気づいたらずいぶん前の記事になってしまっていた ETF(というかファンドに投資することの隠された意義とETFにすることでメリットを受ける人たち)の話のなかで思わず触れてしまった NISA。以前書かせていただいていたSoldie でも、人気のコンテンツの一つはこのNISA。だから多分言葉だけは耳にしたことがある、という人も多いかと思います。
実際のところ、証券投資、特に株式投資と投信の投資をしている人ならば積極的に使っていて然るべきツール、のはずなのですが、よくよく仕組みを知らないとただの塩漬け専用口座になりかねないし、とはいえうまく使いたい税制面のメリットがある(ということは、それを使って誘導したい人がいる、という意味でもあるのですが。。。)のをみすみす見逃すこともなかろう((※)ただし、株式投資が制限なくできる人に限る)、ということで、じっくり見直しながら、どんな戦略ならば一番うまくハマるのか、というのも考えていきたい、というのが今回の記事の目標にしてしてみます。
NISAってそもそも何ですか?
NISA とは日本版 ISAということで N-ISAなのですが、じゃあ、ISAとは何か、というと Individual Savings Account の略でして、英語で書かれているとなんのこと?と思われる方もそこそこにいらっしゃると踏むので(ついこの間も私のtwitter をみて帰国子女ですか?と言われたのですが、そんなことはないです。私の英語は足立のヤンキーイングリッシュです。)説明すると、アメリカやイギリスなどの国々で、個人による資産形成のための証券投資に対して一定の税制優遇を与える税法が導入されていて、その条件を満たすための個人向け(=individual)貯蓄(=savings)口座(=account)、なのです。と言うことは、NISA は日本の租税特別措置法の中の株式等に係る譲渡所得等関係、第37条の14に、定められた非課税口座、なのです。
ですので、このファンドやらストラクチャーやら cryptocurrencyやらオフショアやらを扱うブログにしては珍しく、ファンド商品でも戦略の話でもなく、日本の税制に基づく証券口座の一つ、について話をする、とまず理解してくださいな。って、ここに来るような人なら皆まで言うな、ですな。
じゃあ、どう言う条件で非課税になるの?
はい、投資で一番のコスト、税金、特に日本ならばキャピタルゲイン課税が課税されない、と言うのはとても魅力的なことですよね。NISAの口座での取引ならば全ての株式の取引で発生するキャピタルゲインに対する課税がない。。。なんてそんなに都合のいい話でもなさそうでして
利用できる方 | 日本にお住まいの20歳以上の方(*1)(口座を開設する年の1月1日現在) |
非課税対象 | 株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益 |
口座開設可能数 | 1人1口座(*2) |
非課税投資枠 | 新規投資額で毎年120万円が上限(*3) (非課税投資枠は最大600万円) |
非課税期間 | 最長5年間(*4) |
投資可能期間 | 2014年~2023年 |
- …0歳~19歳の方は、ジュニアNISA口座をご利用いただけます。詳しくはジュニアNISAページをご覧ください。
- …NISA口座を開設する金融機関は1年単位で変更可能です。ただし、開設済みのNISA口座で既に株式・投資信託等を購入している場合、その年は他の金融機関に変更することはできません。
- …2015年以前分は100万円。未使用分があっても翌年以降への繰り越しはできません。
- …期間終了後、新たな非課税投資枠への移管(ロールオーバー)による継続保有が可能です。
と言うことが金融庁のホームページの NISA特集にありましたので引用してみましたが、ちょっとイメージがつきづらいと思いますので、少し例を交えながら説明していこうかと思います。
NISAのイメージってこんな感じ
例えば、株式の取引を検討しているミヤタ君がいるとします。彼が株式取引をするのに、当然ながら証券会社に取引口座を空けねばなりません。
今ですと、1月から12月までの取引を全て自分でリストにして提出して、その他に得た年間の所得と合わせて確定申告しなければいけない「一般口座」か、証券会社が各取引の利益に対して源泉徴収を行い(負けたら源泉徴収しすぎている金額を返してくれて)、年に一回の報告書を纏めてくれるので確定申告は書類提出だけで追加の納税も発生しないし格段に楽チンな「特定口座」の二つしか選べなかったのですが、今はこのNISAという口座も開設することが出来るです(しかも2018年からは「つみたてNISA」という選択肢も!)。
