと思われる程度のキャッシュフローの上澄みだけを優先部分に当てることでAAA格付けの商品を作り出せる、的な「格付け(ベーっだ)エンジニリアリング」が出来るので、案外無から有を作り出す魔法のように思われますが、その付けを劣後が払うことになるので全体のリスク量は変らないので優先劣後のストラクチャーの中でのゼロサムゲームが行われているに過ぎず、サブプライム問題のようなポートフォリオ全体の質の劣化なんて起きれば優先すら大変なことになった、が10年も前には起こったわけです。

また、先ほどの馬主的な言い方をすれば、まさに「このトヨタのキャッシュフロー部分は俺の」的な事が(資産と持分とが法的には紐付けになっていないものの契約書上の割り当て的には)言えてしまう、のは一般的に見れは不思議なことであり、金融工学的な側面にも見えてしまいますよね。

で、リパッケージって何がいい、と思われてるの?

結局のところ、pari-passu であれば小口化であったり、スワップを使えばキャッシュフローの変更などができますが、キャピタルストラクチャーを変えてしまえば、リスク特性も変える事ができるので投資家の幅を広げる事もでき得る、とも考える事ができるかも知れません。といっても、このリスク特性を変えるのは特定の投資家には与えないようにしてこちらの投資家に寄せている、のである以上どこかしらに偏在するのは、ポートフォリオ自体に何かの手を加えたわけではないから、ポートフォリオ全体のリスクが変わったわけではない(上記の絵でいえば、左側は何ら変わっていないけど、右側はキャピタルストラクチャーによってリスクの取り手とその対価としてのリターンが調整されている)にすぎないのです。その意味ではゼロサムゲーム、とも言えるのです。

ICOと言うか TGE におけるリパッケージって、どうよ

で、話を冒頭に戻すとするならば、Token が原資産をもとに発行されてある意味等価交換可能なもの、とされている訳ですが、そもそも bitcoin における最低取引単位、と言うのが、546Satoshi で、この Satoshi と言うのが 1億分の1BTC だそうですから、最近の高騰で 1BTC 100万円としても 1 Satoshi が 0.01円、したがって最低取引単位は  5.46円、と言うことになりますわな。と思うと。。。ETFのような細分化できない訳じゃなさそうだ。ほんと、なんでそのまま取引しないんでしょうね、と思うのは私だけでしょうか。

そこが、Token がプログラムである以上、機能的な向上もおまけで付いて回っているから、と言うバランスシートの左側が何も変わっていない、のではなく、変わっていて、それ特有だから評価出来るので、と言うこと、になりそうですね。そこは ICOと言うか TGEをするスポンサーへの信認の証、かも知れませんね。

としたら、10件に1件しか本物はいない、のはその通り、なのかも知れませんが、まぁ、所詮はデジタルデータ、ですからねぇ。

Say something on cryptcurrency: ICOって儲かるの?

(著者注:2017年11月19日にあれこれ加筆修正しました。まずは書いてそれから加筆修正する、と言う方がよりたくさん書けるような気がしたので遅筆な私にとって良いような気がして実践して見ました。)

この間某ヘッジファンド関連で仲良くさせて頂いている方から呑みの席で

「なんか、最近ETFネタばかり書いてるじゃない?あれ、bitcoin に流れるんじゃなかったの?」

あ、読んでくれてるんだ、とそっちを喜んでしまった自分がいたのは内緒なのですが、どうもbitcoin ETFの話を軸にあれこれ書かせて頂いたことで、最近ちらほらと、bitcoin関連のお問い合わせを頂くようになってきました。(で、ETFの仕組み関連の問い合わせはぱったりなくなったのは。。。嫌になっちゃったからかな(笑))

で、そのお問い合わせの中で必ず出てくるフレーズが

「ICOやりたいんですよね」

うん、最近、ICOで資金調達、なんて話は、仮想通貨というか暗号通貨、というかcryptocurrency という表現でbitcoin を含んだ全般的な話をする時の総称ですけど、そんな話をしていると、bitcoinの売買益でフェラーリを数台買ってリース業を始める、なんて類の結局のところ、日本にいるならば仮想通貨は取引対象に過ぎなくて生活して儲けた結果の評価をするための通貨は日本円じゃないと食えないから泡銭をロンダリングしてんじゃん、という話を同じくらい頻繁に聞こえてきますが、普通に聞いているとよくわからないですよね。それがなぜ儲かるのか、とか、そもそもの仕組みとか。

とはいえ、これってファンドでもオフショアでもなんでもない話なんですよね。それでも、日本が世界に誇る(ことにはまだまだならないだろう)ファンドのストラクチャラーによる ICOの解説、聞きたい?

