私の年金、老後以外に貰う方法ってあるの? – 年金入門 その2

From "Slowsteps on Podcast"

ついぞ、「私の住む浅草も」なんて書き出したくなる位、このところずっと某社のCOOとしての記事を、こちらをそっちのけで書き倒していましたが、流石に続き物はちゃんと書かないと、ということで、前回の「私の年金ってどうなっているの?」の続編です。

前回はざっくりいえば私たちの老後に対して公的年金ってどれくらいもらえるのか、ということはそれの他にどれくらい準備しないといけないのか、ということを考えるための記事だったのですが、後半のところについての問題意識を持っていただけたかどうか、はそのもらえる年金額に対するこの瞬間の収入とのギャップとその人の老後への不安度合いの程度、という、実感は人それぞれにお任せですが、会社には負担かけるけど厚生年金には入っておいた方が何かとお得よ、というのが個人的な感想でした。

ということで、今回もこのところのパターンで、まずはスライドでまとめてそれを動画にしているので、長ったらしいダラダラした文章を読みたくない、というあなたはこちらでお楽しみください。と言っても、今回はちょっと盛りだくさん過ぎて弁護士のプレゼンみたいに文字だらけなのですが。。。

なお、このネタ、改めて読むと、人の生き死にとか、生活環境、身体的な問題、家族関係とかをぐりぐり攻める話なので、

お金のためにそこまでいうか、人でなし

と言われても仕方ない、ということがたくさん出てきます。法律上想定している、人の生活の可能性をカバーするようにいろいろなことに対する準備をしているだけなので、それにどう対応するか、を(倫理観を排除して)考える作業をしている「だけ」です。

さて、公的年金というものは、法律上、基本的には10年以上保険料払えば、払った分に見合う程度と思われれる額が65歳以上になればもらえる資格を得る、というものです。ということは、例えば、22歳で働き始めて、32歳まで払い込んだから、と言っても、33歳からもらうことができません。65歳までお預け、なのです。

それまで(この例で言えば65歳になる32年間)、年金制度は大丈夫なの?国は約束を守ってくれるの?という疑問はあるでしょうから、じゃあ、その前に払い出してもらう方法はないのか?ということを考えてみたいと思います。

まずは前倒しでもらうには

前回の記事で触れた方法でもありますが、本来は65歳から受給権を得られる公的年金ですが、昭和60年頃の法律改正で65歳に給付時期を「遅らせよた」ということは元々60歳からの給付をしていたわけです。この数年の間に、これに合わせるべく定年65歳制度を民間企業等に導入を進めさせて、とこの辺りの責任を国から民間に押し付けているよねぇ、と思うような政策転換ですが、それまではそういうこともあり、60歳で定年を迎えて嘱託という形で数年働かせてもらう以外は、65歳の年金支給まで退職金をもらっていればそれで食いつなぐ、とかする他がなかったのです。なので、65歳の受給時期を1ヶ月前倒しするごとに0.5%の減額をして受給額の調整する(というか、前倒しの受給を抑制している)、という対応をしている、という話でした。

ちなみに、2022年4月からは昭和37年4月2日生まれ以降の人たちが繰上げ支給を求めた場合、ひと月あたり0.5%だったのが0.4%になるそうですので、最大で 0.4 x 12 x 5 = 24%の減額での受給になります(あ、払込額の回収完了年齢が変わるか。。。)

でも、父親世代の退職後の生活を見ていると

いや、60過ぎてちょっとしたら、何気に年金ももらってません?って、ことに気づきます。ええ、実は、男性ですと昭和36年4月1日まで、女性ですと昭和41年4月1日までに生まれた人たちについては、厚生年金(正確にいうと老齢厚生年金)の受給開始時期が65歳より前のケースがあるんです。どういうことか、というと先ほどの昭和60年の法律改正で受給開始時期を65歳に、という話になったものの、一斉に厚生年金の受給開始時期を変えると制度設計や国民の人生設計が混乱する、ということで、18年後の平成14年の法律改正で、段階的な受給開始時期の変更をすることとなったのです。

内容としては、昭和16年4月2日以降生まれから2年ごとに、まず厚生年金の固定部分、すなわち国民年金の年金額である 780,900円に相当する部分(正確に言えば、1,628円 = 780,900 / 480 にちょっと色をつけた額、に保険料を支払った月数を掛けた額)を60歳から1歳ずつ遅らせて、昭和24年4月2日生まれ以降が全員この固定部分について65歳からの給付開始にしたあと、その4年後である昭和28年4月2日生まれからまた、2年ごとに、今度は厚生年金の報酬比例部分、ということは例の支払った保険料の総額の5.481/1000を(平成15年3月31日までの保険料分は7.125/1000)を掛けた部分について1歳ずつ遅らせ、昭和36年4月2日以降の著者を含めた良い子のみんなは老齢厚生年金の支給開始自体が65歳になる、というものです。

