Tokyo Asset Management Forum に参加しつつ、最近の動向に関して雑感など

東京都がそのお知らせとか新着情報に載せずにある意味こっそりと開催した、Tokyo Asset Management Forum。ご存知の方も多いかと思いますが、筆者の最近の仕事の多くがあけぼの投資顧問でのwebmaster 兼総務労務人事経理といった雑務一般、ということもあり、後述の理由にて参加させていただきました。

新興運用会社は金のなる木になれるか?

実は書きかけの記事があれこれあるものの、このブログでの東京版EMPの記事がよく纏まっているので人に紹介しているんです、なんて今日とある方に言われたことから、光栄に思いつつもそうなると結構読まれているんだな、と思い、言葉遣いに気をつけ。。。る必要もないですよね(笑)前回同様、率直なまとめを踏まえつつ、またたまたま執筆する数日前の AIMA の日本支部の定例会で共有されたちょっと驚く話も交えて、たまには旬なタイミングで書いてみようかな、と思った次第です。

Tokyo Asset Management Forumとは?

引用しております告知ページにもありますように

東京都では、昨年11月に、「国際金融都市・東京」構想を公表いたしました。

 今般、本構想において取組の一つとして掲げている新興資産運用業者育成プログラム(EMP)等の導入促進に向け、EMPの認知度向上を図るとともに、新興資産運用業者からのプレゼンテーション等を行うセミナーを開催することとなりましたので、下記のとおり、お知らせいたします。

※ Emerging Managers Programの略。アセットマネージャーを志す候補者を発掘して資金を提供し、若手のマネージャーの育成を支援すること

Tokyo Asset Management Forumの開催について

という趣旨で、機関投資家と報道向けをメインとしつつ、ゲートキーパーのようなアセットオーナーと投資家を結ぶ役割だったり、上記の Emerging Managerに該当するけどプログラムの最後の新興資産運用業者のプレゼンテーションに呼ばれなかった運用会社さん、など150名程度の参加があったそうです。

今年は実は2回目で1回目は昨年。その際には諸般の事情があって参加出来なかったのですが、EMPが発表される前だったことで色々と不明瞭な状況で演目が進んだのに比べて今年は既に EMPの詳細が開示され、EMP に賛同し(EMに対して投資するファンドの運営費用の一部を東京都が補助することが確定し)た「東京版EMPファンド運営事業者」も3社決定していますので、EMPファンド運用事業者の裏側にいる国内適格機関投資家だけでなく、その他の適格機関投資家に対する EM の紹介をするショーケース的意味合いも強かったと思います。

で、そのEMって誰?

前述の東京都政策企画局の Tokyo Asset Management Forum の告知ページのプログラムの最後に、「資産運用業者プレゼン」とあり、国内外の16の新興資産運用会社がプレゼンすることになっております。1時間20分に16社ですので、一社あたりの持ち時間はなんと4分。いわゆるエレベーターピッチ、エレベーターで乗り合わせた人に降りるまでの短い時間に売り込むことが出来る程度に簡潔に縮めたプレゼンを求められたのですが、時間通りに終わらす人、時間が過ぎても少しくらいは、とだらだら話す人、と色々と性格が出るようです。

余談ですが

個人的に、こういう短い時間を区切ってプレゼンをすることでスキルを磨いたり、よりインパクトのあるプレゼンをする機会を作ってみたいんですよね。ロンドンに Ignite London というイベントがあって、そこは一人の持ち時間は5分。時間が過ぎたらマイクや照明の電源が落ちて終了、という仕掛けがあるステージでのプレゼン、観客も立ってすぐそばで見る、という緊張感があるのでいつかやってみたいんですよね。こんな感じで。。。

それはさておき、今回の16社、この告知で名前を出していないので多分表に出してはいけない、ということは、日経やブルームバーグが取材に来ていたのでまずないとは思うものの、まぁ実名を一社だけ出すならば、著者の所属するあけぼの投資顧問。はい、プライベート・エクイティやベンチャーキャピタル・ファンドの持分のセカンダリー取得を戦略とするファンドを運用しております。ヘッジファンドでも伝統的資産の運用でもありません。しかも、会社のメンバーを見ると、私のほか、AIMA の日本支部の副会長の白木信一郎を始めとする、オルタナ運用業界に普通に10年以上いる人間ばかり。平均年齢とか聞いちゃいけないくらい高い(笑)オヤジベンチャーですので、「若手のマネジャー」という言葉が全く似合いません。でも、会社としてはまだ創業から3年、金融商品業法登録から2年ですから、東京版EMP の定義でいうEM にちゃんと当たります。

一応会社名は出しませんが、海外で既に USD 1bil を優に超える運用資産のある企業も数社登場しました。ついこの間ニュースで日本進出が報じられた某運用会社さんもです。当然、本社の創業は20年前、とか普通にありますが、日本拠点の設立が最近かこれから、ということで金融商品業法登録も今年、もしくはこれから、ということですので、EMP的にはEM、なのです。

と考えると、既に報じられている EMPファンド運営事業者の3社がこの16社だけから選ぶことはないものの、とはいえ、実はこの16社に代表されるような、本当に新たに企業を興した、という意味の若手の新興ファンドマネジャーから、当社のような顔ぶれだけは古いが業歴が浅いファンドマネジャー、そして、この数年内に海外から日本に拠点を作り国内の業法登録を済ませたところまで、案外選択肢は広いことが見えてきます。まぁ、これ、裏を返して読むと、本来の目的が見えてくるんですよね。。。制度設計的に野心をよく反映するように出来ているのですが、おっと誰が読んでいるかわからないからこれ以上はやめておこうか(って、これでも十分怒られるか笑)

あと、その定義をちゃんと読むとわかるのですが、知られていないことの一つに、我があけぼの投資顧問が普通にEMの顔をしてプレゼンを出来たように、EMPの制度上、採用される戦略に縛りがない、のです。新興マネジャーの育成プログラム、というとどうしてもヘッジファンド、と思いがちなのですが、実はタイミングさえ合えば(って、PE/VCにはこれが一番難しい)今年以降、立ち上がるビンテージのファンドへの投資だって期待できたはず、なのです。これはJIAMの有友氏のパネルでのプレゼンでも語られていたのですが、PE/VC界隈でのEMPの認知度の極めて低いことが見事に災いしましたが、それ以上に、EMPファンド運営事業者さんにPE/VC関連戦略がそもそも理解して選択できるのか、がもっとハードルを引き上げてしまったようにも思えます。もしこの物言いが失礼、だとしたら、ぜひ理解したことを示すべく、あけぼの投資顧問の来年のファンドへの投資をご検討ください(と、ラブコールしたりして)。

東京がそれなりに盛り上がっているところ、こんなニュースが

さて、AIMAの月例会でさらっと報告があって、みんながそれを聞いて「あーあ」と声にしてしまったニュースでも。

シンガポールの金融当局 (MAS)が、2018年11月13日にプレスリリースしたのが、USD 5 bilをシンガポール政府が投じて、既存、これから立ち上げるを問わずシンガポールにコミットするPEファンドやインフラファンドに資金供給をする、private markets program (PMP)を立ち上げた、というものです。

いつもながらシンガポールというのはその政策の方向性と手法に目を見張るものが有ります。今後伸びているくプライベート市場に、既存の企業とファンドをマッチングさせる MATCHとこのPMPを組み合わせて非上場企業の育成化と共に、資産運用業界の活性化と海外企業の誘致も行っていく、というのが見えてきます。そしてそのための資本リスクをとる、と明言しているのです。

特にこの最後の部分は、過去の新銀行東京の一件以降、議会が絶対に都としての出資を認めづらいところにある、けど補助金ならば、という選択に帰結したことを聞いているものの、これで差がつけられるなぁ、という印象はどうしてもぬぐえません。「あーあ」という声が出るのもわかっていただけたかと思います。

まとめ

ということで、東京版EMP、今後はEMが徐々に採用されていくことになるとは思います。あとは、どれだけの結果が残していけるのか、に次の道筋が決まっていくだけに、気になるところです。それ以上に、あけぼの投資顧問が採用されるのかが、個人的に気になって仕方ないのですが、スキーム上、第二種金融商品への投資そのものが許されているのか(特に国内受託者のポイントとして)など、クリアーにする機会があるのか、今後に注目です。いや、注目してください。

個人が長期投資をする時、投資先のコーポレート・ガバナンスは意味をなすのか?

このところ、NISAとか iDeCoとか個人の長期での資産形成のためのツールの説明を書いてみたのですが、実のところ、いくら投資の器が整ったところで、投資先がどうしようもない紙くずのようなその投資価値を感じさせないものだったら誰も投資しない、というのは株に限らず、それが仮想通貨であれ、不動産であれ、太陽光発電であれ、誰もが当然に思うところだと思います。では、その投資価値を感じるもの、と言ったときに、何を投資価値、と感じるのでしょう。

国や証券取引所、金融商品関連業界などは、この数年に渡って株式投資の環境整備の一環として、上場株式を発行する企業に対して「コーポレート・ガバナンス・コード」を、投資するアセット・オーナーやそのサポートをする投資運用業者に対して「スチュワードシップ・コード」を導入し、それぞれにその遵守か遵守しない場合の相当の理由を求める、という法律ほどの拘束力を持たないものの、一定水準での行動規範の自主的な履行を求めるという手法を導入しているのは業界関係者ならばご存知のお話で、人によっては苦労されていることもあろうかと思います。

でも、これは個人レベルでみてあまり影響がないだろう話とか、とか気にしない、とか、そもそも認知されていない、など色々と意見があるように思うので、今回「コーポレート・ガバナンス」を、次の記事で「スチュワードシップ・コード」を、そして、その後でそれを踏まえての「ESG」とか 「SDGs」と言った世界的なアセット・オーナーの投資規範を理解して、じゃあ、個人は何を投資に考えればいいのか、というアイデアになれば、という話をして行こうかと思っています。

でも、コーポレート・ガバナンスの前に – 会社って誰のもの?

この質問をすると、色々な回答が出てきそうです。でも、最初に出る答えはこれですよね。教科書的にも。

株主

もちろん。でも、株主以外にも会社を我が物にする人とか、いますよね。でも、それぞれがそれぞれに理由があってそう思う訳で、それのおかげで、実は日本のコーポレート・ガバナンスは海外と違う、のような論調を正論のごとく唱える御仁もいらっしゃったりするので、この辺りを整理するべく、会社とその関係者がどんな形で関わりを変えていくのか、いくつかの例をみていきます。

会社を作った瞬間 – 会社は作った人のもの

日本だと一般的には会社法に基づいて株式会社を作るのですが、その時のほとんどはその事業をやりたい人が発起人として会社を作るので、その株式も取締役の地位もその事業をやりたい人が持つことになります。他方で、その時は従業員は。。。いません。取締役が一生懸命働いて事業を形にしようと思います。だって従業員はいれば助かるかもしれませんが、株式出資で得た資金を元手に事業を行って稼いでいくのに人件費はコストに過ぎないのですから。

とすると、例えるならば、出来立ての会社においては、会社の関係者は、株主兼取締役(シャチョー)である「あなた」と、ビジネスをくれる(であろう)お客さん、あとはオフィスを貸してくれる大家さんをはじめとする会社を維持するのに資材を提供する業者のみなさんとの関係だけ、です。まぁ、今時ならば、オフィスをどこかに構えずに、登記上の所在地と郵便はサービスオフィスに、電話での連絡先は携帯に、仕事はどこかのカフェで、会議は先方の会議室かホテルのラウンジで、倉庫はAmazonに、みたいに軽くする会社もあり得ますが、そんな自由度も含めて、この時においては、会社をどう運営して、稼いで、会社の価値と株式の資産評価(この時点では会社の純資産)を増やしていくのに、事実上一人だから「あなた」の思いだけでやっても良さそうですよね。まぁ、お客さんに愛想をつかれないようにするとか、業者さん達(と、もっとこわーい、国税局)に支払いを滞らせると会社が立ち行かなくなるので、そこは最低限の自己責任ではありますが。。。

