Asia Region Fund Passport – アジア地域ファンド・パスポートが本格始動する、らしいけど

ファンドの世界でのパスポートって?お金が旅する為に必要なの?

ファンドの世界でのパスポートって?お金が旅する為に必要なの?NISAのネタを書いて、普通ならすんなりiDeCo の話を書いて、そのあとにそんな税制優遇された長期投資環境を使って投資するなら。。。みたいな話を書くのが流れと言うか予定、のはずなのですが、いつものように、時間がかかり過ぎるし注意力散漫な性格のおかげで、金融庁のホームページにアジア地域ファンド・パスポートの進展を見つけてしまったのと、これを書いている数日前に某米系カストディ・ファンドアドミの会社さんのセミナーで弁護士先生と会計士先生とでこの話を当局に近い立場で話をされていたので、以前このARFPの話を取り上げた経緯もあることからちょっと調べた感じでの最近の動きとそれに対する雑感(と言うか、いつものように放言、ですな)でも書かせていただこうかと。

なお、これを書いている時点において、著者はといえば投資信託な商品からちょっと距離を置いていますので、最新の実務の観点であれこれ言えるわけではない、と言うのはご了承頂ければと。。。

そもそも Asia Region Fund Passport (ARFP) – アジア地域ファンド・パスポートって?

詳細はAPEC の ARFPウェブサイトをご参照いただくとして、ではダメなので概略でも。

“The ARFP aims to reduce regulatory duplication by establishing a standardised set of requirements for fund operators, and benefit investors through broader and more diverse fund offerings while maintaining investor protection.”

ざっくり訳すならば「ARFPはファンド運営者に対する必要条件の標準化を定めることで法規制の重複を軽減することと、投資家保護を守りつつも国境を超えてより多様化したファンドの提供を投資家に対して享受させることを目標にしている。」と感じだろうか。要は国境を超えてファンドが複数国で販売出来るようにファンド商品の条件の標準化を多国間で整備する、と言えばいいかもしれません。

まずはその歴史でも

元々は2010年のオーストラリア金融センターフォーラムでパスポート構想が推奨されて、それを受けて2013年のバリでのAPEC財務大臣間会議に於いてオーストラリア、ニュージーランド、韓国とシンガポールで同意した多国間構想の一つで、2016年にパスポートが機能することを目指していたそうな。その後タイとフィリピンもこの構想に参加を表明したのですが、2015年9月の多国間でのStatement of Understandings に署名したのは、オーストラリア、韓国、ニュージーランド、タイ、フィリピンと日本と言う顔ぶれ。シンガポールが抜けて日本が入ったと言う感じですね。その後2016年に協力覚書をオーストラリア、ニュージーランド、韓国と日本が署名してこのパスポート構想を押し進めてやっと昨年9月にARFPガイダンスのコンサルテーション(日本で言うところのパブコメ)が発表して意見を求めて、12月にパスポート申請手続きが公表された、と言うことなのです。

で、このファンドのパスポートをとると何が出来るの?

ざっくり言えば、パスポートを自国の当局に申請して登録すると、日本、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、韓国、シンガポールに於いてその登録ファンドの販売をする手続きが簡便化される、と言うことが期待されている(ってダイエット商品か?)。

実際に日本でその手続きってどうなるの?

さて、金融庁のホームページでその手続きについて記載があるのでぼちぼち手続き申請が始まるのかと思うのですが、実際のところどうなるのか。書いてあることからちょっと考えてみたいと思います。

日本で投資信託を作って海外で売りたい場合

まずは輸出しよう、と言うケースを考えてみます。

輸出するにはまず作らねばなりませんので日本の投信法に基づいてファンドを設定することになります。

その際に運用会社とその役職員について色々と条件があるようですので、その条件を満たしていることも証明する必要がありそうです。とは言え、取締役に求められる「IOSCO関連の金融サービス業務での経験」って、これを文字通りIOSCO 参加国の当局と読むのか、IOSCOに参加している金融庁の規制下にある金融商品取引業者での勤務経験で足りると解釈するのか。。。普通に考えると後者のはずなのですが、表現が微妙におっかないですよね。

