tax planning って、実はいうほど(ぼそぼそ)

小人さん、寝ている間にやってくれませんか? 税金対応。。。
小人さん、寝ている間にやってくれませんか? 税金対応。。。
諸般の事情でいつも通りまた遅筆になってすみません。
個人的なサイトでやっとオフショア税制に対する非難轟々の世の中の声に対してまともな文章が書けたから、その勢いで、と思っていたら、モメンタムを失ってしまってました。

やっぱり継続的に書き続けなきゃいけませんねぇ。

は、さておいて。個人的なサイトで今が旬の学者さん集団に喧嘩を売ったわけですが当然相手にもされません。いや、いいんです、されても困りますから。でも、そこで触れたのがオフショアの税制の話なので、本当はここでもオフショアの税制とそれをオンショアで使うには、みたいな話をするのがいいのかもしれませんが、

FATCA

とかいう、某米国の富裕層の資産を国外に出さないようにするための法律のおかげ(いや、その前の JOBS 法とかもあるんだけど)で、世界中で高々3億人弱の国の1% いるかどうか分からない人たちの資金流出の捕捉に付き合わされるあたりから、クロスボーダーの資金の流れ、正確には非居住者の口座に関する情報の税務当局間開示ルールが出来上がりつつあるので、いわゆる租税回避、という観点での tax planning というのができない環境にある中においてはそうなると、

どこで税金を払うことが税負担の最小化を図れるか

という議論に変わりつつある、のが今時の流れ、といえます。というものの、なんでもいいから税金を減らしたい、なんていうモチベーションって働くんですよねぇ。なので、今回のお話。

ストラクチャリングと税金

さて。一般的にファンドの設立国を選ぶ時って、ファンド組成の観点でそれなりにしっかりした法制度(とそれを支える弁護士、会計士、アドミニストレーターの存在)があること、に続いて、税制上のメリット、謂わばキャピタルゲインが課税対象ではない、というメジャーな話から、ファンド投資の時の取引に掛かる証券取引税がかからないか、もしくは安価か、といったボディーブローのようにじわじわと効くものまで、様々な現地での「コスト」について考えるものです。

ですが、これと合わせて考えないといけないものとして、

投資家の居住する国とファンド設立国との間の租税条約
ファンド設立国と投資対象の所在国との間の租税条約

というものがあります。

前者は、とはいえ、ファンド設立国を導管としてみる(ということで、オフショアで設定したファンドで得た収益/損失を投資家の国で申告して納税する)ことがほとんどですので、ここは飛ばす(オンショア国で設定したファンドの場合は当然影響するので本来は考えるべきなのですが、あとでこの辺りにも触れる)こととします。

で、後者。案外これって気にしていないようで、こだわる人、というか、ここをこだわるとプロっぽく見えるらしいからかこだわるというかなんとかしようとする人が多いところ、なのですが。。。実際のところ、本源的な議論なの?と思うことが多いので、ちょっと深く話してみちゃいます。

で、ストラクチャリングでよくある勘違いなツボ

この手の話で一番(いや、本当に多いんです)多いのが、

ハイイールドボンドファンドを作りたいんだけど、クーポンに掛かる源泉税を回避したいから租税条約の観点でメリットの高いアイルランドでユニットトラスト作れないかなぁ。

という相談。その時についでに言われるのが

そういうことだから、現地に管理会社作ってくださいよー

えっと。。。こういう話をする(特に日系大手)証券会社な方々は、

お客の投資資金を最大限に活用するためなのだからそのコストは運用者が持つべきだ

的な発想がどこかにあるんでしょうねぇ。もしくは、そう思うのが当然くらいの勢い。でも、実際考えてみましょう。

よくある話

例えば、100億円相当のハイイールドボンドファンドがあるとします。このファンドはとりあえず、Markit iBoxx Global Developed Markets High Yield Index あたりをベンチマークにすることとすると(って、実はそんな ETF は iShares さんから出てますが)グローバル(と言いつつ、アセットの分布を単純に加重平均するとアメリカが6割強くらい)で、いくらハイイールドだからと言って、加重平均でのクーポンは。。。ざっくり平均 6.2%くらいらしい。

でも、例えば、アメリカで発行された債券のクーポンに対して、米国非居住者、例えばアメリカの外の国で設立されたファンド、への支払いの際には30% の源泉徴収税をかけていますので、 6.2% x (100-30)% = 4.34% だけがファンドの手元に届き、源泉徴収された 1.86% は税金として取られてしまいます。

100億の 1.86% は。。。まんまですね、1億8,600万円。もったいない。だからなんとかしたい。というのが主張です。

そのために、どうするか。ケイマン諸島だとアメリカと二重課税を回避する租税条約を結んでいないので、上記の課税が思いっきりかかってしまいます。で、そのファンドから日本の投資家に分配金を支払う、というとケイマン諸島では無税ですが、日本で 20% の源泉徴収が販売会社を通過するときに行われておしまい。日本の投資家の手元には、 4.34% x (100 – 20)% = 3.472% 、元々の 6.2% の 56%だけがたどり着いた計算になります。

なら、アメリカと租税条約を締結しているアイルランドならどうか?アメリカとアイルランドの租税条約のうち、income tax に関する条約が 1997年に締結されていて、それによると(Article 11)、相手国の料率に従う、とされていて、アイルランドの利金に対する課税が 20% なので、 6.2% x (100 – 20)% = 4.96% がファンドの手元に届き、源泉聴取されたのは 1.24%。ということは 1億 2,400万円。10%だけ減らせましたよねぇ。で、日本にたどり着くのが、 4.96% x (100 – 20)% = 3.968% と、元々の 64% となります。

で、そのための労力とコストって実際どうなの?

ということは、この年間 1億 2,400万円の課税負担を減らすためにアイルランドでユニットトラストを作ることのメリットが出るか、という議論になりますね。もし、日本に公募ファンドとして持ち込むとしたら、まず、現地に管理会社を設立して、現地で 3人ほど取締役を見つけて仕事をしてもらう必要があります。ちなみに、アイルランドでは最低でも 125,000ユーロか、3ヶ月分の会社運営経費のいずれかは最低資本で必要になります。日本の公募投信の管理会社への資本規制は会社の純資産が 5,000万円以上ですので、日本の規制を満たしていれば良さそうですが、ということは 5,000万円が会社で寝てしまう、と言う意味です。純資産なだけに。かつ、会社設立費用と、年間の維持費(住所を借りることから、年次登録費用、などなど、もちろん3人の取締役の役員報酬も含めて)を払わねばならないわけです。

で、もっと悩ましいのが、この維持費が仮に 1億 2,400万円を大幅にした回ろうが、そのコストをこのファンドが全部まかなってくれるか、という話です。前述の

お客の投資資金を最大限に活用するためなのだからそのコストは運用者が持つべきだ

という、意味不明の原理主義ですね。

で、大事なことを言い忘れていましたが、ちなみに、租税条約によって源泉徴収を負けてもらえる、ことになっていますが、源泉徴収の軽減の手続きをしないと軽減税率の適用にならなかったり、なったとしても実務的に多く源泉徴収されてしまうこともあります。その時は、

アメリカの税務当局に還付請求を行う

ことになるのですが。。。まぁ、スーパー時間がかかります。ものすごい手続きをやって疲れ果てた後に、忘れた頃に帰ってきます。だいたい、取られた年の翌年の10月くらい。これを未収収益にしてNAVを水増しすると、この税金を回収する前にファンドの全部を償還されたら、資金が戻る前に払うことになるので。。。資金が足りなくなりますね。こう言う時だけは現金主義というか実現主義の会計がコンサバでいいなぁ、と思っちゃいます。

