私って、年金いくら払っていて、いくらもらえるの? – 年金入門 その1

From "Slowsteps on Podcast"

たまにはFPらしいことも書こう、ってよりは、これを書いている2021年7月の翌月には社会保険労務士、なんて国家資格の試験が予定されていて、著者はもし試験の手続きがちゃんと出来ていれば人生初の社労士試験を受けるはず、なので、その知識の整理をちょっとしたい、という個人的欲求が先走った記事、と言うことで書き始めたのでしたが、いつものように遅筆で、続きを書き始めたのが来年の試験も受けることが確定した2021年11月、ではありますが、でも、みなさん、自分の年金ってどういう仕組みでどうなっているとか、ちゃんと理解してますか?

確かに、今や人生70歳まで働くことが期待されている時代です。他方で、(月々貰える額を減らしていいならば60歳から繰り上げて貰えるし、貰える額を増やすべく繰り下げて70歳、いや、75歳まで遅らせてる、というオプションがあるものの)年金システムとして65歳から貰えることを踏まえて、平均余命が80歳台のこれからを、経済的な観点でどう過ごせるのか、どう過ごしたいのか、というのをどこか「早い段階で」想像して、備える「時間を作る」ということをしてほしい、というのが、社労士試験の勉強をして、この年金システムを改めて学び、FP的な観点でも伝えたいメッセージ、というのがこの記事になっています。

また、だからと言って、安易に銀行とか証券会社が、まともじゃない理由でiDeCoとか勧めているのことに対する疑問についてもちょっと説明したいなと思っています。

ということで、いつものようにざっくりとした説明のスライドと流し見の動画を作ってありますので、それだけ見て帰る方は、この記事のどこかにあるいいねを「最初にした」後で読んでいただければと思います。

あ、ここで告白しますが、CFPの試験中に下記の記事に間違いがあるのに気づき、直しています。どうやら厚生年金は入っているとお得だったようなのです。ごめんなさい!

まず、年金ってどういうものか、から行きましょうか。

年金は、ある程度の年齢を過ぎて働けなくなったり、年齢とは関係なく怪我などの理由で働けなくなった時、もしくはその家庭の大黒柱が突然亡くなって働き手を失った、といった時に、その後の生活を支えるための生活費の原資となるべく若い時から普段の生活費や資産と切り離して蓄え、管理する仕組みを指します。

このような仕組みのうち、いわゆる老後に備える仕組みといえば、ここで取り上げる国民年金や厚生年金といった公的年金の中でも強制的に行う仕組みだけでなく、iDeCoのような公的な年金の仕組みのうち強制的でないものや、生命保険会社が提供する年金保険のようなわかりやすい私的な年金から自分の中で(ぶたちゃんの貯金箱に500円貯金を強い心で続けるように)別勘定で蓄えて資産運用するようなものまで、その構造上はいろいろな形で実現することは可能です。

ですが、ぶたちゃんの貯金箱をちょっとしたきっかけで割りたくなるように、私的な年金とか、年金がわりのなんちゃら、というのは多かれ少なかれ自分の意思(とか、提供している業者の手数料などの都合)で老後の前にサイン一発で(比較的)簡単に目の前の資金となってしまいます。そう考えると、年齢が年金の払い出しの条件となっていて途中解約の全くできない(今回扱いませんが、もし自分が死んでも遺族年金や一時金に形を変えて払い出して貰える- 言い換えると死なないと一定の年齢にならないと払い出してもらえない)公的年金、というのは、その年までは自分の資産と切り離なされた、老後のための完璧な資金プール、といえます。

とはいえ、です。健康保険も労災保険も雇用保険もそうなのですが、法律で最低限かつ(比較的)簡単な手続きで払い出せる保障を提供するのが公的な社会保険のコンセプトですので、公的年金についても老後のための資金プールを提供はするものの、この年金で薔薇色の生活ができるか、というと、そういうものではない、というのはあちこちの記事で書かれていると思います。

では、実際にいくらその資金プールに積み立てることになり、それを1年間でいくら受け取りながら、取り崩すことになるのか、を見ることで、では実際に公的年金を補うために何を追加で備えねばならないのかを理解してみたいと思います。

