知ってそうで見落としがちな根本的な定義:証券投資信託とそうでない投資信託のお話

ついこの間の事。私が人事労務総務等の雑務一般とウェブマスターをお任せいただいている某社で、その社長と私との間でちょっとした議論が繰り広げられたのです。って、この会社の人たちは基本議論好きなので、ファンドの仕組みから投資戦略といった仕事のことから、ランチのメニューに書いてあった合鴨とマガモ、そして本鴨の定義とその違いまで、あれこれ調べては、あれこれ議論するので普段通り、ではあるのですが、そんな中、最近結論が平行線に終わった、というか私がどーしても納得行かないので平行線にした、というのが一つあります。それが、証券投資信託について、です。

まず、証券投資信託の何が問題か、というと

守秘義務が結構あるので、問題をざっくりいうとすると、外国籍のユニットトラストから外国籍 limited partnership (国内の投資事業有限責任組合でも同じですが)に投資すると、LP持分が日本の金融商品取引法上二項有価証券にあたるので、証券投資信託にならずその取扱上金融機関で面倒になる、というのが本当か、という話、なのです。

で、投資家としての著名な地位にある彼の名誉なぞ知らんので(笑)彼の発言だけかいつまむならば、

  • 証券投資信託の分類は国内籍の投資信託などの分類であり、外国籍投資信託は丸ごと証券投資信託として扱われる。
  • 従って、外国籍投資信託ならば、二項有価証券に投資したとしても一般的な投信の課税ルール(分配金もキャピタルゲインも20.315% の源泉徴収)が掛かる。その意味では厄介なことは起こらない。
  • この点は、外国籍投資信託の権威とされる某弁護士がそういっているのでなんら問題がない

で、当然ながら、それに反対する意見、すなわち、外国籍投資信託でも二項有価証券を総資産の50%以上持たせる(言い換えると、株や債券を50%未満しか持てない)と、証券投資信託にならない、そうすると最終的にその外国籍投資信託の投資家に厄介が起こる、ということで某著名な別の投資家さんとかが昔からこれを回避することをしていた、というのが私の意見。

個人的に、権威とかは税法/税務署や監督官庁の裁量の前には全く意味がない(ので、自分の意見だってその時々ではリスクが潜んでいるのも重々承知している)し、そもそも外国籍投資信託にそんな特例みたいなことをやると、ただでさえ無分配の長期投資商品を作り出すことで税務の先送りをいくらでも出来る、税務署的に厄介な商品と見られているのに、より悪さをする脱税と脱法の抜け穴、と見られるから許すはずがない、(それ以上に、悪いがそれ以上に外国籍投資信託の世界での実務や実情は自分が知ってるぞ、という自負もあるけどね)ということで、そこんところをこれを書いている法律等を引用しながらどちらがより現実的なのか(※ただし、税務ならびに金融当局のその時々の裁量判断が歪めるけどね)、検証してみようかな、と。

ちなみに、この問題に関係ないけど、別の厄介な問題が潜んでいるのでちょっとだけ余計なことを

ちなみに、仮に外国籍のLP持分(でも、ユニットトラストでも会社型でもファンドを経由して)を外国籍投資信託が直接保有しようが、仕組み債などの1項有価証券を経由して間接的に保有しようが、その外国籍のLP持分レベル(言い換えると、本来の海外での投資行為を行うファンド)で発生した源泉徴収についてその裏側にいる最終投資家のステータスに基づく還付を申告するから、全く違いがないので、そこにメリット・デメリットがある、という議論ではないことは同意しています。(というか、そういうものです)

昔、外国籍投資信託で外国籍の保険商品に投資すると、その保険商品で取り扱う某米国内の投資に付随する源泉徴収義務がなくなる、という言いっぷりで商品企画を持ち込んできた人がいたのですが、よくよく調べてみると、ただ単に源泉徴収義務を保険商品サイドで吸収します、だから事務的に楽になります、という程度の話だった、というのがありました。

まぁ、これ以外の事情もありこの話は結局商品化されなかったのですが、これも、結局のところ、保険商品ということで、保険会社が間に入っても税務上の違いが発生せずに源泉徴収が発生したので、事務をどこに任すか、程度の違いにしかならなかったわけですけど、根本的な話として、この辺り、実は投資先の国で源泉徴収された税金の還付がもし出来てしまうと、その取り扱いについては色々と悩ましい話があるのです。

実際、この還付って、例えばこの某米国を例にすると、源泉徴収されてから最短でも9ヶ月、長いと21ヶ月以上掛かるケース(x年の利益に対する源泉徴収が還付されるのがx+1年の9月以降、なのでx年1月の実現利益への課税の還付がどうしても21ヶ月掛かる、のです)が存在するのです。

これを、公募投資信託に当てはめようとすると、このx+1年の9月を迎える前にファンドの償還・清算を行うと、その後随分経って、忘れた頃に還付された資金が来るのでその受け皿すらない、という状態になったり(ま、その受託者がポケットに入れる、というのが実務でしょうけど)、還付前提なので未収利益のとして計上しても分配金でも買い戻し代わり金でもファンドが支払うキャッシュの回収が21ヶ月も先、となると、未払い収益ベースでのファンドの持分の買い戻しや分配金に対応しようにもキャッシュが不足して全額払えない可能性がありえたり(ま、分配金ならば保有するキャッシュを上限にすればいいだけですが、買い戻しですと、例えば全額買い戻しを受けると大変なことに。。。)、といって、実現ベースとして還付されたら利益として計上しようとすると、還付の原因になったx年の資産売却による投資回収の時にいた投資家がx+1年の還付前にファンドから出ていたら還付分を支払えない一方で投資回収後に新規で入った投資家に対して(その投資回収に関係ないのに)還付をファンドの利益の一部として支払うことになるので、投資家間で不公平では、という意見が出るのです。

ま、これはファンドに入った/出たタイミングに依存する以上仕方ないもの、とするのが現在の現実的な取扱なのですが。。。

証券投資信託に話を戻して、まず何が問題になるのか?

さて、この問題、何が問題か、というと、この投資信託に投資した投資家に関する税の取り扱いに最も影響がある、というのがポイントなのですが、いつもこの辺りの正確なところがうやむやだったので、今回、税法を紐解くことにしました。

で、まずわかること:分配金に違いは?

一般的に、(証券)投資信託に投資していると、税金がかかるのは信託からの分配に対する20% (2037年までなら、復興税の影響で 20.315%)が源泉徴収されて掛かる、売却時も譲渡収益の20%(2037年までなら、復興税の影響で 20.315%)の源泉徴収がされているけれども、確定申告をすることで申告分離課税か総合課税のどちらかも選択できる、 という認知がされていると思います。言い換えると、投資信託のポートフォリオの中で発生した個別の譲渡収益に対しては課税がなされず、投資家が投資信託の売却の時点まで譲渡収益が先送りにされている、という税の繰り延べ効果を享受することが出来る、というメリットがある、という説明が多分あちこちでされていると思います。

ちなみに、一般的な投資信託、というと、公社債投信か株式投信との二つに大きく分かれ、公社債投信はその中身が公社債しか入っていない、株式投信は、ポートフォリオの全部が公社債ではないものであればなんでも、要は、株と債券の混ぜ合わせのようなものから、純然たる株式100%のポートフォリオのものに至るまで、ある意味バラエティに富んだ商品、になります。となると、公社債投信の分配の原資は基本公社債の利金から発生したもの(実際には債券の償還差益/売却時と取得時の元本価格の利差も、ですが)なので、個人の所得税の観点で入ればこの投信の分配金は利子所得に該当し、株式投信については債券が入っていても株式という以上株式の配当が源泉になっていると考えて配当所得扱いをする、という違いがあります。

この違いは、というと、源泉徴収対象という意味では同じ、かつ2016年度からは損益通算の対象に入るので上場株や投資信託の損と相殺して源泉徴収を回収する、ということも同じように出来るので、違いが見えづらいのですが、唯一であり大きな違い、といえば、株式投信の分配金は配当所得(所得税法第24条)扱いなので、配当控除の適用があるけれども、公社債投信の分配金は利子所得(所得税法第23条)なので配当控除の適用がない、というところですが

そもそも配当控除ってなに?という人もいると思いますので解説するならば所得税法の第92条にある規定でして、

もともと株式の配当というのは、その会社の法人税を払った後の利益を処分するため、株式の配当に対する税金というのは、法人税と合わせて2回税金がかかっていることになります。そこで、その二重課税を回避すべく、そこそこ複雑な式を使って、その配当にかかる税金の控除をしてもらえる、というのが配当控除、というものです。

ちなみに、配当控除と損益通算はどちらかしか出来ないことになっています。とはいえ、そのような選択肢があるというのが株式投信の分配金のメリットとも言えるかもしれません。

で、この配当所得か、利子所得か、という定義には証券投資信託であるかどうか、の条件が入っておらず、むしろ

利子所得:… 公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託 [著者注:証券投資信託以外の投資信託のうち、信託財産として受け入れた金銭を公社債等(公社債、手形、指名金銭債権(指名債権であつて金銭の支払を目的とするものをいう。)その他の政令で定める資産をいう。] に対して運用するものとして政令で定めるもの)の収益の分配

所得税法第23条

配当所得:投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く。)… の分配 … に係る所得

なので、(特に個人)投資家の観点で見ると証券投資信託であるかどうかが問題ではないといえます。

当然、投資信託の元本相当に当たる部分が返還される時に課税することもありませんから、投資家にとって実は証券投資信託かどうかなんてそんなに問題はないのでは?と思ってしまいますね。

税務は、分配金への課税だけにあらず。なぜなら。。。

先ほど、配当控除の説明の中で、二重課税、という話が出ました。会社の株主から見ると、配当に所得税が掛かり、その前に会社の収益に対して法人税がかかっているのは二重課税だ、と。他方で、ずいぶん前のブログ記事に書いたのですが、ファンドってある意味「投資をする」という事業目的の法人、である、と。とすると、ファンドの器にだって法人税の課税が起こったっておかしくはないですよね。でも、ずっとファンドの器には課税されない、という前提で話をし続けてきました。なぜでしょう。

これもずいぶん前のブログで書いた話ですが、投資において一番のコストとは、運用報酬でなければ、ファンドアドミの報酬でもなく、超過収益に対してかかる税金、なのです。としたら、まずファンドの器が免税なものが投資するのにもっとも適している、から誰もが使う、ということなのです。だからこそ、ケイマン諸島をはじめとするオフショアの投資主体が免税(実際、投資主体を設立、維持するごとに登録免許を3,000ドル程度毎年払う程度だから年間の維持コストとしては受け入れやすい)であることで投資家や運用者を惹きつけるわけです。

で、同様に、国内の投資信託もどれもこれも信託なんだから免税、とつい思いますよね。でも、信託だから免税、というわけではないのです。実は。どういうことか、というと、法人税法第12条によると

信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなして、この法律の規定を適用する。ただし、集団投資信託、退職年金等信託、特定公益信託等又は法人課税信託の信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用については、この限りでない。

法人税法第12条

ということで、一般的には信託の受益者は信託財産に属する資産と負債を自分が直接保有しているのと同じ効果となり、また信託財産から発生した収益や費用は自分が直接得た収益・支払う費用と同じ取り扱いをせねばならない、のです。言い換えると、その年に発生した収益や費用はその年の自分の収益や費用として取り込まねばならない、というのが原則なのです。

あれ、これだとファンドの特徴の一つである、収益の先送り効果がない、ですよね。でも、これをよく読むと、注意があって「ただし」の後に、集団投資信託などの例外があるというのです。で、さらに読み進めると

法人が受託者となる集団投資信託、退職年金等信託又は特定公益信託等の信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用は、当該法人の各事業年度の所得の金額及び各連結事業年度の連結所得の金額の計算上、当該法人の資産及び負債並びに収益及び費用でないものとみなして、この法律の規定を適用する。

法人税法第12条第3項

ということで、受託者の会計でもない、とされています。実は、この二つのお陰で、私たちが一般に見る投資信託が信託勘定で資産を売買した結果の利益に対して課税がされていない、という法的根拠になっています。では、この適用対象となる集団投資信託、とは何か、というと。。。