まとめ

ええ、インセンティブ全くありません。

で、もっと大事なのが、実はこんな金利の減免措置ではなくて、キャピタルゲインに対する課税の観点なんですよねぇ。アイルランド、33%です (2015年現在)。ケイマン諸島、 0%です。仮に先ほどのファンドが一年で債券の入れ替えをして4億円(=ファンドのAUM でみて4%)の売却益を出したとしたら 4億円 * 33% = 1億3,200万円、のキャピタルゲイン課税があることになります。まぁ、一般的にアイルランド非居住者のみが投資するファンドと認定されれば非課税になりますが、スキームによってはこの辺りが使えないケースもあるので、

小事を追いかけて大事を逃す

なんてこともありえます。ということで、この税務周りは、専門家を入れながら、ファンドの期中だけでなくイグジットも念頭においた tax planning が必要よ、というメッセージでしたとさ。

オフショアでの商品設計はオフショアだけで完結。。。するはずがないっ!

商品のストラクチャーを考える時は こんな感じです。。。

と、泣き事のようなタイトルにしましたが、規制が少ない、と一般的に言われるオフショア。本当になんでもやりたい放題、と思われがちです。よく、「○○って出来ますか?」(いやいや、それやるならそのストラクチャーじゃなくってこっち使えば早いんだけど。。。)とか、「XXって感じでやりたんですけど。。。」(。。。やってもいいけど、あとで実務上絶対にハマるぞ。。。(汗))ってご相談を時折耳にします。

ファンド構造とやりたいことのギャップ、それと柔軟性の間にて

商品のストラクチャーを考える時は こんな感じです。。。
ええ、やろうとすれば大抵のことは3つの基本ストラクチャーの本来の構造を無視してでも出来る位、オフショアのファンドのための法制度は柔軟に出来るようです。でも、これって本質論を蔑ろにしている自己満足な技術的な議論では、なんですよね。例えばケイマン諸島。会社型でもユニット・トラストでも、LPS 型でも、当局への届け出については大別して3つのカテゴリーがあって、最低どれかに入れるべく、それぞれの条件(例えば関係者に当局への業法上の届け出がされているか、とか、投資家の数と最低投資金額と投資家の特性での制限だったりとか)に合わせねばなりませんから、極端な話、日本人の(当然ケイマン諸島では何事も無免許な)個人が数人で「君は受託会社で信託設定を宣言して、僕が一任運用者ってことで指名するってことでファンド作っちゃおうぜ。どうせ仲間うちなんだし」と、やったところでケイマン諸島の金融当局はさすがに受け入れません(笑)

The Mutual Fund (Japan) Regulation の罠

で、そんななんでもありなケイマン諸島に、面白いレギュレーションがあるんです。その名も “The Mutual Fund (Japan) Regulation”。名前からも想像が難くないのですが、日本での公募投信として設定するケイマン諸島籍のユニット・トラストはこのレギュレーションに合致しないといけませんよ、と言わんがばかりのレギュレーションです。で、実際、これを通すとどうなるかというと。。。日本での海外籍公募投資信託の規則といえば、日本証券業協会の定める「外国証券の取引に関する規則」の第16条にある、「外国投資信託受益証券の選別基準」を満たさねばならない、というものなのですが、このケイマン諸島のレギュレーションを満たしていれば自然とこれを満たす、という仕掛けになっています。それに対して、例えばEU 域内のどこかで設定された公募ファンドがEUのどの国でも公募ファンドとして販売を自由にできるようにした UCITS というものがありますが、このUCITS の基準を満たしたとしても必ずしも前述の外国投資信託受益証券の選別基準を満たすわけではないのです。でも、ケイマンはなぜか。。。

Japan Regulation の表向きの狙い

実は、このJapan Regulation はこの選別基準をそのまま採用しているからにほかならないのです。まことしやかに言われている話によれば(多分そのとおりだと思うのですが)、日本とケイマン諸島のそれぞれのファンド設立の際に起用される最大手の弁護士事務所2社が数多く設立されるケイマン諸島籍の日本の公募向けユニット・トラストの日本における選別基準の合致の確認について繰り返し弁護士意見書などで確認するのが非効率であると考えてレギュレーションにしてしまえ、と導入された、らしいです(その結果、これらの事務所の寡占がより進むだろう、とも考えたと言われてます(しーっ))。確かにケイマン諸島の当局のお墨付きとあれば意見書も書きやすく、日本証券業協会に届け出る代行協会員(当該ファンドを日本に持ち込む責任を負う証券会社)も安心です。で、当然ながら、ケイマン諸島の当局にこのレギュレーションの合致を確認してもらわず普通のファンドとして当局に届け出て、選別基準を合致していることを逐次確認することも出来ます。ケイマン当局に出すか出さないか、の問題でしかない、という話でもあるわけですが。。。

ちなみに、実はこんな裏話

で、面白いことに、もともとケイマン諸島のファンド関連法はバーミューダ諸島のファンド関連法の一部を(そのまま)コピーされている、とされていますが、元ネタであったバーミューダ諸島が 2007年4月にこれらの法改正をしたことで日本向け公募向けユニット・トラストの認可プロセスをそっくり作るのを忘れた、という珍事が発生しました。当時は再保険やアメリカ向けビジネスで潤っていたので日本のことをすっかり忘れた、ということらしいのですが、数年たち日本向けのビジネスが激減したことに気づいたバーミューダ諸島の当局が慌ててその島の最大手の弁護士事務所に認可プロセスを作らせようとしたところ、一箇所だけ頑なに拒んば部分があったのです。それは、ケイマン諸島における Japan Regulation だったのですが、理由がとても簡単で、今適切に認可条件を定めても、将来日本で選別基準を変更されたらそれに追随して変更せねばならないのが解せなかった、そうなのです。ちなみに、2012年頃にやっとバーミューダ諸島にも日本の公募向けユニット・トラストの認可プロセスが導入されましたが、その時には既にケイマン諸島が新規案件の大半を占めていたので改めて新しい法規制を金融庁に説明して認可を受ける、という余計な手間を誰もしたがらないので、みんな引き続きケイマン諸島籍に流れています。

さて、バーミューダ諸島の懸念は長い間起きなかったのですが、つい執筆時で2ヶ月ちょっと前に発生してしまいました。これでやっと本題に入れます。長い枕でした(笑)

日本の公募投信のルールが大きく変わった

2014年12月1日に日本の公募向け外国籍ユニット・トラストの選別基準に新しい条項が入りました。これは、国内の公募投信と国内の公募投信が投資先とするファンド・オブ・ファンズ等に適用するルールをある意味そのまま移植することで、外国籍公募投信が抜け道とならないように、という手当がなされた、というものです。

で、どんな条項が入ったかというと、コンセプトで説明するならば

  1. 投資信託は分散投資するのが基本なのだから、最低10銘柄の証券は保有しましょうね。
  2. デリバティブ取引は大きく資産評価が動きかねないし取引先の信用リスクに大きく依存しかねないほどリスクが高いから、ファンド全体の取引についてもそのリスク量が純資産の80%までしか取ってはいけませんよ。
で、それぞれを説明していくならば、まず比較的簡単な2. から。