まずは国民年金でも:国民誰にも関係のある年金

20歳になると、必ず入らされるのが国民年金です。ん?18歳から企業で働いているから厚生年金にとっくに入っているよ、という人もいると思いますが、そうでない限りは20歳の誕生日あたりに国民年金手帳が送られてきて保険料払ってね、なんて請求書も合わせて送られた記憶があるかと思います。

さて、そんな若い頃、ですのでこんなの払ってらんねーよ、と放置してた人もいるかと思いますが、そうでなければ自腹かご両親のポケットかで毎月請求書に従って払い始めたのではないでしょうか。ちなみに私は、といえば、当時大学生だった20歳になってすぐの請求書がどう言う意味かわからずに当時住んでいた大師前駅そばの区役所の出張所に行って話を聞いたものの、学生だから免除してもらえるのか、と聞いて免除してもらったり、その翌年に再度免除申請したら理由なくだめ、と言われて聞いたら親の所得があるから、と言われて、なんで自分の年金について親の所得が関係あるのか?と口論を窓口で散々したあと、その先はバイトで稼いだ一部で納め続けたり、というのを思い出して改めて年金ネットで確認したら、20歳になって最初の3ヶ月分が未納扱いになっていることに今更気付いたり、と、理工学系の学生にありがちな、法律なんて自然界から比べたら適当なルールだし、なんて甘くみていた若さゆえの無知って怖いなぁ、というのを赤面しながら確認してしまいました。

で、そんな国民年金ですが、直接国民年金に入っている人もいれば間接的に入っている人、もいます。そうなんです。国民皆年金制度のおかげで、20歳から60歳までの日本に住んでいる人は、国籍問わず、国民年金に加入しているのです。

直接入っている人、というのは、第一号被保険者、と呼ばれる人で、まぁ、言ってしまえば厚生年金に入っておらず、また配偶者が厚生年金に加入している人ではない人、なので、主に個人事業主のように企業等で働いておらず、また配偶者が企業等で働いていない人、を指します。最近だとフリーランスな人やギグワークの人たちなんかもこれに該当するでしょうし、20才を過ぎた学生さんも前述の私の例の通り、該当することになります。

その意味で言えば配偶者が企業等で働いている人、は第3号被保険者として国民年金に加入していることにもなりますね。

厚生年金:企業勤の人たち皆が入る公的年金

じゃあ、残る人、というのは、企業等で働いている人でして、この人たちは厚生年金に加入しているのですが、国民年金的には第2号被保険者、ということになっています。

というのも、厚生年金に入っているので、国民年金に直接入っていない、ように見えるのですが、厚生年金の一部が国民年金に回っているので、実際には両方に入っている形になっているのです。ですので、国民の誰もが国民年金に入っていて、そのうち会社勤めの人たち(や国家/地方公務員、私学教職員など)はそれに上乗せして厚生年金に加入していることになっています。

え、それって会社に勤めている方がお得じゃない?って思いたくなりますよね。歴史的にはお給料に連動する形の厚生年金が先に出来て、自営業の人たちの年金制度がないじゃないか、ということで後から誰もが入りやすい一律の保険料と年金の形である国民年金を導入して、その辻褄を合わせねばならないので、厚生年金の報酬連動の保険金の一部の固定保険料に相当する分を国民年金に回すことでみんなが同じ国民年金に最低入っている、というようにした、そうなのです。

そのため、厚生年金に加入しているお勤めの方の配偶者の方、というのは、今でこそ国民年金の第3号被保険者ですが、この国民皆年金加入の仕組みが導入されるまでは特に強制的に入っていなかったことになり、年金が少ないので不平等だ、なんてことで入れなかった時期について払っていないけど入っていた扱いする、など、試験でよくひっかけるのにちょうどいい空白の期間、というのがあるのです。

質問です。自分がいくら保険料払っているか、知っていますか?

自営業やフリーランスの方、要は国民年金の第1号被保険者の方だと、国民年金を管理する市区町村から毎年「払ってねー」という請求書が来たり、「今年はいくらになったのでその額で自動引き落とししますね」なんて通知がくるのと、その額を確定申告の際の税務控除の計算に使いますから、大抵の方は自分がいくら払っているのか知っているとは思いたいのですが、いくらでしょう。基本、月額 17,000円です。ん?令和3年の今は16,610円しか払ってないよ?そうですよねぇ。基本、と言いましたのは、そこから前年の物価変動率とか、実質賃金変動率とか、これらを使って作られた前年度の保険料改定率を組み合わせて、基本の17,000円から調整が入った金額になっています。

さて、そうでない皆さん。自分がいくら保険料を払っているか把握していますか?給料明細を見て、結構引かれているなぁ、というのをその他の健康保険とか所得税の源泉徴収、地方税の特別徴収の金額と合わせてみているのでその額がいくらか、というのはちょっと細かく見てないですよね?