集団投資信託 次に掲げる信託をいう。
イ 合同運用信託
ロ 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第三項に規定する投資信託(次に掲げるものに限る。)及び外国投資信託
(1) 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第四項に規定する証券投資信託
(2) その受託者(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第一項に規定する委託者指図型投資信託にあつては、委託者)による受益権の募集が、同条第八項に規定する公募により行われ、かつ、主として国内において行われるものとして政令で定めるもの
ハ 特定受益証券発行信託(信託法(平成十八年法律第百八号)第百八十五条第三項(受益証券の発行に関する信託行為の定め)に規定する受益証券発行信託のうち、次に掲げる要件の全てに該当するもの(イに掲げる信託及び次号ハに掲げる信託を除く。)をいう。)
(1) 信託事務の実施につき政令で定める要件に該当するものであることについて政令で定めるところにより税務署長の承認を受けた法人((1)において「承認受託者」という。)が引き受けたものであること(その計算期間開始の日の前日までに、当該承認受託者(当該受益証券発行信託の受託者に就任したことによりその信託事務の引継ぎを受けた承認受託者を含む。)がその承認を取り消された場合及び当該受益証券発行信託の受託者に承認受託者以外の者が就任した場合を除く。)。
(2) 各計算期間終了の時における未分配利益の額として政令で定めるところにより計算した金額のその時における元本の総額に対する割合((3)において「利益留保割合」という。)が政令で定める割合を超えない旨の信託行為における定めがあること。
(3) 各計算期間開始の時において、その時までに到来した利益留保割合の算定の時期として政令で定めるもののいずれにおいてもその算定された利益留保割合が(2)に規定する政令で定める割合を超えていないこと。
(4) その計算期間が一年を超えないこと。
(5) 受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)が存しない信託に該当したことがないこと。

法人税法第2条第29項

でして、これのお陰で証券投資信託だとこの税効果を受けることが出来る、というわけです。でも、これだと証券投資信託以外だとどうなるのかわからないですよね。では、証券投資信託に該当しないとどうなるかを見てみますと。。。

法人課税信託 次に掲げる信託(集団投資信託並びに第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託及び同項第二号に規定する特定公益信託等を除く。)をいう。
イ 受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託
ロ 第十二条第一項に規定する受益者(同条第二項の規定により同条第一項に規定する受益者とみなされる者を含む。)が存しない信託
ハ 法人(公共法人及び公益法人等を除く。)が委託者となる信託(信託財産に属する資産のみを信託するものを除く。)で、次に掲げる要件のいずれかに該当するもの
(1) 当該法人の事業の全部又は重要な一部(その譲渡につき当該法人の会社法(平成十七年法律第八十六号)第四百六十七条第一項(第一号又は第二号に係る部分に限る。)(事業譲渡等の承認等)の株主総会の決議(これに準ずるものを含む。)を要するものに限る。)を信託し、かつ、その信託の効力が生じた時において、当該法人の株主等が取得する受益権のその信託に係る全ての受益権に対する割合が百分の五十を超えるものとして政令で定めるものに該当することが見込まれていたこと(その信託財産に属する金銭以外の資産の種類がおおむね同一である場合として政令で定める場合を除く。)。
(2) その信託の効力が生じた時又はその存続期間(その信託行為において定められた存続期間をいう。(2)において同じ。)の定めの変更の効力が生じた時((2)において「効力発生時等」という。)において当該法人又は当該法人との間に政令で定める特殊の関係のある者((2)及び(3)において「特殊関係者」という。)が受託者であり、かつ、当該効力発生時等において当該効力発生時等以後のその存続期間が二十年を超えるものとされていたこと(当該法人又は当該法人の特殊関係者のいずれもがその受託者でなかつた場合において当該法人又は当該法人の特殊関係者がその受託者に就任することとなり、かつ、その就任の時においてその時以後のその存続期間が二十年を超えるものとされていたときを含むものとし、その信託財産の性質上その信託財産の管理又は処分に長期間を要する場合として政令で定める場合を除く。)。
(3) その信託の効力が生じた時において当該法人又は当該法人の特殊関係者をその受託者と、当該法人の特殊関係者をその受益者とし、かつ、その時において当該特殊関係者に対する収益の分配の割合の変更が可能である場合として政令で定める場合に該当したこと。
ニ 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第三項に規定する投資信託
ホ 資産の流動化に関する法律第二条第十三項に規定する特定目的信託

法人税法第2条第29項の2

ということで、投資信託だけど、集団投資信託ではない投資信託は法人課税信託に該当することが分かります。この時の課税方法はどうなるかというと

法人課税信託の受託者は、各法人課税信託の信託資産等(信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用をいう。以下この章において同じ。)及び固有資産等(法人課税信託の信託資産等以外の資産及び負債並びに収益及び費用をいう。次項において同じ。)ごとに、それぞれ別の者とみなして、この法律(第二条第二十九号の二(定義)、第四条(納税義務者)及び第十二条(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)並びに第六章(納税地)並びに第五編(罰則)を除く。以下この章において同じ。)の規定を適用する。

法人税法第4条の6

ということで、受託者レベル、というか信託勘定の収益と費用計算に基づく課税が行われてしまう、ということになるのです。だから、数年前あたりに、投資信託が投資先がない、もしくは投資資産の急落が予見できるので現金比率を上げた結果50%以上現金となったことで証券投資信託ではなくなるからということで、この課税問題でちょっとした騒ぎになったことがありました。

で、これらを今回の問題に当てはめるとどうなるかというと。。。

まず、証券投資信託でなくなると、法人課税信託になっちゃうから、信託レベルで毎年課税されてしまう、というのが問題、というのが本質、でした。

で、問題は、確かに、法人税法の定義を見る限り、投資対象が一項有価証券であろうが二項有価証券であろうとも外国籍投資信託といえば集団投資信託の一つですので、法人課税信託の対象外と言えるし、受益者会計ベースでの税務対象にならない、ということでなんとなく社長の言っていることがそれっぽく聞こえる、というのが個人的に問題(笑)でも、ちょっと根拠がちゃうやん、とは言いたいぞっ(って、どんだけ負けず嫌いやねん、自分)

ま、自分の言っていたことである、外国籍投資信託による二項有価証券の保有で問題が起こるか、というと、実際のところ外国籍信託のレベルには国税庁の税務追徴は及べない(海外だから!)から法人課税信託の取り扱いは出来ないし、仮に受益者会計を入れられてしまっても現実問題として外国籍投資信託に投資している国内数万人以上の受益者が毎年個別に英文の年次監査報告書を元に税務報告し、その内容を(こっちは株式でこっちはLP持分で、と)証明できて、国税庁サイドがそれらに個別対応して検証できるか、という実務が待ち構えているならば外国籍投資信託は丸っと有価証券でござい(その代わり、国内信託なら国税の代わりにこの辺りの判断をして、必要に応じて税務申告を正しくさせる圧力をかけられるからする、というかしているという前提で税務申告を受ける)とするのが現実的なのかもしれません。

ということで、これって案外商品設計の上で大事な整理だから、公表したらまずかったかな?ま、調べて整理すれば誰でもわかることだからいいか。しかも、誰もこんな風には書いてないけどね(笑)

ちなみに、法人課税信託であってもいくつかの条件を満たすと「課税額を減らすことが出来る」のは、J-REIT などをみているとわかるのですが、これはどこをみたら出てくるでしょう。法人税法ではないんですよねー

ほんと、税法って面倒に作ってありますよねぇ。。。

恒久的施設の定義等の変更がありました、って。。。?

このところ、みやたべろぐばかりアップしているので、たまには真面目なネタも。。。

国税局というところはご丁寧に色々な刊行物を作成しては登録されているオフィスの所在地に郵送してくれるのですが、そのお仕事の性質上専ら「税金」の話なので微妙に複雑、というかあまり読みたくないような話ばかりなので、どうしても封すら切るのをついぞ躊躇ってしまいます。

実はちゃんと読んでおかないと行けなかった税務署からのお知らせ

とはいうものの、この週末に他にも溜まったクレジットカード会社の月刊誌などを読んで廃品回収に回さねば、とざっと目を通したのが「源泉所得税の改正のあらまし」。ざっとのつもりが案外引っかかるものがあれこれありました。

例えば、4ページ目にある、2020年以降の適用ですが、給与所得控除の10万円の減額、ということはその分の課税所得が増えることで増税効果が発生する一方で、基礎控除の増額が合計所得が年間2400万円以下にだけ適用されて、前述の給与控除の減額と合わせて事実上何も変化がないものの、合計所得が年間2400万円を超えると基礎控除すら減額される、なんて知ってました?これって、給与所得だけの人たちにはほぼ関係ないけど、たとえば不動産所得だけの人とかにはちょっとしたメリット、ですよね。しかも給与所得で年収2400万を超える人って2016年の統計になるものの、この頃で。。。。2400万円という区切りがないのでざっくりした計算をするならば3000万円以上の人で247,970人いて、2000万から3000万の人で195,800人だから半分としても345,870人もいることになります。といっても、給与所得のある人が9,789,362人ですから全体の3.5%程度の人が対象になってくる、のです。それって。。。マイノリティへのペナルティにしか見えないですが。。。

実はかなりやばいルール変更も書いてあった

さて本題。この3ページ目にこっそり入っていたのが表題にもある「恒久的施設(PE)」の定義等の見直し。実はかなり海外から国内への投資を呼び込みたいプライベート投資にとってまずい変更になり得る変更なのです。

恒久的施設って?

まず恒久的施設ですが、ご存知ない方にざっくりとした説明をするならば。。。日本に住んで生活し、活動する私たちにとって、前述の給与所得も不動産を買って売却した時の差額の利益も、株や債券から発生する分配金や利息、これらの取得と売却の差額益、果てはせどりのごとく安く仕入れて売却したものならその差額の利益まで、国税局にその一部を税金として納めなければいけません。ですが、これが海外に住んで生活する人が同じことをやることは、手間はかかるものの出来ますが、その場合には国内に納税する際の住所がないことから日本の国税局からは課税されないのです。

当然ですが、その場合、その住んでいる国で課税されることになるので、ファンドならば有価証券の売却益に対して課税しないケイマン諸島のような所から証券取引を行って利益をできるだけ投資家に還元したい、と考えますし、物販を考えるならば、オンラインで受注を受けて、法人税の安い国に拠点を置いて発送をそこから行う、と考え始めるのです。これが恒久的施設と呼ばれる事業の本拠地、という考え方です。

で、この考え方ってこれだけ簡単な話じゃないの?

本来ならばこれくらいシンプルなはず、だったのですが、色々と考える人がいたり、会社などの都合で色々なケースというのが発生し始めます。例えば、先ほどのオンラインで複数の国の受注を受けよう、と考えた時に、オンラインで受け身に受注するのではなかなか売り上げが上がらないとなれば、海外から営業をかけることは難しいので現地に営業する誰かが欲しくなります。そうなると、国内に営業拠点を置くか、国内に営業の強いビジネスパートナーを置いて営業を任せるか、のどちらかを考えることになります。

後者のビジネスパートナーならば、他のビジネスをやりながら自分たちの商品の売り込みをする、というところで事業展開についてコントロールがある意味自分たちの思うように行かないものの、他方で契約書一枚の関係に過ぎないので国内に拠点があると言われる筋合いもなく今まで通り国内から上がった売り上げに対して課税はされないという税務的なメリットは残ります。

でも、やっぱり本腰で売りたい、ということで国内に資本を入れた子会社を作って営業をさせると先ほどのようなビジネスパートナーとの関係、のような話にはなりません。自分の所の物だけを売るためだけの会社なのですから、国内で在庫を抱えて売っている人と表向きは変わりはなく、仕入れと在庫管理と発送を国外に置いているからある意味国内から利益を隠しているようにも見えるのです。となると、これは実質には国内で活動しているのと同じなのだから国内の売り上げについては課税すべきでは、ということになり、その際に、この国内子会社はこの売り上げのスキームにおいて恒久的施設を国内に有している、なんていう話になるのです。子会社であっても事業の実質的な本拠がどこなのか、というのがポイントになるのです。