デリバティブ規制

これはファンドの仕組み上、デリバティブ取引(金利/為替/株式/指数スワップ及びオプション、先物、先渡取引、などなど)を使うファンドというものがヘッジ目的でもそうでない(言い換えるならば、それ自身が投資目的という意味の)目的でも、増えてきているものの、それぞれの目的だからといって、リスク管理を怠ってはいけませんよ、という趣旨から(か?)、日々、デリバティブ取引のリスク量を適正な方法(例えば銀行でリスク管理するときに使う標準的手法とか、一般的なリスク管理で使われる VaR – Value at Riskとか、欧州の公募ファンド規制であるUCITs で求めているリスク管理手法と言った、一般に適正とされる方法)で算出して、それが純資産額の 80%を超えないようにしましょうね、ということを管理会社等(管理会社、もしくは運用者)が行っているファンドでなければ日本の公募市場に持ち込んじゃ駄目よ、というルールです。(ちなみに、ヘッジ目的でない場合のVaRなり標準的手法なりで計算する場合、デリバティブ取引だけでなく全体のポートフォリオで見なければならない、ともされています。)
言ってしまえば、単一のスワップに投資することが目的のファンドを作るときに、ファンドの目論見書に「これこれこういうスワップに入ること」が投資目的だからそれ通りにやっていればいいんだ、では日本に持ち込めない、ということなのです。ええ、私の昔の仕事そのままでは機能しない、という意味です。

集中投資規制

これはこれで、単純な単一資産/契約だけの仕組みもののファンドを許さない、ということの表れなのもしれませんが、1.はそれを厳密に全面に押し出した、といえます。というのも、これは正しくは「信用リスクの管理」という範疇において

信用リスクの適正な管理方法として、具体例として、一の者に係るエクスポージャーの投資信託財産の純資産総額に対する比率が次にあげる区分ごとのそれぞれ10% 、合計で20% を超えることのないように運用すること、および、価格、金利、通貨もしくは投資資産財産の純資産総額の変動等により当該比率を超えることとなった場合に、純資産価格の計算を行い、定められた比率を超えることが判明した日から一か月以内に当該比率以内となるよう調整を行い、通常の対応で一カ月以内に調整を行うことが困難な場合には、その事跡を明確にしたうえでできるだけ速やかに当該比率以内に調整を行う方法が考えられます。ただし、投資信託の設定当初、買戻し及び償還への対応並びに投資環境等の運用上やむを得ない事情があるときには、このような方法による必要はないと考えられます。

(a) 株式及び投資信託証券の保有:「株式等エクスポージャー」

(b) 有価証券(組合出資持ち分を含み、(a) に定めるものを除く)及び金銭債権((c) に該当するものを除く。)の保有:「債券等エクスポージャー」

(c) デリバティブ取引その他取引により生じる債権:「デリバティブ等エクスポージャー」

ということを行いなさい、と明示されました。特に上記の太字にしたところだけでも十分意味が通じるはずですが、要は、とある会社の発行する株式、債券、デリバティブ取引の3つにおいて、それぞれ 10%以下までなら持てます、もし複数のカテゴリーに渡って持つならば合計でも 20%以下までなら持てます、ということなのです。で、これですが、計算方法にリスクの考え方を入れるわけですからちょっと調整が入りまして。。。

まずは簡単なところで

なお、それぞれの計算方法については次の通り。
(a) 及び(b) は、当該有価証券及び金銭債権(以下「有価証券等」)を発行もしくは組成した者または債券の相手方(以下「発行体等」)に対するものとし、保有評価額または債権額(担保付取引の場合には当該担保の評価額、当該発行者等に対する債務がある場合には当該債務額を差し引くことが出来る。以下同じ)をもってエクスポージャーとすることが考えられます。
なお、次に掲げる有価証券等についてはエクスポージャーをゼロとすることが考えられます。

  1. 信用力が高いと認められる国等の中央政府、中央銀行、もしくは地方政府またはこれらが設立した政府機関の発行または保証する債権
  2. 現地通貨建ての中央政府、中央銀行、もしくは地方政府またはこれらが設立した政府機関の発行または保証する債権
  3. 国際機関の発行又は保証する債権
  4. コールローン、預金、CP(短期社債等を含む)、海外CDまたは金商法第2条第1項第18号に定める有価証券(第1号に定めるものを除く)については、満期までの期間が120日以内のもの
  5. 一か月以内の現先取引またはリバースレポ取引で、保有する有価証券等(上記1. から4. までに定めるものを除く)

このうち、信用力の高いと認められる国等とは、日本、アイルランド、アメリカ合衆国、イタリア、オーストラリア、オーストリア、オランダ王国、カナダ、UK 、シンガポール、スイス、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ドイツ、ニュージーランド、ノルウェー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポルトガル、ルクセンブルク、香港、とされています。

とすると、私の2009年までの仕事は一つ、もしくはあっても2つの発行体の債券だけを保有する、ということは、ほぼ100%(2つの発行体の場合はそれでも、それぞれ10%を超える)のエクスポージャーなのでこれも出来ない、ということになります。

で、残るデリバティブ取引ですが、

(c) について、まず、下記のような取引を想定しています。

  1. デリバティブ取引
  2. 為替予約取引
  3. 信用取引(売付を目的としたものに限ります)
  4. 株式の借り入れ(売付を目的としたものに限ります)
  5. 有価証券の貸付
  6. 証券貸借取引(レポ、現金担保付債券借り入れ(「リバース・レポ取引」))
  7. 債権の借り入れ(リバース・レポ取引を含みます。)
  8. 債券(転換社債券、他社株転換可能債券、新株引受権付社債券及び新株予約券付社債券を除く)の空売り
  9. 現先取引(債券、CD、CP に係るものに限ります。)
  10. 金銭の貸し付け
  11. 資金の借り入れ(コール市場を通じたもの取引も含みます。)
  12. 外国為替の取引(2. に該当するものを除きます。)
  13. 発行日決済取引

このうち、為替予約取引(店頭デリバティブ取引に該当するものを除きます。)のエクスポージャーは取引の相手方に対するものとし、たとえば予約期日に応じてそれぞれ次の定めによることが考えられます。

  1. 120日以内に予約期日が到来するものについてはゼロ。
  2. 120日を超えるものについては、評価益の額をエクスポージャーとする。

おっと。為替予約取引のうち 120日以内に期日が来るものはゼロ、って、これは不思議ですね。これのお陰で、いわゆる通貨クラスの商品における高分配を下支えする高金利通貨との為替フォワードのほとんどが無罪放免になります(通常最大一ヶ月のロールですからね。)何故かアメリカのCFTC のルールでもこの120日以内の為替予約取引は対象外、のような話もあるので、この商品の取扱いというのはある意味需要や取引量などなどの観点で例外扱いなのでしょう。さて、これの続きを読み進めていきましょう。

これを除くデリバティブ等エクスポージャーの算出方法は、有価証券の発行者等及び取引の相手方に対するものとし、たとえば、それぞれ次の定めるものによることが考えられます。