また、第3号被保険者の配偶者の皆さんに至っては所得もそんなにないから、ということで払っている感覚がないと思います。というかないはずです。というのも、第3号被保険者の保険料は0円ですから。

え、と思いますよね。まぁ、そこは第2号被保険者が厚生年金を通じて払っているから、その加入者全員のプールの一部を第3号被保険者分として国民年金に拠出している、ということになっています。なんとなく、知らない誰かの分を負担してる、的な扱いで考えられているそうなので、そういう配偶者がいる人なら、一人で二人分を負担してないんだ、ラッキー、なんて思そうですが、独身の人とか共働きなので配偶者が第3号ではない人にとって、なんとなく、知らない誰かの分も払っているんですよ、って言われたらなんか複雑ですよねぇ。。。

じゃあ、そんなにたくさん払っている(苦笑)第2号被保険者の皆さん、月々いくらでしょう?ざっくりいうと、ご自分の負担は月給やボーナスの額面の 9.5%くらい、です。とはいえ、この「くらい」というのがちょっと面倒でして、誰の計算を楽にしているのかわかりませんが、月収などの額面を88,000円から650,000円までの32の等級に振り分けて、この等級に対して9.15%をかけた額、としています。そのためこのレンジ(正確にいえば、下は88,000円から93,000円の1等級から、上は635,000円から650,000円までの間)であれば、9.15%程度かな、で済むのですが、例えば、本来は厚生年金に加入条件を満たしてしまう 88,000円の月給のはずが、体調が悪くて、でも有給休暇も使っちゃったから、とその月に40,000円しか稼げなくても、等級が1等級なので8,052円 (= 88,000 x 9.15%)ですので、ざっくり20%の負担になりますし、月に120万円稼ぐ人には、32等級だから59,475円(=650,000 x 9.15%)なので、5%程度の負担にしかならない、のです。

とはいえ、ボーナスについては、1,000円単位を切り捨てて9.15%ですので、なんとなく、みんな似たように 9.15%程度、って思いますが、1カ月あたり150万円が上限となっていますので300万円のボーナスを間違えて貰えば負担額は半分程度、ということにはなります。まぁ、普通に生活していたらそんなにはもらえませんが。。。

じゃあ、生涯いくら保険料を払うことになるんでしょう?

さて、1カ月あたりの支払い金額のルールがわかったので、では生涯でいくら納めることになるのか、がちょっと知りたくなりますよね。

個人で当然に変わる額ですので、自分の正確な数字を知りたい場合には年金機構さんから郵送される「ねんきん定期便」を見ると、今の所いくら払ったか、このペースで行くと毎年いくら年金がもらえるか、というのがわかりますが、ここではざっくりとしたケースで考えてみたいと思います。

国民年金だけなら

もし、20歳から60歳までずっと第1号被保険者であり続けた場合、ということは、成人してからずっと自営業やフリーランスで居続けた場合、とか、勤め人が性に合わない、と過ごした人の場合、など、普通にサラリーマンをしてきた私にはなかなか想像力を求められるケースですが、この場合はちょっとした前提(物価も賃金も全く40年間変わらずにいる、という経済的にはとても厄介な状況)を置かせてもらうと実は比較的簡単でして

17,000 (円/月) x 12 (月/年) x 40 (年) = 8,160,000円

になります。簡単でしょ?これがあなたの65歳以降の年金の支払いのためにプールされる原資なのです。

ですが、です。実際には、保険料として支払った額と同額を国庫から年金資金プールに拠出されますので、このケースの彼もしくは彼女のためにプールされる原資は

17,000 (円/月) x 12 (月/年) x 40 (年) x 2 = 16,320,000円

となるのです。

もちろん、第3号被保険者であり続けた場合、ということは20歳の誕生日に結婚して、ずーっと専業主婦をし続ける(か、いわゆる年収 130万円 – ということは週 20時間未満の勤務で月額 108,333円 – の壁の手前にも、厚生年金に加入出来ない週 20時間以上の勤務で月額 88,000円未満 – 年収 106万円の壁の手前にも止まり続ける)生活を 40年間過ごすと、保険料を払うことなく年金を受け取ることになります。まぁ、なかなか難しいストーリーですよね。

