“The ARFP aims to reduce regulatory duplication by establishing a standardised set of requirements for fund operators, and benefit investors through broader and more diverse fund offerings while maintaining investor protection.”
元々は2010年のオーストラリア金融センターフォーラムでパスポート構想が推奨されて、それを受けて2013年のバリでのAPEC財務大臣間会議に於いてオーストラリア、ニュージーランド、韓国とシンガポールで同意した多国間構想の一つで、2016年にパスポートが機能することを目指していたそうな。その後タイとフィリピンもこの構想に参加を表明したのですが、2015年9月の多国間でのStatement of Understandings に署名したのは、オーストラリア、韓国、ニュージーランド、タイ、フィリピンと日本と言う顔ぶれ。シンガポールが抜けて日本が入ったと言う感じですね。その後2016年に協力覚書をオーストラリア、ニュージーランド、韓国と日本が署名してこのパスポート構想を押し進めてやっと昨年9月にARFPガイダンスのコンサルテーション(日本で言うところのパブコメ)が発表して意見を求めて、12月にパスポート申請手続きが公表された、と言うことなのです。
登録コードを持って今度は日本での販売のための当局の手続きをするのですが。。。これは外国投資信託の持ち込みの手続きとほとんどと言っていいほど何も変わっていません。この持ち込みの基準等を定める日本証券業協会の外国証券の取引に関する規則の第16条と第17条が公募外国籍投資信託の持ち込み基準を定めていますが、今回のARFPの動きを受けて改正されてARFP対応の条項は出来ていますが、それは、外国投信の持ち込みの際の諸条件の一部がホスト国で確認すること登録コードが与えられているということを踏まえて、省略されているように見えているだけで、結果としてパスポート参加国以外のケイマン諸島の Japan regulations の適用やルクセンブルクやアイルランドのUCITs適合なファンドを持ち込むことと基本的な設計等については変わりはないのです。
当然、(交付・請求)目論見書や運用報告書の義務がARFPで緩和されることもありません。
じゃあ、ARFPのメリットとは一体なんだと捉えればいいの?
日本に輸入するメリットってどうよ?
正直言えば、日本にだけ持ち込む上でARFPを使うことのメリットは、UCITSや Japan regulations適合のケイマン諸島のファンドとの差が見えない以上ないと言い切っていいと思います。例えば韓国の運用会社が韓国株のファンドを日本に持ち込むためにパスポート登録して外国籍投資信託として(最大手証券会社4社とプレスティア、三井住友銀行と数少ない)外国籍投資信託の販売インフラを持った国内の販売会社のどこかと組んで販売するための調整をするならば、どこかの国内投資信託のファンドオブファンズの運用エンジンとして既存のファンドに資金をフィードしてもらう方が販売会社の数も段違いに多いし、商品が国内で販売するための商習慣に合わせやすい、などのメリットを享受しやすい、というのは間違いありません。
会社が資金調達する、というと、通常は銀行などからの借り入れ、といういつか返さなければならない債務を負うか、会社の権利の一部を株式という形で渡す代わりに債務と異なって返さなくともいい資金を得るか、のどちらかです。IPO(Initial Public Offering)というのはその株式での資金調達の方法の一つで、その会社が初めて(initial)公開(Public)市場、すなわち株式市場にて取引できる環境を通じて、株式を提供する(Offering)ことをさします。なお、上場しない企業だって、第三者割当て、という形で第三者な投資家から株式譲渡を通じて株式での資金調達が可能です。