事業が順調に進むと従業員を雇ってもっと稼ぎたくなる

さて、労働基準法が守ってくれない事業主である「あなたが」寝ずに(!)働いた結果(笑)、会社の事業が順調に進むと、「あなた」一人(か、仲間の「取締役」数人だけ)では事業が回らなくなってしまいます。そうなると猫のを借りるよりも誰かを従業員として雇って事業の一部を任せたくなります。

この瞬間、株主兼取締役の「あなた」と、お客さんと業者さんの関係に、「従業員」という新しい関係者が増えることになります。しかも、この人たちは会社との間の「雇用契約」に基づいて働く人たちである一方、労働基準法などの法律で権利が守られているのと同時に、雇用するにあたって労働基準監督局に届出したり、この人たちの生活を守るべく健康保険や厚生年金に入るために年金事務所に届け出て、保険料の一部を負担し、そして、会社の債務では一番優先されるお給料を支払ってあげる対象にもなるのです。その代わり、忙しくなったあなたの仕事の一部を専任でやってくれるのですから、あなたにはその分時間が出来、会社を大きくするプランを立てたり、新しいことをする交渉を行ったりすることが出来るようになるのです。

その時、あなたの都合で従業員をこき使えばその分利益も上がりそうなものですが、外ではブラック企業と噂されて取引に影響が出たり、労働基準監督局から査察が入って改善命令が下されるので、雇用関係の法令遵守がいきなり求められる状態になってしまうのです。

それはさておき、そんな事業主のために一生懸命働いてくれる従業員の皆さんのおかげで会社は回り、大きくなっていきます。そうなっていくと、従業員の皆さんにも会社に愛着心/愛社精神が育まれ、また、会社は自分たちが動かしているんだ、という自負心も生まれて来ます。他方で、雇い主のあなたはそんな社員たちにはお願いしたことをお願いしたように(言い換えれば、余計なことや内引き、不正など事業計画の予定以外のことをしないように)して、そして長く心地よく働いてもらうように(トレーニングから自己啓発、福利厚生の充実やオフィスの環境やオフィスで飲み食いできるパントリー、果てはGoogle や某投資銀行のようにジムやリラクゼーション設備の充実まで)する管理の仕事もすることになるのです。

事業がさらに順調に進むと、資本を増やしてもっと稼げる体制を作りたくなる

さらに事業が順調に進み、気づくと従業員は増えて、事務所や店舗などを広げたりしないと回らなくなるステージになってきました。事業は順調ですから会社の銀行口座にはそれなりのキャッシュも積み上がってきていますが、事務所の広さを二倍にしたい!別のところに店舗を出店したいとか、物を作るための機械を手元に導入したい、など手元の資金では足りないところまで来ました。

そんな時に資本を増やすには大きく分ければ二つの手法を取ることになります。一つは銀行のような金融機関からお金を借りること、もう一つはこの事業に投資してもいいよ、という投資家に対して会社の株式を発行してその代わりの資本を受け入れることです。

金融機関からお金を借りる – いつか返さないといけないから。。。

金融機関からお金を借りると、当然利息は払わねばなりませんし、いつかは元本を返すことになります(と言いつつリファイナンスなんていって再度同額以上借りることで借金を事実上先送りにするケースも多く見られますが。。。)。とすれば、貸している金融機関からすれば必ず利息を支払ってほしいですし、そもそもローンの支払いは給与債務の次に優先されるべきもの(というか、ローン契約で約束通りに利息が支払われなければ期限の利益を喪失して元利金の全額を一括返済せねばならなくなるので、何をどうあがいたところで、事実上ローンの支払いがその他の費用等の支払い、もちろん株主への配当金よりも、優先されてしまうのです。。。おおこわっ)ですから、金利を払ってくれる限りにおいてはいいお客さんである一方、支払いに懸念が生じたら、債権者の立場として会社の資金回りや、よくドラマで見るように、銀行から(ある意味本流から外れたような人を)経理部の担当と称して派遣して資金繰りをモニターし始めたり、しまいには経営自体に指南というか口出しをして来ます。それは全ては貸し付けたローンを回収できなければ文字通り「元も子もない」という危機感から行なっているのですが、なんとなーく、会社が債権者のもの、に見えてしまう瞬間でもありますよね。なので、借金は会社経営やオーナーからは悪、と思われる理由でもあるのですが。。。

投資家からの資本を受ける – 返さなくていいお金、だけどその意味は。。。

さて、広い意味での投資家が企業に資本を提供する = その企業の株式を購入する、のはどういうことでしょう。まだこの会社が上場しているわけではないので、いつでも買うことも売るも出来ません。通常はむしろ、未上場株式についてはその譲渡について取締役会などでの承認が必要です。なので、買いたい、売りたい、と思ったところで承認が為されなければ出来ませんし、仮に承認されたとしてもじゃあ、いくらで売買できるか、というと、売り買いが起きているわけではないので、市場による売買価格の構成、というものに期待することは出来ず、複数ある企業価値の計算方法のうち適正と思われるものを妥当性を検証しながら選んでいく一方で、オークションや戦略的理由での株式取得のような、そんな緻密な公正価値なんて無視した売買価格の構成が行われる、という世界のシロモノですから、どんな理由で企業の株式を取得するのでしょう。

一つは、それでも純粋に安く買って高く売る、という経済的理由で投資する場合。ま、勝ち馬に乗る戦略、いっちょ噛み、って奴ですね。とはいえ、流動性のないところでの投資ですので、どうしても高い収益性を求める投資になります。となった時に、会社の立場で単純に保有するだけの投資家を入れておく理由というのはあるのか、という疑問が起こります。もしあるとすれば後述のような企業からの投資のような色のつくものではなく、中立的に保有してもらうことにメリットを感じつつ、株主総会での提案事項にはよほどのことがない限りは黙って(笑)賛成票を投じてくれる、という期待、でしょうか。

次に考えられるのは、安く買って高く売る、というその企業の将来性に期待して投資をする一方、その将来性を支えるべく経営戦略の立案支援から、取引先や提携先の紹介のような事業展開に関する支援、時としては思い入れのある事業の収益性が見込めないことで類似ではあれ異なる事業に転換する助言などすらをすることでその企業の成長に積極的に参加していくようなベンチャーキャピタリスト、のような投資です。ベンチャーキャピタルファンドによる投資で面白いのが、後述のプライベートエクイティ投資のように会社の株式の過半数以上を取得して会社の経営権を握り、取締役を派遣して自分たちの思う経営を行っていくことで会社の価値を上昇させるのではなく、5-10%程度の出資比率で、複数のベンチャーキャピタルファンドからの出資を受けつつ、それぞれのベンチャーキャピタリストたちの経営支援や協業提案などを受けて成長させていく、んですよね。

最近では、そんな投資を行うベンチャーキャピタルファンド(VC)だけでなく、企業が有望なスタートアップに対して出資を行っていくコーポレーベンチャーキャピタル (CVC)も増えてきています。こちらはVCのようなリターン追求より出資する母体企業との将来的な協業に対する期待の方がより大きい、と言えるでしょう。とは言え、Google や Amazon のように、そういう将来性のある企業への投資を最初は少額でやりながらモニターして、徐々に増やして子会社化して自社事業の一部に取り込む、のか、自社事業の脅威になるのでその芽をつむべく買収する、ということだって起こり得る、のです。

子会社化、のような過半数の株式取得の話が出たので、非上場企業への投資といえばプライベートエクイティファンド、ということで、この手のファンド、より正確な表現を取るならばバイアウトファンド、の話もする方が良さそうですね。バイアウトファンドは、前述のベンチャーキャピタルファンドが比較的少額での投資をしつつ経営陣に対して経営や事業連携のアドバイスをしていくのですが、バイアウトファンドは株式の過半数以上を取得して経営陣の入れ替えなどを行うことで事業の建て直しや経営の加速化などを目指していきます。この場合、旧株主や旧経営陣が出来ないことをファンドが代わりに行っていく、というスタンスが前提にありますので、そこを有効活用したいというニーズがあると実現する、というか、そこがないと実現出来ないですし、企業のステージとしてもベンチャーキャピタルのような会社が出来あがって成長段階、というよりある程度自分たちで成熟させた、という段階のケースが比較的多いのも特徴です。

続いて、これらのファンドからの出資という性質のものではなく、取引先や提携先、それらの候補からのより即時的な事業連携を目指した出資があります。無論、資本を出さなくとも取引も提携も行うことは可能でしょうけれども、資本提携があればより堅いお付き合い、というか出資先の取引先等の選別に関与してより多くの取引を取り込むことができる、という期待があります、よね。で、これを普通に事業提携に使えばいいのですが、実際には、出資して取引を増やし、結果的に出資以上の取引額が取れれば十分どころではない出資効果がある、という食い物にすることを狙っての出資をするケースもあるので、資本提携ってのは相手を選ばないとえらい目にあいかねない、ということでもあります。

そうやって、色々な人たちの思惑と、株主で取締役で立ち上げた自分の目指したいところとを擦り合わせて出資先を選んでいくことになるのです。ええ、前述の通り、未上場企業は取締役会や株主総会で株式の譲渡承認をしないと株式を譲渡出来ませんから、上場企業のように知らない間に知らない株主がいた、なんてことはないですし、譲渡承認をする手続きを踏むことで、自分たちにとってメリットのあると思われるところへの出資を選ぶ機会を持つことが出来るのです。言い換えると、上場しない限りは投資家が企業を選ぶのと同様に、企業も株主を選ぶことが出来るのです。

また、この頃であれば、時々見られるような、上場間近ですから、と個人の投資家をわんさか集めているような(正直そのまま計画倒産か永遠に上場出来そうで出来ない状態を維持し続けるような)紙一重な企業を除けば、経営サイドもそれぞれの株主との対話も比較的頻繁に行えて財務状況の報告はもとより、情報交換や事業運営の相談なども出来る状態にある、と言えます。

ICOだって資金調達でしょ?

そう言えば ICOで資金調達、なんてのもありましたね。メカニズム等はリンク先の記事を参照いただきますがざっくり言えば、商品を売っているに過ぎないので、株式譲渡のように企業へ関与する権利を得るわけでもなければ、債権のように収益に対して優先して返済を求めに行けるわけでもないので、発行した側からすればものすごく都合のいい資金調達方法で、買った側からしたらICOで手に入れたトークンが値上がりしない限りはなんのメリットも存在しない仕組み、と個人的には思っています。まぁ、株式の発行体の株主に対する至上命題である株式の価値の上昇と同様に、ものの製造者による責任としてトークンを必ず値上がりさせる、というのはないですが、Quoine のようにトークンをはじめとした仮想通貨の流通のためのインフラを維持する、という行為を取る以外は責任の取りようもないように思えていますが、これだって暗号はいつかは破られることを考えれば金が人類の歴史のある期間においてその物理的性質が安定して、かつ半減期もないため自然と量が減ることもないことに比べて不安定なものと考えるとどうなのでしょうね。

そして企業が株式公開を目指す… 本当に必要あるの?