厚生年金の場合

厚生年金の場合、個人のその時々の収入に合わせて保険料も変わるので、普通に考えると難しいのですが、社会人人生40年、と思えば、何かしらの平均値を使って考えても許してもらえそうですよね。

例えば、令和元年度の民間給与実態調査にある平均年収の436万円に近いところで、ざっと額面での月収を40万でボーナスなし、と(エイッと)仮定しましょう。それを20歳から60歳までずっと(私のように転職を繰り返したとしても、いつでもどこかの)企業に雇用され続ける、という、まぁ、なんとかあり得そうな前提でいきましょう。そうすると、生涯年収も 192百万円ですので、世に言われる生涯年収 2億円、という平均的なストーリーにも合致しますね。この場合

400,000 (円/月) x 9.15% x 12 (月/年) x 40 (年) = 17,568,000円

となります。実際には、月収40万円ですと、等級的には 41万円になるので、この計算は

400,000 (円/月) x 9.15% x 12 (月/年) x 40 (年) = 18,007,200円

となります。これでそれっぽく見えますよね。

ところが、です。厚生年金保険の負担は、加入者というか被保険者の勤める企業にも求められています。しかも同額で。ですので、実はこの人の年金のためのプールへの原資は

400,000 (円/月) x 9.15% x 12 (月/年) x 40 (年) x 2 = 36,014,400円

となるのです。そこそこいい額に見えてきましたね。

さて、先ほど、国民年金の支払いに対応して国庫が同額の負担をする、と書きましたが、厚生年金にこれがなかったら、第2号とはいえ、国民年金の被保険者としては不公平ですよね。ということで、先ほどの第1号被保険者に対して拠出される額と同額がプールの原資として入れてもらえます。結果としていくらがプールの原資になるか、というと

400,000 (円/月) x 9.15% x 12 (月/年) x 40 (年) x 2 + 8,160,000 円 = 44,174,400円

と、自力で預金するには現実的には大変な額になってきました。しかも、こんな額のプールがブタちゃんの貯金箱に入っていないので、簡単に貯金箱を割って取り出せない、のがなんとなくいいのか悪いのか、と思いますが、この貯金箱の蓋が開くのが、もう働けない/働かない 65歳以降ですので、我慢しましょう。

なぜ、iDeCoとか国民年金の付加年金とかやる必要があるのか?

さて、スライドで、年金の2階建てとか3階建てというのがわかるものを作っているのですが、ここまでの話で行くと、第1号被保険者と第2号被保険者の、自分の払込分での総額にざっくり 900万円程度の差が開いているのに気づいていただいているでしょうか。もし先ほどのケースである額面で月収40万円稼げる人が二人いて、片や第1号、もう片方が第2号、となった場合、月額で保険料の差として

410,000 (円) x 9.15% – 17,000 (円) = 37,515 – 17,000 = 20,515円

が毎月発生することになります。実際には年額で 24万ちょっとの差ですのが、仮に他の健康保険等の条件を同じとしても、課税所得の差による納税額の違いもあるのでざっくり、一年で20万円弱くらい(24万円 x 20% 課税前提)第1号被保険者の手元に残ってラッキー、に見えます。でも、その分将来に対する蓄えが少ないし、その20万円をブタちゃんの貯金箱に入れている人もそうそういないでしょうから、その分を比較的公的な年金制度に近いもので65歳以降の自分のために横に残しておく、というのが大事なメッセージなのだと思うんですよねぇ。

長生きしたくないから今食べちゃうんだ!もいいのですが、最近は長生きするリスクが高いんですよねぇ(ぼそっ)

で、この資金プールってどれだけ掛けて受け取ることになるの?