このNISAは、1月から12月までの1年間における国内および海外の株式(と投資信託)の新規購入額のうち最初の120万円については、その株を買った年を含めて5年間は、その株式の売却益が確定しても、株式の分配金にも税金がかからないというものなのです。もし5年経っても売らないでもっと儲けを期待したい、という場合には5年経って終了するNISA口座からその翌年に新しく開設されるNISA口座に全額移管することが出来るので、NISAの制度が存続する2023年の開設/2028年の終了まではその株式が仮に3倍になっても税金がかからない、ということなのです。
また、2018年から始まったつみたてNISA の場合は、1月から12月までの1年間における国が定めた基準を満たした投資信託の定期的な購入に対する、年間の累計購入額の40万円については、その株を買った年を含めて20年間は、その投資信託の売却益が確定しても、投資信託の分配金にも税金がかからないというものなのです。
とはいえ、その代わり、売却損が出ても一般口座や特定口座の売却益と相殺が出来なかったり、損が出そうだからということで相殺させるためにNISAから一般口座や特定口座に株式を(そして、つみたてNISAから普通のNISAに、もしくはその逆方向に、投資信託を)移管したり、逆に、一般口座や特定口座に持っている株式がもう買っちゃったからといって、税金を回避するべくNISAに移管したりすることが出来ません。
また、今ですと一つの口座で120万円の非課税枠がある、と解釈して、複数に口座を開けて例えば120万 x 5口座 = 600万円(つみたてNISAならば40万 x 7口座 = 280万円!)の非課税口座が持てる、わけがなく、最初に口座を開くと他の証券会社や銀行にも並行して口座開設をすることが出来ず、また他の金融機関に口座を開けようとするならば翌年にならなければ開けられないのです。
そして。。。一般NISAを持つとその年にはつみたてNISAを、逆につみたてNISAを開けるとその年には一般NISAを、同じ年の間には開設することが出来ません。
実際の投資の流れ的に見ると(一般NISA編)
そこで、ミヤタ君は某ネット系の証券会社で口座開設をして、この2018年に一般NISAも開設してみました。開設する際には他で開設していないかどうかを含めて税務署と証券会社で審査が行われるので申し込んで最長でも数週間程度待つことに。。。
株式の配当って
で、実際に口座が開いたので、100万円ほど口座に資金を動かしてとある株式の銘柄、ここではAとしましょうか、を100万円で買ってみました。すると、株式の分配金を受け取ったときに源泉徴収額が掛からず全額受け取っていました。さすが非課税口座。
年内に速攻売っちゃった場合
そして、年末を待たずして、A株式が2倍になったことで売却しました。すると、これにも特定口座ならば売却益に対する20.315%のキャピタルゲイン税が掛かるところが掛かっていませんでした。
そこで、売却したことで非課税枠の100万円の枠が開いたはずだから、さっきの200万のうちの120万円でもう一度別の儲かりそうな株式、Bを買おうとしたら。。。非課税枠は残り20万円しか残っていなかったことに気づいた、という感じです。
5年の期限前に売却した場合
では、5年の期間満了前に売却した場合にはどうなるでしょう。2倍になったので売却する、ということで100万円に対して特定口座で起きていた20.315%の源泉徴収は発生せずに終わります。さすが非課税口座。そこで新規投資を始めよう、というならば、その年のNISA口座を開設して購入することになります。
5年経っても売らなかった場合
これが、5年間放置していて2倍になっていた場合、ですが、5年経つとNISA口座は終了になります。でも、2023年までは新規のNISA口座を開設できるので5年が終了する2022年に開設して5年間放置していたA銘柄をこの新規口座で引き継ぐ(ロールオーバー)することにしました。このとき、200万円相当ですが、ロールオーバーの場合には2018年の新規の購入枠を引き継いだことになっているので追加購入することは出来ません。
今の所、この2022年に開始する5年期間の終了時点である2027年に一般NISAの設定が出来るという法律が出来ていません。もしこのままですと、特定口座か一般口座に移管して、売却時に20.315%のキャピタルゲイン税が課せられることになります。
では、つみたてNISAだと、この話がどうなるか、というと。。。
実際の投資の流れ的に見ると(つみたてNISA編)
ミヤタ君は某ネット系の証券会社で口座開設をして、この2018年につみたてNISAも開設してみました。開設する際には他で開設していないかどうかを含めて税務署と証券会社で審査が行われるので申し込んで最長で1-2週間程度待つことに。。。
投資信託の分配って
で、実際に口座が開いたので、40万程度を口座に資金を動かして、月に3万円ほど、ここではXという適格な投資信託しましょうか、を積立で買う設定をしました。すると、この投資信託の配当金を受け取ったときに源泉徴収額が掛からず全額受け取っていました。さすが非課税口座。おかげで再投資にそのままそっくり回すことができました。目指せ複利のスノーボール効果!