  1. 有価証券の発行者等に対するエクスポージャーは、デリバティブ取引のうち有価証券等を対象(原資産)とするものについては、それぞれ次のように定めるところによる(ただし、原資産が上記の発行体によりエクスポージャーをゼロとできる有価証券等である場合を除きます。)ものとし、デリバティブ取引のうち、金融指標等(利子率、為替レート、株式指数、先物取引等)を対象とするものその他のデリバティブ取引等についてはゼロとする。
    1. 先物取引の買いについては、当該先物の評価額をエクスポージャーとする
    2. 先物取引の売りについては、エクスポージャーをゼロとする。
    3. コールオプションの買い及びプットオプションの売りについては、当該取引の店頭デリバティブ取引のうち、権利の数に原資産の価格を乗じた額をエクスポージャーとする。ただし、原資産の変化率に対するオプションの価格の感応度(デルタ)を勘案して計算することができるものとする。
    4. コールオプションの売り及びプットオプションの買いについては、エクスポージャーをゼロとする。
  2. 取引の相手方に対するエクスポージャーについては、それぞれ次に定めるところによるものとする。
    1. 市場デリバティブ取引及び外国市場デリバティブ取引についてはゼロ
    2. デリバティブ取引等(i. 及び為替予約取引を除く)については、評価益の額(当該取引に担保または証拠金が差し入れられている場合(クリアリングハウスで決済する場合を含む)には、当該担保または証拠金の評価額を差し引きものとする。)をエクスポージャーとする。

要はデリバティブ取引ですので、取引の相手方のリスクは当然として、取引にて参照する有価証券を持つという想定があることからその有価証券の発行体のリスクも勘案する、という、というダブルカウントをするそうです。が、大抵の場合、ここでいう金融指数等にまずなってしまう(それが幾ら独自にカスタマイズされた指数であっても、原資産自体が存在しないことにより)ので、たいていはゼロとみなして考えると、あとは取引の相手方のエクスポージャーとなり、これは評価益、すなわち負けていれば考える必要はなく、勝っていれば勝ち分を見ましょう、ということのようです。まぁ、そうですよね。勝ち分が将来引き渡されるわけですからそこだけ見ればいい訳です。ということは、実はデリバティブ取引の場合、取引開始当初は 0% のエクスポージャー、ということでもあります。

でも、ということは、この勝ち分が10%を超えてしまうといけない、ということでもあり、ある意味違和感がありますよね。といって、10%になりそうなら一旦デリバティブ取引を精算してファンドに取引相手から 10%程度の勝ち分の現金を払ってもらってデリバティブ取引を再度開始する(ことでエクスポージャーを0に戻す)、という回避の方法も考ええますが、精算する前の取引と同条件で取引に入れるとは限らない訳ですのであまり現実的でもなさそうですね。

回避スキーム?

まぁ、一つ思いつくところで、担保による相殺というルールを使うなら、差額決済のデリバティブ取引ではなく、full-funded swap といって、取引当初にファンドが取引相手に取引元本相当額を支払い、反対に取引相手はファンドに当初は取引元本相当額の担保を供出し、その後は評価額が増えるに従って取引相手から担保の追加供出を受ける、という取引にすれば、基本的に取引の評価額は想定元本に本来の経済効果の勝ち負けを合計した額になる一方で、取引相手から掛かる評価額相当額の担保が常に供出されているため評価額の全額が相殺されて常に 0になる、ことになります。こうすることで、ファンドが上記の定義による信用リスクが全くない状態で常に運営されていくことになります。

ただ、そのためには担保が基本的には「信用力の高いとされる国の国債」が使われる必要があって、この手の案件をするときにポジションのヘッジのために取引相手とされる会社さんが取得する株や社債がそのまま使えない、といって国債を塩漬けにするようなコストの高いことが出来ない、という声も実はちらほら聞こえています。また、信用リスクが 0になったとしても、デリバティブ取引の日々のリスク管理の観点でちゃんと80%の枠に収まっていることが日々管理できるかどうかは、管理会社もしくは運用者の実務的体制に大きく依存する、というか、ここまで来ると、ストラクチャーだけでは解決できない、実務インフラの要求レベルへの対応、という話に変わってきてしまいます(笑)

ということで、まぁ、これはオンショアの包括的要求がオフショアでの商品設計に大きく影響を与える一例、という、まぁ、長ったらしい話になってしまいましたが、本来はこれを持ち出すまでもなく、投資家、投資対象国、そしてファンド組成地の3つの間にある租税条約の基づくタックス・プランニングも、ファンドの組成に大きな要素ともなります。とはいえ、何故か日本ではこのタックス・プランニングをしさえすればほぼストラクチャリングは終わった、みたいな考えになる人が多いようですが、実際は最終的な投資効果に影響するのは税制だけではなくトータルのコストも合わせて勘案せねばならない、のですよ。なにせ、税金以上に余計なタックスブロッカーを作ったら意味が無いわけですしね。

ええ、ちょっと個人的にこの公募ファンドのルール改正をどこかで解説したかっただけ、なのです(笑)

投資信託にだって特殊な報酬システムがあるんです – CDSC のお話

いくら簡単な手数料計算とはいえ、そろばんでは。。。
いくら簡単な手数料計算とはいえ、そろばんでは。。。
前回まで、ヘッジファンドやプライベート・エクイティといった、私募ファンドでも「特殊な」運用手法を使った投資ファンド特有の報酬システムとその考え方についてご説明したのですが、まぁ、これはその「特殊な」運用の結果を運用者と投資家とそれぞれの役割(運用手法とその結果を提供するという運用者と、結果を出すための資本を提供することの出来るリスクの取れる投資家)に見合うだろう報酬システム、なわけですが、単純に報酬システムだけをとってみれば、受託資産に連動する報酬システムを採用している投資信託から見れば特殊なもの、と見えますよね。なにせ、投資信託とは不特定多数の投資家の資産を運用する、という性質上、報酬システムに(投資のタイミングや額などといった投資家間の個人差に対する)柔軟性というものがあることが

公平性に欠ける

とされてしまいますので、いつでもどの投資金額でも入れる rest of us な私達が投資できる公募の投資信託の報酬システムは、どうしたって最大公約数な報酬体系、すなわち、今日の資産に対して幾らという受託資産に対して比例する報酬を課する信託報酬、に収斂してしまいます。

でも。

報酬システムにもう一つ自由度のある部分があるんです。

CDSC – 購入時手数料のないファンドの裏側へようこそ

それは、投資する時と投資を完了して買い戻すときに課される販売手数料と償還手数料、です。これは日本ならば事実上、ファンドを販売する証券会社に支払われるものですが、幾ら手数料を取るか、というのは、投資額などに対して証券会社サイドで明示された報酬テーブルを上限として徴収することが出来るようになっているので、売りやすさとの兼ね合いで調整される部分、という位置づけになっています。

そもそも手数料の位置付けと意味合いって?

ん?日本の公募投資信託でしょ?販売手数料は確かにx.xx% を上限とし、という表現があるけれども、償還/解約手数料ってなくて信託留保金が一律に掛かるだけじゃない、と思ったあなた、さすがです。よくご存知で。そうなんです。日本の公募投資ですと、「手前」というか投資するときに販売手数料を取り、運用期間中に信託報酬を支払い、投資終了時にファンドの解体などの費用をみんなで一律に負担しよう、というか、ファンドをたたむのにもいろいろコストが掛かるんですよ、実は。なので、その費用を投資に参加した人が一部負担しよう、ということで掛かるのがこの信託留保金というものなのです。

でも。上を改めて見ると。。。信託報酬と信託留保金はファンドの維持や運営、そして終了のために使われる報酬等なので、運用を任せる側としてはまだ払う意味が見えますよね(とはいえ、これだって高いのはいや、という声が聞こえて、結構今では誰もがキツキツでやっていますが。。。)。でも、販売手数料って。。。

販売する証券会社に全部いくんでしょ?(はい、行きます。
紹介して売ってそれだけじゃない?(まぁ、販売するためにあれこれ説明したりしますので。。。
期中だって信託報酬の一部を持って行くじゃない?(あれは期中のお客様への運用報告書などのフォローアップの手間賃ですから。。。

なんて事情を鑑みると、これは心情的にも払いたくないし、実際、投資するのに、100じゃなくて例えば手数料の 3 を載せた 103からスタートするのとでは運用のリターンを回収するのに影響するので、という観点でも嫌がられますよ。実際税務上の収益計算するときには、

収益 =(売却代金 – 買戻手数料-信託留保金) – (取得代金 + 販売手数料)

と、手数料等は取引価格に入れていいそうですから。。。

ノーロードファンド、万歳?って誰の言葉?