貯めることは分かりましたから、今度は受け取る側のことを見てみましょう。額がわかればどれくらいで40年間貯めた資金が回収できるのかも見えてきます。

国民年金の場合

比較的簡単な(?)国民年金は、本当に簡単です。基本として、ずっと40年間国民年金にし続けたならば、65歳になったら、年額で 780,900円が受け取れます。実際には年6回、2カ月ごとに受け取りますので、一回 130,150円、月々65,075円という計算になります。

なお、基本は、と書いたのは、途中で一部しか払えなかったり払わなかったり、という期間があったら、その一部免除されたり全額払わない、という期間分だけ減額されるのです。ですので、上記がある意味上限、ではあるのです。

なお、忘れていけないことなのですが、年金保険料を払う際に、この保険料に相当するところは課税額の計算において控除されていますので、支払っている時点で所得税等の負担をしていないことになっていますので、年金を受け取るタイミングで課税されます。

所得税の計算においては「雑所得」の「公的年金等」という比較的優遇された控除計算が適用になりますが、それでも年金保険料を納めたタイミングから受け取るタイミングまで納税のタイミングを先送りできるメリットがあります。

書いている私の年代(1970年前後生まれ以降)の前提で話をすると、年金は、後で説明する前倒して受け取らない限りは65歳にならないともらえませんので、65歳以降の公的年金の控除テーブルで考えると、国民年金しか受け取らない場合、110万円までの区分で考えますので課税所得が 0円になります。

iDeCoマーケティングの罠

ということで、さっき、なぜ iDeCoとかやるべきか、って話を書いた一方で、冒頭とか、紹介している スライド/YouTube動画で暗にディスっている、証券会社や銀行のiDeCoを勧誘する売り言葉の一つである「税控除対象ですよ!」ってあれ、iDeCoも小規模企業共済等掛金という控除を使って、掛け金(と勧誘する金融機関が欲しい手数料)が税控除になります、という筋書きです。

ですが、ちょっと上で書いた通り、iDeCoを年金として継続して受け取るときには雑所得扱い、もし一括で受け取るならば退職所得扱いになりますので、出口では必ず税金がかかる、のです。どこもそんな説明を税控除のメリットがあります!と同じフォントのサイズではしてませんよね。ファンドの話でもよく書いていますが、所得に対して一番負担が大きいのは業者の手数料でもなんでもなく、税金なのです。ということで、将来にわたっての課税可能性とその適用項目(その結果の課税率)を考える必要も本当に重要なんです。

厚生年金の場合

では、厚生年金はどれくらいもらえるか、という計算をしますが、先ほどの保険料支払いの前提でいきますと、もし、この人が 平成15年4月以降の40年間ずっと月給40万円平均で来た、という単純計算をすると、計算式は

払い込んだ標準報酬月額の平均額 x 5.481 / 1,000 x 保険料を払った月数 = 払い込んだ保険料総額 x 5.481 / 1,000

が年金額となりますので、先ほどのケースでは

41万円 x  480 x 5.481 / 1,000 = 1,078,660 円

となります。月額でざっくり9万円弱、でしょうか。

でも、これは厚生年金部分だけで、厚生年金加入者は国民年金の第二号被保険者ですから、第1号被保険者は第3号被保険者同様、年間で780,900円を受け取ることができます。ということは、このケースですと、合わせて、年額として1,859,560円を受け取ることになる計算になります。

先ほどの税金の計算で言えば、110万円を超えて330万円未満ですので、もし公的年金以外の所得が1000万円未満ならば控除額は110 万円でしたので、課税所得が 759,560円となります。あとは、基礎控除などを踏まえて所得税が計算されていくことになります。

では、どれくらいで回収できるの?

さて、金融で、投資なんてことを生業にしていると、ついぞ投資したものに対して回収がどれくらいかかるか、ということを考えてしまいます。ということで、そんな計算を下世話にしてみました。

国民年金の場合

では、比較的簡単な、国民年金で考えてみましょう。納めた総額が 8,160,000円、65歳以降毎年受け取るのが789,900円、ですので、割れば全額回収までの年数が出ることになりますが、ざっと 10.45年です。10年半、ですので、75歳の半ばで自分の払い込んだ分は回収できる計算です。

でも、半分国庫が出していますよね。ある意味自分の納めた税金ですのでこれも回収しにいきましょう。そうすると、単純に倍ですので 20.90年です。ということは、86歳で完全回収、となるようです。案外かかりますね。

厚生年金の場合

続いては、厚生年金のケースでいきましょう。今回ずっと見ているケースで行くと、納めた総額が 18,007,200円、65歳以降毎年受け取るのが 1,859,560円ですので、単純に割ると9.7年、ということは 72歳も半ばを過ぎないと自分で払った分の回収ができないことになります。