配当金が特別配当、要は元本の償還だった場合
そして、年末を待たずして、X投信からの配当が実はパフォーマンスが悪くて特別配当、ということで元本の払い戻しになってしまっていました。
そこで、元本の償還したことで非課税枠の40万円の枠の一部が開いたはずだから、さっきの帰ってきた元本にちょっと上乗せして別の投信 Yでも積立始めようかな、なんて思ったら。。。非課税枠は着実に毎月の3万円のX投信の購入代金で減らして、元本償還されても減ることはありませんでした。
20年の期限前に売却した場合
では、20年の期間満了前に売却した場合にはどうなるでしょう。積立してきたのでドルコスト平均法で適当に低いところで平均取得単価になってくれたおかげで利益が出ていました。
ということで年36万円を継続させた年数分に対してそこそこ利益が乗っていたものの、それに対して特定口座で起きていた20.315%の源泉徴収は発生せずに終わります。さすが非課税口座。そこで仕切り直しで別のファンドに新規の新規投資を始めよう、というならば、その年のつみたてNISA口座の枠を引き続き利用して購入することになります。
20年経っても売らなかった場合
これが、20年間放置していて積立てきた場合ですが、20年経つとつみたてNISA口座は終了になります。で、一般NISAのように、2038年に新規のつみたてNISA口座を開設できるか、というと今のところは不透明。なにせ、つみたてNISAは2037年までの口座開設分の話しかしていないのです。いわゆる時限立法ってやつですね。ですので、今のままで行くと、売らなかったら特定口座か一般口座に移管して売却時にキャピタルゲイン税の課税対象になってしまうのです。
ちなみに、キャッシュフロー的に何か見落としてない?取引コストとか
はい、株式を買うときや売るときには手数料がかかるのが一般的ですよね。ですが、NISAについてはオンライン系の証券会社さんですと無料にしたり、キャッシュバックすることで実質無料にするところが多いようです。前述のように、一人の投資家にとって一般かつみたてかのいずれにせよNISAを取り扱えるのは一年で一つの金融機関だけ、となれば手数料の競争も起こります。
その他のメリットってないの?生命保険の保険料控除みたいなやつとか
実は。。。ないんですよ。税制的なメリットで言えば投資対象が儲かった時のキャピタルゲイン税が掛からないだけで、証券の購入価格に対応して所得税減税が起きるとか、投資対象が負けたときに損益通算出来るとか、翌年以降に繰り越せるとか、そういうのが全くありません。もし所得税減税を狙うならばiDeCoを使う方がいいでしょう。実際、つみたてNISAとの違いってそこくらいでしかないのですから。って、あーあ、これで次はiDeCoの解説が決定だ(笑)
じゃあ、NISAで何に投資したらいいの?
と、いうキャッシュフローや税務的な影響について見たので、これを踏まえて、じゃあ、NISAで何を買いましょう、という話になりますよね。ご存知の通り、ストラクチャラーではあるけれども投資のプロではない私の意見ですので、まぁ、話半分に聞いてくださいね。
そもそも、一般NISAなのか、つみたてNISAなのか?