その御蔭で、手数料のかからないノーロードファンドが売りやすいし、売れるのも事実です。しかも、世の中には変な統計を取る人がいて、

販売手数料とファンドのパフォーマンスに相関性はない

なんて結論を出した人がいるそうな。一応、ハイリスク・ハイリターンほどフィーが高くなる、らしいのですが。。。

そこで、こういう手数料体系はどう?

販売手数料を最初に取らないことで売りやすくする一方で、販売する証券会社にとって適切なフィーを取る仕掛けはないのか、なんて考える人がいまして、そこで考えだされた方法が今回のタイトルにある CDSC (Contingent Deferred Sales Commission) というもの。英文を見ただけでその意味は。。。よくわからないですよねぇ。これは別名 Bシェアとかシティバンク(現SMBC信託/プレスティア)の昔あった既に滅びたワンハンドレッド、とも呼ばれる手数料体系で、何かといえば

販売報酬の後払い

というものです。例えば、販売手数料を 0% にする代わりに

  • 最初の一年以内に買い戻したら 4%
  • 次の一年以内に買い戻したら 3%
  • その次の一年以内に買い戻したら 2%
  • さらに次の一年以内に買い戻したら 1%
  • 4年を超えて保有した後に買い戻したら 0%

と買戻し手数料を導入する、というものです。こうすることで、投資家に対して長期保有を促すことも期待できる、ということもあり、実は一時期ちょっとした注目を浴びて導入を検討した証券会社さんも少なくはない一方で、実際に導入できたファンドは結構限られています。それにはいくつかの事情があるのです。。。

CDSC を導入するいくつもの壁

まずは、上記の、買戻し手数料を日本の投資信託には入れられないよね、という問題。実際にも、商品性の柔軟な外国籍公募投資信託では導入出来ますので、この手の商品の大半は外国籍公募投資信託、ではあるのですが、国内投信であっても、単純に国内投信で直接資産を保有するスキームはもとより、外国籍公募投資信託に投資する、いわゆるファンド・オブ・ファンズのタイプであれば、国内投信の投資するファンド・オブ・ファンズレベルで買い戻し手数料を控除した純資産価格を投資先ファンドの評価として計算すれば一応国内投信でも可能になります。

とはいえ、外国籍公募投資信託ですら、簡単にこれが導入できるのは単位型、すなわち全ての投資家が同じタイミングで投資を始める場合、に限られます。なぜか。単位型であれば誰もが同じ投資期間ですから、外国籍公募投資信託レベルで単純に買戻し手数料を控除すればいいだけなのに対して、途中参加者を許容する追加型のファンドの場合には、実際の投資を行っている個人や企業レベルの投資家の投資期間に応じて手数料を取るべきなのですが、外国籍公募投資信託の場合、ファンドのレベルで投資家の名義はかかる証券会社ひとつになるので、証券会社の裏側では投資家が 100名いてもそのファンドの追加投資を誰かがした、とか幾らで売ったという匿名レベルの情報しかファンド側にはこないですから、個別の投資家レベルでの動きは認知できるはずもないのです。

もちろん、無理に毎日新しいクラスを作ってその日の買い付けをした投資分をそのクラスにあてて、投資家が買い戻しを依頼するときにその投資家の持つクラスを first-in-first-out で買戻をすれば実現可能かもしれません。ですが、どうみてもそんな顧客管理とともに各クラスとのヒモ付を行う、という時点で複雑すぎることになります。

既に分かる通り、

どの投資家がどれだけの期間を保有したか

を管理できる立場にあるのは、販売会社ただ一人、となるので、実は、追加型の投信でCDSCを販売するには、顧客の管理システムでそれを出来るようにして、前述のようなクラスなんてことをせずに、普通にファンドからの買戻しを全額受け取って、販売会社で報酬を控除するほか実現するのが一番事故の少ない方法と言えます。

さて。

対投資家さんは、なんとかキャッシュフローは作れそうですが、でも、これを販売会社の立場で考えるとどうなのでしょう。実際販売の手間を最初にかけるのに、その報酬が、先ほどの買戻手数料ですが、このテーブルが入っていると、実際には、最初の4年間、毎年1%ずつファンドから取られていきます。これによって、4年未満の投資家も、4年以上の投資家も等しく4%を負担するのですが、それでも、4年間掛けてフィーを回収していく、と思えるでしょうか。売ったら売っただけの報酬を販売員に払わねばならないのですから、売った時に欲しい、というのが実情です。

そこで、実際には、最初に売った時(追加型なら適宜売れた時に)売れた額に対応する報酬を誰かが建て替えて販売会社等に支払っています。それを、ファンドの期中や途中で買い戻された時の買戻手数料で、回収している、ということで、普通のファンドとほぼ同じような取り扱いであり、報酬負担をさせられているということがわかりますね(笑)

以上が表に出てこないお話だったりします(笑)

オルタナティブ投資のインセンティブ・フィーの計算って(ヘッジ ・ファンド編)

このお肉を切り分けるようにパフォーマンスフィーを分けられるかな。。。
このお肉を切り分けるようにパフォーマンスフィーを分けられるかな。。。
ということで、オルタナ投資のメジャーなもう一つといえばヘッジファンド。
これのインセンティブ ・フィーというのは、サラリーマンにして長者番付トップなんてのをその昔は作り出したくらいなので、それはそれなりに有名な話。

いわゆる 2%/20% (two-twenty) という報酬体系ね。

といっても、もしかしたら未だもって投資信託しか知らなーい、という読者が間違えて来ちゃうかもしれないので、軽い比較を用いて説明するとしたら、

日本の投資信託の「信託報酬」というのはお預かりする資産(通常は純資産、正確に言えばこの信託報酬とやらの前日までの控除後の資産)から、その日の純資産額に信託報酬のレートをかけて日割りすることで差っ引かれるので、いい日も悪い日も、預けている資産ベースで取られます。というか、規制でそう決めてるから、ということでそういう報酬体系でやってね、というのが日本の投資信託だったり、アメリカの mutual funds だったりします。

それに対して、私募というのはそういう縛りに締め付けられないので、報酬だって好きなように投資家と相対で決めることができます。例えば、パフォーマンスフィーのように、元本を超えるリターンをあげたら、その2割はもらいます、とか、最初の 100億までは通常の 75%の運用報酬しか取りません、などなど。もちろん、それらを達成するために運用方針も、投資信託ならちゃんと資産を分散することでリスクを軽減させるようにする、とか無限のロスのリスクを負わないために売り建ててはいけないとか、勝てば倍儲かるけど負けると倍負けるような、レバレッジをかけるためにローンを借りてはいけない、とかすぐに資金化出来ないような資産に投資しないとか、全ては投資家保護の名のもとに規制される様々な縛りを全部取っ払って、ある意味儲けるために手段を選ばないし、その結果反対にゼロになるくらい大きな損を被っても(むかつきはすれど)金融庁などに「インチキだ」と駆け込むことなく、選んだ自分と市場とタイミングが合わなかったんだ、とちゃんと諦められるプロの投資家に対してだけ提供するべくデザインされているのです。

で、本題。

ヘッジファンドのインセンティブフィーってそもそもどういうもの?