女性については、昭和60年の法律改正の時に元々55歳支給だったところを60歳からに変更した都合もあって、全体的に5年遅らせたことから、全員が65歳からの支給開始になるのは昭和41年4月2日生まれ以降から、となるのです。

となると、繰上げの時の対象って

この昭和16年4月2日から昭和36年4月1日生まれの人(女性だと昭和21年4月2日から昭和41年4月1日生まれの人)の繰り上げってちょっとややこしいですよね。例えば、男性で昭和30年4月2日から昭和32年4月1日生まれの人ですと、既に固定部分が65歳支給開始で、報酬比例部分が62歳からとなると、61歳から報酬比例分だけもらうために老齢厚生年金の繰上げ受給請求だけ、というのができず、固定部分に相当する老齢基礎年金も併せて繰上げ受給の申請をする必要がある一方で、報酬比例部分だけもらっている63歳に固定部分ももらおう、となると、やっぱり老齢厚生年金ではなく、老齢基礎年金の繰上げになりますし、昭和25年4月2日から昭和27年4月1日の間に生まれた女性ですと、63歳から固定部分の給付が始まる一方で、60歳から比例報酬部分の給付が始まっているので、61歳から固定部分の給付を繰上げてもらうというと、これまた老齢基礎年金の繰上げ受給請求、という、厚生年金のはずなのに国民年金の話をせねばならない、という不思議な状況に陥るのです。

ま、試験問題以外では、昭和41年4月2日生まれ以降のわたしたちには関係ないけどね。

ただ、この固定部分を65歳より前に受け取っている人たちにとって、ちょっとしたおまけがあるんです。

配偶者加給年金と振替加算というトリック

固定部分を受給する人たち(ということは厚生年金加入者で、男性なら昭和24年4月1日生まれまで、女性なら昭和29年4月1日生まれまで)で20年以上被保険者であった期間があって、

  • 65歳未満の配偶者がいる、もしくは
  • 18歳になって最初の3月31日を迎えていない子、もしくは20歳未満の1級もしくは2級の障害等級認定された子がいる

場合、配偶者に224,700円、対象となる子も最初の2名までは224,700円ずつ、3人目以降はその1/3にあたる74,900円が年金額に加算されます。これ、夫が年下の姉さん女房が先に65歳になってももらえます(実はこの男女差のないルールって、年金だと少ないんです)。しかも、このルール、もしこの人たちが65歳になって老齢厚生年金と老齢基礎年金の受給者になっても給付が続く上に、仮に、65歳未満の配偶者が65歳になって老齢基礎年金受給者になってこの加給年金の給付が打ち切りになっても、その配偶者が一定の条件(例えば、昭和41年4月1日以前生まれであることとか、老齢基礎年金以外の老齢厚生年金等や退職共済年金を受け取っていた場合にはそれらの加入月数が240未満であること、配偶者が妻なら35歳以降、夫なら40歳以降の厚生年金加入期間が最長で19年/228月未満であること)を充すと、老齢基礎年金に振替加算という名目で一定額が上乗せされて給付されるのです。

ま、昭和41年4月2日以降生まれの私たちには(試験で出る以外)なんの関わりもないことですが。

じゃあ、ぴちぴちな私たちへのチャンスは?

さて、昭和41年4月2日生まれ以降の人たちは、おずおずと65歳になるのを待つか、手続き上61歳になって60歳からの年金給付の繰上げをするか、のどちらかしかない、のでしょうか。

もし運よく(?)あなたが日本国籍を持っていないなら

国民年金というのは、観光や治療の理由以外で海外から日本に滞在する人も加入する義務を負っていますが、加入して6ヶ月以上払ったはいいけど受給の権利を得る10年も日本にいないで国に帰ってしまう人たちのために、脱退一時金、という制度があります。

その場合、日本を離れることになって2年以内に請求すれば、国民年金ならば最後に支払った保険料の1/2に、加入した期間に応じた数をかけた額が、厚生年金なら、加入期間の給与の平均に基づく標準報酬額に、最後に保険料を支払った月に属する年の10月の保険料率をかけることで得られる保険料額の1/2に、これまた加入期間に応じた数をかけて得られる額が脱退一時金として支払われます。ですが、まぁ、払った全額は帰って来ません。