閑話休題。さて、こうやって事業に色々な理由や思惑などで株式という形や債権という形で関与する人が増えてきました。それなりに収益を安定して叩き出して分配金が払えていればこんな形でいいんじゃない?とも思えるのですが、どうも満足できない人が多いようで、多くのこういった企業は株式公開、上場を目指すことになるのです。何故なんでしょう。

一番大きい、というよりまさにこれが大きな理由であるのは、当然、投資の回収を図りたいから、なのですが、未上場の状態であっても、相対で買う人がいれば売れそうなものです。でも、未上場である以上この会社を知り、その企業の価値の評価をするための情報もほぼ限られている状態で買いたいと思う人がそもそもどれだけいて、その中の誰かにたどり着いて売却できるか、というとなかなか難しいのです。また、未上場の状態では会社(とその取締役会など)が、仮に売りたい人と買いたい人とのマッチングが出来たとしてもその新しい株主になる人が好ましいと思って譲渡の承諾をしないことで譲渡が成立しない場合もあり得るのです。とすると、上場することで市場参加者による売買の申し込みが増えることで市場によるこの会社の企業価値のコンセンサスという株価での取引が、しかも上場した場合には会社サイドの承諾なく自由に、可能になるのです。

さて、株式を売却すると当然に売却代金を得る、わけですが、それを仮想通貨のICOのごとく資金調達に使っていた人たち、というのも古くからいるようです。そりゃそうですよね。そういう経済効果があるんですから。で、どういう人たちが使っていたか、というと、子会社を上場させて保有していた株式を市場で売却することで資金を調達する、のです。当然株式の売却だから返さなくていいのですが、これの厄介なところは上場してほとぼりの冷めた頃に(そしてこの子会社の株式の価格が上場時から下がったところで)市場から買い戻すと、借り入れより安いコストで一時期的に資金調達した効果になる、というものです。とは言え、親子上場ってそれなりに子会社を独立させる目的があったりしますし、親会社が事業再編で外の荒波に鍛えられて育った(か、救済目的で)子会社の株式を買い戻してグループ内の事業に取り戻したい、という真っ当な理由も存在するので結果としてそうなった、と言われると否定しづらい、という側面もあるのですが。。。

いずれにせよ、上記のように株式市場で売却できるようにすることは、上場までに投資して企業を支援してきた人たち、そして会社を創業し苦労して事業を育てた人たちの経済的メリット、ではあるのですが、会社の経営陣が考える理由は他にもありえます。例えば、未上場の状態では自分たちの思惑も当然あるものの、ある程度株主の顔と会社の経営陣に対する影響力が大きくなります。これが上場することで株主が個人投資家を含めて広く薄くなることで、個々の株主との対話の機会も当然減り、その影響力も相対的に小さくなっていきます。

実際のところ、(自分では長期保有すると思うものの)経営陣から見たらいつ株主をやめるかわからない複数の少額株主に対して未上場の頃のような密な関係を作れるか、と言えば当然出来るはずもなく、上場企業に課せられた四半期ごとの財務状況とビジネスの速報から年次の株主総会での総括的な報告をこなして行くことでそのような少額の株主への報告は勘弁してほしい、とすら思うことが大半でしょう。他方で、それはそうであれ、株価を上昇させてくれる株式の買い手となる将来の株主を増やしたい(そして、株価下落を期待して空売りする投資家を減らそう)と思えば、そんな人たちに会社をアピールする機会をくれるアナリストたちとの対話には時間を割かねばならない、と思いがちです。いずれにせよ、実際上場の維持コストはかなりバカにならない額と手間なのです。それを思うと、上場を維持するより事業にそのリソースを振り向けたい、といって株式を買い集めてくれる投資家たち等と組んで非上場化に戻す、という選択肢を取る企業だってそれなりにあるのはそういうことなのです。

ところで、これは後述の本編の問題に出てくることなのですが、個別の株主としての影響力が小さくなることはその小さな株主の利益や権利を無視して経営陣のやりたいようにやっていい、という意味ではなく、むしろ、個別の株主の影響が小さくなるということはその企業が特定の少数の支配権に近い株主のの公共性が高まり、その企業の経営陣による運営は不特定多数の株主の利益を守るような最大公約数を満たす行動と判断を求められる、はずなのです。そこで問題になるのが、その不特定多数の株主の利益を守るような最大公約数を満たす行為とは一体何か、なのです。

と言うことで、コーポレート・ガバナンス・コードになる、のだけど

コーポレート・ガバナンス・コードって結局のところ、色々な利害関係者が集まる上場企業において、一番コントロールの効かない株主の利益を守るために、一番コントロールを効かせることのできる経営陣が守るべき最大公約数の利益のための行為、ってことだと言うのが見えてきました。じゃあ、その最大公約数って一体なんでしょう。多分いくつかあって、人によって表現の仕方も異なると思うのですが、もしファンドのガバナンスを提供するって商売をやってきた著者ならどう表現するか、でまず解説して、それをいわゆるコーポレート・ガバナンス・コードに落とし込むとどうなるのか、やってみましょう。

でも、ファンドのガバナンス、って普通ピンと来ないと思います。ファンドっていわば投資事業ですので、売って買って投資家を儲けさせればなんでもあり、あとは適当に当局届出をやっておけばいい(んだからフィーは安かろうかそもそもいらない)くらいに思われていそうなのですが、ファンドは投資戦略と投資制限の中で投資を行い、その制限や戦略の通りに投資行動が行われていることを監視、確認し、適法に届出を行ってファンド自身の維持を行い、また関係者へのフィーを適宜支払うことで関係者からのサービス提供を継続的に受け、また(会計監査に限らず)そのサービス内容の確認を行って適切に運営されていることを担保する、と言うことをやっています。ごく当たり前に思われそうですが、でも、この当たり前が出来ないと、関係者の誰かに大事な投資元本を持ち逃げされたり、投資のリターンが当初の戦略で予想されるものと異なる、そして説明のつかないものになったり、と、投資に対する信頼が揺らぐ結果になるので困りますよね。じゃあ、これをより大きな規模で事業を行う企業に当てはめるとどうなる、と言うのでしょう。

余計なことをしない、させない – 本業に特化すること

自分だけが株主で自分の手で事業を行うならば、より儲かるから、とか、自己実現のためとか、今日が水曜だから、色々な理由をつけて今日までやってきた事業をいきなり辞めて違うことを始めることは可能でしょう。でも、それ以外の株主があなたの企業の株式を買う理由はその企業の行う事業(か、その収益性か、将来性か)に惚れ込んだから、なのですから、「本業」を辞めずとも「事業の多角化」と言う名目で他の事業を始めるのはその企業の持つ事業リスクの性質が変わるため嫌がられます。

ま、確かに多角化したらそれぞれの事業との間にシナジーがあって、とか、事業のリスクを補完しあう、などの言い訳は出来そうですが、単純にパッケージを見て美味しそうなポテトチップスを買ったのに中身を見たら激辛の唐辛子せんべいだったら怒る私たちです。会社の事業内容をみて株式を買ったら別のことをやっていてにっこり笑える人がどれだけいるでしょう。

さて、このタイトルは上記のような単純な事業替えや不意の多角化だけに止まりません。企業が収益を上げるためのプロセスを「持続可能な形で」構築して、「運営」し(必要に応じて適切な改善を行い)、そのプロセスが適切に運営していることが「確認できる」(今時であれば「見える化」する、って言うんですかね)ようにすることが、その事業に投資する株主にとって「ただ何かしらのおかげで稼げている」よりも投資しやすくする、のです。で、ここにはいくつかキーワードが存在しまして。。。

例えば「持続可能」と言うのは、(従業員でも、取引先でも)誰かが一瞬でも、もしくはその一瞬を無理やり継続して、不合理な無理を強いることのない、と言う意図があります。従業員の長時間残業が前提であったり、仕入れ価格の(不適切な形での)値引きや一時的な価格下落を長期的な前提としたコスト設定とすることで関係者の不合理なコスト値下げ圧力をかける、とか、販売サイドでの一時的な押し込みで数字を無理やり作る、などなど。ある程度の生産性の向上のためのプロセス改善に向けた努力としての無理は必要でしょうけど、誰かさんの健康や精神衛生を犠牲にして収益を上げることと言うのは持続可能なプロセス、と言わないのはわかりますよね。でも、収益を上げないといけないから、ってことでここのギリギリの努力としわ寄せの紙一重、わかりづらいですよね。

プロセスの「運営」、って口で言えば簡単です。やって結果を出せばいいんです。でも、料理に例えるとわかりやすいと思うのですが、美味しいレシピが書かれていて、それ通りにやれば(運営)美味しくなる(結果が出る)ことは知っています。多分、1回目はそれにかなり正確に従って作ると思います。でも、2回目はどうでしょう?そして10回目は?だんだん、自己流を入れたくなるか、まあいいじゃない、ちょっと量を変えたって、と思うのが大半の人だと思います。同じことを同じように繰り返すのって結構大変なことです。仕事の場合、どうでしょう。仕事の手続きって文書化されて誰がそこに座っても同じに出来るでしょうか。また、書いてあったとして、その通りにやっているでしょうか。

でも、これをレストランでやられると安定した味にならないってことを私たちは知っていますし、例えばマクドナルドのようなフランチャイズであれば「(あらかじめ均一の形になった)お肉をグリルに置く」「グリルの上のボタンを押す」「ブザーがなったらグリルの上のボタンを押してブザーを止めて肉をひっくり返す」「ブザーのボタンの高さから塩コショウを1秒かける」「もう一度ブザーがなったらお肉をグリルから引き上げてパンにのせる」といった、マニュアル(とそれに合わせた調理器具、そして具材)が(全世界で同じように)準備されているので(マクドナルドの進出したどの国でも)高校生のアルバイトであっても、20年働くパートのお姉さんでも、全く同じ味のハンバーガーが出来る、と言う仕組みが出来、実行できる、のです。こう言うサンプルを見ると、プロセスの構築と運営、改善がコスト削減にすら繋がるんだ、なんて思えてきますよね(売る時の最後の一言「ポテトも如何ですか?」を言うことでの売り上げの積み上げを努力するマニュアル化も含めて)。

そして「確認できる」、はJ-SOX法(といっても、金融商品取引法のなかで規定される上場企業の株式と言う、金融商品に対して求められている内部統制報告制度、なので独立した法律ではないんですよね。。。)に基づく内部統制、といえばそうなのですが、これって株主に報告するために構築すべきもの、ではない、ですよね。本来は誰がこれを使うべきか、といえば、事業運営を監督する経営陣、のはずなんですよね。事業が正しく運営されていれば収益が予定通り上がる、そうでない場合に内部統制的にどこかおかしいのか、と言う分析と問題点の洗い出しを行うため、いわば PDCA (Plan-Do-Check-Action) の CとAを行うためのツール、なのです。内部統制報告の際に綺麗な結果を出すのが目標、と言うよりも事業状態の把握が目的、なのですが、どうなんでしょうね。。。

あ、苦言だけいっちゃった(笑)そもそも内部統制ってなあに、をすべきでした。教科書的に言うと J-SOX法の言う内部統制は、

内部統制は、基本的に、企業等の4つの目的(①業務の有効性及び効率性、②財務報告の信頼性、③事業活動に関わる法令等の遵守、④資産の保全)の達成のために企業内のすべての者によって遂行されるプロセスであり、6つの基本的要素(①統制環境、②リスクの評価と対応、③統制活動、④情報と伝達、⑤モニタリング、⑥ITへの対応)から構成される。

財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並び
に財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する
実施基準の設定について(意見書)

ってことで。。。あれ?「業務の有効性と効率性」と「事業活動に関わる法令等の遵守」はすでに触れた通りですよね。まぁ、「資産の保全」って「取締役が勝手に工場とか事業に大事だったり企業の資産の大半を占めるものを売っぱらわないよね」って会社法で決められてまして、そこを押さえていれば(取締役会議決などが必要なのでちゃんとその手続き等が踏まれているか開示されていれば、と言う意味ですね)、あとは「財務報告の信頼性」ですね。これも、不正な会計処理、例えば売っていないのに売り上げ計上するとか、商品をうち引きするとか、会計処理について一般に行うべきことと異なる処理をして企業の経済行為を適切に反映させていない、ようなことはしちゃダメよ、と言う基本のき、みたいな話ではあります(が、まぁ、それが出来ない、しないところも多いですよねー)。で、これらの目標を達成するために、6つの要素をしっかり備えるように、例えば、何か承認を得るならば得たなりに適切な人の権限で承認したと言う記録を残して、それを第三者にチェックしてもらえるようにし、チェックまで行いましょう、と言う統制環境を整えてその上で統制活動を行いましょう、と言う簡単な話から、ITを使って、誰がどこで何をした、と言うのを把握し、またそれが改ざんされないよう備ましょう、とか、単にチェックしただけでなく、その結果を評価し、どこにリスクがあるのか、またそのリスクにちゃんと対応しているか、と言う評価をしましょうね、そのためには情報を隠しちゃダメ、改ざんしちゃダメ、ちゃんと透明性を持ってやりましょうね、ってことなのです。

なんか、形は違えど(特に内部統制と言う点においては)普通にちゃんとやってそうですよね?でも、それが株主に対して公平に利益を提供する結果に繋がるはずなのですが、あとはそれを如何にやっているかを示せるか(言い換えれば株主と将来の株主に対して理解してもらえるか)なのだと思います。逆に、企業が大きくなるとこのような「当たり前の積み重ね」がどこかで何かしらの理由で抜け落ちるケースがあって、何かしらの歪みのおかげで表沙汰になったものだけが多分にそれが世の中で言う「不正」と言う形で企業の信頼の失墜に繋がっちゃうんでしょうね。その意味ではやってて当然、うまくやらないとペナルティを社会的、経済的、などなどで受ける減点方式の世界、に見えてしまう仕組みに取られがちなもの、でもあるのです。

で、コーポレートガバナンスコードって結局なんなの?