前述のいわゆる 2%/20% (two-twenty) という報酬体系。まぁ、これが
1.5% / 15% になってもいいのですが、前者の 1.5% とか 2% という奴はいわゆる基本となる運用報酬、投資信託でいうところの信託報酬なんかに相当する部分。なので、ファンドが勝っても負けても払わなければいけない報酬なので、特段問題はないのですが、後者の 15% とか 20%というのは、当初投資家さんから預かった資金から増やした部分について、15%なり 20%なりを報酬としていただきますよ、という成功報酬に相当する部分なのです。
と考えると、前者はファンドが勝っている時に参加しようが負けている時に参加しようがそれぞれの持ち分に比例して負担額が一定の比率で充てがわれるので特段問題はないです。問題は、成功報酬、というものの習性です。

インセンティブフィーの仕組み

例えば、2/20 のファンドを今日始めます、というタイミングで投資家Aと B と C が入ったならば、みんな同じタイミングですので、それぞれの投資家さんの投資持ち分の単位あたりの元本(例えば便宜上 USD 100.00としましょうか)というのはみんな一緒ですので、成功報酬の計算方法も投資持ち分の単位あたり USD 100.00 を超えた部分に 20%をかけて、何単位を持っているか掛ければおしまい、という単純計算で終わる話なのです。が。

投資家の間で公平に取るには悩ましい問題に化ける。。。

例えば、前述のファンドが一ヶ月経って、ちょっと負けたので投資持ち分の単位あたり USD 95.00 になったとします(以降、単純に投資持ち分の単価あたり、といった場合には成功報酬を含めた運用関連の報酬や費用がすべて控除されていると思ってください。言い換えると、成功報酬の控除前の話をするときには「成功報酬の控除前の」投資持ち分の単位あたり、と前置きますのでご注意を)。そこで入る投資家 D と最初に入った投資家 A (でも Bでも Cでもいいのですが) との違いを見てみましょう。

もし、このファンドがひたすら下がれば、当然成功報酬なんて発生しないで怒りだけが積み上がるので考えなくともいいのですが、翌月に投資持ち分の単位あたり USD 100.00 に戻ったとします。投資家 A の立場で考えると当然元に戻っただけなので成功報酬など発生しません(というか、早く USD 100を超えろよ、と思っています)。でも、投資家 D の立場から見ると、スタートが USD 95.00ですので、USD 5ほどこのファンドマネジャーは稼いでくれたことになります。とすると、20%の報酬に相当する USD 1 を払う必要が出てきます。

更に翌月に投資持ち分の単位あたり USD 104.00になるケースを考えると、USD 100.00から成功報酬の控除前の投資持ち分の単位あたり105.00 で、USD 5稼いでいるので 20% の USD 1を成功報酬を控除して USD 104.00になっているので、投資家 D からすれば USD 95.00から USD 105.00までの USD 10.00 を稼いでいるので USD 2を成功報酬として徴収する必要があるのに USD 1.00しか控除していないことになって、同じファンドの同じ条件で入っている投資家 A (や Bや C) からみると不公平になってしまいます。

Equalisation という年次清算の考え方

さて、どうしたらいいでしょう。

もし、このタイミングで投資家 Dがファンド投資をやめれば、そこで買戻しの代金の一部から 投資持ち分の単位あたりUSD 1に相当する額を追加で控除して払い出せば調整終了となりますが、これではファンドから出るときだけしか回収できないので、ファンドマネジャーとしてはそこまで待っていられないし、未回収の USD 1 から複利で運用している/されている状態なのも監査の観点から見てあまり健全とはいえないかもしれません。

そこで、財務年度末にこのような不公平を是正する Equalisation ということを行います。このケースの場合、USD  95から USD 100 に持ち上げた分の成功報酬に相当する投資持ち分の単位あたりUSD 1をファンド(を経由してファンドマネジャー)が回収するには、相当額分の投資持ち分を強制に買い戻して、その買戻し代金を追加の成功報酬分として徴収するのです。こうすれば、次の財務年度の開始時点では投資家Dは他の投資家 A (やBやC)と同条件になるのです。

まぁ、これはまだわかりやすいシナリオでの調整の仕方です。ですが実は、もう一つの厄介なシナリオがあるのですが。。。

いつでも公平に取る、というのはややこしや。。。

前述からの例で行くと。。。今ファンドの投資持ち分の単位あたり USD 104.00でしたね。ここで投資家 E が入ったとします。

で、このファンドが USD 108.00 まで上昇して財務年度末を迎えたとしましょうか。ちなみに、この時、成功報酬控除前の投資持ち分の単位あたり USD 110.00 になります。 って、計算が面倒なので都合のいい数字を使っているのがバレバレですが(笑)

そうすると、投資家 Aから Cについては、USD 100.00から入って、USD 110.00まで稼いで貰ったので上昇分のUSD 10 (=110-100) について成功報酬を 20% 、すなわち USD 2 (=10 x 20%) を払うので投資家の手元には USD 108 (=110 -2 )残ることになります。
Dについては、先ほどの強制買い取りのルールでちゃんと調整された後 USD 108になるので割愛しますね。

で、問題は投資家E。単純に考えると、USD 104で入って、そこからの上昇分に対して成功報酬を払えばいいのだから、となるのですが、計算ロジック上この投資家Eの基準点はどこになるのかが悩ましい。というのも、お気づきかもしれませんが、ファンドの取引価格に成功報酬を控除した後の価格で表示しているようにみえるのですが、成功報酬の計算が関係する以上どうしてもパフォーマンスを控除前で考えておくほうがフェアな計算が出来そうなので、そちらで考えてみましょう。実際、ファンドマネジャーも控除前の資産を運用していて、成功報酬は経理上の数値に過ぎず、報酬が支払われるのは少なくともequalisation を行う財務年度末以降なのですから。。。

投資家Eが入るタイミングでは控除前はUSD 105、財務年度末は USD 110 なので 5 儲けたので 1 (=5 x 20%) が成功報酬として支払われるべき、となるのですが、控除前が USD 110 となると、この投資家 Eだけ控除後の値段が USD  109 (=110 -1 )となるので他の投資家の USD 108 と調整 (equalisation) が必要になります。調整すべきは USD 1。これはどこに隠れているでしょう。。。

あ、控除前の USD 105と控除後の USD 4の差ですね。

言い換えると、投資家 E は投資する際に、控除後の USD 104 をファンドに入れるのではなく、控除前の USD 105 をファンドに入れていることで初めて、というか他の既存の投資家AからD と公平になるような、上記のシチュエーションが出来上がるのです。

でも、この USD 1はどうしましょうか。投資家 E に equalisation の時に返しましょうか。いえいえ。せっかくファンドにお金を入れて頂いているので、これはequalisation の一環として、財務年度末時点の単位あたりの価格で強制的にこのUSD 1で買っていただくことで調整します。このUSD 1 に相当する部分は equalisation credit と呼ばれています。なぜでしょう。その理由は上記のシナリオがバラ色すぎるからなのです。