で、これを書きながら、私ごとながら、以前やっていたジャージー島の金融サービス業の会社の日本でのビジネスのことがちょうどわかりやすい話かな、とも思ったので少し触れるならば、この場合は海外(ジャージー島やバーミューダ)で行われる金融サービス業、ファンド・アドミ業務やファンドの管理会社業務についてはその事業の性質上などから日本国内に在庫、というかこの場合はサービス提供拠点を置くことは出来ませんが、利用者は国内にいますのでそのサービスの認知から利用のためのアイデア提供などを国内子会社を通じて行いました。しかも、イヤラシイことに(笑)その説明する相手というのが投資銀行や証券会社、投信委託会社、といったところであ流にも関わらず、でもそのサービスの対価を払うのは最終的にファンドに投資した投資家のみなさんが、しかもファンドの費用という形で間接的に、ということで、この国内子会社(というか、以前なら私)は前述のような「ものを売っている」のか、と言われると売っているのかもしれないが、性質上国内に機能を持って同等のことを行うかのごとく課税する、ということはなかなかしづらいものなのである一定のルールを入れることで恒久的施設を有しないと認知される代わりに代替的な形を通じて納税を行うことによって、税務当局とはうまくやっていたのです(私がやっていた頃はね。)。

で、その当時よく言われたことで、「このファンドの投資判断を東京でやってよ」と言われたのですが全部お断りしていました。サービスクオリティ悪くね?とか言われていたようですが、これを東京で(当時なら私が)やってしまうと、ファンドの判断が東京で行われている、ということで外国籍投資信託の管理会社については投信委託会社を脱法で行うことになると認知されるリスクが出るのが理由です。税務とはちょっと異なる話ではありますが、ここも投資家のみなさんにご迷惑をかけないという意味では大事な話でしたので頑固に譲らずにおりました。

この辺を一通りわかっている人、最近を見ていると少なくなったようなんでちょっと書いてみました。

で、ここで出てくる主体的な行動と課税の関係について話が及ぶのですが。。。

さて、今回の話の核心にだんだん入ってくるのですが、前述のケースからわかるように、海外から国内に営利行為を行って収益を上げる、というところで国内の拠点なりビジネスパートナーがどれだけその事業に関与しているかで国内に恒久的施設を有するという議論になる、というのが見えてきた(?)ところで、今回やばいなぁ、と思っているところに入っていこうかと思います。

なお、今回の変更の背景というのが、BEPS (Base Erosion and Profit Shifting – 税源浸食と利益移転)という世界的な国際税務取扱の取り決めに基づく恒久的施設の定義の国際的な統一に動いたことにある、というのをまず話の前提にあること、したがって著者のメインにある金融だけが狙い撃ちで行われている話ではない、のを分かった上であえてあれこれ書いていることをまずご理解いただこうかと思います(笑)

ちょっと歴史のお勉強を

税務の観点で国内への海外からの投資の議論が盛んだったのは2007年から2008年の投資事業有限責任組合法の改正の時でした。当時を思い出すとユニットトラストがメインだったのでLPS法によるこの恒久的施設の議論は影響ないか、と思って眺めていましたが、考えてみればユニットトラストの場合は税務的な整理が確立しているので変更しようがなかったのです。前述のような国内拠点での判断が行われて投資信託の脱法っぽいものが行われたとしてもそれでも投資信託と同等の器での投資である以上税務上の課税ポイントはケイマン諸島では発生することはなく、ユニットトラストの持分の売却時に投資家に対して行う、ことに変わりはなかったのですから。

さて、その当時、LPS法とその周辺、特にこの法律の主だったユーザーであるプライベート・エクイティやベンチャーキャピタルの運用者と投資家たち、そして、それらの人たちによる投資資金を呼び込みたいと考えていた経済産業省、の注目していたことは海外からの投資が税務的な理由で激減していたことにあります。それは何かというと、Shinsei Tax として悪名が知られていた国内企業を海外で保有し、海外で売却したとしてもその譲渡利益にに対して日本として源泉徴収が行える、というものです。なぜ Shinsei Tax と呼ばれるかというと、昔、とある銀行がありまして、諸般の事情で破綻して国有化した際に海外のプライベートエクイティファンドがその株を取得して腕利きな経営陣等を派遣して企業再生を果たす、といった時に、国内の議員さんたちがそんな海外のファンドが血税を使った銀行の株を海外で売却したらその利益は海外に止まってしまって納税者に還元されないではないか、と前述の税法改正をしたのです。その銀行、当時は日本長期信用銀行、今では新生銀行、として知られるところですのでかかる課税のきっかけになったことから、そう呼ばれていたのですが。。。若い人は知らないだろうなぁ(笑)

独立代理人の要件

で、この改正を行って海外からの投資家に対して安心感を与えるように行ったと同時に当時のこの恒久的施設の定義、特に独立代理人の定義を行うことで、海外ファンドが国内への投資を行うにあたっての国内での活動拠点のガイドラインを定めたのです。その際に定めた独立代理人の要件として

  1. 法的独立性: 代理人が代理人として行動する上で十分な裁量が与えられているか?
  2. 経済的独立性: 代理人がその収入を全面的に一人の本人に依存していないか?
  3. 通常業務性: 代理人の行為が慣習的に行われているものであるか?

をあげていました。これは大和総研さんの当時の資料がよくまとまっていますので、深く調べる際いはご参考に。ここで一番のポイントなのが、法的独立性で、実は裁量権が与えられていれば、本人との資本関係が100%であっても、独立性を測るにあたっては無関係であったのです。ということで、2008年以降のプライベートエクイティやベンチャーキャピタル投資、そして不動産投資の一部で海外からの投資資金を受けるファンドのストラクチャーを作る際にはこの独立代理人の要件を満たすように誰もが構築してきたのです。ええ、国内子会社と海外親会社との資本関係が100%であっても大丈夫だ、と信じて。。。

で、ここで独立代理人の定義が変わる、というのです!まさに、資本関係は関係ないよ、といっていたのが、50%を超えると独立代理人として見做されなくなる、というわけです。

やっと、事の問題が説明できました。ま、いつもなら10,000字を超えたところで問題提起しているから、今回はまだ早い方ですね(笑)

で、これってどうなるの?

当局と業界団体との事前の意見交換等も実は昨年末に行われていたのですが、実際のところ当局(といっても、国税庁ではなく金融庁なのですが)サイドとしてはこれの影響ってないんじゃないの、くらいの感覚のようでして、特段金融関係のための手当もされる事なく、年末の税務大綱に上がり、3月末に国会を通過して今日に至っているので、ただただ、この新しいルールに年明けに向けて対応していかねばならない、のです。やらないと、少なくとも海外投資家を抱えるケイマン諸島のファンドを使った投資を通じての投資資産の売却益に対して総合課税がかかってくること予見されます(参照リンクの4-5ページ目)。

とはいえ、先日某国内大手プライベートエクイティ投資会社さんの(比較的事務寄りの)パートナーさんと話をした際にもご存知なかったという反応があったので案外認知されていない事のようにも思えているのです(なので記事にしているのですが。。。)。

で、出来ることって?

スキームの見直し、ではあるのですが、一番影響があるのが独立代理人の定義、ですのでその変更点である資本関係と仕事の割合について見直すべき、という意見が出てくるのが想定されます。となると、国内拠点とファンドとの間の資本関係か、国内拠点の請け負っている仕事のうちファンドなどの資本関係の大きいところからの仕事の割合か、どちらをいじりやすいかと言えば。。。仕事の割合ってそう簡単に外部の仕事がくるはずもないですよね(苦笑)といって、資本関係をいじるべく外部の株主をよびこめるのか、というと。。。どうなのでしょう。

とは言え、規制対応はスポーツ同様事業でも当然に求められることですので、やらねば、なのですよねぇ。。。とりあえず、まずは担当の税理士先生とご相談でしょうね(って、この言葉は誰に向けられているのやら。。。sigh)

[投資のコストと効果] iDeCoのメリットは確定申告で得るあれだけではなくて

以前書かせていただいた、30代から40代までの金融リテラシーを強化しよう、というメディアでオフショアの話というのはなかなか目立たなかったのですが、目立つコンテンツはどうしても、「ふるさと納税制度」、前回の「NISA」といった個人の所得税減税というお得感に訴求するような何か、というものばかりだったようです。その中で、同じように目立ったコンテンツとして、やはり昨年あたりから銀行さんが力を入れてきたのが、今回取り上げる iDeCoなのですが、某りそな銀行さんの店舗に貼られた某カタカナ五文字の喜劇俳優さん以外のポスターで目を引くのはどうしても、減税効果のこと。しかし、iDeCoはそれだけのためにやるべきことなのでしょうか。。。

そもそもiDeCoってなに?

iDeCoとか言って、金融系商品にありがちなアルファベットな言葉ですが、じゃあ、これが何の略かといえば。。。 individual type Defined Contribution Plan – 個人型確定拠出年金の太文字部分だけ取ってキャッチーな言葉にしようとしたんだろうなぁ、ということが透けて見える感じ、ですね。でも、年金、という言葉が出てきちゃったので、どうやら適当に作られて流行った商品ではなさそうなことだけは見えてきました。むしろ年金ですので国の大掛かりな仕掛けが背景にありそうな。

というか、年金って何?

そもそも、この国の年金の仕掛けってこの瞬間、どこまで理解してますでしょう。知ってるよ、という人もいるのは分かるものの、大抵は年金手帳を持ってるけど、給料から天引きされてるけど、で止まる可能性が高いでしょうから、その辺りを基礎から丁寧に始めてみようと思います。

国民年金 – 実は誰もが入っている年金で、その筋ではいわゆる一階部分

(国籍問わず)日本に住み、働く人たちは法律に基づき、国民年金に入らねばならない、という国民年金法、という法律がありましてこれに基づいて、この国に住んで働いている20才以上60才未満の人は大抵この国民年金に入っています。

通常、「国民年金というと自営業の人たちが入るもの、会社勤めは厚生年金」、と思いがちですが、厚生年金の加入は国民年金法では第2号被保険者と位置付けられていまして、厚生年金の保険料として納められたものの一部が基礎年金拠出金という形で国民年金に拠出されて、自営業の人たちなどの第1号被保険者からの保険料とともに、世界最大の年金運用者として知られ(世界中の運用会社にちやほやされるから運用報酬を渋り倒すことでも知られ)る年金積立金管理運用独立行政法人(GPIFの方が分かる人の方がきっと読者では多いでしょうね(笑))運用され、年金受給者への年金としての支払いに回ったりする、という流れになっています。

ちなみに、いわゆる会社勤めの方の配偶者で認定基準年間所得が130万円未満の方は第3号被保険者ということで厚生年金の手続きの時に届出することで加入しますが、この時の保険料はただ。だけど、この第3号被保険者の分も厚生年金で基礎年金拠出金を拠出する時に負担していることになっている、のですから、実は稼いでいる人の配偶者でいることというのは年金の観点で言えば費用負担ゼロで年金をもらえるという非常に美味しいと言えますし、これって実は働く女性の数と労働時間を年額所得130万円で抑制している原因のひとつだということに政府は直視すべき事実だと思うのですがね。(関係者の方、見てますかー?)