また、ファンドの資産にも制限があり、当然仮想通貨というか暗号通貨はダメで(笑)でも、金の預託証書はいけるのが不思議かも。当然のことながらデリバティブ取引についても色々と制限があります。集中保有規制もあって、通常5%、一定の条件で20%まで単一発行体の証券を保有可能だとか。

また、ファンドからの貸付は禁止、借り入れもAUM対比10%が上限、空売りもだめ、報酬体系としてパフォーマンスフィーは導入不可。まぁ、この辺りは投信協会の運用規定の範囲内、と思われるので多分日本の投信ならクリアー出来るでしょうね。

あ、上記は条件のほんの一部ですからね。で、これらをちゃんと満たすことを確認出来る資料とともに金融庁に申請をします。申請が完了すると、そのファンドはパスポート・ファンドということで、登録コードが与えられます。多分、設定国(ホスト国)での手続き関係はここまで。

その後は販売したい国での商品登録手続きを行い、現地の販売会社さんに販売してもらう、ということになるのでしょう。

海外で作って国内に持ち込みたい場合

では、逆方向の輸入についてみてみますと。。。

まず、パスポート参加国(で、当然日本以外の国)でその現地国の法規制に従ってファンドを設定し、前述の日本でのパスポート申請と同じことをして、登録コードを取得することになります。

登録コードを持って今度は日本での販売のための当局の手続きをするのですが。。。これは外国投資信託の持ち込みの手続きとほとんどと言っていいほど何も変わっていません。この持ち込みの基準等を定める日本証券業協会の外国証券の取引に関する規則の第16条と第17条が公募外国籍投資信託の持ち込み基準を定めていますが、今回のARFPの動きを受けて改正されてARFP対応の条項は出来ていますが、それは、外国投信の持ち込みの際の諸条件の一部がホスト国で確認すること登録コードが与えられているということを踏まえて、省略されているように見えているだけで、結果としてパスポート参加国以外のケイマン諸島の Japan regulations の適用やルクセンブルクやアイルランドのUCITs適合なファンドを持ち込むことと基本的な設計等については変わりはないのです。

当然、(交付・請求)目論見書や運用報告書の義務がARFPで緩和されることもありません。

じゃあ、ARFPのメリットとは一体なんだと捉えればいいの?

日本に輸入するメリットってどうよ?

正直言えば、日本にだけ持ち込む上でARFPを使うことのメリットは、UCITSや Japan regulations適合のケイマン諸島のファンドとの差が見えない以上ないと言い切っていいと思います。例えば韓国の運用会社が韓国株のファンドを日本に持ち込むためにパスポート登録して外国籍投資信託として(最大手証券会社4社とプレスティア、三井住友銀行と数少ない)外国籍投資信託の販売インフラを持った国内の販売会社のどこかと組んで販売するための調整をするならば、どこかの国内投資信託のファンドオブファンズの運用エンジンとして既存のファンドに資金をフィードしてもらう方が販売会社の数も段違いに多いし、商品が国内で販売するための商習慣に合わせやすい、などのメリットを享受しやすい、というのは間違いありません。

じゃあ、どうしたらメリットが出るの?

個人的には複数国での販売のためならば、ARFPへの登録は意味と一定の効果を出せるのではないかと思っています。複数国の公募ファンドの規制適応、となると通常は前述のような国ごとの事情に合わせたフィーダーファンドを作り、そこからマスターファンドに資金を集中させることが一般的ですが、フィーダーファンドごとに設立コストも掛かります。それが一つのファンドで複数国にアクセス出来るならば費用的なメリットを見いだすことが出来るでしょうし、そこは参加国が増えれば増えるほど一つのファンドでアクセス出来る国が増える、という意味で魅力的に映るかもしれません。

本当にそれってメリットなの?