というのも、次のケースを考えてみましょう。
控除後がUSD 104、ということは控除前が USD 105 で投資家が Eで入り、財務年度末に USD 100と、設定当初に戻ってしまった場合です。この場合、投資家 A/B/C の立場で考えると、成功報酬の控除は起きませんね。なにせ、USD 100で始まって USD 100で終わるのですから。では、投資家 Eの場合はどうでしょう。単純に控除前が USD 105で始まり、控除前が USD 100で終わっていますので当然成功報酬を支払う必要などありませんね。目減りしているくらいですから。

でも、ちょっと不思議ですよね。投資するときに成功報酬控除後の投資持ち分の単位のパフォーマンスをみて良さそうだから投資すると決めたのに、いざ入ってみると成功報酬の控除前の単価で入るなんて。これでは投資家 A のこの期間のパフォーマンスは -3.84% (=[100/104 – 1] x 100) なのに、投資家 Eだけ同じ期間で -4.76% (= [100/105 -1] x 100) となっておかしくなります。といって、入るときに控除後の USD  104しかいれない、となると前述のように投資時点での他の投資家と条件が同じにならなくなるのです。

そのため、控除前の価格で入るものの、控除後の価格とequalisation credit を持つ、ということで、従前から入る投資家と条件を公平にする、という手当が必要になった、というもので、強制買い付けは equalisation credit が途中で入ってからequalisation されるまでの間もファンドに資金として入っていることからそのまま運用資産となるため持ち分に正式に組み入れる手続きとするためなのです。

ただ、儲かっているときは、まぁ、いいですよね。問題は負けたとき、です。上記の負けているシナリオのように、equalisation creditは消滅するリスクを負っています。まぁ、既存の投資家の同じ期間の成功報酬控除前の持ち分も同じ状態ですから一緒といえば一緒、なのですが、投資家Eの gross の投資評価という観点で見るとどうしても、これは -3.84% の運用ではなく -4.76% の運用、と見ざるをえないことは否定できません。

まぁ、儲かっていれば、なんて言ってしまいましたが、よくよく計算すると、アップサイドのシナリオでも、投資家 A のように成功報酬控除後でUSD 104->USD 108 となった場合は 3.84% ですが、投資家E の観点では結局 USD 105->USD 109 (USD 104->USD 108 に equalisation credit の USD 1がやっと投資持ち分換算されるので 108+1 = 109 と同じ) の3.80%になります。後から入ると実はちょっと不利、のように見えますねぇ。でも、最初から、もしくは各財務年度末にリセットされたところから最大 11ヶ月の遅れて入ってきた分様子見をして入ってきている訳ですから、この分だけリスク・リターンの上で調整されている、と思うほかないかもしれませんね。

ヘッジファンドを公募に!

さてさて。
ヘッジファンド投資って、それでも絶対リターン追求という観点で魅力的なので公募ファンドで募集したい!なんて声がそれでも聞こえるのですが、じゃあ、単純に日本の公募ファンドで海外のヘッジファンドを買ったら実現できないか?というと、諸般の事情で出来ません(きっぱり)ダメな理由をもしあげるとするならば。。。

 

  • 公募投信の投資できる海外ファンドの制限があって、例えばファンドで出来る借りいれは純資産価格を10%を超えてはいけない、とか、空売りは純資産価格を超えては行けない、など、公募投信そのものの投資制限とほぼ同じ制限があるので、通常のヘッジファンドの運用方針にそぐわない
  • 流動性の観点で、通常日次流動性を提供し、一般的に当日買い付け/買い戻しを受け付けて数日後に取引の決済を行う公募ファンドに対して、通常のヘッジファンドが月次流動性で、買い付けは取引日の数日前に資金の送金と同時、買戻しは取引後から数週間から一ヶ月以上後、という大きなギャップがある

のが一般的な理由なのですが、今までの成功報酬も一般的な日本の公募ファンドや私募ファンドで買い付けるのに難しい理由の一つに挙げられます。というのも、追加型のファンド、すなわちいつでも投資できる(というか、投資機会が設定時一回きりではない)ファンドの場合、投資家が複数、しかもバラバラのタイミングで投資してきたとします。しかし、海外のヘッジファンドの立場からすると、バラバラに日本のファンドが追加投資してきているだけ、にしか見えないため、国内のファンドの個別の投資家の間の成功報酬の調整を国内ファンドレベルでせねばならなくなるのですが、通常、そのような個別の管理は出来ない、というのが一般的です。ですので、もしやるとしたら、各投資家が同じ条件で入れる単位型、すなわち設定時のみ投資可能、という場合のみになるのです。なので、もし継続的に投資したい、となると、毎月毎月単位型を設定していくことになるので非効率、というかコストが高止まりしてしまう、というのが実務的な現実のようです。

ファンド・オブ・ファンズ、それは悩ましき定義

一つのバスケットにあれこれいれる、ようにファンドをあれこれ複数入れるのが、ファンドオブファンズ、なのですが。。。

本当は、ヘッジファンドのパフォーマンス・フィーの技術的チャレンジの話を書いて、プライベート・エクイティとの対比でもしよう、と思っていたのですが、その前に、ちょうど書いている 2014年10月の今現在、日本の公募投資信託周辺でいろいろと動きがあっていろいろ悩ましい、というところで、再度表題でも考え直してみようかな、なんて思ったのです。

一つのバスケットにあれこれいれる、ようにファンドをあれこれ複数入れるのが、ファンドオブファンズ、なのですが。。。
オルタナティブ投資をやっている人の観点で、「ファンド・オブ・ファンズ」という言葉を聞くと、一つのファンドから複数のヘッジファンド、もしくは複数のプライベート・エクイティ・ファンドに投資することで、単一戦略への偏重の是正というかロングオンリーにないリスク特性のある証券ポートフォリオを構築する事が出来たり、特殊/特徴的な未公開株投資機会の提供を得たりするもの、その特徴を作り出したり投資家に対するレポーティングのサポートをするのがゲートキーパーの腕の見せ所、と、いうのが一般的な反応かと思います。というか、ここに来るような人は大抵はオルタナ系な方のはずなので、うんうん、とうなづくかと思うのですが、これが日本の投資信託の世界でのファンド・オブ・ファンズ、という言葉の使われ方が、ちょっと違ったりするんです。

ファンド・オブ・ファンズを考える前に

日本の公募投資信託が海外の資産や運用戦略にアクセスしようとする時に、まず一義的に何をするかといえば、公募投信の器で海外の外貨建て資産を取得し、そのために運用戦略を行う運用者を副運用者として任命することで実現可能、のはず、なのです。こんな感じで。

fig_1
たまに(本当にごくたまに)しかこの形態はみませんね。例えば海外資産の保有や決済に関する制限があるのかもしれませんし、運用者と副運用者の連携の問題もあるかもしれませんし、そのあたりは問わずに置きましょう。で、大多数で見るのが多分こんな感じかと思います。
fig_2
はい、世界的な(?)Zアセットさんの運用実績のあるファンドを公募投信の資産のほぼ全額買う事で、そのトラックレコードも運用手法も手に入れる事が可能になります。まぁ、このままですと外貨建てのケースも多いので、国内投信レベルでヘッジする、しない、だけでなく、海外ファンドB に円建てクラスを作ってもらう、さらに円ヘッジをしたクラスを作ってもらう、さらにさらに現地通貨ショート/ブラジルレアルロングのFXフォワードオーバーレイを載せる、などなど、いろいろとバリエーションが広がります(笑)