厚生年金とか共済組合とか国民年金基金とか – 国民年金の上にあるその筋で言う所の二階建て部分とは

さて、一階部分の次は二階部分の話。第2号被保険者という勤め人な人たちが年金に入ると言えば思いつくのが厚生年金ですが、前述の通り、実はこれは国民年金に付け加えて入っている年金制度、なのですね。ちなみに、勤め人のうち、私企業に働く人は厚生年金法の第1号被保険者に当たって、第2号被保険者な国家公務員な人たちだと国家公務員共済組合や国家公務員共済連合会(後者はアルファベット三文字でKKRKokka-koumuin Kyosai Rengokai -になるので、日本中のあちこちにこれ関係の宿泊施設とか見られますが、プライベート・エクイティ・ファンドの大手、KKRKohlberg Kravis Roberts – とは関係ない、のは業界初心者のネタですな(笑))に、第3号被保険者な地方公務員な人たちだと、地方公務員共済組合や、地方公務員共済組合連合会、全国市町村職員共済組合連合会に、第4号被保険者な私学の先生方には日本私立学校振興・共済事業団に所属する、けどこれらは全部2015年10月以降、第1号とその他が一元化されたことでこうやって一纏めに厚生年金、と説明できるようになったそうな。ちなみに、そういう資金ですので、運用は。。。またGPIFさんが国民年金と一括して、とはならず、第2号以降はそれぞれの組織が運用して、第1号が国民年金と一緒にGPIFさんが運用しているそうな。そりゃ、GPIFの運用資産が大きくなる訳だ。。。

では企業に勤めていない国民年金の第1号被保険者な方に対する2階部分は何になるか、というと、国民年金基金というのがありまして、もし加入手続きをしたことのある人ならば分かるのですが、国民年金に上乗せしませんか、という資料を渡されたことがあるかもしれません。あれです。あ、ちなみに、国民年金の保険料に毎月400円上乗せして払ったら、「200円 x 付加保険料納付月」の額が年金に上乗せされますよ、という話がありますが、あれは国民年金の保険料の話なので、国民年金基金とは別のお話です。しかし。。。日本年金機構のページで説明がありますが、

これを払えば2年で元が取れますよ

とオススメするなんて。。。(汗)

ちなみに。。。第3号被保険者な勤め人の配偶者の皆さんにはこの2階建て部分はございません。そもそも一階部分がただなんだしさ、それ以上に何をタダで期待するのよ(ベーっだ)

厚生年金基金とか、企業年金とか、年金払い退職給付とか、いわゆるその筋のいう所の三階部分

さて、年金制度ってまだまだあって、国民年金に国民年金基金という上乗せがあるように、厚生年金には厚生年金基金という屋上屋のような仕組みがあったりしました。その昔、厚生年金の運用を企業が代行して行う代わりに企業側で独自の上乗せをします、という制度を厚生年金基金ということで1966年あたりから導入されていました。

こいつは勤め人ならば誰にでもあるもの、ではなく、勤めた企業の福利厚生の制度で設定されている企業に勤めるとある、という類のものです。しかも、これがあるときは、一般的にその保険料は企業が負担して雇用される被保険者からの拠出はない、というなんと太っ腹!まさに企業が従業員の退職後の豊かな生活のために準備してくれるとても素敵な制度、ですよねぇ。。

というと、とてもいい話なのですが、当然、これって企業側からすればコスト負担以外の何者でもない話ですよね。しかも、これをその昔は勤務年数や退職時の給与のようなある程度決まった要素で計算することで支給額が決まってしまう仕組みしかなかったものの、90年代に入るまでは株もインフレも自然に上昇するから給付するよりもそんな基金の資金は増えて問題はなかったのです。が、インフレもなければ株や債券の値動きがここまでぶれる世の中においては将来の支払いを約束することは、最悪企業からの追加持ち出しも求められて結果企業すら倒れるリスクも負いかねない、というところまできた基金が増えてしまいました。

そんなある日、リーマンショックも終わったところで、これまたアルファベット3文字で始まるヘッジファンド運用で儲けさせまっせと、詐欺を働いたAIJ投資顧問、という連中がその口車にまんまと乗ったこういった企業系の年金の資金を使い込んで消失させて(ついでに独立系運用会社の信用も失墜させて、メディアにオフショアファンドの信用に泥を塗らせて)しまったことから、かなり損害が広がり、2014年からそんなことを企業に任せてはいけない(じゃあ、国がやればいいの?という疑問はさておき)、ということで、厚生年金基金の新規設立は認めなくなり、また財務内容が悪い所は特に(五年以内に)代行返上して解散しなさい、という方針になったのです。

他方で、2002年に出来た確定給付型企業年金制度を利用して厚生年金の代行をしないけど退職時の条件で年金の支給額が決まる仕組みで3階部分だけの提供をする、という制度が出来ていてこれを利用したり、2001年に出来た、今回のiDeCoを含めた最終的な給付額は運用方法を選択した被保険者のリスクで行う確定拠出型年金制度の企業型(なので掛け金は企業持ち – マッチング拠出とかもあるけどここでは割愛ね)を利用するところが出てきたり、と、実はここには(3階を提供しないからiDeCoやっていいよ、という選択肢を含めて)色々なケースが存在します。

ちなみに、国家公務員など人たちにも同じような3階部分はありまして、特に2015年の一元化のあとでは、年金払い退職給付と一元化による制度移行の間を繋げるための「職域部分」と称するものがあります。これも解説はパスね。長くなるから。

さて、個人事業主などの第一号被保険者の人たちへの3階部分は、2階部分のない第3号被保険者の人たち同様に。。。実はありません、でした。が、2017年1月からiDeCoが一部の例外(制度の重複ということを避けるため、企業型の確定拠出年金に加入している時に、企業型年金規約がiDeCoに加入することを許容していない場合のみ加入不可。)を除いて国民のうち20才以上60才未満であれば誰でも加入できるようになったことで、実は、この3階部分としての iDeCoの守備範囲は広範囲なのです。

で、なんでこんな基本を説明したかというと。。。

これらの年金制度って、考えて見たら、一階部分も二階部分も支払っている保険料はある程度一定(毎年微妙に変わりますけど)ですが、支払われる年金も納付月数などからある程度計算できる一定の額、にお約束されています。いわゆる確定給付年金の仕掛けを利用していますが、前述の通り、年金の運用が上手でなかったり、AIJ事件のような運用以前の問題とはいえ給付金の財源を毀損するようなことがあれば、期待している将来の給付が実現できなくなるか、財源の元となる企業や国の財源に手をつけてしまい、根っこから破綻しかねないリスクがある、のです。また、少子化による保険料の減少と高齢化による年金給付額の増加、という根本的なキャッシュフローの前提の変化に対応していないのも明白ですから。。。まじヤバイんすよ(笑)

となると、個人で年金を守る方法ってこの制度上は三階部分で自分でリスクをとる、か、この年金制度の外で巨額の富を蓄えるか、のいずれかもしくはその両方のようです。とはいえ、年金制度の外で富を蓄積する、というのは、いくら税制上のメリットが期待できる生命保険商品を使ったりしたところですら、結局利益に対して個人の所得税なり法人化した企業に法人税がかかるわけですから運用益の再投資の効果が税金で取られる分だけ悪くなるのが単純に予想できます。としたら、年金制度の中ならば税金はかかりませんから、再投資という時間と利回りのマジックを最大限に利用した富の蓄積を目指せそうな気がしますよね。

このことを理解するにも、この屋上屋な年金制度をまず知っておくべきだと思ったわけです。いや、文字数稼ぎじゃないですから(笑)

で、確定拠出年金ってどういうこと?

ということで、iDeCoの説明にやっと入ります(苦笑)が、まず確定拠出年金の仕組みでも。キャッシュフロー的には、企業型なら企業が、個人型(要はiDeCo)なら加入する個人が、毎月一定の掛け金をこの年金制度に拠出していくのですが、問題は、この拠出したものをどう運用するか、なのです。確定拠出年金の場合は、運用先として複数の選択肢が提示されるのでその中からどれで運用するかを選択して行くことになります。例えば、iDeCo の場合、某りそな銀行だと選択肢として

  • りそな据置定期預金『フリーポケット401k』
  • 「りそなDC信託のチカラ ターゲットイヤー20X0年」など資産分散型投資信託が11本
  • 日本債券型投資信託が4本
  • 日本株式型投資信託が8本
  • 外国債券型投資信託が3本
  • 外国株式型投資信託が4本
  • 国内不動産(リート)が1本
  • 外国不動産(リート指数連動型投資信託)が1本

と、元本確保な定期預金を除くと実は確定拠出型年金向けに設定された投資信託に投資することになるのです。これが、もし日本生命にiDeCoの口座を作ったならば、その投資可能となる商品は

  • 「ニッセイ利率保証年金(10年保証プラス/日々設定)」
  • (なぜか)りそな据置定期預金『フリーポケット401k』

のような元本確保型商品と

  • 株式と債券の比率一定運用型投資信託3本
  • バランス リスクコントロール型投資信託1本
  • 国内/海外株式/債券指数連動投資信託4本
  • 国内株式アクティブ型投資信託3本
  • 海外株式アクティブ型投資信託2本
  • 海外債券アクティブ型投資信託1本
  • 新興国指数型投資信託2本
  • リート指数型投資信託2本

と、いう品揃えだったります。いわば、iDeCoの口座を開ける先である運営管理機関によりその商品の揃えが毎月の掛け金の拠出先の選択肢になり、その中で選んだ投資商品のリターン(それが定期預金だったり、その同等のリターンの生保であっても、もしくはリスクを取りにいっても)がiDeCoの年金積立期間の終了時期であるあなたの60才になった時の受け取り原資になるのです。

さて、運営管理機関によって商品の選択肢が変わるので、この運営管理機関を選ぶか、その取り扱い商品を選ぶか、と言った話になると思いますが、そのあたりの話は後回しにして、いつものようにキャッシュフロー分析をやってみたいと思います。ここから先は、確定拠出年金もiDeCoに話を絞っていこうと思います。

0. iDeCoの運営管理機関を選んで口座を開ける

何を始めるにもまずは口座を開く必要があります。今では iDeCoを提供する金融機関(運営管理機関、とこの場合は呼ばれます)が多くあります。前述のように商品の品揃えは機関ごとに異なりますし、手数料も、国民年金基金連合会への口座開設時の手数料の2,777円や月々の国民年金基金連合会への月次手数料の103円と信託銀行への月次手数料の64円の合計167円を除くと機関ごとに0円(楽天証券やSBI証券、大和証券)から数百円(りそなだと口座が給与振込口座ならば262円かそうでなければ316円、三井住友銀行やSMBC日興で一律255円、野村証券で資産額に応じて203円から283円まで、みずほ銀行で一定条件で0円もしくは255円、など)かなり開きが出てきます。

なお、NISAと同じく、口座を開けられる運営管理機関は一つだけです。複数を開けることが出来ません。とはいえ、管理機関の移動は可能ですが国民年金基金連合会への2,777円の支払いが発生します。その際は買い積み立てた投資信託などを持って移動出来るはず、ですが、移った先の運営管理機関が(系列の都合が主で)取り扱えない可能性が極めて高いので、売却して資金の形で移動することになります。

1. 月々の掛け金を決める

手数料が運用管理機関、ひいてはiDeCoで運用する商品の選択肢を決めるという気はサラサラないものの、月々の掛け金との兼ね合いを考えると、どうしても前述の手数料が投資効率に影響するというのは隠せない事実、でもあります。

さて、この掛け金、この後に述べる税金の効果を考えると、長期投資をしたいポケットだとか、毎月積み立てていくというのが投資を始めたばかりでは投資の効果を実感できない、とかを鑑みて出来るだけ大きく「張りたい」という気持ちになってしまうのですが、残念ながら加入している年金制度(年金制度の一階部分のカテゴリー)で上限額が決まってしまいます。まとめるとこんな感じ。

カテゴリー掛け金の上限額

自営業者等(第1号被保険者)月6万8000円(年81万6000円)(国民年金基金と合算した額として)
企業年金を導入していない企業に勤める会社員(第2号被保険者)月2万3000円(年27万6000円)
既に企業型DCに加入している会社員(第2号被保険者)月2万円(年24万円)
既に確定給付企業年金に加入している会社員(第2号被保険者)月1万2000円(年14万4000円)
公務員(第2号被保険者)月1万2000円(年14万4000円)
いわゆる専業主婦(第3号被保険者)月2万3000円(年27万6000円)

前述を思い出すと見えてきますが、第1号被保険者には国民年金基金以外の2階部分がありませんから、そこを補うためにiDeCoを、という意図があり、同じように3階部分のない企業年金のない企業勤めの会社員にも3階部分代わりを、DCなりDBなりに入っている人や3階もしっかりしている公務員には掛け金を比較的少なめに、ただのりしている(ベーっだ)専業主婦はもともとフリーランチで1階だけはあるので2階がわりに、という意図が見えてきますね。あ、最低掛け金額は月5,000円です。

と思うと、掛け金がいくらであってもそれに追加して月々167円と運用管理機関への手数料が乗っかるということは。。。最低額の5,000円としても3%以上、一般的な20,000円ならば 0.8%、目一杯の68,000円としても0.2% 以上の手数料がかかる(ということはその分パフォーマンスが最初から押し下げられている)ことになります。となると、手数料を払っても、最低でも年率1-3%のリターンを確実に出せる商品に積み立てていかないと手数料負けする(定期預金なんてもってのほか)、ことにな流のが見えてきます。まぁ、この次の税効果を考えるとそうでもない、のですが。。。いずれにせよ、この辺りを考えて運用管理機関の商品リストと手数料率との組み合わせを選択していくことになります。