ということで、この手の話をする時に、ストラクチャラーとしてみるのは法的な作り付けと、経済的な効果の二つ。なので、それぞれの側面で、ICOというより cryptocurrency とそれを ICOしたい企業との関係で考えてみたいと思います。

cryptcurrency とICOを含めたその売買の法的側面とは?

そもそも、bitcoin や ether、最近だと、ICOした Qashなどなど、いわゆる cryptocurrency とは一体なんなんでしょう。Qash で ICOした Quoinex のウェブサイトの下に思いっきり答えが書いてあります。

仮想通貨は、日本円やドルなどのように国がその価値を保証している「法定通貨」ではありません。インターネット上でやりとりされる電子データです。

法定通貨が「国がその価値を保証している」、という表現は正直疑問はあります(その昔のイギリスポンドが1ポンド紙幣をイングランド銀行に持ち込むと1ポンド(450g)の金を受け取れた、というような支払いの裏付けがなく、国の信用力/法的強制力が裏付け、ですからね。)が、法律で定められた通貨としての円のようなものではなく、仮想通貨はそもそも、ただの電子データ、なのです。いくら、暗号化された取引履歴を元にしたもの、とは言え。。。

ICOで資金調達、ってことはIPOに似てるからそのICOした会社の株とか、会社の保証みたいなものじゃないの?

会社が資金調達する、というと、通常は銀行などからの借り入れ、といういつか返さなければならない債務を負うか、会社の権利の一部を株式という形で渡す代わりに債務と異なって返さなくともいい資金を得るか、のどちらかです。IPO(Initial Public Offering)というのはその株式での資金調達の方法の一つで、その会社が初めて(initial)公開(Public)市場、すなわち株式市場にて取引できる環境を通じて、株式を提供する(Offering)ことをさします。なお、上場しない企業だって、第三者割当て、という形で第三者な投資家から株式譲渡を通じて株式での資金調達が可能です。

では、ICO (Initial Coin Offering)はこのどちらに当てはまるのでしょう。これを書いている2017年11月現在、進行形で進んでいるICOをしているのはQUOINEという会社さんですが、ここは3.5億のQash トークンをICOして134億円相当の資金調達をしたそうなのですが、実はこの会社の株式はすでにベンチャーキャピタル数社などが取得しています。そんな状態で134億円の株式を世界98ヶ国およそ5,000人弱の不特定多数に発行したら古くからいるベンチャーキャピタルの支配権が薄まってしまいますので困りますよね。

ということは、どうやら、ICOでQashトークンという電子データを売って134億円相当を資金調達した、というよりも売り上げた、と考えた方が良さそうですね。

そうなると、会社の側からすればcryptocurrency のインフラの維持という義務は負うものの cryptocurrency の構造に内包されていると考えてしまえばさしたる負担ではなさそうで、そうなると、通常に資金調達したい会社がその権利を売ったわけでも借金しているわけでもない、と考えるのが良さそうです。ある意味、会社の側からすればお得なお話、ですよね。「電子データ」を売り切っちゃったわけですから。。。(となると、この会社のとって資金調達、とはいえ売上ですので収益扱いになるので巨額に集めた = 巨額の売上が計上されるのでそれ相応の税金の負担も発生する、ということになりますよね。。。インフラの維持は半永久的、に対して。。。)

じゃあ、ICOは何を求めて集まったの?