一応、お約束に的に定義に行きましょうか。現在のコーポレートガバナンスコード、と言うのは、日本取引所グループのウェブサイトで公開されていて、その中身のエッセンスを言うならば

コーポレートガバナンス・コードについて
本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。
本コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる。

コーポレートガバナンス・コード
~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~

と、上場企業は株主だけでなく、顧客、従業員、だけに止まらず、地域社会等までその影響力を考えて行動を求める、と言う「公共の器」であり「公共に資する」ように企業が振る舞う原則、としているのです。上場企業はその意味では非公開企業のような株主と経営陣、社員たちがその利益を最大化することを目指す、と言うのと一線をかさねばならないようです。

で、その原理って何かと言えば、タイトルだけ言うならば

【株主の権利・平等性の確保】

【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】

【適切な情報開示と透明性の確保】

【取締役会等の責務】

【株主との対話】

が挙げられ、それらを実行するために、小難しい「社外なんちゃら」を導入せねばならない、とか四半期の報告書をどのタイミングで公平に公開せねばならない、とか、と言う話に繋がっていき、ある種の新しい仕事、例えば社外取締役や社外監査役と言うのを法律から生まれたものだから弁護士(特に今時のダイバーシティにあやかって女性弁護士で派遣することに息巻いているのが散見されたり)や会計士などが、どうせ企業も形式要件を満たすために必要だろう、で、呼ばれることを期待している、と言うなんか変な話になっている、と言うかされている、のです。

Comply or explain – 適用しないと説明求めちゃうぞ、の落とし穴

で、前述に思いっきり某地方をディスるコメントを書いていますが、これ、日本ならではの行動パターンと思考パターンからくるものなんですよね。実は、コーポレートガバナンスコードって「コード」と言うことで法律でも証券取引所の求める必須要件でも、ない自主的な原則の会社への導入、なのです。その意味では実は適用は義務ではない、のです。でも、不思議なもので、義務じゃないと言いつつも、原則の導入を上から求められると、入れないといけないのか、と感じてしまうので、どうやったら最低限の必要条件を満たすのだろう、と言う余計なことを出来るだけしないでやった感だけ見せよう、という行動が結構散見されているそうです。

しかも、コードでは、Comply or explain – 原則の導入か、導入しないならばしない理由を説明することを求めているのです。もし労力をかけたくないならば、最低限の適用をしておしまい、としたくなるのです。誰も、導入しません、なぜならば。。。と言う説明をしたくないのです。

なので、頭数を並べます、書類も整えます、なのです。代わりの機能が導入されているからいいんです、適用しない説明をするより適用することで話をしないで済む分いいんです。

って、のが多いんです。でも、それ、本当に適用しているの?と言うケースがあったりするんです。適用した、と思い込んでいるケース。どことは言いません。でも、適用しているって主張して実は適用していなくても罰せられたりペナルティを受けることもまずないんです。だって、コード、だから。

となるので、コーポレートガバナンスを重要視する人たちの間では、「Comply and explain」にすべきだ、と言う声が出ています。どう言う発想と目的で complyする体制を作ったか、説明せよ、と。実際にその方が、その意図に基づいてガバナンスが機能しているかも評価できるのです。言い換えれば、コーポレートガバナンスコードって内部統制機能を導入する最低限の条件みたいなものであり、その条件の元でどう運営するか、結果を最大化するか、のはずなのですが。。。

と考えると、個人投資家としてコーポレートガバナンスコードってどうすればいいの?

多分、個人で投資するときに、コーポレートガバナンスコードの効果を考える必要はあまりないのかもしれません。基本どこも有り体に導入しているわけですから。本業の強さとかで評価する方がリターンへの効果はきっと大きいと思います。

でも、コーポレートガバナンスコードって、実は機能していませんでした、って時の会社へのダメージがかなり大きいので、機能しているかどうかを気にしておく必要はダウンサイドリスクの観点では必要なのでしょう。ただ、そのために深いところまで見抜ける力があるか、と言うと多分ないと思います。実際のところ、例えば会計監査ですら見抜けないものすらあるわけです。とはいえ、そう言う可能性や傾向というのは投資する会社を見るときに一つ手間をかけてチェックすることは悪いことではないのかもしれません。

とはいえ、もしチェックするスキルや時間や、と思うならば、コーポレートガバナンスコードと同様に、運用会社や機関投資家に課せられたコード、スチュワードシップコードによって投資先企業の監視や対話を義務付けられた大口投資家の判断に「乗っかる」という選択肢もありかもしれません。

ということで、気づけば超長文になった本記事、一旦終わりにして、スチュワードシップコードに話を展開したいと思います。

恒久的施設の定義等の変更がありました、って。。。?

このところ、みやたべろぐばかりアップしているので、たまには真面目なネタも。。。

国税局というところはご丁寧に色々な刊行物を作成しては登録されているオフィスの所在地に郵送してくれるのですが、そのお仕事の性質上専ら「税金」の話なので微妙に複雑、というかあまり読みたくないような話ばかりなので、どうしても封すら切るのをついぞ躊躇ってしまいます。

実はちゃんと読んでおかないと行けなかった税務署からのお知らせ

とはいうものの、この週末に他にも溜まったクレジットカード会社の月刊誌などを読んで廃品回収に回さねば、とざっと目を通したのが「源泉所得税の改正のあらまし」。ざっとのつもりが案外引っかかるものがあれこれありました。

例えば、4ページ目にある、2020年以降の適用ですが、給与所得控除の10万円の減額、ということはその分の課税所得が増えることで増税効果が発生する一方で、基礎控除の増額が合計所得が年間2400万円以下にだけ適用されて、前述の給与控除の減額と合わせて事実上何も変化がないものの、合計所得が年間2400万円を超えると基礎控除すら減額される、なんて知ってました?これって、給与所得だけの人たちにはほぼ関係ないけど、たとえば不動産所得だけの人とかにはちょっとしたメリット、ですよね。しかも給与所得で年収2400万を超える人って2016年の統計になるものの、この頃で。。。。2400万円という区切りがないのでざっくりした計算をするならば3000万円以上の人で247,970人いて、2000万から3000万の人で195,800人だから半分としても345,870人もいることになります。といっても、給与所得のある人が9,789,362人ですから全体の3.5%程度の人が対象になってくる、のです。それって。。。マイノリティへのペナルティにしか見えないですが。。。

実はかなりやばいルール変更も書いてあった

さて本題。この3ページ目にこっそり入っていたのが表題にもある「恒久的施設(PE)」の定義等の見直し。実はかなり海外から国内への投資を呼び込みたいプライベート投資にとってまずい変更になり得る変更なのです。

恒久的施設って?

まず恒久的施設ですが、ご存知ない方にざっくりとした説明をするならば。。。日本に住んで生活し、活動する私たちにとって、前述の給与所得も不動産を買って売却した時の差額の利益も、株や債券から発生する分配金や利息、これらの取得と売却の差額益、果てはせどりのごとく安く仕入れて売却したものならその差額の利益まで、国税局にその一部を税金として納めなければいけません。ですが、これが海外に住んで生活する人が同じことをやることは、手間はかかるものの出来ますが、その場合には国内に納税する際の住所がないことから日本の国税局からは課税されないのです。

当然ですが、その場合、その住んでいる国で課税されることになるので、ファンドならば有価証券の売却益に対して課税しないケイマン諸島のような所から証券取引を行って利益をできるだけ投資家に還元したい、と考えますし、物販を考えるならば、オンラインで受注を受けて、法人税の安い国に拠点を置いて発送をそこから行う、と考え始めるのです。これが恒久的施設と呼ばれる事業の本拠地、という考え方です。

で、この考え方ってこれだけ簡単な話じゃないの?

本来ならばこれくらいシンプルなはず、だったのですが、色々と考える人がいたり、会社などの都合で色々なケースというのが発生し始めます。例えば、先ほどのオンラインで複数の国の受注を受けよう、と考えた時に、オンラインで受け身に受注するのではなかなか売り上げが上がらないとなれば、海外から営業をかけることは難しいので現地に営業する誰かが欲しくなります。そうなると、国内に営業拠点を置くか、国内に営業の強いビジネスパートナーを置いて営業を任せるか、のどちらかを考えることになります。

後者のビジネスパートナーならば、他のビジネスをやりながら自分たちの商品の売り込みをする、というところで事業展開についてコントロールがある意味自分たちの思うように行かないものの、他方で契約書一枚の関係に過ぎないので国内に拠点があると言われる筋合いもなく今まで通り国内から上がった売り上げに対して課税はされないという税務的なメリットは残ります。

でも、やっぱり本腰で売りたい、ということで国内に資本を入れた子会社を作って営業をさせると先ほどのようなビジネスパートナーとの関係、のような話にはなりません。自分の所の物だけを売るためだけの会社なのですから、国内で在庫を抱えて売っている人と表向きは変わりはなく、仕入れと在庫管理と発送を国外に置いているからある意味国内から利益を隠しているようにも見えるのです。となると、これは実質には国内で活動しているのと同じなのだから国内の売り上げについては課税すべきでは、ということになり、その際に、この国内子会社はこの売り上げのスキームにおいて恒久的施設を国内に有している、なんていう話になるのです。子会社であっても事業の実質的な本拠がどこなのか、というのがポイントになるのです。

で、これを書きながら、私ごとながら、以前やっていたジャージー島の金融サービス業の会社の日本でのビジネスのことがちょうどわかりやすい話かな、とも思ったので少し触れるならば、この場合は海外(ジャージー島やバーミューダ)で行われる金融サービス業、ファンド・アドミ業務やファンドの管理会社業務についてはその事業の性質上などから日本国内に在庫、というかこの場合はサービス提供拠点を置くことは出来ませんが、利用者は国内にいますのでそのサービスの認知から利用のためのアイデア提供などを国内子会社を通じて行いました。しかも、イヤラシイことに(笑)その説明する相手というのが投資銀行や証券会社、投信委託会社、といったところであ流にも関わらず、でもそのサービスの対価を払うのは最終的にファンドに投資した投資家のみなさんが、しかもファンドの費用という形で間接的に、ということで、この国内子会社(というか、以前なら私)は前述のような「ものを売っている」のか、と言われると売っているのかもしれないが、性質上国内に機能を持って同等のことを行うかのごとく課税する、ということはなかなかしづらいものなのである一定のルールを入れることで恒久的施設を有しないと認知される代わりに代替的な形を通じて納税を行うことによって、税務当局とはうまくやっていたのです(私がやっていた頃はね。)。

で、その当時よく言われたことで、「このファンドの投資判断を東京でやってよ」と言われたのですが全部お断りしていました。サービスクオリティ悪くね?とか言われていたようですが、これを東京で(当時なら私が)やってしまうと、ファンドの判断が東京で行われている、ということで外国籍投資信託の管理会社については投信委託会社を脱法で行うことになると認知されるリスクが出るのが理由です。税務とはちょっと異なる話ではありますが、ここも投資家のみなさんにご迷惑をかけないという意味では大事な話でしたので頑固に譲らずにおりました。

この辺を一通りわかっている人、最近を見ていると少なくなったようなんでちょっと書いてみました。

で、ここで出てくる主体的な行動と課税の関係について話が及ぶのですが。。。

さて、今回の話の核心にだんだん入ってくるのですが、前述のケースからわかるように、海外から国内に営利行為を行って収益を上げる、というところで国内の拠点なりビジネスパートナーがどれだけその事業に関与しているかで国内に恒久的施設を有するという議論になる、というのが見えてきた(?)ところで、今回やばいなぁ、と思っているところに入っていこうかと思います。