どうなんでしょうね。個人的には特に個人投資家が主になる以上、販売される国においては既にある商品との競争になる、ということはその国の商習慣や法規制等で求められている報告書等を現地の言葉に翻訳しながらその頻度等も現地に合わせた上で作成し続けていく訳で、日本を例にとればそのような報告書等の翻訳などは販売会社が特定のファンドの代理人のようなことをやるはずもなく、運用会社などの商品を推進するサイドがそのコストで行うことが事実上のデフォルトであり、他国でも同じと想像して良いでしょうから、作って登録して各国で届け出ればおしまい、では無く、進出する国ごとに販売サポートのリソースの確保とコミットメントが不可欠と言えるでしょう。となると、グローバル展開している運用会社ならば使える、という見えないハードルが置かれてしまうようにも思えています。ま、投資家保護、ということを考えると、規制当局含めて運用会社にそれなりの規模を求めるのも当然かもしれませんが。。。

では、日本の運用会社はこれをビジネスチャンスと思うか、海外からの外圧のゲートが開いたかと思うかと言えば。。。

本当はビジネスチャンス、のはずなんです。国内が販売サイドの縛りも出てきているからAUMが頭打ちになる訳ですし、だから海外展開を始めるべきなのだと思います。でも、国内市場だけですでに疲弊しそうな状況で海外展開にリソースを割くなんて、と出来るところは。。。すでにARFPを使える素地のあるグローバル展開している欧米系の運用会社を除くから、国内勢と考えると数社程度しかないでしょうねぇ(あそことあそこくらいかなぁ。。。)。

だからと言って、外圧のゲートが開いたか、と言えば前述のようにその外圧は外国籍投資信託のチャネルでしか来られないから外圧にはなり得ないのです(これは自分でビジネスを頑張ったから言えることなのですが。。。)。

とすると。。。ARFPが出来ても何も変わらないし変われないように思えるのは私だけでしょうかねぇ。。。ま、これはまた数年置いたところで評価すべきかもしれませんね。

アジア地域ファンドパスポートの話が出てきたのでUCITs とかも合わせて考えてみた

ファンドの世界でのパスポートって?お金が旅する為に必要なの?
ファンドの世界でのパスポートって?お金が旅する為に必要なの?
今日、というかもうすでに昨日(というか、実は先週の金曜である9月11日)、金融庁のホームページでこんな発表がありました。
これは、このページのリンクにあるように、「2013 年 9 月 20 日にインドネシアのヌサドゥアで各国財務大臣が 署名したアジア地域ファンド・パスポート創設のための意図表明文書に全体と して代わるもの」ということで、豪州、日本、韓国、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール及びタイが中心になって、このアジア地域でのファンド・パスポートの制定に向けて協力していく、というそうなのです。

ファンド・パスポートとは?

で、いきなり、ファンド・パスポート、と言われてもピンとこない方もいるように思ったりするので、ちょっと解説させていただいちゃいます。

通常、ファンドを(世界中のどこでもいいのでどこかの国か地域で、ファンドを作るための制度を利用して)単純に設立しても、通常はそのまま世界中にいる投資家に販売というか投資家に勧誘し投資を募るすることは出来ません

そもそも、ファンドを販売するには?

え?と思ったでしょ。ええ、一般的にはファンドの契約書等には投資を募る時の手続きやその資金の運用方法、そのリスク、最後に投資資金を変換するための手続きについて記載するものなのです。そこがファンドの運営にとって一番大事なところですので。

でも、ファンドを作って大事なことはソレだけではないですよね。大事な投資家を募るにあたり、その募集の仕方についていろいろと制限などを明示しなければならないのですが、そもそも、ファンドの契約書はファンド設立国の法律に基づいて作成されるものですので、ファンド設立国での募集ルールを最低でも記載しますが、もし設立国の外で販売するのが最初から予見されるならば、募集行為がファンドの設立国の外で行われるその国独自の募集のルールに基づく記述をして、かつ、ファンドの運用方法や投資家への制限、(この手の話で一番多い)投資持分の譲渡制限の話、といった波及的な影響をその国の法律と照らし合わせて反映させねばならない、という、単純に翻訳すればいいわけではない作業があるのです。しかも、これが複数の国で販売されるとなると、ファンド設立国とファンド販売国の数だけの当局規制や法律の影響の最大公約数の折り合いを見つけなければならない、というかなり苦痛な作業が発生することになります。

で、ファンド・パスポートの概念。

ひとたびファンド・パスポートの基準に合致したら、パスポートの有効な複数の国で共通する、ファンドの募集するための基準を充している、とみなしてもらえるので、上記でいうところの

個別の「国独自の募集のルールに基づく記述をして、かつ、ファンドの運用方法や投資家への制限、(この手の話で一番多い)投資持分の譲渡制限の話、といった波及的な影響をその国の法律と照らし合わせて反映」する