で、半分会社が負担してくれていますよね。これも回収しましょうか。単純に倍ですので… 19.4年?65歳から初めて 84歳の半ばでやっとです。

で、忘れていけないのが、国民年金での国庫拠出相当分も自分のものでした。どうせ欲張るならここまで回収しましょう。そうなると、プールの総額が 44,174,400 円となり、23.75年、 84歳の誕生日の前でやっと、となります。平均寿命くらいですね。

年金の回収ペースを決める数値

さて、年金の回収ペースを決めるのは、年金の計算額の計算式の料率、あの半端にも見える、 5.481 / 1000にあります。元々、7.5 / 1000で年金額を決めていたのですが、将来の年金受給者の取り分も確保せねば、ということで5%の年金額の減額を行ったのです。その結果、7.125 / 1000になりました。

ですが、平成15年3月まで、保険料の徴収が月給のみでボーナスには適用されていなかったので、同年4月からはボーナスにも保険金にも掛けよう、と年金支払いのためのプールが枯渇しないように色々と加入者の負担が増えたのです。じゃあ、それまでの人たちについては大体月給の3割がボーナスで払われていただろう、ということで、7.125 / 1.3 = 5.481 にして、ボーナス分を含んだ保険料計算に変更、となったのです。この流れを見ていると、それでこの数値、とは思いますが、なんとなく、平均寿命がやっと追いついたわけですから、先人たちはそれなりにお金を後世に残しているようにも見えてきますね。。。

じゃあ、受け取り年金額を増やして回収期間を短くできないの?

でもなんとなく人生短くなるかも、なんて思って、何か受け取り額を増やして回収期間を短くできないものか、と考えたくなります。欲張りなので。

一つだけ方法があるのです。65歳受給開始の年金について、1カ月遅らせると 0.7%年金を増額する、というルールがあるのです。で、遅らせることのできる期限は、というとこの瞬間は 70歳まで。ですので上乗せは 0.7 x 12 x 5 = 42%。でも来年(2022年4月)には 75歳まで伸ばせるそうなのです。そうなると 0.7 x 12 x 10 = 84%! 倍近くになって回収がそんなの早くなるのかも含めて考えてみましょう。

国民年金で考えると

年金額が 780,900 x 142% = 1,108,878円が 70歳から支払われる、としたら、 8,160,000 x 2 / 1,108,878 = 14.71年ですので、85歳になる前に回収完了です。2年程度の短縮のようですね。

これをもし、75歳まで繰り下げたならば、780,900 x 184% = 1,436,856 円になります。そうなると、8,160,000 x 2 / 1,436,856 = 11.36年ですから、86歳も半ばに差し掛からないと完全回収にならないことになります。また、これをするためには、75歳まで別の収入があることが必須ですので、健康管理との兼ね合いも出てくることになりますね。

厚生年金では?

同じように計算すると、70歳シナリオでいくと、年額1,859,560円 x 142%は 2,640,575円となるので、44,174,400円の完全回収には 16.73年、ということは 87歳の誕生日には達成出来るようです。7年短縮ですね。

さらに 75歳シナリオになると、1,859,560 円 x 184% は3,421,590円ですから、44,174,440円の完全回収には 12.91年ですから、88歳の手前、ということになります。5年遅らせても1年遅れでの回収完了をどう評価するか、ですね。

で、まとめっぽいところで

今回、ちょっと考えると特殊なケースばかりで計算をあれこれしてみました。実際、社会に出るタイミングやその途中で休憩したり、配偶者に任せてみたり、など、色々とあるので、結果となる年金額はこれらのどこかに多分落ちる、と思って「ねんきん定期便」を眺めてみて自分のシナリオを考えてみてください。

また、年金を払うプールを作るのは480カ月、という長い時間を使って行う作業ですので、もしこれを20歳代の若い人が読んだなら、早めに、目の前の税控除のためでなく、ライフプランの構築の一環として厚生年金以外の年金プールを作り始めることを考えてみてほしいな、と思いました。

一応、弊社もAFP資格者がいますし、その観点ではどこかの金融機関に紐づいているわけではないですので、中立的な立場でライフプランづくりのお手伝いも出来ますので、もし猫の手を借りたい!というときにはご一報ください。(ファンドの話ばかりじゃないんですよ。)

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