なお、今回の変更の背景というのが、BEPS (Base Erosion and Profit Shifting – 税源浸食と利益移転)という世界的な国際税務取扱の取り決めに基づく恒久的施設の定義の国際的な統一に動いたことにある、というのをまず話の前提にあること、したがって著者のメインにある金融だけが狙い撃ちで行われている話ではない、のを分かった上であえてあれこれ書いていることをまずご理解いただこうかと思います(笑)

ちょっと歴史のお勉強を

税務の観点で国内への海外からの投資の議論が盛んだったのは2007年から2008年の投資事業有限責任組合法の改正の時でした。当時を思い出すとユニットトラストがメインだったのでLPS法によるこの恒久的施設の議論は影響ないか、と思って眺めていましたが、考えてみればユニットトラストの場合は税務的な整理が確立しているので変更しようがなかったのです。前述のような国内拠点での判断が行われて投資信託の脱法っぽいものが行われたとしてもそれでも投資信託と同等の器での投資である以上税務上の課税ポイントはケイマン諸島では発生することはなく、ユニットトラストの持分の売却時に投資家に対して行う、ことに変わりはなかったのですから。

さて、その当時、LPS法とその周辺、特にこの法律の主だったユーザーであるプライベート・エクイティやベンチャーキャピタルの運用者と投資家たち、そして、それらの人たちによる投資資金を呼び込みたいと考えていた経済産業省、の注目していたことは海外からの投資が税務的な理由で激減していたことにあります。それは何かというと、Shinsei Tax として悪名が知られていた国内企業を海外で保有し、海外で売却したとしてもその譲渡利益にに対して日本として源泉徴収が行える、というものです。なぜ Shinsei Tax と呼ばれるかというと、昔、とある銀行がありまして、諸般の事情で破綻して国有化した際に海外のプライベートエクイティファンドがその株を取得して腕利きな経営陣等を派遣して企業再生を果たす、といった時に、国内の議員さんたちがそんな海外のファンドが血税を使った銀行の株を海外で売却したらその利益は海外に止まってしまって納税者に還元されないではないか、と前述の税法改正をしたのです。その銀行、当時は日本長期信用銀行、今では新生銀行、として知られるところですのでかかる課税のきっかけになったことから、そう呼ばれていたのですが。。。若い人は知らないだろうなぁ(笑)

独立代理人の要件

で、この改正を行って海外からの投資家に対して安心感を与えるように行ったと同時に当時のこの恒久的施設の定義、特に独立代理人の定義を行うことで、海外ファンドが国内への投資を行うにあたっての国内での活動拠点のガイドラインを定めたのです。その際に定めた独立代理人の要件として

  1. 法的独立性: 代理人が代理人として行動する上で十分な裁量が与えられているか?
  2. 経済的独立性: 代理人がその収入を全面的に一人の本人に依存していないか?
  3. 通常業務性: 代理人の行為が慣習的に行われているものであるか?

をあげていました。これは大和総研さんの当時の資料がよくまとまっていますので、深く調べる際いはご参考に。ここで一番のポイントなのが、法的独立性で、実は裁量権が与えられていれば、本人との資本関係が100%であっても、独立性を測るにあたっては無関係であったのです。ということで、2008年以降のプライベートエクイティやベンチャーキャピタル投資、そして不動産投資の一部で海外からの投資資金を受けるファンドのストラクチャーを作る際にはこの独立代理人の要件を満たすように誰もが構築してきたのです。ええ、国内子会社と海外親会社との資本関係が100%であっても大丈夫だ、と信じて。。。

で、ここで独立代理人の定義が変わる、というのです!まさに、資本関係は関係ないよ、といっていたのが、50%を超えると独立代理人として見做されなくなる、というわけです。

やっと、事の問題が説明できました。ま、いつもなら10,000字を超えたところで問題提起しているから、今回はまだ早い方ですね(笑)

で、これってどうなるの?

当局と業界団体との事前の意見交換等も実は昨年末に行われていたのですが、実際のところ当局(といっても、国税庁ではなく金融庁なのですが)サイドとしてはこれの影響ってないんじゃないの、くらいの感覚のようでして、特段金融関係のための手当もされる事なく、年末の税務大綱に上がり、3月末に国会を通過して今日に至っているので、ただただ、この新しいルールに年明けに向けて対応していかねばならない、のです。やらないと、少なくとも海外投資家を抱えるケイマン諸島のファンドを使った投資を通じての投資資産の売却益に対して総合課税がかかってくること予見されます(参照リンクの4-5ページ目)。

とはいえ、先日某国内大手プライベートエクイティ投資会社さんの(比較的事務寄りの)パートナーさんと話をした際にもご存知なかったという反応があったので案外認知されていない事のようにも思えているのです(なので記事にしているのですが。。。)。

で、出来ることって?

スキームの見直し、ではあるのですが、一番影響があるのが独立代理人の定義、ですのでその変更点である資本関係と仕事の割合について見直すべき、という意見が出てくるのが想定されます。となると、国内拠点とファンドとの間の資本関係か、国内拠点の請け負っている仕事のうちファンドなどの資本関係の大きいところからの仕事の割合か、どちらをいじりやすいかと言えば。。。仕事の割合ってそう簡単に外部の仕事がくるはずもないですよね(苦笑)といって、資本関係をいじるべく外部の株主をよびこめるのか、というと。。。どうなのでしょう。

とは言え、規制対応はスポーツ同様事業でも当然に求められることですので、やらねば、なのですよねぇ。。。とりあえず、まずは担当の税理士先生とご相談でしょうね(って、この言葉は誰に向けられているのやら。。。sigh)

[投資のコストと効果] iDeCoのメリットは確定申告で得るあれだけではなくて

以前書かせていただいた、30代から40代までの金融リテラシーを強化しよう、というメディアでオフショアの話というのはなかなか目立たなかったのですが、目立つコンテンツはどうしても、「ふるさと納税制度」、前回の「NISA」といった個人の所得税減税というお得感に訴求するような何か、というものばかりだったようです。その中で、同じように目立ったコンテンツとして、やはり昨年あたりから銀行さんが力を入れてきたのが、今回取り上げる iDeCoなのですが、某りそな銀行さんの店舗に貼られた某カタカナ五文字の喜劇俳優さん以外のポスターで目を引くのはどうしても、減税効果のこと。しかし、iDeCoはそれだけのためにやるべきことなのでしょうか。。。

そもそもiDeCoってなに?

iDeCoとか言って、金融系商品にありがちなアルファベットな言葉ですが、じゃあ、これが何の略かといえば。。。 individual type Defined Contribution Plan – 個人型確定拠出年金の太文字部分だけ取ってキャッチーな言葉にしようとしたんだろうなぁ、ということが透けて見える感じ、ですね。でも、年金、という言葉が出てきちゃったので、どうやら適当に作られて流行った商品ではなさそうなことだけは見えてきました。むしろ年金ですので国の大掛かりな仕掛けが背景にありそうな。

というか、年金って何?

そもそも、この国の年金の仕掛けってこの瞬間、どこまで理解してますでしょう。知ってるよ、という人もいるのは分かるものの、大抵は年金手帳を持ってるけど、給料から天引きされてるけど、で止まる可能性が高いでしょうから、その辺りを基礎から丁寧に始めてみようと思います。

国民年金 – 実は誰もが入っている年金で、その筋ではいわゆる一階部分

(国籍問わず)日本に住み、働く人たちは法律に基づき、国民年金に入らねばならない、という国民年金法、という法律がありましてこれに基づいて、この国に住んで働いている20才以上60才未満の人は大抵この国民年金に入っています。

通常、「国民年金というと自営業の人たちが入るもの、会社勤めは厚生年金」、と思いがちですが、厚生年金の加入は国民年金法では第2号被保険者と位置付けられていまして、厚生年金の保険料として納められたものの一部が基礎年金拠出金という形で国民年金に拠出されて、自営業の人たちなどの第1号被保険者からの保険料とともに、世界最大の年金運用者として知られ(世界中の運用会社にちやほやされるから運用報酬を渋り倒すことでも知られ)る年金積立金管理運用独立行政法人(GPIFの方が分かる人の方がきっと読者では多いでしょうね(笑))運用され、年金受給者への年金としての支払いに回ったりする、という流れになっています。

ちなみに、いわゆる会社勤めの方の配偶者で認定基準年間所得が130万円未満の方は第3号被保険者ということで厚生年金の手続きの時に届出することで加入しますが、この時の保険料はただ。だけど、この第3号被保険者の分も厚生年金で基礎年金拠出金を拠出する時に負担していることになっている、のですから、実は稼いでいる人の配偶者でいることというのは年金の観点で言えば費用負担ゼロで年金をもらえるという非常に美味しいと言えますし、これって実は働く女性の数と労働時間を年額所得130万円で抑制している原因のひとつだということに政府は直視すべき事実だと思うのですがね。(関係者の方、見てますかー?)

厚生年金とか共済組合とか国民年金基金とか – 国民年金の上にあるその筋で言う所の二階建て部分とは

さて、一階部分の次は二階部分の話。第2号被保険者という勤め人な人たちが年金に入ると言えば思いつくのが厚生年金ですが、前述の通り、実はこれは国民年金に付け加えて入っている年金制度、なのですね。ちなみに、勤め人のうち、私企業に働く人は厚生年金法の第1号被保険者に当たって、第2号被保険者な国家公務員な人たちだと国家公務員共済組合や国家公務員共済連合会(後者はアルファベット三文字でKKRKokka-koumuin Kyosai Rengokai -になるので、日本中のあちこちにこれ関係の宿泊施設とか見られますが、プライベート・エクイティ・ファンドの大手、KKRKohlberg Kravis Roberts – とは関係ない、のは業界初心者のネタですな(笑))に、第3号被保険者な地方公務員な人たちだと、地方公務員共済組合や、地方公務員共済組合連合会、全国市町村職員共済組合連合会に、第4号被保険者な私学の先生方には日本私立学校振興・共済事業団に所属する、けどこれらは全部2015年10月以降、第1号とその他が一元化されたことでこうやって一纏めに厚生年金、と説明できるようになったそうな。ちなみに、そういう資金ですので、運用は。。。またGPIFさんが国民年金と一括して、とはならず、第2号以降はそれぞれの組織が運用して、第1号が国民年金と一緒にGPIFさんが運用しているそうな。そりゃ、GPIFの運用資産が大きくなる訳だ。。。

では企業に勤めていない国民年金の第1号被保険者な方に対する2階部分は何になるか、というと、国民年金基金というのがありまして、もし加入手続きをしたことのある人ならば分かるのですが、国民年金に上乗せしませんか、という資料を渡されたことがあるかもしれません。あれです。あ、ちなみに、国民年金の保険料に毎月400円上乗せして払ったら、「200円 x 付加保険料納付月」の額が年金に上乗せされますよ、という話がありますが、あれは国民年金の保険料の話なので、国民年金基金とは別のお話です。しかし。。。日本年金機構のページで説明がありますが、

これを払えば2年で元が取れますよ

とオススメするなんて。。。(汗)

ちなみに。。。第3号被保険者な勤め人の配偶者の皆さんにはこの2階建て部分はございません。そもそも一階部分がただなんだしさ、それ以上に何をタダで期待するのよ(ベーっだ)

厚生年金基金とか、企業年金とか、年金払い退職給付とか、いわゆるその筋のいう所の三階部分

さて、年金制度ってまだまだあって、国民年金に国民年金基金という上乗せがあるように、厚生年金には厚生年金基金という屋上屋のような仕組みがあったりしました。その昔、厚生年金の運用を企業が代行して行う代わりに企業側で独自の上乗せをします、という制度を厚生年金基金ということで1966年あたりから導入されていました。

こいつは勤め人ならば誰にでもあるもの、ではなく、勤めた企業の福利厚生の制度で設定されている企業に勤めるとある、という類のものです。しかも、これがあるときは、一般的にその保険料は企業が負担して雇用される被保険者からの拠出はない、というなんと太っ腹!まさに企業が従業員の退職後の豊かな生活のために準備してくれるとても素敵な制度、ですよねぇ。。

というと、とてもいい話なのですが、当然、これって企業側からすればコスト負担以外の何者でもない話ですよね。しかも、これをその昔は勤務年数や退職時の給与のようなある程度決まった要素で計算することで支給額が決まってしまう仕組みしかなかったものの、90年代に入るまでは株もインフレも自然に上昇するから給付するよりもそんな基金の資金は増えて問題はなかったのです。が、インフレもなければ株や債券の値動きがここまでぶれる世の中においては将来の支払いを約束することは、最悪企業からの追加持ち出しも求められて結果企業すら倒れるリスクも負いかねない、というところまできた基金が増えてしまいました。