と考えた時に、この5,000人弱のQashトークンという「ただの電子データ」を手に入れた人はQuoine 社に何を期待して買ったのでしょう。単純にいえば、Qashの値上がり、ですが、それを裏付ける取引の流動性の高さや安定性の期待、他のcryptocurrencyや法定通貨との交換の簡便性、はたまた普段のショッピングなどでの決済の汎用性などがその取引量を増やして値上がりに繋がる背景ともいえて、実際にQuoine社はそのような取引所としてのインフラを提供することのために資金調達をしてサーバーの増強などに使う、とされています。

ちなみに、IPOの後の株と同じで、ICOしたこの会社、Qashトークン全体の時価総額が増えたとしても、自分たちが調達できたのは最初に売った時に手にした134億「だけ」です。野に放たれたcryptocurrency の値上がりを享受するのは、ICOによる売り出し市場以降で手元のQashトークンを誰かさんに取引所経由で売却した時に実際の利益になる(冒頭で触れたbitcoin長者的な、安く仕込んで高く売った人、のような例ですね。)、のも株を同じですね。

その意味では、cryptocurrencyと株式との類似性、というのが見えてきます。そこで cryptocurrency の経済的なメリット、デメリット、と言う観点で話を進めていきましょう。

ICOになぜこれだけの注目が集まるの?

企業の資金調達の手法として、今までは株式や債券などを使ってきましたが、金融行政や過去からの商習慣などから資金調達できる範囲も通常は一つの国で、その国の規制にも続いた形に合わせる必要があり、結果としてだいたい調達資金の1%程度が手数料として銀行や証券会社、弁護士などに払わねばなりませんでしたし、いわゆる有価証券で上場していたりすると、四半期ごとに報告書を作成して提出する義務もついてまわります。しかも馬鹿高い監査を受ける必要すらあります。その労力たるやかなりのもので、おかげで上場廃止した方が本来的な株主や会社のためではないのか?という声が上がるのも当然です。

それに対して、もともと国の縛りのないcryptocurrencyならば、取引所にアクセスできる人ならば世界中だれでも、ということで、より幅の広い人たちからICOへの参加を求めることもできますし、何よりいわゆる有価証券ではないことから、定期的な報告もいらなければ会社の何か、ではないので会社の監査等に縛られることもありません。もちろん証券会社や銀行の関与も不要ですから、高い手数料を支払う必要もありません。

そして、流通市場も全世界的ですから、市場参加者もその国へのアクセスが可能な人たちだけ、という狭い市場ではないこと、そして、法定通貨に縛られていないから24時間365日常に動いている流動性の枯渇の心配のない投資対象、と言えちゃうんじゃないの、と信者さんたちは言うのでしょうね。多分。

で、本当に全てがバラ色なの?

どうなんでしょうね。個人的には流動性の問題は市場参加者が常に一定に存在する、と言う仮説は成立し得ないと考えていますから、何かのショックで流動性が枯渇してもおかしくはない、と言うのは多分地球上で一番流動性の高い取引と言われる為替の世界ですら起こると考えていますので。。。「絶対」はないのですから、そもそも。

そもそも、ICOをやりたい、という企業が自社のcryptocurrencyを作ってICOすればいい、という話なのでしょうけど、そのためにはcryptocurrencyの仕組みを作らねばならないでしょうし、Quoinex のような取引所で取り扱ってもらえるように条件を適合させる必要もあります。

となると、while-label 化された取引所での取り扱い実績のある cryptocurrencyを使って自社ブランドをつけて、とするのが早そうですが。。。それってあのcryptocurrencyもこの cryptocurrency も仕組みは一緒、なので資金調達したい会社のブランド・知名度に依存する、ことになるのかもしれません。となると流通量や取引量勝負?ほぼ日経225連動ETFで見た風景と変わらなくなってきますね。とすればcryptocurrency は一定数出てきては入れ替わって淘汰されていく、のでしょう。では淘汰されたcryptocurrency の末路ってどうなるのでしょうね。株で言うところの紙切れ?いや、ただの電子データになるのでしょう。。。

まぁ、そもそも売りっぱなしモデルですから、資金調達したい会社からすればICOしてあとは cryptocurrency の仕組み上の堅牢性と投資家と取引所にリスクだけ丸投げ、にすらなりかねないのですので、そう考えると、ICOで一番美味しい思いをするのは、ICOした人だけ、ですな。

あとはセカンダリー市場で常に市場リスクに晒され続けながらボールの受け渡しをし続けていきながら一喜一憂し、Ms. Watanabe たちのような高級バッグや高級ランチに興じたり、フェラーリを買う人もいれば、「電子データになっちゃった」と笑って次に行くか、はたまた金融系の監督官庁に「よくわからない取引に巻き込まれた」と泣きついて、と言う風景がcryptocurrency でも起こるのかもしれませんね、ってすでに起きてるか。。。

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