まぁ、とはいえ、一応、日本とある程度の国との間でこういう公的年金などの社会保障協定が結ばれていて、日本で払った年金保険料が自国の保険制度に基づく支払いをしたことにする、という取り扱いをしてもらえるようになります。でも、シンガポールやベトナムのような協定を結んでいない国だと日本に滞在している間は日本の年金を払いつつも自国の年金も払わねばならなくなる、という二重払いになる可能性がありますので、戻るのはその二重払いの一部解消、と言った感じでしょうか。

余談ですが:もし日本から海外に移住する場合

ちなみに、これの読者のほとんどが日本人だと思いますが、当然、日本から赴任等の都合で海外に住まれるケースでも同じことが言えて、その移住先の国と日本との間で協定が結ばれていれば日本の年金保険料を任意加入して払わずとも現地の年金制度に加入することで、その間を日本の公的年金に加入していたのと同じ扱いにしてもらえるそうです。

それでもまだ、自分でもらうというか回収することにこだわるなら

さて、運悪く(?)日本国籍なのでこの脱退一時金の適用も叶わない、となると、残る手立ては二つです。もし自分の手にしたい、というのであれば、障害年金として受け取るほかありません。

これは、被保険者であって一定の保険料支払い条件を満たした上で、障害等級が、国民年金なら1級か2級、厚生年金なら1級、2級、もしくは3級ならば受給資格を得ることになります。詳細はスライドなどで確認してもらう方がいいと思いますが、大事なことだけかいつまんでいうならば

この障害等級ですが、いわゆる地方自治体等が発行してくれる障害者手帳に記載の等級とは別物です。これ、この間のCFPの試験に出ました(笑)この法律に基づく基準で決められているのですが、2級ですら、家から出られず誰かの手を借りないと生活できないくらいの傷病の結果、1級になるとベッドから出られないくらいですので、そりゃ働けませんから、それくらいの年金が降りて生活の足しにして、ともなります。

他方で、それくらいの状態になる原因が労働基準法に基づく補償を受ける場合、ということは雇用されている状態で業務上等の都合で発生した傷病等によるもので、労働基準法第77条に基づく障害補償を受けた場合は6年間給付が停止されます。でも、これは労働基準法第84条で、いわゆる労災保険法に基づく補償を行うことで雇用者は労働基準法に基づく使用者の補償責任を免れることになっていますので、労災保険による障害補償給付を代わりに受けたとして(というか、その状態だと受けてるはずなのですが)も、6年間の給付停止を受けることはないようです(というか、もし6年間の給付停止って、雇用主が労災保険に入っていなかったので会社等が直接補償しているケースだから色々とまずい話ですね。。。)。

あ、その場合には障害基礎/厚生年金と労災保険の障害補償給付との両方が給付されることになるのですが、障害基礎/厚生年金が全額給付され、労災保険の障害補償の支給額が調整(減額って意味ね)されます。

流石に払い込んだ保険料をこの形で回収しても使えないんじゃあ。。。

ですよねぇ。でも、残念ながらこれ以上自分で受け取る手立てがないんですよ。あとはあなたの遺族にでも受け取ってもらって有効活用してもらいませんか?

ん?言ってる意味がわからないって?遺族って?そうですよねぇ。ええ、死んだ後にご遺族に支払われる遺族年金の形、というのが残された方法になります。ただ、これもちょっとややこしい話がたくさんあります。

遺族基礎年金をもらうには結構ハードルが高く

国民年金から給付される遺族基礎年金を受給するには、被保険者側に加入期間の2/3以上ちゃんと保険料を払うか免除措置を受けているか、年金受給者であっても25年以上保険料を払うか免除措置を受けているかする必要があるのですが、それ以上に遺族側にちょっと高めのハードルがあります。

まず、子供さん。これがいないと話になりません。言い換えると、お子さんがいないと結婚していても配偶者には支払われません。しかも、お子さんについては

18歳になって最初の3月31日を迎えていない子、もしくは20歳未満の1級もしくは2級の障害等級認定された子がいる

がいないと出ません。なので、子供全員が成人しちゃった場合も対象になりません。

配偶者については、条件はただ一つ。上記の対象となる子がいること、です。既に書いていますが、お子さんのいない夫婦の場合には対象外になりますし、子供が全員無事に成人した場合にも対象外です。

そして。。。こういう遺族的な話が出てくることで相続税の話がふっとよぎったら、親とか孫とか兄弟とかいるじゃん、って思いがちですが、法律上、関係あるのは成人していない子供か、そんな子供を養育することになる残された配偶者、だけなのです。