そんなある日、リーマンショックも終わったところで、これまたアルファベット3文字で始まるヘッジファンド運用で儲けさせまっせと、詐欺を働いたAIJ投資顧問、という連中がその口車にまんまと乗ったこういった企業系の年金の資金を使い込んで消失させて(ついでに独立系運用会社の信用も失墜させて、メディアにオフショアファンドの信用に泥を塗らせて)しまったことから、かなり損害が広がり、2014年からそんなことを企業に任せてはいけない(じゃあ、国がやればいいの?という疑問はさておき)、ということで、厚生年金基金の新規設立は認めなくなり、また財務内容が悪い所は特に(五年以内に)代行返上して解散しなさい、という方針になったのです。

他方で、2002年に出来た確定給付型企業年金制度を利用して厚生年金の代行をしないけど退職時の条件で年金の支給額が決まる仕組みで3階部分だけの提供をする、という制度が出来ていてこれを利用したり、2001年に出来た、今回のiDeCoを含めた最終的な給付額は運用方法を選択した被保険者のリスクで行う確定拠出型年金制度の企業型(なので掛け金は企業持ち – マッチング拠出とかもあるけどここでは割愛ね)を利用するところが出てきたり、と、実はここには(3階を提供しないからiDeCoやっていいよ、という選択肢を含めて)色々なケースが存在します。

ちなみに、国家公務員など人たちにも同じような3階部分はありまして、特に2015年の一元化のあとでは、年金払い退職給付と一元化による制度移行の間を繋げるための「職域部分」と称するものがあります。これも解説はパスね。長くなるから。

さて、個人事業主などの第一号被保険者の人たちへの3階部分は、2階部分のない第3号被保険者の人たち同様に。。。実はありません、でした。が、2017年1月からiDeCoが一部の例外(制度の重複ということを避けるため、企業型の確定拠出年金に加入している時に、企業型年金規約がiDeCoに加入することを許容していない場合のみ加入不可。)を除いて国民のうち20才以上60才未満であれば誰でも加入できるようになったことで、実は、この3階部分としての iDeCoの守備範囲は広範囲なのです。

で、なんでこんな基本を説明したかというと。。。

これらの年金制度って、考えて見たら、一階部分も二階部分も支払っている保険料はある程度一定(毎年微妙に変わりますけど)ですが、支払われる年金も納付月数などからある程度計算できる一定の額、にお約束されています。いわゆる確定給付年金の仕掛けを利用していますが、前述の通り、年金の運用が上手でなかったり、AIJ事件のような運用以前の問題とはいえ給付金の財源を毀損するようなことがあれば、期待している将来の給付が実現できなくなるか、財源の元となる企業や国の財源に手をつけてしまい、根っこから破綻しかねないリスクがある、のです。また、少子化による保険料の減少と高齢化による年金給付額の増加、という根本的なキャッシュフローの前提の変化に対応していないのも明白ですから。。。まじヤバイんすよ(笑)

となると、個人で年金を守る方法ってこの制度上は三階部分で自分でリスクをとる、か、この年金制度の外で巨額の富を蓄えるか、のいずれかもしくはその両方のようです。とはいえ、年金制度の外で富を蓄積する、というのは、いくら税制上のメリットが期待できる生命保険商品を使ったりしたところですら、結局利益に対して個人の所得税なり法人化した企業に法人税がかかるわけですから運用益の再投資の効果が税金で取られる分だけ悪くなるのが単純に予想できます。としたら、年金制度の中ならば税金はかかりませんから、再投資という時間と利回りのマジックを最大限に利用した富の蓄積を目指せそうな気がしますよね。

このことを理解するにも、この屋上屋な年金制度をまず知っておくべきだと思ったわけです。いや、文字数稼ぎじゃないですから(笑)

で、確定拠出年金ってどういうこと?

ということで、iDeCoの説明にやっと入ります(苦笑)が、まず確定拠出年金の仕組みでも。キャッシュフロー的には、企業型なら企業が、個人型(要はiDeCo)なら加入する個人が、毎月一定の掛け金をこの年金制度に拠出していくのですが、問題は、この拠出したものをどう運用するか、なのです。確定拠出年金の場合は、運用先として複数の選択肢が提示されるのでその中からどれで運用するかを選択して行くことになります。例えば、iDeCo の場合、某りそな銀行だと選択肢として

  • りそな据置定期預金『フリーポケット401k』
  • 「りそなDC信託のチカラ ターゲットイヤー20X0年」など資産分散型投資信託が11本
  • 日本債券型投資信託が4本
  • 日本株式型投資信託が8本
  • 外国債券型投資信託が3本
  • 外国株式型投資信託が4本
  • 国内不動産(リート)が1本
  • 外国不動産(リート指数連動型投資信託)が1本

と、元本確保な定期預金を除くと実は確定拠出型年金向けに設定された投資信託に投資することになるのです。これが、もし日本生命にiDeCoの口座を作ったならば、その投資可能となる商品は

  • 「ニッセイ利率保証年金(10年保証プラス/日々設定)」
  • (なぜか)りそな据置定期預金『フリーポケット401k』

のような元本確保型商品と

  • 株式と債券の比率一定運用型投資信託3本
  • バランス リスクコントロール型投資信託1本
  • 国内/海外株式/債券指数連動投資信託4本
  • 国内株式アクティブ型投資信託3本
  • 海外株式アクティブ型投資信託2本
  • 海外債券アクティブ型投資信託1本
  • 新興国指数型投資信託2本
  • リート指数型投資信託2本

と、いう品揃えだったります。いわば、iDeCoの口座を開ける先である運営管理機関によりその商品の揃えが毎月の掛け金の拠出先の選択肢になり、その中で選んだ投資商品のリターン(それが定期預金だったり、その同等のリターンの生保であっても、もしくはリスクを取りにいっても)がiDeCoの年金積立期間の終了時期であるあなたの60才になった時の受け取り原資になるのです。

さて、運営管理機関によって商品の選択肢が変わるので、この運営管理機関を選ぶか、その取り扱い商品を選ぶか、と言った話になると思いますが、そのあたりの話は後回しにして、いつものようにキャッシュフロー分析をやってみたいと思います。ここから先は、確定拠出年金もiDeCoに話を絞っていこうと思います。

0. iDeCoの運営管理機関を選んで口座を開ける

何を始めるにもまずは口座を開く必要があります。今では iDeCoを提供する金融機関(運営管理機関、とこの場合は呼ばれます)が多くあります。前述のように商品の品揃えは機関ごとに異なりますし、手数料も、国民年金基金連合会への口座開設時の手数料の2,777円や月々の国民年金基金連合会への月次手数料の103円と信託銀行への月次手数料の64円の合計167円を除くと機関ごとに0円(楽天証券やSBI証券、大和証券)から数百円(りそなだと口座が給与振込口座ならば262円かそうでなければ316円、三井住友銀行やSMBC日興で一律255円、野村証券で資産額に応じて203円から283円まで、みずほ銀行で一定条件で0円もしくは255円、など)かなり開きが出てきます。

なお、NISAと同じく、口座を開けられる運営管理機関は一つだけです。複数を開けることが出来ません。とはいえ、管理機関の移動は可能ですが国民年金基金連合会への2,777円の支払いが発生します。その際は買い積み立てた投資信託などを持って移動出来るはず、ですが、移った先の運営管理機関が(系列の都合が主で)取り扱えない可能性が極めて高いので、売却して資金の形で移動することになります。

1. 月々の掛け金を決める

手数料が運用管理機関、ひいてはiDeCoで運用する商品の選択肢を決めるという気はサラサラないものの、月々の掛け金との兼ね合いを考えると、どうしても前述の手数料が投資効率に影響するというのは隠せない事実、でもあります。

さて、この掛け金、この後に述べる税金の効果を考えると、長期投資をしたいポケットだとか、毎月積み立てていくというのが投資を始めたばかりでは投資の効果を実感できない、とかを鑑みて出来るだけ大きく「張りたい」という気持ちになってしまうのですが、残念ながら加入している年金制度(年金制度の一階部分のカテゴリー)で上限額が決まってしまいます。まとめるとこんな感じ。

カテゴリー掛け金の上限額

自営業者等(第1号被保険者)月6万8000円(年81万6000円)(国民年金基金と合算した額として)
企業年金を導入していない企業に勤める会社員(第2号被保険者)月2万3000円(年27万6000円)
既に企業型DCに加入している会社員(第2号被保険者)月2万円(年24万円)
既に確定給付企業年金に加入している会社員(第2号被保険者)月1万2000円(年14万4000円)
公務員(第2号被保険者)月1万2000円(年14万4000円)
いわゆる専業主婦(第3号被保険者)月2万3000円(年27万6000円)

前述を思い出すと見えてきますが、第1号被保険者には国民年金基金以外の2階部分がありませんから、そこを補うためにiDeCoを、という意図があり、同じように3階部分のない企業年金のない企業勤めの会社員にも3階部分代わりを、DCなりDBなりに入っている人や3階もしっかりしている公務員には掛け金を比較的少なめに、ただのりしている(ベーっだ)専業主婦はもともとフリーランチで1階だけはあるので2階がわりに、という意図が見えてきますね。あ、最低掛け金額は月5,000円です。

と思うと、掛け金がいくらであってもそれに追加して月々167円と運用管理機関への手数料が乗っかるということは。。。最低額の5,000円としても3%以上、一般的な20,000円ならば 0.8%、目一杯の68,000円としても0.2% 以上の手数料がかかる(ということはその分パフォーマンスが最初から押し下げられている)ことになります。となると、手数料を払っても、最低でも年率1-3%のリターンを確実に出せる商品に積み立てていかないと手数料負けする(定期預金なんてもってのほか)、ことにな流のが見えてきます。まぁ、この次の税効果を考えるとそうでもない、のですが。。。いずれにせよ、この辺りを考えて運用管理機関の商品リストと手数料率との組み合わせを選択していくことになります。

2. 期中のキャッシュフローと税金

さて、iDeCo における投資期間、すなわち60才になる日まで、の税金の考え方は次のようになります。お待たせしました。みなさんお待ちかねの確定申告のお話ですよ。

iDeCo のために支払った掛け金と手数料(というか、手数料こみの掛け金、と言った方がいいですね)は全額所得控除の対象になります。どういうことかというと、企業年金等のない「協会けんぽ」加入な会社に務める年収が額面で600万円の東京在住の独り者の30代の男性(女性でもいいのですが)、という前提(面倒なのでボーナスなしの12ヶ月均等払い、って外資系みたい(笑))にします。

まず、600万円の額面の給与に対して、給与所得控除が 600万 x 20% + 54万円 = 174万円、となるので所得税を考える時の給与所得が 600 – 174 = 426万円、となります。

次に健康保険と厚生年金がそれぞれ(介護保険が不要だから:今の平成30年前提で)毎月のお給料が50万円なので、個人負担としては24,750.0円、45,750円ですので月額70,500円、年額で846,000円になります。これも丸々所得控除扱いです。

計算が面倒なので、生命保険も地震保険も入っていない、とすると、あとは基礎控除の38万円が控除されて。。。 426 – 84.6 – 38 = 303.4万円の課税所得を得たことになり、これに対する所得税は国税庁のサイトによれば (303.4 x 10%)万円 – 9.75万円 = 20.59万円、になります。

もしここで、月2万、年間24万円でiDeCo でやると、[(303.4 – 24) x 10% 万円 – 9.75万円] = 18.19万円となり2.4万円 (iDeCoの24万円の10%分)の減税効果があった、のです。ちなみに、これ、りそな銀行さんが広告で使う数値の根拠になったと思われる日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社さんの作ったシミュレーションだと 4.8万円になるそうですが、これは多分所得税率が20%適用だった計算なので、多分健康保険と厚生年金を低く見積もったからじゃないかな、と思います。