2. 期中のキャッシュフローと税金

さて、iDeCo における投資期間、すなわち60才になる日まで、の税金の考え方は次のようになります。お待たせしました。みなさんお待ちかねの確定申告のお話ですよ。

iDeCo のために支払った掛け金と手数料(というか、手数料こみの掛け金、と言った方がいいですね)は全額所得控除の対象になります。どういうことかというと、企業年金等のない「協会けんぽ」加入な会社に務める年収が額面で600万円の東京在住の独り者の30代の男性(女性でもいいのですが)、という前提(面倒なのでボーナスなしの12ヶ月均等払い、って外資系みたい(笑))にします。

まず、600万円の額面の給与に対して、給与所得控除が 600万 x 20% + 54万円 = 174万円、となるので所得税を考える時の給与所得が 600 – 174 = 426万円、となります。

次に健康保険と厚生年金がそれぞれ(介護保険が不要だから:今の平成30年前提で)毎月のお給料が50万円なので、個人負担としては24,750.0円、45,750円ですので月額70,500円、年額で846,000円になります。これも丸々所得控除扱いです。

計算が面倒なので、生命保険も地震保険も入っていない、とすると、あとは基礎控除の38万円が控除されて。。。 426 – 84.6 – 38 = 303.4万円の課税所得を得たことになり、これに対する所得税は国税庁のサイトによれば (303.4 x 10%)万円 – 9.75万円 = 20.59万円、になります。

もしここで、月2万、年間24万円でiDeCo でやると、[(303.4 – 24) x 10% 万円 – 9.75万円] = 18.19万円となり2.4万円 (iDeCoの24万円の10%分)の減税効果があった、のです。ちなみに、これ、りそな銀行さんが広告で使う数値の根拠になったと思われる日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社さんの作ったシミュレーションだと 4.8万円になるそうですが、これは多分所得税率が20%適用だった計算なので、多分健康保険と厚生年金を低く見積もったからじゃないかな、と思います。

これが、もし同じ条件で1,100万円の給与だとしたら、給与所得控除が上限を超えているので 220万となり、給与所得としては 880万円になりまる。

次に健康保険と厚生年金が、月給で91.6万円なので保険料は46,035円と56,730円の月額102,765円。年額にして1,233,180円です。また、単純な計算で基礎控除の38万円が控除適用になって、880 – 123 – 38 = ざっくり719万円です。

この場合、税金はといえば、課税所得が695万円を超えていますので (719 x 23%)万円 – 63.6万円 = 101.77万円、となります。ですが、同じように月2万、年間24万円でiDeCo でやると、課税所得が 719 – 24 = 695万円となり、税率が 20%に下がります(控除額も減りますが。。。)ので [(719 – 24) x 20% 万円 – 42.75万円] = 96.25 万円となり5.52 万円の減税効果が出てくるのです。これはiDeCoに拠出した24万円の23%に当たります。これが最終的な課税率出会った20%を超えているのは税率区分を一つ下に押し下げる効果も手伝っているから、なのです。まぁ、このようなケースはちょっと稀ですが、とはいえ、所得税率の高い人ほど毎年の所得税を押し下げる効果が高いことがわかるかと思います。

という事で、もし毎年の所得が一定と仮定すると、所得税率が10%の人ならば10年分の税還付で1年分の投資が可能になります。運用とは別に10%の再投資する資金ができる、とも言えますよね。となると、所得税率が20%の人ならば5年分の税還付で1年の投資ですから。。。ま、そんな再投資、と思うよりも、運用管理機関に支払った手数料程度は回収している、と思う方が良いかもしれませんね。

それだけじゃない期中の税金のメリット

60才の運用期間の終了までは一旦入れた掛け金や掛け金で買い集めた投資信託などの金融商品を現金化したものを引き出すことが出来ません。となると、通常は毎月毎月掛け金を移動して(多分自動的に)とある投信などを買って持ち続けることになるはずです。

ですが、前述の通り運営管理機関はただ一つしか使えず、その取り扱い商品には極めて偏りがあるので、どうしても運営管理機関を移動してでもあの商品に投資したい!という時にはそれまでのポジションを売却して資金化して移動することになります。で、売却する、となると通常はキャピタルゲインが発生しがちですよね。となると、今だと20%の譲渡課税が掛かってきますが、iDeCoの口座の中での売却については非課税です!

なぜか。60才以降に発生する年金の支払いのところで(それでも、老後の生活を支えることを考えると当然に通常の所得税やキャピタルゲイン課税に比べれば課税額が安くなる形で)課税することが出来る、からなのです。いわゆる税の繰り延べ効果を年金の仕組みの中に取り込まれている、のです。

Exit となる年金の支払いの時の税務については後ほど細かく触れるとしますが、売却益への課税がないと思うと、案外気軽に利益の乗った投資対象を売却して、その後の市場環境や運用方針の変更に合わせて別の投資対象に乗り換えることができそうですね。通常の証券口座での取引で頭を悩ませる利益に対するキャピタルゲイン税の取り扱い(例えば同じタイミングで含み損のある投資対象も合わせて売却して含み益と相殺させてキャピタルゲイン税を抑える、など)を考えずに、もちろん買い付け時の手数料も気にせずに、機動的なアロケーション変更が可能になる、と思えば。。。って、投資信託をそんな風に回転売買に使っちゃダメですよ!

60歳を過ぎて年金受給者になった時に税金を納める事になるのですが。。。

さて、ずっと貯め続けてきたiDeCo な年金も60歳を過ぎると運用終了となるので、拠出することが出来なくなり、引き続き投資先のファンドで運用し続けるか、年金として給付を受けるか、と言う選択をすることになります。

ちなみに、何もせずに運用し続けても、年金として月々でも毎年でも継続して引き出していく場合でも、月に64円ずつ信託銀行に支払い続けることになります。また、年金として定期的に引き出しても、一時金として一括で運用資金を一気に引き上げても、一回につき432円が信託銀行に送金手数料として支払うことになります。そう考えると、60才になった月、すなわち確定拠出が出来なくなって最初の月、年金受給者となった最初の月に一時金で全額を引き出してしまうのが手数料的にはもっとも有利、と思えてきますよね。

税制についての比較をしてみましょう。

年金として引き出していく場合、雑所得扱いになります。所得税を知っている人だと、雑所得って一番メリットの少ない所得、と言う印象があるかもしれません。例えばFXや為替の差益だったり、最近ならば仮想通貨だったり。これが一時所得ならば50万円の控除があったりするのですが、公的年金以外の場合は本当に税務上の控除がないので収入金額から経費控除後の利益が20万円以上の場合には、その額を他の給与所得などと合算して累進課税の適用を受けることになります。

では、公的年金については、と言うと、流石にここまで厳しくはなく、こんな整理になっています。

65才未満の場合
公的年金等の収入の合計額割合控除額
公的年金等の収入金額の合計額が700,000円までの場合は所得金額は0。
700,001円から1,299,999円まで100%700,000円
1,300,000円から4,099,999円まで75%375,000円
4,100,000円から7,699,999円まで85%785,000円
7,700,000円以上95%1,555,000円
65才以上の場合
公的年金等の収入の合計額割合控除額
公的年金等の収入金額の合計額が1,200,000円までの場合は所得金額は0。
1,200,001円から3,299,999円まで100%1,200,000円
3,300,000円から4,099,999円まで75%375,000円
4,100,000円から7,699,999円まで85%785,000円
7,700,000円以上95%1,555,000円

これに基づいて計算すると、例えば61才の時に年間iDeCo からだけ 350万円を年金として引き出した場合、350万円 x 75% – 37.5万円 = 225万円が課税所得扱いになります。これがもし、70才になって、厚生年金からの年金支給を上乗せしまくって(65才から70才まで受け取らずにあと送りにすると最大42%ほど年金受給額が上乗せできます。)受け取り始めたら、この350万円に厚生年金保険などを上乗せして計算することになります。

もし、これを一時金として受け取る場合、退職所得と同じ計算が適用されます。どう言うことかと言うと、確定拠出年金の拠出期間に合わせた控除額を適用した退職所得扱いになります。所得控除のテーブルを載せるならば

勤続年数退職所得控除
20年以下40万円 × 勤続年数(80万円以下のときは、80万円)
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)

例えば、21年間iDeCo に拠出したならば、控除額は 800万 + 70万円 x (21 -20) = 870万円となります。

と言うことは。。。税務的にうまくやろうとする一つのアイデアは

21年間、毎月2万円ずつ積み上げたとしたら、2万 x 12ヶ月 x 21年 = 504万円ですので、一時金として引き出す場合には、最終的に拠出額に対して73%勝たないと税金が掛からないことになります。

また、仮に870万円まで勝ち上がったとして、60才から全額控除となる70万円ずつを5年間引き出しても手数料を考慮せずに残額は520万円ですから、65才からの4年間も全額控除となる120万円を引き出し、70才で残額の40万円を引き出せばキャピタルゲイン課税を見事に逃れて全額引き出すことが可能だと言うことになります。

73%のキャピタルゲインを60才まで繰り延べたあと、かかる税制優遇を使うとうまく課税されずに引き出すことすら可能になる、のです。まぁ、実際は、厚生年金や企業年金の受け取りなども発生しますから、ここまで綺麗にいくはずはないですので、これはかなりファインチューンしたケースではありますが。。。

まとめ

本当は、こんなiDeCoにあった投資戦略(前述の例じゃないですが、最終リターンが70%を目指しても無税なのですからね。頑張っちゃいますよね。)とか、それを採用している運用管理機関とその手数料との兼ね合いまで分析するのが筋かもしれませんが、実はこのiDeCo と前回のNISAを使って、個人だから出来る超長期投資の世界的トレンドについて語りたくて仕方がないものですから、今回はここらで終わりにしようかと。

とはいえ、税制のメリットがここまであちこちに散りばめられたこの商品、出来るだけ若いうちに始めた方がオススメなのは確かです。が、NISAと iDeCoで毎月5万円を確実にためていく、と言うのは若い頃には厳しいですからねぇ。。。優先順位をどうつけるか、と言うAFPの腕の見せ所的な話でもありますが、それこそそう言う話は個別でお話すべきですから。。。

[投資のコストと効果] NISAを使った株式関連投資のメリットとデメリットを改めて考える

NISAって何ですか?
気づいたらずいぶん前の記事になってしまっていた ETF(というかファンドに投資することの隠された意義とETFにすることでメリットを受ける人たち)の話のなかで思わず触れてしまった NISA。以前書かせていただいていたSoldie でも、人気のコンテンツの一つはこのNISA。だから多分言葉だけは耳にしたことがある、という人も多いかと思います。

NISAって何ですか?
NISAって聞いたことはありますよね?

実際のところ、証券投資、特に株式投資と投信の投資をしている人ならば積極的に使っていて然るべきツール、のはずなのですが、よくよく仕組みを知らないとただの塩漬け専用口座になりかねないし、とはいえうまく使いたい税制面のメリットがある(ということは、それを使って誘導したい人がいる、という意味でもあるのですが。。。)のをみすみす見逃すこともなかろう((※)ただし、株式投資が制限なくできる人に限る)、ということで、じっくり見直しながら、どんな戦略ならば一番うまくハマるのか、というのも考えていきたい、というのが今回の記事の目標にしてしてみます。

NISAってそもそも何ですか?

NISA とは日本版 ISAということで N-ISAなのですが、じゃあ、ISAとは何か、というと Individual Savings Account の略でして、英語で書かれているとなんのこと?と思われる方もそこそこにいらっしゃると踏むので(ついこの間も私のtwitter をみて帰国子女ですか?と言われたのですが、そんなことはないです。私の英語は足立のヤンキーイングリッシュです。)説明すると、アメリカやイギリスなどの国々で、個人による資産形成のための証券投資に対して一定の税制優遇を与える税法が導入されていて、その条件を満たすための個人向け(=individual)貯蓄(=savings)口座(=account)、なのです。と言うことは、NISA は日本の租税特別措置法の中の株式等に係る譲渡所得等関係、第37条の14に、定められた非課税口座、なのです。

ですので、このファンドやらストラクチャーやら cryptocurrencyやらオフショアやらを扱うブログにしては珍しく、ファンド商品でも戦略の話でもなく、日本の税制に基づく証券口座の一つ、について話をする、とまず理解してくださいな。って、ここに来るような人なら皆まで言うな、ですな。

じゃあ、どう言う条件で非課税になるの?