という作業が複数国に対して一瞬にして完了する、ということで、ファンドを設立して運用する側からするとその分のドキュメンテーションの作業が簡略化され、その結果ファンドレイズの意味で効率化が計れるからメリットがある、ように思える概念、です。

これが特に個人投資家向けの公募の基準を満たすファンド・パスポートだとしたら、複数国の公募市場で販売できちゃうからより多くの AUM を積み上げられるのでは、という期待も大きくなる、のでそりゃあ、アセット・マネジメント業界的には期待が大きいですし、ファンドを売るディストリビューター(日本では証券会社や銀行)あたりも商品の幅が期待できるから、と期待を膨らませるでしょうし、当局としても自国市場の活性化が期待できるから頑張って制定しようとする、という(もし銀行員が好きな表現を使うなら)三方よし、なアイデアとされています。

著者の予見するファンド・パスポートの未来とは?

で、お気づきかと思いますが、著者は実は、このファンド・パスポートについては懐疑的な思いで見ています。なので、さっきから語尾が「期待される」だの、「されている」だの、とダイエットの売り口上に対する期待感くらい他人事なのです。その理由とは。。。

ファンド・パスポートの先駆である UCITs が完全なパスポートの役割の機能を果たしきれていないから

UCITs とは、ざっくり言えばヨーロッパ連合版のファンド・パスポートで歴史は古く、1985年に最初の Undertakings for Collective Investment in Transferable Securities Directive = 譲渡可能証券に対する集団投資の引き受けに関する指令がEUで定められたのが始まりです。で、この「譲渡可能証券に対する集団投資」がいわゆるファンド、特に個人投資家等が投資する公募ファンドを指しているので、ヨーロッパにおける公募ファンドの募集・販売に関する共通ルールに関する規定、として認識されています。この指令は今では UCITs IV とバージョンを重ねており、もともと上場株や流通性の高い債券といった証券への投資をターゲットにしていたものが、先物やスワップを許容し、スワップを使った商品のおかげで、間接的にではあるものの、ヘッジファンドへの投資と同等のパフォーマンスを得ることまで出来てきました。

ちなみに、2008年の信用危機により特にヘッジファンドに対する強い規制の要請があったことから、UCITs ファンドに属する公募ファンド以外のいかなるファンドに対して、AIFMD = Alternative Investment Fund Manager Directive = オルタナティヴ投資ファンド運用会社指令が制定されたことで、ごく一部の例外を除くと、ヨーロッパ連合で募集されるファンドは UCITs か AIFMD のいずれかに規制されることになる、とされています。ですので、AIFM になるコストを考えたら、と、UCITs プラットフォームに乗っかって、トータルリターンスワップを使ったスキームで自分たちのヘッジファンド戦略を UCITs 化する流れが最近強まっていたり、投資家サイドも UCITs 化されたヘッジファンドを複数投資する Fund of UCITs Fund に投資する傾向が強まったり、と、UCITs がヘッジファンド業界で再評価されているという話もあったりします。

とはいえUCITSってパワフルですよ。EU域外では

また、UCITs がヨーロッパの公募規制のある意味代名詞となっていることで、何が起きたかというと、ヨーロッパでの公募規制だから、という「イメージ」が先行した結果、ヨーロッパ以外の投資家が UCITs に適合したファンドに投資する、ということが起こって、2013年の終わりには実際には UCITs に適合したファンドがヨーロッパ以外の国含めて86カ国で販売のための当局への登録がなされています(PwC Ireland 調べ)し、ヨーロッパ以外の国の機関投資家の一部では UCITs であることが投資基準の一つにしている、というものすらあります。そのおかげで、UCITs の最大の設立国である Luxembourg と Ireland はアジア各国でファンドを作るなら、運用会社の海外拠点を作るなら我が国へ、と積極的な誘致活動をし、毎年派手なロードショウをしています。

閑話休題。

あれ、と思った読者の方がいると思います。86カ国で、何かしら UCITs 登録されたファンドが現在販売されている、という事実があるのに、他方で著者はヨーロッパ域内でのパスポートとして機能しきれていない、と主張する矛盾。