これが、もし同じ条件で1,100万円の給与だとしたら、給与所得控除が上限を超えているので 220万となり、給与所得としては 880万円になりまる。

次に健康保険と厚生年金が、月給で91.6万円なので保険料は46,035円と56,730円の月額102,765円。年額にして1,233,180円です。また、単純な計算で基礎控除の38万円が控除適用になって、880 – 123 – 38 = ざっくり719万円です。

この場合、税金はといえば、課税所得が695万円を超えていますので (719 x 23%)万円 – 63.6万円 = 101.77万円、となります。ですが、同じように月2万、年間24万円でiDeCo でやると、課税所得が 719 – 24 = 695万円となり、税率が 20%に下がります(控除額も減りますが。。。)ので [(719 – 24) x 20% 万円 – 42.75万円] = 96.25 万円となり5.52 万円の減税効果が出てくるのです。これはiDeCoに拠出した24万円の23%に当たります。これが最終的な課税率出会った20%を超えているのは税率区分を一つ下に押し下げる効果も手伝っているから、なのです。まぁ、このようなケースはちょっと稀ですが、とはいえ、所得税率の高い人ほど毎年の所得税を押し下げる効果が高いことがわかるかと思います。

という事で、もし毎年の所得が一定と仮定すると、所得税率が10%の人ならば10年分の税還付で1年分の投資が可能になります。運用とは別に10%の再投資する資金ができる、とも言えますよね。となると、所得税率が20%の人ならば5年分の税還付で1年の投資ですから。。。ま、そんな再投資、と思うよりも、運用管理機関に支払った手数料程度は回収している、と思う方が良いかもしれませんね。

それだけじゃない期中の税金のメリット

60才の運用期間の終了までは一旦入れた掛け金や掛け金で買い集めた投資信託などの金融商品を現金化したものを引き出すことが出来ません。となると、通常は毎月毎月掛け金を移動して(多分自動的に)とある投信などを買って持ち続けることになるはずです。

ですが、前述の通り運営管理機関はただ一つしか使えず、その取り扱い商品には極めて偏りがあるので、どうしても運営管理機関を移動してでもあの商品に投資したい!という時にはそれまでのポジションを売却して資金化して移動することになります。で、売却する、となると通常はキャピタルゲインが発生しがちですよね。となると、今だと20%の譲渡課税が掛かってきますが、iDeCoの口座の中での売却については非課税です!

なぜか。60才以降に発生する年金の支払いのところで(それでも、老後の生活を支えることを考えると当然に通常の所得税やキャピタルゲイン課税に比べれば課税額が安くなる形で)課税することが出来る、からなのです。いわゆる税の繰り延べ効果を年金の仕組みの中に取り込まれている、のです。

Exit となる年金の支払いの時の税務については後ほど細かく触れるとしますが、売却益への課税がないと思うと、案外気軽に利益の乗った投資対象を売却して、その後の市場環境や運用方針の変更に合わせて別の投資対象に乗り換えることができそうですね。通常の証券口座での取引で頭を悩ませる利益に対するキャピタルゲイン税の取り扱い(例えば同じタイミングで含み損のある投資対象も合わせて売却して含み益と相殺させてキャピタルゲイン税を抑える、など)を考えずに、もちろん買い付け時の手数料も気にせずに、機動的なアロケーション変更が可能になる、と思えば。。。って、投資信託をそんな風に回転売買に使っちゃダメですよ!

60歳を過ぎて年金受給者になった時に税金を納める事になるのですが。。。

さて、ずっと貯め続けてきたiDeCo な年金も60歳を過ぎると運用終了となるので、拠出することが出来なくなり、引き続き投資先のファンドで運用し続けるか、年金として給付を受けるか、と言う選択をすることになります。

ちなみに、何もせずに運用し続けても、年金として月々でも毎年でも継続して引き出していく場合でも、月に64円ずつ信託銀行に支払い続けることになります。また、年金として定期的に引き出しても、一時金として一括で運用資金を一気に引き上げても、一回につき432円が信託銀行に送金手数料として支払うことになります。そう考えると、60才になった月、すなわち確定拠出が出来なくなって最初の月、年金受給者となった最初の月に一時金で全額を引き出してしまうのが手数料的にはもっとも有利、と思えてきますよね。

税制についての比較をしてみましょう。

年金として引き出していく場合、雑所得扱いになります。所得税を知っている人だと、雑所得って一番メリットの少ない所得、と言う印象があるかもしれません。例えばFXや為替の差益だったり、最近ならば仮想通貨だったり。これが一時所得ならば50万円の控除があったりするのですが、公的年金以外の場合は本当に税務上の控除がないので収入金額から経費控除後の利益が20万円以上の場合には、その額を他の給与所得などと合算して累進課税の適用を受けることになります。

では、公的年金については、と言うと、流石にここまで厳しくはなく、こんな整理になっています。

65才未満の場合
公的年金等の収入の合計額割合控除額
公的年金等の収入金額の合計額が700,000円までの場合は所得金額は0。
700,001円から1,299,999円まで100%700,000円
1,300,000円から4,099,999円まで75%375,000円
4,100,000円から7,699,999円まで85%785,000円
7,700,000円以上95%1,555,000円
65才以上の場合
公的年金等の収入の合計額割合控除額
公的年金等の収入金額の合計額が1,200,000円までの場合は所得金額は0。
1,200,001円から3,299,999円まで100%1,200,000円
3,300,000円から4,099,999円まで75%375,000円
4,100,000円から7,699,999円まで85%785,000円
7,700,000円以上95%1,555,000円

これに基づいて計算すると、例えば61才の時に年間iDeCo からだけ 350万円を年金として引き出した場合、350万円 x 75% – 37.5万円 = 225万円が課税所得扱いになります。これがもし、70才になって、厚生年金からの年金支給を上乗せしまくって(65才から70才まで受け取らずにあと送りにすると最大42%ほど年金受給額が上乗せできます。)受け取り始めたら、この350万円に厚生年金保険などを上乗せして計算することになります。

もし、これを一時金として受け取る場合、退職所得と同じ計算が適用されます。どう言うことかと言うと、確定拠出年金の拠出期間に合わせた控除額を適用した退職所得扱いになります。所得控除のテーブルを載せるならば

勤続年数退職所得控除
20年以下40万円 × 勤続年数(80万円以下のときは、80万円)
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)

例えば、21年間iDeCo に拠出したならば、控除額は 800万 + 70万円 x (21 -20) = 870万円となります。

と言うことは。。。税務的にうまくやろうとする一つのアイデアは

21年間、毎月2万円ずつ積み上げたとしたら、2万 x 12ヶ月 x 21年 = 504万円ですので、一時金として引き出す場合には、最終的に拠出額に対して73%勝たないと税金が掛からないことになります。

また、仮に870万円まで勝ち上がったとして、60才から全額控除となる70万円ずつを5年間引き出しても手数料を考慮せずに残額は520万円ですから、65才からの4年間も全額控除となる120万円を引き出し、70才で残額の40万円を引き出せばキャピタルゲイン課税を見事に逃れて全額引き出すことが可能だと言うことになります。

73%のキャピタルゲインを60才まで繰り延べたあと、かかる税制優遇を使うとうまく課税されずに引き出すことすら可能になる、のです。まぁ、実際は、厚生年金や企業年金の受け取りなども発生しますから、ここまで綺麗にいくはずはないですので、これはかなりファインチューンしたケースではありますが。。。

まとめ

本当は、こんなiDeCoにあった投資戦略(前述の例じゃないですが、最終リターンが70%を目指しても無税なのですからね。頑張っちゃいますよね。)とか、それを採用している運用管理機関とその手数料との兼ね合いまで分析するのが筋かもしれませんが、実はこのiDeCo と前回のNISAを使って、個人だから出来る超長期投資の世界的トレンドについて語りたくて仕方がないものですから、今回はここらで終わりにしようかと。

とはいえ、税制のメリットがここまであちこちに散りばめられたこの商品、出来るだけ若いうちに始めた方がオススメなのは確かです。が、NISAと iDeCoで毎月5万円を確実にためていく、と言うのは若い頃には厳しいですからねぇ。。。優先順位をどうつけるか、と言うAFPの腕の見せ所的な話でもありますが、それこそそう言う話は個別でお話すべきですから。。。

[投資のコストと効果] NISAを使った株式関連投資のメリットとデメリットを改めて考える

NISAって何ですか?
気づいたらずいぶん前の記事になってしまっていた ETF(というかファンドに投資することの隠された意義とETFにすることでメリットを受ける人たち)の話のなかで思わず触れてしまった NISA。以前書かせていただいていたSoldie でも、人気のコンテンツの一つはこのNISA。だから多分言葉だけは耳にしたことがある、という人も多いかと思います。

NISAって何ですか?
NISAって聞いたことはありますよね?

実際のところ、証券投資、特に株式投資と投信の投資をしている人ならば積極的に使っていて然るべきツール、のはずなのですが、よくよく仕組みを知らないとただの塩漬け専用口座になりかねないし、とはいえうまく使いたい税制面のメリットがある(ということは、それを使って誘導したい人がいる、という意味でもあるのですが。。。)のをみすみす見逃すこともなかろう((※)ただし、株式投資が制限なくできる人に限る)、ということで、じっくり見直しながら、どんな戦略ならば一番うまくハマるのか、というのも考えていきたい、というのが今回の記事の目標にしてしてみます。

NISAってそもそも何ですか?

NISA とは日本版 ISAということで N-ISAなのですが、じゃあ、ISAとは何か、というと Individual Savings Account の略でして、英語で書かれているとなんのこと?と思われる方もそこそこにいらっしゃると踏むので(ついこの間も私のtwitter をみて帰国子女ですか?と言われたのですが、そんなことはないです。私の英語は足立のヤンキーイングリッシュです。)説明すると、アメリカやイギリスなどの国々で、個人による資産形成のための証券投資に対して一定の税制優遇を与える税法が導入されていて、その条件を満たすための個人向け(=individual)貯蓄(=savings)口座(=account)、なのです。と言うことは、NISA は日本の租税特別措置法の中の株式等に係る譲渡所得等関係、第37条の14に、定められた非課税口座、なのです。

ですので、このファンドやらストラクチャーやら cryptocurrencyやらオフショアやらを扱うブログにしては珍しく、ファンド商品でも戦略の話でもなく、日本の税制に基づく証券口座の一つ、について話をする、とまず理解してくださいな。って、ここに来るような人なら皆まで言うな、ですな。

じゃあ、どう言う条件で非課税になるの?