はい、投資で一番のコスト、税金、特に日本ならばキャピタルゲイン課税が課税されない、と言うのはとても魅力的なことですよね。NISAの口座での取引ならば全ての株式の取引で発生するキャピタルゲインに対する課税がない。。。なんてそんなに都合のいい話でもなさそうでして

利用できる方日本にお住まいの20歳以上の方(*1)(口座を開設する年の1月1日現在)
非課税対象株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益
口座開設可能数1人1口座(*2)
非課税投資枠新規投資額で毎年120万円が上限(*3) (非課税投資枠は最大600万円)
非課税期間最長5年間(*4)
投資可能期間2014年~2023年
  1. …0歳~19歳の方は、ジュニアNISA口座をご利用いただけます。詳しくはジュニアNISAページをご覧ください。
  2. …NISA口座を開設する金融機関は1年単位で変更可能です。ただし、開設済みのNISA口座で既に株式・投資信託等を購入している場合、その年は他の金融機関に変更することはできません。
  3. …2015年以前分は100万円。未使用分があっても翌年以降への繰り越しはできません。
  4. …期間終了後、新たな非課税投資枠への移管(ロールオーバー)による継続保有が可能です。

と言うことが金融庁のホームページの NISA特集にありましたので引用してみましたが、ちょっとイメージがつきづらいと思いますので、少し例を交えながら説明していこうかと思います。

NISAのイメージってこんな感じ

例えば、株式の取引を検討しているミヤタ君がいるとします。彼が株式取引をするのに、当然ながら証券会社に取引口座を空けねばなりません。

今ですと、1月から12月までの取引を全て自分でリストにして提出して、その他に得た年間の所得と合わせて確定申告しなければいけない「一般口座」か、証券会社が各取引の利益に対して源泉徴収を行い(負けたら源泉徴収しすぎている金額を返してくれて)、年に一回の報告書を纏めてくれるので確定申告は書類提出だけで追加の納税も発生しないし格段に楽チンな「特定口座」の二つしか選べなかったのですが、今はこのNISAという口座も開設することが出来るです(しかも2018年からは「つみたてNISA」という選択肢も!)。

このNISAは、1月から12月までの1年間における国内および海外の株式(と投資信託)の新規購入額のうち最初の120万円については、その株を買った年を含めて5年間は、その株式の売却益が確定しても、株式の分配金にも税金がかからないというものなのです。もし5年経っても売らないでもっと儲けを期待したい、という場合には5年経って終了するNISA口座からその翌年に新しく開設されるNISA口座に全額移管することが出来るので、NISAの制度が存続する2023年の開設/2028年の終了まではその株式が仮に3倍になっても税金がかからない、ということなのです。

また、2018年から始まったつみたてNISA の場合は、1月から12月までの1年間における国が定めた基準を満たした投資信託の定期的な購入に対する、年間の累計購入額の40万円については、その株を買った年を含めて20年間は、その投資信託の売却益が確定しても、投資信託の分配金にも税金がかからないというものなのです。

とはいえ、その代わり、売却損が出ても一般口座や特定口座の売却益と相殺が出来なかったり、損が出そうだからということで相殺させるためにNISAから一般口座や特定口座に株式を(そして、つみたてNISAから普通のNISAに、もしくはその逆方向に、投資信託を)移管したり、逆に、一般口座や特定口座に持っている株式がもう買っちゃったからといって、税金を回避するべくNISAに移管したりすることが出来ません。

また、今ですと一つの口座で120万円の非課税枠がある、と解釈して、複数に口座を開けて例えば120万 x 5口座 = 600万円(つみたてNISAならば40万 x 7口座 = 280万円!)の非課税口座が持てる、わけがなく、最初に口座を開くと他の証券会社や銀行にも並行して口座開設をすることが出来ず、また他の金融機関に口座を開けようとするならば翌年にならなければ開けられないのです。

そして。。。一般NISAを持つとその年にはつみたてNISAを、逆につみたてNISAを開けるとその年には一般NISAを、同じ年の間には開設することが出来ません。

実際の投資の流れ的に見ると(一般NISA編)

そこで、ミヤタ君は某ネット系の証券会社で口座開設をして、この2018年に一般NISAも開設してみました。開設する際には他で開設していないかどうかを含めて税務署と証券会社で審査が行われるので申し込んで最長でも数週間程度待つことに。。。

株式の配当って

で、実際に口座が開いたので、100万円ほど口座に資金を動かしてとある株式の銘柄、ここではAとしましょうか、を100万円で買ってみました。すると、株式の分配金を受け取ったときに源泉徴収額が掛からず全額受け取っていました。さすが非課税口座。

年内に速攻売っちゃった場合

そして、年末を待たずして、A株式が2倍になったことで売却しました。すると、これにも特定口座ならば売却益に対する20.315%のキャピタルゲイン税が掛かるところが掛かっていませんでした。

そこで、売却したことで非課税枠の100万円の枠が開いたはずだから、さっきの200万のうちの120万円でもう一度別の儲かりそうな株式、Bを買おうとしたら。。。非課税枠は残り20万円しか残っていなかったことに気づいた、という感じです。

5年の期限前に売却した場合

では、5年の期間満了前に売却した場合にはどうなるでしょう。2倍になったので売却する、ということで100万円に対して特定口座で起きていた20.315%の源泉徴収は発生せずに終わります。さすが非課税口座。そこで新規投資を始めよう、というならば、その年のNISA口座を開設して購入することになります。

5年経っても売らなかった場合

これが、5年間放置していて2倍になっていた場合、ですが、5年経つとNISA口座は終了になります。でも、2023年までは新規のNISA口座を開設できるので5年が終了する2022年に開設して5年間放置していたA銘柄をこの新規口座で引き継ぐ(ロールオーバー)することにしました。このとき、200万円相当ですが、ロールオーバーの場合には2018年の新規の購入枠を引き継いだことになっているので追加購入することは出来ません。

今の所、この2022年に開始する5年期間の終了時点である2027年に一般NISAの設定が出来るという法律が出来ていません。もしこのままですと、特定口座か一般口座に移管して、売却時に20.315%のキャピタルゲイン税が課せられることになります。

では、つみたてNISAだと、この話がどうなるか、というと。。。

実際の投資の流れ的に見ると(つみたてNISA編)

ミヤタ君は某ネット系の証券会社で口座開設をして、この2018年につみたてNISAも開設してみました。開設する際には他で開設していないかどうかを含めて税務署と証券会社で審査が行われるので申し込んで最長で1-2週間程度待つことに。。。

投資信託の分配って

で、実際に口座が開いたので、40万程度を口座に資金を動かして、月に3万円ほど、ここではXという適格な投資信託しましょうか、を積立で買う設定をしました。すると、この投資信託の配当金を受け取ったときに源泉徴収額が掛からず全額受け取っていました。さすが非課税口座。おかげで再投資にそのままそっくり回すことができました。目指せ複利のスノーボール効果!

配当金が特別配当、要は元本の償還だった場合

そして、年末を待たずして、X投信からの配当が実はパフォーマンスが悪くて特別配当、ということで元本の払い戻しになってしまっていました。

そこで、元本の償還したことで非課税枠の40万円の枠の一部が開いたはずだから、さっきの帰ってきた元本にちょっと上乗せして別の投信 Yでも積立始めようかな、なんて思ったら。。。非課税枠は着実に毎月の3万円のX投信の購入代金で減らして、元本償還されても減ることはありませんでした。

20年の期限前に売却した場合

では、20年の期間満了前に売却した場合にはどうなるでしょう。積立してきたのでドルコスト平均法で適当に低いところで平均取得単価になってくれたおかげで利益が出ていました。

ということで年36万円を継続させた年数分に対してそこそこ利益が乗っていたものの、それに対して特定口座で起きていた20.315%の源泉徴収は発生せずに終わります。さすが非課税口座。そこで仕切り直しで別のファンドに新規の新規投資を始めよう、というならば、その年のつみたてNISA口座の枠を引き続き利用して購入することになります。

20年経っても売らなかった場合

これが、20年間放置していて積立てきた場合ですが、20年経つとつみたてNISA口座は終了になります。で、一般NISAのように、2038年に新規のつみたてNISA口座を開設できるか、というと今のところは不透明。なにせ、つみたてNISAは2037年までの口座開設分の話しかしていないのです。いわゆる時限立法ってやつですね。ですので、今のままで行くと、売らなかったら特定口座か一般口座に移管して売却時にキャピタルゲイン税の課税対象になってしまうのです。

ちなみに、キャッシュフロー的に何か見落としてない?取引コストとか

はい、株式を買うときや売るときには手数料がかかるのが一般的ですよね。ですが、NISAについてはオンライン系の証券会社さんですと無料にしたり、キャッシュバックすることで実質無料にするところが多いようです。前述のように、一人の投資家にとって一般かつみたてかのいずれにせよNISAを取り扱えるのは一年で一つの金融機関だけ、となれば手数料の競争も起こります。

その他のメリットってないの?生命保険の保険料控除みたいなやつとか

実は。。。ないんですよ。税制的なメリットで言えば投資対象が儲かった時のキャピタルゲイン税が掛からないだけで、証券の購入価格に対応して所得税減税が起きるとか、投資対象が負けたときに損益通算出来るとか、翌年以降に繰り越せるとか、そういうのが全くありません。もし所得税減税を狙うならばiDeCoを使う方がいいでしょう。実際、つみたてNISAとの違いってそこくらいでしかないのですから。って、あーあ、これで次はiDeCoの解説が決定だ(笑)

じゃあ、NISAで何に投資したらいいの?

と、いうキャッシュフローや税務的な影響について見たので、これを踏まえて、じゃあ、NISAで何を買いましょう、という話になりますよね。ご存知の通り、ストラクチャラーではあるけれども投資のプロではない私の意見ですので、まぁ、話半分に聞いてくださいね。

そもそも、一般NISAなのか、つみたてNISAなのか?

個人的には、今年から始めるならば、つみたてNISAかな、と思ってます。というのも、iDeCo の年間積立額が通常ならば27万6000円(一般的な会社勤めの人の場合。自営業ならば81万6000円)ですが、実際にこれを積立てみても最初の数年って仮に10%増えても2万円程度。実額で考えると投資額としてかなり小さいですよね。と考えると、iDeCoにつみたてNISAをやれば年額67万円になるので、将来の年金として結構悪くない足しになりそうですよね。ちょうど40才代ならば、65才定年とか70才にならないと年金がもらえなくなるのでは、みたいな話があるとすればこの20年でどこまで年金資金を貯められるかが勝負。ならばコツコツ積み立てるほうが負担も少なくて良さそうじゃないですか?

となると、国の定めた低コストな(ってお役所が言うんですよね。。。)適格性に合致した投資信託か、一部のETFが購入可能な口座ですから、結局投信しか買えず(ETFだって投信ですからね。たかだか上場している程度でしかないんですよっ)、投信を選ぶときの第一の判断基準はこれ、アクティブかパッシブか、であって、その観点で見ると結構商品として並んでいるのがパッシブ系で、ベンチマークとなる指数連動型の商品。長期投資を考えると、どうしたってアルファを取りに行くよりもベータで手堅くインフレに対応できるようにする方が20年間の長いスパンで投資を積立てることのドルコスト平均法でいくならば相対的なコスト感も良いでしょう。

となると、一旦つみたてNISAを始めると、最後までつみたてNISAに魂を預けることになりそうですね。でも、これのおかげで iDeCo と併用して自分年金をどれだけ大きく出来るか、と言う話になるわけですが、iDeCo の方がアクセス出来る商品性がアクティブ系もそこそこある(お勧め等はiDeCoの記事の時にでも。。。)のでそちらに任せて、つみたてNISAは対インフレと言う意味でのパッシブなベンチマーク運用すると言う分散を目指すのがバランスのいい投資スタイル、と言えるでしょう。

あ、そうそう、ちゃんと20年間でポジションを閉鎖することになるのであれば、20年間毎年積立た分を1年分ごとに(ドルコスト平均法の解約版みたいに)解約して行くのもよし、最初の投資分が20年経ったところで、全部のポジションを一気に売り抜くのだって問題ありません。

一般NISAだって捨てきれないものがある

とは言え、一般NISAについては株のキャピタルゲインが最長5年間の保有期間において非課税になり、うまくロールオーバーを使えば、今年と来年から始めるならば10年間の保有期間でのリターンを狙えることになります。とすると、最長10年の持ちきりで株のキャピタルゲインが非課税になることをうまく使うならば、大化けする株式を買ってしまうこと、でしょう。となると、流動性の高い大型株ではそんな大化けを狙いに行きすらできないですから、自然と中小型株に目が行きますよね。それでいいんです。なにせ、狙うのは数倍から数十倍になることを目指すのですから。仮に11倍(笑)になったとしましょう。上がりの部分が投資額の10倍と言うことですから、もしキャピタルゲイン課税があるならば2倍分を国に持っていかれるんですよ。それがNISAには全くないのですから長期戦で仕込んで大物を待つのも悪くない戦略ではないでしょうか。