UCITs の実情

実際は、こういうことなのです。販売登録のためのパスポートとしての概念は EU 域内での資本流通のための基本ルールとしては存在するのですが、各国で公募ファンドに対する要求基準が微妙に異なるため、結果として商品組成の時点で販売のターゲットとなる国に対するカスタマイズがどうしても残る、というものなのです。前述の PwC Ireland の資料の12ページに UCITs が如何に EU 内でパスポートとして機能するか、という説明をしているのですが、ここでも留保している通り

国によっては追加の書類や、サービスプロバイダーを要求するケースがある、

のです。ということは、Luxembourg や Ireland のようなファンド設立の意味では中心的なオンショア国 (や、Malta や Cyprus といった、これらに続くファンド設立を誘致している国)で作るだけでなく、普通に日本で国内投信を作って国内で売るのと同じように France や Germany で作って売る、というケースにおいても国内だけで募集するか、他国でも募集するか、という観点で UCITs-compliant にするかどうか、という検討が必要になり、後者になった場合には、ターゲットになる国の公募規制も合わせて考え、準備する必要がどうしても残る、ということなのです。

そこで、たぶん疑問が一つ出てきます。

じゃあ、UCITs をヨーロッパの外でこれだけ売っているのは、UCITs をそれぞれの国でパスポートとして許容しているから、ではないのか?

よく誤解のある質問なのできっぱり申し上げます。

違います(きっぱり)

日本を例にとるならば、日本国外のファンド商品を日本国内で募集する場合には、日本証券業協会が定める「外国証券選別基準」に合致する必要があります。これは、日本と同様のファンドに関する法規制が定められている国において設定され、かつ日本独自の公募のための投資制限やファンド関係者に対する要請、法的構成に対する要請(例えばユニットトラストならば信託宣言型は不可)、そして当該ファンドを販売する際にそれを日本証券業協会に届け出る代行協会員が必要(言い換えれば、商品の国内における対日本証券業協会の窓口をする日本証券業協会の会員が必要)など、あるので、UCITs-compliant だから顔パス、ということは絶対ないのです。

同じことは、UCITs が大好き、と言われている香港もシンガポールも同じで、運用会社の現地法人がいないとダメ、など、それぞれの国における規制があるため、持ち込む際にはそれぞれのローカライゼーションをきちんとする必要があるのです。

ローカライゼーションとは法令遵守だけじゃない。言葉だって売り方だって現地化しないとだめ。

言い換えれば、販売のための法的要件が整ったらどこでも売れるわけではなく、当然に商品が販売するために魅力的であり、かつ国内で特に個人投資家に販売されるならば、実際に説明し販売するローカルの販売会社(証券会社や銀行など)が責任をもって販売できるための体制も維持されるようにしないといけない、のです。そのためには、実は、開示資料がすべてローカルの言語に翻訳される必要もあるでしょうし、開示内容については、日本ならば昨年末から開始した運用報告書におけるパフォーマンスと一般的な市場ベンチマークとの比較、といったその国特有のルールに適合することも必要になってくるのです。

では、アジア地域ファンドパスポートの話に戻しましょうか。

これはまだ作業が始まったところですので、今後に期待したいところは当然いろいろありますが、日本での公募ファンドにおける「個人投資家を保護するため」という背景でいろいろと導入された開示要求や、根っこのところでいえば商品の受け渡しのルール(資金が申込日に受け渡さずに約定完了してから数日後に行う、という株や債券の慣習を引きずっている点)などが海外のスタンダードと異なること、さらに、海外ファンドですので外国籍投資信託としての登録になることで、日本の証券会社で取り扱える会社数が極めて少ないあたりで、海外ファンドが国内にパスポートをもって入ってくる時の事実上の障害がいろいろ残ってしまうのではないか、という懸念があります。

他方で、日本語以外でのレポーティングや販売サポートを行わねばならない、という点で今までそこに注力を注いできていない国内の運用会社さんが海外市場にパスポートを使って進出したいとどれだけ思えるか、これも引っかかります。その点ではヘッジファンドマネジャーの方が海外投資家への接点が多い分ハードルが低いはずですが、公募化したいか、というところから始まるので。。。

ということで、これを機にあらゆる面で海外と国内との間での違いというものが意識され、そこにどう歩み寄るか、という話が始まればいいなぁ、と個人的には思うのですが、重い話になる、だろうなぁ。。。今後も注視していきたいトピックです。

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