Further on ETF: 指定参加者以外のマーケット・メイカーや大口投資家にとってのETFのメリットとは?

さて、気づいたら ETF関連のネタでこれだけのことを書けるなんて当初思いもしなかった、というのが本音な ETF の第4弾です。ほんと、どこまであれこれ言いたいんでしょう、私。。。

HFTとETFのもっといい関係は近い将来できる?

実は、これを執筆しているタイミング(2017年10月25日の深夜) に、金融庁のホームページでパブリックコメントが募集されています。その内容はいわゆる高速取引 (High Frequent Trade – HFT)に関する規制関連についてなのですが、その中の一つが興味深いので取り上げるとすると

ETF市場の流動性の向上を図る観点から、空売り規制の適用除外の対象に、金融商品取引所からETFのマーケット・メイカーとして指定を受けた高速取引行為者がETFの円滑な流通を確保するために行う空売りを追加する。

ということで、ETFのマーケット・メイカーの指定、というのが取引所が行なっていて、既にその中にHFTがいる、ということなのです。価格の乖離を即座に感知して高いものを売り、安いものを買う、ことを高速回転で行うHFTの性質上、当然やっていて然るべきではあれ、空売りまで今回許そう、というのです。実際に、現物のポートフォリオを買ってETFを売る、という裁定取引だってあり得るわけですが、それを信用取引として借りてからやりましょう、ではサーバーの自動運転で取引を執行し続ける HFTにとっては間に合わないから出来ない状態にあった、と言われても納得感もあろうと思います。また、こうすることで、HFTから ETFの取引玉が売りに出され(あとで買い戻すか一日の終わりにネットポジションで借りるとして帳尻を合わせられ)るならば、ETFの供給源としてのマーケット・メイカーである HFTにもっと頑張ってもらってETFの流動性を創造して欲しい、ということなのでしょう。

指定参加者以外のETFのマーケット・メイカーっているの?

ところで、過去の記事で指定参加者というある意味 ETFの上場の幹事証券会社だけがマーケット・メイカーの役割をしている、かのごとく書いていましたが、前述の HFT だけでなく、よくよく考えて見れば、最近では海外でもそれを専業とするブローカーが増えていて、証券の貸し出しをしている会社さんに対してETFの貸し借りの話をしている、のを思い出しました。

そもそもマーケット・メイカーというのは ETFに限らず上場商品、果ては未上場でもいいのですが、取引の常に中心にいて自己の算段に基づいて、今の売りと買いの価格を提示することで取引に応じる人のことです。その際に売りと買いとの間にはスプレッドと呼ばれる差額が存在して、その瞬間にマーケット・メイカーと売り、買いを同時にすると、スプレッド分だけ確実に負けるのですが、これはマーケット・メイカーからすれば、例えば買いの価格を提示して買い取ったあとに他の人に売るにあたっては、このスプレッドの範囲の利幅の中で売れるという目算というかリスクをとって売り買いを常に成立させることを生業としている、と見ることが出来ます。

しかも、もしこのスプレッドをその瞬間のETFの参照する指数などの値動きと全く同じ価格を中心に上下一定幅で提示されているとしたら、確かに一般に言われる ETFと参照指数との間の価格の連動性というのが形成され得る、と言えるでしょう。でも、果たしてこの価格の提示は ETFと参照指数の連動性を提供したいがために行なっている、のでしょうか。

実はここに、マーケット・メイカーの立場が大口取引をする人の観点から言えばメリットがあるから行う、というのが見え隠れします。

指定参加者が ETFの設定・交換を応じる相手とは

さて、HFTやマーケット・メイカーたちはそのリスクを取引スプレッドや現物対ETFの差額だけで吸収しているのでしょうか。実は、そうでもなく、大口にかき集められた ETFの持分や日経225を例にすれば 6億程度掛かる現物による参照指数の構成銘柄ポートフォリオとを交換するのに応じてもらうことが出来るため、そのリスクがヘッジされて安心して小口のマーケット・メイキング取引に応じられるし、市場としてもその流動性が担保されるというのです。その意味では指定参加者だけの特権、というわけではなく、最近の流れでは指定参加者はマーケット・メイクすることなく、この現物ポートフォリオと ETFの交換手続きだけに特化しているところもあるそうなのです。

まぁ、これらの取引関係者ならば、日経225ならば 6億前後の取引単位で取引が出来る人たちなので指定参加者としても対応できる、のです。

実際、それ以外にも、現物の売買が市場への影響が大きいような大口の機関投資家も ETFを使ってポジションを作ったり売ったりする、バスケット取引の代わりとして使う場合には指定参加者が ETFの設定や交換に応じるとされています。

いずれにせよ、大口の取引でなければ対応しないので私たちのような小口取引が使えるツールと考えてはいけないでしょう。

で、こんなメカニズムだから ETFと参照資産の値動きは一致するんじゃないの? – ETFネタを終わらすにあたり

さて、このようなマーケット・メイカーたちのリスクヘッジが現物資産とETFの値動きの裁定取引に基づいて行われているのだから、その思惑通りにETFってのは現物資産の値動きに近しいんじゃない?この4回に渡って、著者が主張するような市場参加者のセンチメントが参照資産の動きと乖離することはないんじゃないの?とここまで読むと思うかもしれません。

確かに、注文が発生すれば、HFTを含む裁定取引を狙ったマーケット・メイカーがミスプライスを叩き、そこからこぼれ落ちた適正価格に近い注文だけが板に集まって取引成立、ということで、取引は参照資産に近いところで取引がされることになるでしょう。

ただし、売りと買いの注文が適度にあれば、なのです。

もともと注文が売りや買いだけに一方向に注文が集まれば自然と参照資産からの乖離が発生してしまいますし、注文があっても取引が成立しません。この状態はマーケットクラッシュした時によく見られますね。

そして、そもそも取引のニーズがない銘柄であれば注文数が少ないか、発生しないのでマーケット・メイカーですら気配値を出して一日終わるけど取引は不成立、なんてことだってあり得るのです。これは中小型株式や債券で普通に見られる光景でしょう。

そうなると、いずれにしても流動性を増やすことで解決できる問題だとしても、ニーズがなければ解決しようがない、のです。とはいえ、不人気銘柄や認知の低い銘柄という意味では新しいようで古い問題なのです。

どうしても流動性の大きい人気のあるものだけを見て一般論は語られやすいのですが、裾野をみると見える風景は変わり、案外そこに儲けるチャンスが隠れていたりするのかもしれません。まぁ、それが取引の思惑、という奴なのですけどね。。。

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