ちなみに120万円と言う投資枠で買える銘柄は中型株で364社、小型株で3,140社。毎年同じ銘柄を向こう5年で買い集めるもよし、毎年テーマを決めて選んで買うもよし。

まとめ

個人的には、会社自体が当局の規制の外にあったことから、株式の取引は事実上可能でしたが、職業上の倫理観等で株式の取得は控えていて、結果投資信託に投資することもありませんでした(なにせ作っていましたからね。。。)。

ですが、今回調べて見て、またファンドに投資することは自分が投資判断をしていないと判断されることから、金融規制業種にいて、ディーリング出来ない類の仕事をしている人たちにとって株式への直接投資が事実上禁止されていますから、資産形成・運営せねばならないときの回避ツール的意味合いもあるのだな、と感じました。

まぁ、やって損は。。。銘柄選定の結果で起こるかもしれない、ですね。でも、この手の政略系な意味合いがあるので、やらないよりはやったほうがあれこれ良いのだろうと思います。

ETF の続き、というよりファンドや証券そのものの本質的なところをもうちょっとだけ書かないといけない気がしたので

元々このブログで意図していたのがオフショアのファンドのイロハ的、とある意味金融商品でも割とニッチである意味上級者向けな(だから、読者層も極めて限られている)ところだったところに、AFPなんてものを著者が取得してしまい、かつ30代男性読者の金融リテラシーを補わねば、という人向けの記事をいくつか書いたものですから、投資というものを細かくかみ砕くような記事をちらちら書いてしまったおかげで、ETFの記事をポストした後に数人の方からのこの記事に対するフィードバックを聞いているとどうやらプロ向けと初心者向けの間の部分が抜け落ちた構造になってしまっていないか、ということに気づかされることがありまして。。。

そこで、ちょっとだけ ETF の話の延長をしつつ、ファンドへの投資ということや証券の取引の本質的なところをいくつかかいつまんでみようかな、と思ったのが今回の記事の狙い、と思ってください。

Bitcoin してる?

現物資産っぽいbitcoin (イメージに過ぎません(笑))AIMA Japan の創設メンバーの一人で、時々(当の二人に自覚症状は全くないものの、オルタナ系ファンド業界では有名な2mの大男から“Dangerous Men” の称号を一緒に頂くほどのハードな)飲みにお付き合い頂いているオルタナファンド投資の日本での第一人者、白木さんと珍しく(?)素面で話した時に聞かれたのがこの一言。このリンク先でも彼が取り扱うように、ビットコインなどの仮想通貨というもののあり方というのが投資の世界でもいろいろな形でかかわることが想定されつつあるのですが、ではどんな風に、というのはまだいろいろな可能性もあり見えてきそうで来ないというのが、fintech 特有の「急に現れる未来感」なのかもしれません。

といって、ある意味著名な投資家である彼と同じような投資家目線での高尚なことは書けませんから、ここでちょっと取り上げたいのは、仕組み的なところで一つ。

このところ、出てくるだろう、と言われ続けて世の中に登場してこなかったもの、として言われるのがbitcoin ETF。その名の通り、bitcoin を裏付けにしたファンドの持ち分を上場させたもの、なのですが、過去に何社もトライしつつも当局のストップによって出来ずにいるものです。

といいつつ、実は今、米国 NASDAQ の登竜門と目されている OTCQXに、Glayscale 社というところが GBTCというティックコードで上場させているものが多分事実上のbitcoin ETFなのでしょう。ETFではないファンド、であれば、4年前にジャージー島で私募で作っているという話を聞いていて、実際にGlobal Advisors というジャージー島のファンドが2014年からのトラックレコードが示されていますから、多分そういう形で世界中のあちこちでファンドの組成を行っていたと思われます。実際、Forbes の記事によれば今年7月の時点で13ファンドがETFではないにせよ、bitcoinなどに関連して投資をしているようです。ちなみに、このGlobal Advisors のGABIはケイマン諸島の証券取引所、The International Exchange に上場しているそうな。とはいえ、この上場の意味は。。。前回のETFの記事で説明した広義の意味での「届出目的の上場」と思ってもいいかもしれませんね。

あ、余談ですが、このGlobal Advisorsは2017年6月にAltcoin (bitcoin 以外の仮想通貨)の一つで有名なEthereum platform の通貨、 Ether 建のファンド、CoinShare Fund I を立ち上げて、その他のAltcoin のICO(Initial Coin Offering)やその後のステージで所有者間で流通しているものの取得するなどして運用していくそうな。感覚的にはAltcoinは株みたいな資金流通手段になっているから株と同じようにタイミングを見て売り買いして運用できる、というのを示していくように見えてきます。

で、ここで一つポイントにしたいのが、bitcoin って実際のところETFにしなくとも比較的手軽に口座を開けて取得可能なもの、ですよね。実際に近所のIT好きな店主のいる喫茶店でのコーヒーのお支払いに(そして、それと同じくらい手軽にdark web 経由で依頼したアンダーグラウンドな活動の対価として)bitcoin、のように決済にも使える訳ですから。ではなぜ、わざわざ(GBTCの場合なら年率2%の)フィーを払ってでもETFになったbitcoin を持ちたい、というか投資したいのでしょう。

bitcoin ETFだけに限らない 「ETF する」ことのご利益(その1)

なぜそれをするのか?という質問は、ファンドに限らず、また事業に限らず、ある意味すべての行動において問われるものですが、特にお金が絡むものならば「誰かが」儲かるからそれをする訳でして、ということは、その金融商品にはそのメリットをデザインされて作られているのです。では、bitcoin ETFの場合、フィーを払っても得たいメリットとはいったい何か、ですね。

bitcoin に限らず実際には現物資産を裏付けにした ETF やファンド全般に当てはまることなのですが、ファンドという金融資産にすることで、これらの資産を直接取得・売却することで得られた利益に対する課税と異なる課税ルールを適用出来るように変換するのです。

どういうことかといえば、bitcoinの場合でいえば、話を単純にするため(というのも、bitcoin についてはいろいろなところで課税利益が発生するようなので。。。)に単純にお金を払って bitcoin を取得し後日売却してお金を得た、とすると、取得した価格と売却した価格の差額が利益になります。この利益については日本に住む個人であれば雑所得として取り扱われるそうです。この場合、ざっくり言えば給与所得等と合算して累進課税の計算の対象となります。(もし、確定申告を要しない給与所得だけの人の雑所得が年間20万円以下であれば確定申告しなくともよいそうです。ですが、住宅ローン減税のための控除を受けたい、年間2000万円以上の給与所得がある、など確定申告しなければならない場合には、雑所得が20万円未満でも申告対象になるので注意が必要です。)

これがもし(というのも、ごく一般的な日本の居住者では多分にGBCTの取引できる人がいないと思えるので、仮に出来たら、という前提で書きます。ただ、これがこの記事を書いて時間が経って、日本国内で普通に組成・上場されたら、その時の法令等に従ってくださいね。)bitcoin ETFを取引して結果差益が出たならば、株式の譲渡差益と同じ「上場株式等に係る譲渡所得」として申告分離課税の20%の対象になります。

実は同種の議論が既にあって、例えば金の積立投資ならば譲渡所得扱い(なので、差益に対して50万円の控除をした額、ただし、5年を超える保有期間ならばその控除後の額を1/2に圧縮した額、が給与所得等と合算して累進課税の対象になるのです)なのですが、金のETFならば株式扱い、になるのです。

あと、似たところでは、一般に FX と呼ばれる為替証拠金取引での差益がbitcoin と同じく雑所得扱い(というか、為替差損益の取り扱いが雑所得だからbitcoinが類似性から雑所得扱いになった、というべきか)のところ、その上場バージョンである「くりっく365」であればその差益は上場株式等と同じ申告分離課税の20%の対象になります。

課税区分の変換だけじゃない税制面でのメリット – 多分みんなはこっちを見ている

また、ETFにする、ということは上場株式と同じ商品の取り扱いになる、ということですので、日本ならばNISA口座での取得が可能になる、ということでその非課税性を享受することが可能になる、のです。実際、GBCT のウェブサイトを見ると、米国のIRA (individual retirement account: 個人退職口座)での取得が可能という税制面でのメリットを謳っています。そう思うと、bitcoin を直接保有することでの税制面での影響とどちらが有利か、考えますよね。

まぁ、金のETF をNISA口座のメリットの出る期間保有するなら個人に適用される累進課税税率次第ですが、同じ期間だけ金の直接保有する方がメリットがありそうにも思えますが。。。

ということで、NISA の話もどこかでしないといけませんね。。。

それ以外のメリットってあるの?

それ以外、って、言われても税制面が一番投資家にとってその最終損益に影響する要因ですから大事、といえば大事だと個人的には思いますが、それ以外に経済合理性の観点であるのか、というと正直ストラクチャーを見る限りはメリットはないと思っています。

というのは、ファンドというワンステップを入れる、ということは、そのファンドを維持・管理するためのコストが当然に発生します。ということは、その費用をだれかが負担する(ということはそれらのサービス提供者はこれに絡むことの経済合理性のある理由はそこからのフィー収入が発生するから、ですね。)かといえば、当然ファンドの投資家が、ファンドの資産の一部から、となるのです。ということは直接保有することに比較してその費用分だけ収益が減少するのは誰が見ても明らかです。ということは直接保有に対して費用分を差し引いても税制面でのメリットがあるからやる、メリットがなければやらない、というのが合理的行動に基づく投資の選択、ですよね(心理学だか経済学だか学んだことがないのでこの言葉遣いが正しいのか知りませんが。。。)。

と言いつつも、これが個人ではなく行動規範に制限のある法人になるとちょっと話が変わってきます。前回のETFに関する記事でちらっと触れた、世界中のどこかで上場していないと投資できないという機関投資家の投資対象の縛り、ありましたよね。それに、BBB格付けのない債券は投資不適格、ということで機関投資家は投資しない(といいつつ、バンクローンとかCとか平気でありますけどなにか?)、というようなリスク管理などの事情で彼らは投資行為がいろいろと狭められているのです。

としたら、そういう人に向けて商品化するためには器とか形式上の整えが必要だ、ということになってくるのです。

ファンドじゃないと買えない!