年金額は、というと、配偶者がいるならば780,900円と対象となる子が最初の2名までは224,700円ずつ、3人目以降はその1/3にあたる74,900円が年金額に加算されます。配偶者がいないならば最初の子に780,900円と対象となる子のうち二番目からの最初の2名までは224,700円ずつ、3人目以降はその1/3にあたる74,900円が年金額に加算されます。どこかで見たことのある額ですね。配偶者加給年金額ですが、これとの違いは子供だけのケースというのがあるくらいです。ついでに言うと、上記では飛ばしましたが、障害基礎年金の受給の際に、もし対象となる家族がいるならば、同じ条件で同じ額が支払われることになります。もう一度言いますが、配偶者だけ、の場合には払われません。

遺族厚生年金の場合はまだいいものの

厚生年金の場合、被保険者か被保険者の時に初診日のある傷病で被保険者でなくなってから5年以内に亡くなった場合、第1級か第2級の障害厚生年金の受給者、あとは老齢厚生年金受給者で25年以上の保険納付もしくは免除期間がある人が亡くなった場合に、そのご遺族に、となりますが、亡くなった人と生計を一にしていた妻か、55歳以上の夫、(遺族基礎年金受給対象な)子供、55歳以上の両親、(遺族基礎年金受給対象な)孫、もしくは55歳以上の祖父母で、受給順位的に書いていますので上から誰かが受給権を得たら下の誰もが受給権を得ることはありません。しかも、55歳以上のなんとか、と書いてある人たちが受給開始できるのは60歳から、となっていますので、残された奥さん以外が受け取るまでは結構時間があるし、65歳になると自分の老齢年金の受給が始まるのでそれとどっちを取るか、という選択を迫られます。

しかも、年齢制限のない妻に対しても、もし30歳未満で受給権を得ても、5年間しか受け取れないそうで、再出発を強制してますね。。。

で、受け取れる額、については、老齢厚生年金の年金額の計算を、被保険者のそれまでの保険料の支払った額ベースで計算することになりますが、障害厚生年金同様300か月の最低保証があります。

案外、受給権を得るのが厳しいので

一応救済措置のようなもののご準備が、国民年金にはございます。何せ未成年の子か子のいる配偶者、って出生率が2未満な日本では結構厳しいですよね。死亡一時金というのがありまして、36ヶ月相当の保険料をちゃんと払っていれば、払った期間に合わせて払われるとはいえ、36ヶ月払った程度ですと12万円、420ヶ月払っていても32万円だけ、です。もらえるのは、遺族基礎年金を受け取れない、配偶者、子(子?と思いますよね。別れた奥さんについて行った子だけど生活費をお父さんから出してもらっている、というポジションだと、お父さんが再婚して子供がいない状態で亡くなっちゃったら、一応そういうことになりますが、ですが子の場合再婚相手が一時金を持っていくんですよね。。。)、父母、孫、祖父母、または兄弟(ここでやっと兄弟なんですよ。。。)となっております。

あと、もう一つのチャンスがあるのが、もしあなたが結婚して旦那さんに先立たれた場合、国民年金だと寡婦年金が、厚生年金だと中高齢の寡婦加算、というのがあります。

寡婦年金は、とはいえ60歳になってから65歳までの老齢年金がもらえるまでのつなぎとして 被保険者が老齢基礎年金でもらえたはずの金額の3/4 をもらえます。

で、この死亡一時金と寡婦年金とは、どちらかしかもらえませんから、そもそも選択肢があるのは奥様だけで、金額を見ればどっちを取ればいいかは一目瞭然ですよね。。。

中高齢の寡婦加算も、ざっくり言えば40歳から65歳までの間に満額の老齢基礎年金の3/4、言い換えると780,900 x 3/4 だから585,675円が支払われます。ですが、これは遺族基礎年金が給付されると支払いは停止されますから、40歳の時点で未成年の子がいる場合はその子が18歳になって遺族基礎年金が終わってしまうと切り替わりで中高齢の寡婦加算の給付が始まります。

で、この遺族年金も、労働基準法に基づく障害補償を受け取ることになると6年間支払い停止となっていますが、障害年金の時の議論の通り、労災保険で補償されればこれに当たらないので一般的にこの6年間の支払い停止にあたることはそうそうない、でしょうね。

まとめ

ということで、まぁ、年金を65歳より前にもらう方法はそこそこ大変、ということなのがお分かりいただけるかと思います。そもそも私的な保険制度だとスピーディーに対応できないところを補うための公的保険制度ですから、法律に基づいた事務処理で進められるメリットであり、ややこしさも含めたデメリットがある、ということになります。

が、言い換えると、これに依存するのではなく、別途自分でそれぞれに対して備える必要だけはあるよね、というのが見て取っていただけたらと思います。

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