はい、投資で一番のコスト、税金、特に日本ならばキャピタルゲイン課税が課税されない、と言うのはとても魅力的なことですよね。NISAの口座での取引ならば全ての株式の取引で発生するキャピタルゲインに対する課税がない。。。なんてそんなに都合のいい話でもなさそうでして

利用できる方日本にお住まいの20歳以上の方(*1)(口座を開設する年の1月1日現在)
非課税対象株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益
口座開設可能数1人1口座(*2)
非課税投資枠新規投資額で毎年120万円が上限(*3) (非課税投資枠は最大600万円)
非課税期間最長5年間(*4)
投資可能期間2014年~2023年
  1. …0歳~19歳の方は、ジュニアNISA口座をご利用いただけます。詳しくはジュニアNISAページをご覧ください。
  2. …NISA口座を開設する金融機関は1年単位で変更可能です。ただし、開設済みのNISA口座で既に株式・投資信託等を購入している場合、その年は他の金融機関に変更することはできません。
  3. …2015年以前分は100万円。未使用分があっても翌年以降への繰り越しはできません。
  4. …期間終了後、新たな非課税投資枠への移管(ロールオーバー)による継続保有が可能です。

と言うことが金融庁のホームページの NISA特集にありましたので引用してみましたが、ちょっとイメージがつきづらいと思いますので、少し例を交えながら説明していこうかと思います。

NISAのイメージってこんな感じ

例えば、株式の取引を検討しているミヤタ君がいるとします。彼が株式取引をするのに、当然ながら証券会社に取引口座を空けねばなりません。

今ですと、1月から12月までの取引を全て自分でリストにして提出して、その他に得た年間の所得と合わせて確定申告しなければいけない「一般口座」か、証券会社が各取引の利益に対して源泉徴収を行い(負けたら源泉徴収しすぎている金額を返してくれて)、年に一回の報告書を纏めてくれるので確定申告は書類提出だけで追加の納税も発生しないし格段に楽チンな「特定口座」の二つしか選べなかったのですが、今はこのNISAという口座も開設することが出来るです(しかも2018年からは「つみたてNISA」という選択肢も!)。

このNISAは、1月から12月までの1年間における国内および海外の株式(と投資信託)の新規購入額のうち最初の120万円については、その株を買った年を含めて5年間は、その株式の売却益が確定しても、株式の分配金にも税金がかからないというものなのです。もし5年経っても売らないでもっと儲けを期待したい、という場合には5年経って終了するNISA口座からその翌年に新しく開設されるNISA口座に全額移管することが出来るので、NISAの制度が存続する2023年の開設/2028年の終了まではその株式が仮に3倍になっても税金がかからない、ということなのです。

また、2018年から始まったつみたてNISA の場合は、1月から12月までの1年間における国が定めた基準を満たした投資信託の定期的な購入に対する、年間の累計購入額の40万円については、その株を買った年を含めて20年間は、その投資信託の売却益が確定しても、投資信託の分配金にも税金がかからないというものなのです。

とはいえ、その代わり、売却損が出ても一般口座や特定口座の売却益と相殺が出来なかったり、損が出そうだからということで相殺させるためにNISAから一般口座や特定口座に株式を(そして、つみたてNISAから普通のNISAに、もしくはその逆方向に、投資信託を)移管したり、逆に、一般口座や特定口座に持っている株式がもう買っちゃったからといって、税金を回避するべくNISAに移管したりすることが出来ません。

また、今ですと一つの口座で120万円の非課税枠がある、と解釈して、複数に口座を開けて例えば120万 x 5口座 = 600万円(つみたてNISAならば40万 x 7口座 = 280万円!)の非課税口座が持てる、わけがなく、最初に口座を開くと他の証券会社や銀行にも並行して口座開設をすることが出来ず、また他の金融機関に口座を開けようとするならば翌年にならなければ開けられないのです。

そして。。。一般NISAを持つとその年にはつみたてNISAを、逆につみたてNISAを開けるとその年には一般NISAを、同じ年の間には開設することが出来ません。

実際の投資の流れ的に見ると(一般NISA編)

そこで、ミヤタ君は某ネット系の証券会社で口座開設をして、この2018年に一般NISAも開設してみました。開設する際には他で開設していないかどうかを含めて税務署と証券会社で審査が行われるので申し込んで最長でも数週間程度待つことに。。。

株式の配当って

で、実際に口座が開いたので、100万円ほど口座に資金を動かしてとある株式の銘柄、ここではAとしましょうか、を100万円で買ってみました。すると、株式の分配金を受け取ったときに源泉徴収額が掛からず全額受け取っていました。さすが非課税口座。

年内に速攻売っちゃった場合

そして、年末を待たずして、A株式が2倍になったことで売却しました。すると、これにも特定口座ならば売却益に対する20.315%のキャピタルゲイン税が掛かるところが掛かっていませんでした。

そこで、売却したことで非課税枠の100万円の枠が開いたはずだから、さっきの200万のうちの120万円でもう一度別の儲かりそうな株式、Bを買おうとしたら。。。非課税枠は残り20万円しか残っていなかったことに気づいた、という感じです。

5年の期限前に売却した場合

では、5年の期間満了前に売却した場合にはどうなるでしょう。2倍になったので売却する、ということで100万円に対して特定口座で起きていた20.315%の源泉徴収は発生せずに終わります。さすが非課税口座。そこで新規投資を始めよう、というならば、その年のNISA口座を開設して購入することになります。

5年経っても売らなかった場合

これが、5年間放置していて2倍になっていた場合、ですが、5年経つとNISA口座は終了になります。でも、2023年までは新規のNISA口座を開設できるので5年が終了する2022年に開設して5年間放置していたA銘柄をこの新規口座で引き継ぐ(ロールオーバー)することにしました。このとき、200万円相当ですが、ロールオーバーの場合には2018年の新規の購入枠を引き継いだことになっているので追加購入することは出来ません。

今の所、この2022年に開始する5年期間の終了時点である2027年に一般NISAの設定が出来るという法律が出来ていません。もしこのままですと、特定口座か一般口座に移管して、売却時に20.315%のキャピタルゲイン税が課せられることになります。

では、つみたてNISAだと、この話がどうなるか、というと。。。

実際の投資の流れ的に見ると(つみたてNISA編)

ミヤタ君は某ネット系の証券会社で口座開設をして、この2018年につみたてNISAも開設してみました。開設する際には他で開設していないかどうかを含めて税務署と証券会社で審査が行われるので申し込んで最長で1-2週間程度待つことに。。。

投資信託の分配って

で、実際に口座が開いたので、40万程度を口座に資金を動かして、月に3万円ほど、ここではXという適格な投資信託しましょうか、を積立で買う設定をしました。すると、この投資信託の配当金を受け取ったときに源泉徴収額が掛からず全額受け取っていました。さすが非課税口座。おかげで再投資にそのままそっくり回すことができました。目指せ複利のスノーボール効果!

配当金が特別配当、要は元本の償還だった場合

そして、年末を待たずして、X投信からの配当が実はパフォーマンスが悪くて特別配当、ということで元本の払い戻しになってしまっていました。

そこで、元本の償還したことで非課税枠の40万円の枠の一部が開いたはずだから、さっきの帰ってきた元本にちょっと上乗せして別の投信 Yでも積立始めようかな、なんて思ったら。。。非課税枠は着実に毎月の3万円のX投信の購入代金で減らして、元本償還されても減ることはありませんでした。

20年の期限前に売却した場合

では、20年の期間満了前に売却した場合にはどうなるでしょう。積立してきたのでドルコスト平均法で適当に低いところで平均取得単価になってくれたおかげで利益が出ていました。

ということで年36万円を継続させた年数分に対してそこそこ利益が乗っていたものの、それに対して特定口座で起きていた20.315%の源泉徴収は発生せずに終わります。さすが非課税口座。そこで仕切り直しで別のファンドに新規の新規投資を始めよう、というならば、その年のつみたてNISA口座の枠を引き続き利用して購入することになります。

20年経っても売らなかった場合

これが、20年間放置していて積立てきた場合ですが、20年経つとつみたてNISA口座は終了になります。で、一般NISAのように、2038年に新規のつみたてNISA口座を開設できるか、というと今のところは不透明。なにせ、つみたてNISAは2037年までの口座開設分の話しかしていないのです。いわゆる時限立法ってやつですね。ですので、今のままで行くと、売らなかったら特定口座か一般口座に移管して売却時にキャピタルゲイン税の課税対象になってしまうのです。

ちなみに、キャッシュフロー的に何か見落としてない?取引コストとか

はい、株式を買うときや売るときには手数料がかかるのが一般的ですよね。ですが、NISAについてはオンライン系の証券会社さんですと無料にしたり、キャッシュバックすることで実質無料にするところが多いようです。前述のように、一人の投資家にとって一般かつみたてかのいずれにせよNISAを取り扱えるのは一年で一つの金融機関だけ、となれば手数料の競争も起こります。

その他のメリットってないの?生命保険の保険料控除みたいなやつとか

実は。。。ないんですよ。税制的なメリットで言えば投資対象が儲かった時のキャピタルゲイン税が掛からないだけで、証券の購入価格に対応して所得税減税が起きるとか、投資対象が負けたときに損益通算出来るとか、翌年以降に繰り越せるとか、そういうのが全くありません。もし所得税減税を狙うならばiDeCoを使う方がいいでしょう。実際、つみたてNISAとの違いってそこくらいでしかないのですから。って、あーあ、これで次はiDeCoの解説が決定だ(笑)

じゃあ、NISAで何に投資したらいいの?

と、いうキャッシュフローや税務的な影響について見たので、これを踏まえて、じゃあ、NISAで何を買いましょう、という話になりますよね。ご存知の通り、ストラクチャラーではあるけれども投資のプロではない私の意見ですので、まぁ、話半分に聞いてくださいね。

そもそも、一般NISAなのか、つみたてNISAなのか?

個人的には、今年から始めるならば、つみたてNISAかな、と思ってます。というのも、iDeCo の年間積立額が通常ならば27万6000円(一般的な会社勤めの人の場合。自営業ならば81万6000円)ですが、実際にこれを積立てみても最初の数年って仮に10%増えても2万円程度。実額で考えると投資額としてかなり小さいですよね。と考えると、iDeCoにつみたてNISAをやれば年額67万円になるので、将来の年金として結構悪くない足しになりそうですよね。ちょうど40才代ならば、65才定年とか70才にならないと年金がもらえなくなるのでは、みたいな話があるとすればこの20年でどこまで年金資金を貯められるかが勝負。ならばコツコツ積み立てるほうが負担も少なくて良さそうじゃないですか?

となると、国の定めた低コストな(ってお役所が言うんですよね。。。)適格性に合致した投資信託か、一部のETFが購入可能な口座ですから、結局投信しか買えず(ETFだって投信ですからね。たかだか上場している程度でしかないんですよっ)、投信を選ぶときの第一の判断基準はこれ、アクティブかパッシブか、であって、その観点で見ると結構商品として並んでいるのがパッシブ系で、ベンチマークとなる指数連動型の商品。長期投資を考えると、どうしたってアルファを取りに行くよりもベータで手堅くインフレに対応できるようにする方が20年間の長いスパンで投資を積立てることのドルコスト平均法でいくならば相対的なコスト感も良いでしょう。

となると、一旦つみたてNISAを始めると、最後までつみたてNISAに魂を預けることになりそうですね。でも、これのおかげで iDeCo と併用して自分年金をどれだけ大きく出来るか、と言う話になるわけですが、iDeCo の方がアクセス出来る商品性がアクティブ系もそこそこある(お勧め等はiDeCoの記事の時にでも。。。)のでそちらに任せて、つみたてNISAは対インフレと言う意味でのパッシブなベンチマーク運用すると言う分散を目指すのがバランスのいい投資スタイル、と言えるでしょう。

あ、そうそう、ちゃんと20年間でポジションを閉鎖することになるのであれば、20年間毎年積立た分を1年分ごとに(ドルコスト平均法の解約版みたいに)解約して行くのもよし、最初の投資分が20年経ったところで、全部のポジションを一気に売り抜くのだって問題ありません。

一般NISAだって捨てきれないものがある

とは言え、一般NISAについては株のキャピタルゲインが最長5年間の保有期間において非課税になり、うまくロールオーバーを使えば、今年と来年から始めるならば10年間の保有期間でのリターンを狙えることになります。とすると、最長10年の持ちきりで株のキャピタルゲインが非課税になることをうまく使うならば、大化けする株式を買ってしまうこと、でしょう。となると、流動性の高い大型株ではそんな大化けを狙いに行きすらできないですから、自然と中小型株に目が行きますよね。それでいいんです。なにせ、狙うのは数倍から数十倍になることを目指すのですから。仮に11倍(笑)になったとしましょう。上がりの部分が投資額の10倍と言うことですから、もしキャピタルゲイン課税があるならば2倍分を国に持っていかれるんですよ。それがNISAには全くないのですから長期戦で仕込んで大物を待つのも悪くない戦略ではないでしょうか。

ちなみに120万円と言う投資枠で買える銘柄は中型株で364社、小型株で3,140社。毎年同じ銘柄を向こう5年で買い集めるもよし、毎年テーマを決めて選んで買うもよし。

まとめ

個人的には、会社自体が当局の規制の外にあったことから、株式の取引は事実上可能でしたが、職業上の倫理観等で株式の取得は控えていて、結果投資信託に投資することもありませんでした(なにせ作っていましたからね。。。)。

ですが、今回調べて見て、またファンドに投資することは自分が投資判断をしていないと判断されることから、金融規制業種にいて、ディーリング出来ない類の仕事をしている人たちにとって株式への直接投資が事実上禁止されていますから、資産形成・運営せねばならないときの回避ツール的意味合いもあるのだな、と感じました。

まぁ、やって損は。。。銘柄選定の結果で起こるかもしれない、ですね。でも、この手の政略系な意味合いがあるので、やらないよりはやったほうがあれこれ良いのだろうと思います。

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