例えば、日本で言えば信託銀行の信託口座からしか投資の出来ない年金投資家であれば、その受託者の受託者責任によって求められ、また銀行として果たさねばならない(ということは商業的な範疇で言うならば最大限にエラーフリー – 間違いを起こさない – であることを求める)「善良な管理者の注意義務」を全うしながらbitcoin の取引用の口座を開設、維持管理することが出来るか、と言えば、まぁ無理でしょう。金融庁検査に入られて検査官が理解できるような説明がつかないでしょうね(べーっ、だ)。となると、実際に受託者が現物資産を保有するのではなく、金融商品化された上場株式と同等のETFならば、上場基準等々を満たしている訳だから大丈夫だろう、という説明で切り抜けられる、と判断して受け入れることになるのではないかな、と理解しています。

例えば銀行。銀行も実物資産を保有するファンドへの投資が出来ないという規制があるようで、例えば卑金属を保有する可能性のあるファンドへの投資出来ない、という話を聞いたことがある(でも、不動産を保有したりREITに投資したりするから、いわゆる商品取引系の資産がダメなのかもしれませんね。そこまで調べませんけど。)ので、もしかしたらbitcoin ETFにしたところでだめ、と言われるかもしれません。とはいえ、銀行も担当部署の都合で、外国債券の形での仕組債はダメだけどそんな仕組債を単一資産として保有するファンドならば投資できる、という大人な事情を抱えることもあるので、 ファンドにする、という経済的合理性を超える理由というのはこうやって出来る事だってあるのです。そもそも、考えてみれば、(J-)REITなんかも不動産の直接保有を金融商品に変換している商品ですが、銀行が大家さんな事業をやることはなくとも、J-REITでも私募REITでもいいから投資するあたりは、そういう事例としてみるには分かりやすかったかもしれませんね。

ちょっと余談:ひと手間掛けることで化ける金融商品たち

さて、ちょっと余談でも(ちょっと、と言いながら長くなりそうですね)。
さて、今までファンドで投資対象の性質を変える、という話をしていますが、こんな金融商品の性質を変えることが出来る機能を持っているのはファンドだけではないのです。

例えば、アメリカ株をやったことのある人なら聞いたことがあると思うのが ADR(American Depository Receipt)。これは、アメリカ国外の企業がアメリカの証券取引所に上場する(ということは米ドル建てで資金調達する)にあたって、本国で(第三者割当で)発行した株式を米国内のDepository に預け、それによって発行された預託証書 (Depository Receipt)を上場させたもの、です。これによって実は本国の法律に基づいて発行された株式が米国内で米国法に基づく証券ということで間接的に流通させることが出来る、という仕組みなのですが、これを応用して、例えば日本で上場・流通させたい時には日本国内の信託を使ってJDR(Japan Depository Receipt)化して上場させる上場信託というスキームがあり、同じことを欧州でやると GDR (Global Depository Receipt)と呼ばれます。

で、なぜ、この話をしたか、というと、イスラム金融に基づいて作られた金融商品をGDR化して非イスラムな投資家に対してアクセスを与えている、という面白いことをして(大儲けして)いる知人がヨーロッパにいて、上記のファンドによるコンバージョン同様に商品性のコンバージョンというのが金融の世界ではあちこちで行われている、という話をしたくなった、だけなのですが。。。

ファンドが変換するのは税務上の性質だけではなく課税のタイミングも変える

さてと。資産の直接投資とファンド経由の投資を税務上の取り扱いの観点で比較したならば、もう一つ税務上での性質の変換を行っている点があります。あまりに当然すぎて気にならないことでもあるものの、極めて重要なことなのでここでご紹介したいと思います。

それは、ファンドを経由して投資すると課税されるタイミングをファンドの持ち分の売却の時点まで遅らせることが出来る、ということです。

例えば、こういう例をみると分かりやすいかもしれません。直接保有する場合とファンドのポートフォリオとして保有する場合と下記の全く同じポートフォリオの入れ替えを行うとします。なお、話を単純化するためにポートフォリオには銘柄Xしか持たないで入れ替えと言いつつも持ち分を増減させるだけ、取引コストや維持コストも0とします。

  1. 2017年5月:ポートフォリオに 銘柄Xを単価100円で10,000単位取得
  2. 2017年11月:ポートフォリオの銘柄Xの、3,000単位を単価110円で売却
  3. 2018年6月:ポートフォリオの銘柄Xの、3,000単位を単価90円で売却
  4. 2019年3月:ポートフォリオの銘柄Xの、4,000単位を単価120円で売却

さて、上記を直接保有した形で取引した場合、2017年末は30,000円(=3,000 単位 x (110 – 100) 円)の売却益、2018年は30,000円(=3,000 単位 x (90 – 100) 円)の売却損が、2019年は単年で見ると80,000円(=4,000 単位 x (120 – 100) 円)の売却益が出ましたが(日本の税務ルールを適用するならば)前年の売却損があるので繰り越し欠損を充当することで50,000円 (=80,000円 – 30,000円)の課税利益が出たことになります。

もしこれをファンドで行ったとして、2017年4月末にこのファンドに100万円(100円 x 10,000単位)投資したとしたら、その持ち分を2019年3月末まで途中で手放さずに持ち続ける限りはこの3回の売却損益を課税申告することはなく、また、これらに関係なくファンドの持ち分を取得した価格と売却した価格との差額である 80,000円 (= 1,080,000 = (330,000 + 270,000 + 480,000)  – 1,000,000) が2019年の課税利益、となるのです。

こうしてみると、結果だけ見ると同額の課税利益が発生するものの直接保有すると利益を出した年に細かく税務処理をすることになるところ、ファンドであれば持ち分を売却する時点まで2017年の売却益を課税されずに繰り延べることが出来るということが分かるかと思います。 このメリットは、この例でいうならば、2017年の売却益に対して20%の課税がされる、ということは、6,000円が手元から無くなっている訳ですから2018年の頭に再投資をするための資金が330,000円ではなく 324,000円だったことになり(この例では再投資をしていないので実感できませんが)投資効率がファンドに比べると直接保有だと(キャピタルゲインタックス分だけ)落ちる、ということなのです。

よく節税の教科書あたりだと、これを例えば大きめの経費等が発生する年に含み益のある投資商品を売却して実現利益にして大きめの経費にぶつけることで課税利益を圧縮する、なんて簡単に書きますが、問題は手元にそんなに都合よく含み益のある投資商品をもっているのか(全部負けてたらどーすんだよっ!)と思うのですが、利益の繰り延べが出来るというのは、含み益の実現化のタイミングを自分の都合で出来る、というメリットがある、と解されるのです。

まぁ、そのためにはファンドでキャピタルゲイン課税がなされないこと、なのですが、日本なら投資信託のようなものならば課税しないことになっているので実現しやすいのですが、日本の会社では法人税がかかるので使えない、ですね。

そこで、キャピタルゲイン課税のない国に会社を作ってそこで投資行為全般を集約してしまえば、日本で利益を実現したいタイミングまで海外で運用を行っていけば税務のタイミングをコントロール出来ますよ、というのが、実は以前書いた記事のひとつである、個人で海外に法人と銀行口座を持つメリット、という以前の記事の総まとめにもなるわけなのですが。。。。

と、気付けばだいぶ話がbitcoin ETFから離れてしまったので一気に引き戻しましょう。

bitcoin ETFだけに限らない 「ETF する」ことのご利益(その2)

ETFにすることで、投資家の側に立ってみると

  • 投資単位が小口化される – 前回のETFの記事で見た通り、日経225ならば現物株で5.3億円程度で構築できるポートフォリオに10,000円前後で参加できる。
  • 流動性が証券取引所が動いている時間ならばいつでも、しかも価格は瞬時に – 通常のファンドならば最短でも一日一回、しかも価格の確定は申し込んだ翌日以降にならないとわからない。

といったメリットを提供されていると考えられます。なお、前回の記事から再三申し上げますが、ここではファンドの運用報酬が安い、というのはETFでは取引所での価格確定のメカニズムが入ることで投資家の投資のリターンに事実上影響がない、という立場を取っています。というのも、これから説明することがETFの価格構成要素としては大きな影響を与えるものであって、それゆえ本源的なファンドとしてのETFの資産価値を構成する運用報酬などが価格の構成要素としての影響力が事実上ない、と考えているからです。

ETFにすることでETFの発行・流通に関連する関係者の大きなメリット – 流通量のコントロールを通じた価格形成が可能になるということ

これは何を言いたいのか、というと、ETFではないファンドが投資戦略を実行するために「資金募集」を行う際には、そのファンドの持分を時価相当額で発行してその代わりとして資金を受け入れます。ということは、この通常のファンドの持分の発行というのはファンドの投資戦略への需要と一致した量だけ、しかも小口化してより多くの投資家が保有できる形で、発行されていると考えることができます。

当然、ファンドを作るときにある程度当初の投資見込みを勘案してファンドというのは設定するかどうかを検討されますが、とはいえ、一般的な株のIPOや債券の売り出し、果てはaltcoinの ICO (Initial Coin Offering) のように、ある程度需要を見込んだ上での一定量の持分の発行に対してそこから最終的な需要と供給のバランスで価格が決まる、というような持分の取引価格の決め方をすることはありません。また、これらの持分は一度発行されたならばその発行量は柔軟に調整される、ということも(下記に述べることを除けば)ありません。bitcoin や altcoin に至っては金貨同様にマイニングによって僅かずつとはいえ増えはしますが減ることはまずありませんね。

とすると、株や債券、bitcoinやaltcoin の価格というのは一度発行されると、その後の流通市場において、本源的には原資産の評価額というよりは純粋にかかる持分に対する需要と供給のバランスによってその評価額(いわゆる売買価格)が決まるのです。その時にその需要や供給の判断材料として使われるものが、株や債券ならばその会社の業績や債務に対する返済能力、今後の事業の見通しといったファンドで置き換えるならばその会社の事業「戦略」や財務状況のようなミクロ、また、その会社を取り巻く市場環境などのマクロの両方なのですし、bitcoinや altcoinであればその参加者の増加による流動性の多寡や利用できる利便性、そしてこれらのcoinの仕組みの堅牢性(もしくはその脆弱性が判明すること)、などでしょうか。

では、ETFはどうなのか、といえば株や債券と一緒で、それこそ日経225ならばおよそ5.3億の単位で持分が投資信託から市場参加者に交付されて市場の売買の供せられるわけですが、では、市場での日経225への需要がこの5.3億の整数の倍数だけあるのか、といえば。。。当然一致することはないですよね。確かに日本銀行が日本で売買されているETFの75%程度をこの記事を書いているときには保有しているとブルームバーグが試算してますが、であったとしても、残る25%の需要に合致しているとは言い切れないでしょう。

だからこそ、前回の記事でも書いたように、同じ日経225のETFが世の中に7種類も存在していても、それぞれの発行体等への需要が均一してあるはずもなく、流通量の多いETFになればなるほど市場参加者の価格へのコンセンサスが原資産の動きに近いものに構築されやすく(されやすいだけで一致する保証はどこにもなく)、逆に流通量が少ないと少ない意見での価格構成ですから原資産よりもその時に売りたい・買いたいという需要と供給の原理に大きく依存される、のです。

とすると、実は発行数の少ない証券というのはその希少性から取得したい人の需要を満たしづらいことから価格が上昇しやすい、と一般には考えられています。また、流通量が(需要以上に)増えすぎてしまうと、需要と供給のバランスが崩れて需要が減って供給過多になることで自然と価格が下落し易くなります。

後者の面白い例として、閉じた世界としてのオンラインRPGゲームのなかで、プレイヤーが無限に貨幣を取得できるメカニズムになっていると時間が経つにつれて全てのプレイヤーが金持ちになるので貨幣価値が下がって一気にインフレになった、という事例があります。要はファンドの持分ですら必要以上に増えてしまうと価値が下がりえる、ということなのです。

そのファンドの実例の一つとしてあげるならば、前回紹介したベトナムの上場ファンドですが、ベトナムの株式市場全体が大きく値を下げたことを受けて、上場ファンドの取引価格が急落し、原資産となるファンドの純資産額よりも大きく下回ることになったのです。それを受けてファンドの運用会社が投資家の利益というべき取引価格と純資産価格との乖離を減らすために取ったアクションというのが

  • 分配金を多く出すことで投資家の需要を掘り起こす
  • ファンドが持分を自分で買い戻すことで流通量を減らして需要と供給のバランスを調整する
だったのです(実際に、ヨーロッパを中心に投資家へのロードショーを行うことで投資家を増やす、という努力もしていましたが)。

とすると、株も債券も一応は発行数を減らす方法が(株なら自己取得、債券ならば部分償還)ありますが、あまり機動的に行うことが出来ません。でも、ETFであればマーケットメイカーである市場参加者の裁定取引の一環でその流通量(ひいては価格の調整)をコントロールすることも可能なのです。

ということで、一旦キリをつける、ということで

実際、この記事を書くのに2ヶ月近くあれこれ時間をかけてしまいました。その間Bitcoin の世界もあれこれ変わったようですが、他方で Bitcoin ETFについてはBitcoin の先物がないからまだダメよ、という US-SECの見解が出て来たので、何か進展があるのかもしれません。

という中で、ファンドに形を変換する、ETFとして流通性を強化する、小口化する、という投資家にとってメリットと思われるものは色々あるので止めはしませんが、まぁ、通常は、とある資産を裏付けに新しい証券を作り出すことで取得価格と販売価格の差額で儲けて、追加発行する際も自分が発行する元手以上の価格の時に行いますし、買い戻しをするのは本来の価値より市場価格が低く評価されているときに買い戻す(これ、大手系列の子会社がIPOして長い時間を経てまたグループの完全子会社になるべく上場廃止する、のとあまり変わらないですよね。。。)、ということが出来るのは全ての価格を知り、調整できるからですから

ギャンブルにおいては胴元が必ず勝つ

という原則は覚えておくべきですし、投資家を儲けさせるために取引コストの負担をするなどの胴元が自腹を切ることなど利益供与になるので今時は出来ないししたくもないことだからあり得ない、と心得ておくべきでしょう。

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