個人的には、今年から始めるならば、つみたてNISAかな、と思ってます。というのも、iDeCo の年間積立額が通常ならば27万6000円(一般的な会社勤めの人の場合。自営業ならば81万6000円)ですが、実際にこれを積立てみても最初の数年って仮に10%増えても2万円程度。実額で考えると投資額としてかなり小さいですよね。と考えると、iDeCoにつみたてNISAをやれば年額67万円になるので、将来の年金として結構悪くない足しになりそうですよね。ちょうど40才代ならば、65才定年とか70才にならないと年金がもらえなくなるのでは、みたいな話があるとすればこの20年でどこまで年金資金を貯められるかが勝負。ならばコツコツ積み立てるほうが負担も少なくて良さそうじゃないですか?
となると、国の定めた低コストな(ってお役所が言うんですよね。。。)適格性に合致した投資信託か、一部のETFが購入可能な口座ですから、結局投信しか買えず(ETFだって投信ですからね。たかだか上場している程度でしかないんですよっ)、投信を選ぶときの第一の判断基準はこれ、アクティブかパッシブか、であって、その観点で見ると結構商品として並んでいるのがパッシブ系で、ベンチマークとなる指数連動型の商品。長期投資を考えると、どうしたってアルファを取りに行くよりもベータで手堅くインフレに対応できるようにする方が20年間の長いスパンで投資を積立てることのドルコスト平均法でいくならば相対的なコスト感も良いでしょう。
となると、一旦つみたてNISAを始めると、最後までつみたてNISAに魂を預けることになりそうですね。でも、これのおかげで iDeCo と併用して自分年金をどれだけ大きく出来るか、と言う話になるわけですが、iDeCo の方がアクセス出来る商品性がアクティブ系もそこそこある(お勧め等はiDeCoの記事の時にでも。。。)のでそちらに任せて、つみたてNISAは対インフレと言う意味でのパッシブなベンチマーク運用すると言う分散を目指すのがバランスのいい投資スタイル、と言えるでしょう。
あ、そうそう、ちゃんと20年間でポジションを閉鎖することになるのであれば、20年間毎年積立た分を1年分ごとに(ドルコスト平均法の解約版みたいに)解約して行くのもよし、最初の投資分が20年経ったところで、全部のポジションを一気に売り抜くのだって問題ありません。
一般NISAだって捨てきれないものがある
とは言え、一般NISAについては株のキャピタルゲインが最長5年間の保有期間において非課税になり、うまくロールオーバーを使えば、今年と来年から始めるならば10年間の保有期間でのリターンを狙えることになります。とすると、最長10年の持ちきりで株のキャピタルゲインが非課税になることをうまく使うならば、大化けする株式を買ってしまうこと、でしょう。となると、流動性の高い大型株ではそんな大化けを狙いに行きすらできないですから、自然と中小型株に目が行きますよね。それでいいんです。なにせ、狙うのは数倍から数十倍になることを目指すのですから。仮に11倍(笑)になったとしましょう。上がりの部分が投資額の10倍と言うことですから、もしキャピタルゲイン課税があるならば2倍分を国に持っていかれるんですよ。それがNISAには全くないのですから長期戦で仕込んで大物を待つのも悪くない戦略ではないでしょうか。
ちなみに120万円と言う投資枠で買える銘柄は中型株で364社、小型株で3,140社。毎年同じ銘柄を向こう5年で買い集めるもよし、毎年テーマを決めて選んで買うもよし。
まとめ
個人的には、会社自体が当局の規制の外にあったことから、株式の取引は事実上可能でしたが、職業上の倫理観等で株式の取得は控えていて、結果投資信託に投資することもありませんでした(なにせ作っていましたからね。。。)。
ですが、今回調べて見て、またファンドに投資することは自分が投資判断をしていないと判断されることから、金融規制業種にいて、ディーリング出来ない類の仕事をしている人たちにとって株式への直接投資が事実上禁止されていますから、資産形成・運営せねばならないときの回避ツール的意味合いもあるのだな、と感じました。
まぁ、やって損は。。。銘柄選定の結果で起こるかもしれない、ですね。でも、この手の政略系な意味合いがあるので、やらないよりはやったほうがあれこれ良いのだろうと思います。