ファンド・オブ・ファンズとその規制

で、これを国内公募投信では「一般的に」ファンド・オブ・ファンズ形態と呼んだりします。ね?ここでまず、はてなマーク一つ出来ますよね?ケイマン諸島籍ファンドの世界だと、これはB がマスターファンドで、Aが日本向けの日本籍フィーダーファンド、という立ち位置になるんですから。。。

さて。この世界では、ファンド・オブ・ファンズを2階建てと呼ぶ時に、3階建て、すなわち「ファンド・オブ・ファンド・オブ・ファンズ」は駄目よ、というルールがあります。正確に言うならば、

国内公募投資信託は、ファンド・オブ・ファンズに投資してはいけない

というものなのですが、実は結構これが微妙なルールなのです。
というのも。。。

規制回避はどうやろう

単純に読んでしまうと、

3階建てが駄目、ってことは、
まず海外のヘッジファンドのファンド・オブ・ファンズに投資するのが駄目ってこと?

fig_4
(この時の Wアセットの運用する海外ファンドCがたくさんあるケース)
って理解してしまいますよね。まぁ、これなら Aから直接あれこれ買えば海外ファンド B の必要性がない、とも言えるのですが(笑)運用や資産保有を外部委託したいという目的が達成出来ないので、なんとかしたい、うーん、となってみたり。解決方法としては、さっきのファンド・オブ・ファンズの絵
fig_2

に於ける海外ファンド B のポートフォリオの一部を投資したいマネジャーに副運用者の形で運用させる、というマルチマネジャー・ポートフォリオにすることで解決する、なんてのがとあるリキッド・オルタナティブ商品で見られたりしますが、それもマネジャーを入れ替えたい時とかどうするんだろう、という目で見ちゃいます。

規制よりも効率?

それ以外にも、このように

fig_3
例えば海外ファンド Cが旗艦ファンドで運用を単純化して効率化したい為にとある通貨(まぁ、大抵は米ドルかユーロでしょうね)建てで配当金を出さないものしかない、なので、各地域向け商品を作る時にはこれをマスターとするフィーダーファンドを作ってそれで柔軟に対応する方が全体のコストが下がるよね、という場合、公募投信Aは円建てでしか投資したくないので、為替の変換から分配金を出す為のオペレーションをするレイヤー、海外ファンドB が必要になる、なんていう事もでてくるのですが、これでは3階建てになるからアウトだよねぇ。。。となってしまう。

でも、パフォーマンスとか投資対象のアイデアとかが魅力的、だとなんとかしろよ、と神の声が聞こえてくる。どうしましょう。

では、そもそもの定義に立ち返りましょう。

さて。この悩ましいこの問題。どうもトリックがあるようです。
というのも、その定義に立ち返ると、あれ?ということがでてくるのです。
この「ファンド・オブ・ファンズ」という言葉を規定しているのは、投資信託協会の規則の一つ、「投資信託等の運用に関する規定」なのですが、これを読むと。。。

この規則において「ファンド・オブ・ファンズ」とは、
投資信託及び外国投資信託の受益証券(金融商品取引法(昭和23年法律第25号、以下「金商法」という。)第2条第1項第10号に規定する投資信託及び外国投資信託の受益証券をいう。以下同じ。)並びに投資法人及び外国投資法人の投資証券(金商法第2条第1項第11号に規定する投資証券及び外国投資証券(外国投資証券で投資法人債券に類する証券を除く。以下同じ。))(以下「投資信託証券」という。)への投資を目的とする投資信託 (当該投資信託会社が、自ら運用の指図を行う親投資信託(その受益権を他の投資信託の受託者に取得させることを目的とするもののうち、投資信託約款(以下「約款」においてファンド・オブ・ファンズにのみに取得されることが定められている投資信託以外の投資信託をいう。以下同じ。)の受益証券のみを主要投資対象とするものを除く。)をいう。

で、これだとなんのこっちゃ、ということなので、すこし丁寧に解きほどいていきましょう。

「ファンド・オブ・ファンズ」とは、
投資信託及び外国投資信託の受益証券
並びに
投資法人及び外国投資法人の投資証券
(以下「投資信託証券」という。)への投資を目的とする投資信託をいう。

ただし、

当該投資信託会社が、自ら運用の指図を行う親投資信託の受益証券のみを主要投資対象とするものを除く。

で、この親投資信託とは

その受益権を他の投資信託の受託者に取得させることを目的とする
もののうち、
投資信託約款においてファンド・オブ・ファンズにのみに取得されることが定められている投資信託
以外の投資信託をいう。

言い換えると、複数のファンドから投資を受け、またファンド以外の投資家からの投資を受ける予定のない、投資信託を親投資信託と定義し、そこに投資するファンドは、ファンド・オブ・ファンズとは呼ばないようなのです。で、この親投資信託、というのは、日本の投資信託の世界では、「ファミリーファンド」という概念の「マザーファンド」にあたるらしいのです。

ん?よくわからないんだけど。。。

ん?普通にケイマン籍のファンドを考えると、マスター/フィーダー構造の関係にある中で、マスターは投資家に直接投資される事なく、常にフィーダーが間に挟まるケース、似すぎないと考える事が出来るのですが、どうも日本ではそうもいかないようです。

で、投資信託協会のホームページにメールマガジンのバックナンバーがあるのですが、そこに、ファンド・オブ・ファンズとファミリーファンドの違いについて2回にわたって説明しているものが見つかります。(第一回)(第二回

で、これの違いを端的に示しているのが、投資約款における投資制限云々ではなく、

「★違いはどこに
ファミリーファンド方式とファンド・オブ・ファンズの違いの中で、投資家にとって影響が大きいと考えられるのは信託報酬に関する違いで、ファミリーファンド方式のマザーファンドは信託報酬を徴収しませんが、ファンド・オブ・ファンズの投資先の投資信託は通常信託報酬を徴収します。

上記の例で言えば、ファミリーファンド方式の場合、投資信託Aを購入した投資家は投資信託Aの信託報酬を負担しますが、マザーファンドは信託報酬を徴収しませんので、負担するのはベビーファンドである投資信託Aの信託報酬のみです。

一方、ファンド・オブ・ファンズの場合は、投資信託Cを購入した人は投資信託Cの信託報酬と、間接的に投資信託D・Eの信託報酬を負担することとなります。」

(第一回から引用)
えっと。。。フィーを取るか取らないか?いわば二重取りするかしないかの違い、とな?

それでいいの?と個人的に思ったりします。しかも、「信託報酬」という言葉も実は微妙で、海外ですと trustee fee や administrator fee、 management fee と各関係者への報酬については個別に開示しているのですが、日本の場合、「信託報酬」というと、「運用管理費用」と一緒くたにまとめられてしまうのです。で、上記のファミリーファンドに当てはめると、運用管理費用に受託報酬や事務代行報酬といった、運用者への報酬以外も含まれてしまいますので、日本ではアドミニストレーターはマザーファンドを受けるとフィーダーではただ働き?と悩んでしまいます。実際、とある案件でケイマン諸島籍の2階建てのファミリーファンドに投資するファンドの届出書類を眺めていたのですが、財務諸表を見る限り、ファミリーファンドのどこでもトラスティもアドミが報酬を受けてないのです。これなら確かにファミリーファンドになりますので行けるのかもしれませんが。。。どうやって経済合理性を説明するんでしょう。フィーを取らねばなんでもいいのか?という問題になるような気がするんですよ。

ということで、3階建てのファンドを作る方策がなんとなく分かったような、納得出来ないような。。。というのが実はこの話の肝だったりします。どなたか明快にご説明頂けますでしょうか?(笑)

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