その方はプライベート・エクイティの方ですので、当然その立場と、あとは金融業界の主だったプレーヤーを念頭に置かれて幾つかのお考えを伺ったのですが、当然、お忙しい方でもあり、ランチ時間では議論と検討を深めるには短すぎました。
という事で、例によって、ここで私なりの整理をしつつ、あと、出来る事ならば、そういう認識をされてしまっているこの業界をどうしたらさらに活性化できるのか、そんな整理をしてみようかと思います。
ちなみに、書きあがって読み返したら結構長い文章になってしまいました。ですが、多分ファンドアドミについてここまで日本語で語っている文章もそうそうないですので、ぜひ最後の一文までお付き合いください。損はさせません(笑)
そもそも、ファンド・アドミって何をする商売でしょう。
実は前回のファンド・アドミの中立性に関する記事でまとめてしまっていた記憶があるのですが、ちょっとそこから抜き出してみましょうか。
ファンドの運営に関する事務一般を執行すること、というのが基本にある中で、ファンドの評価や資金や証券と言った保有資産の保有・移転に関する指示(保有自身はカストディアンが行います)、投資家の異動(投資持ち分の購入による保有者としての名義登録や、譲渡に基づく持ち分移動の記録、そして売却に基づく地位喪失といった履歴や個別投資家の持ち分管理自体はトランスファーエージェント、日本で言うところの名簿管理・名義書換業務にあたりますが、通常兼務するか投資家管理に特化した兄弟会社に実務を集約するので、アドミが一元的に窓口になるケースが一般的ですので、厳密にはアドミの仕事ではないものの、広義の意味でアドミの業務としてここでは扱うとします)やそれに関連して投資家の(FATCA/CRS対応を含めた)本人確認などが通常期待されています。
このように定義して、ピンと来て頂けるならばいいのですが、多分それらの違いが分からない、線引きはどこにあるの、という声が聞こえてきそうですので、ちょっと整理してみましょう。
ファンドの評価
これ、案外ファンド・アドミの仕事の根幹である一方で案外軽視されがちな仕事、なんですよね。ファンドの純資産評価の仕事、というと、「簡単に言えば」ファンドの資産と負債のそれぞれの現在の評価額を出して、合算することで得られますから「簡単そう」に見えますよね。これが軽視される背景ではあるのですが、考えてみればそんなに甘くはなくて。。。
負債の計算
ファンドの負債って何でしょう。各種サービスプロバイダーへの報酬やブローカレッジフィーなどの実費、ファンド設定や継続開示のための弁護士費用、年次監査のための監査費用、といったもののの未払い額が主だったところですが、そこにレバレッジを掛けるならば当然そのローンとその利息も入ってきます。問題は、実費や弁護士費用当たりは実際の請求書ベースでかんがえればいいものの、サービスプロバイダーへの報酬、となるとある一定の計算式に「入れるだけ」で計算できる、と思われがちですがその計算式を構成するロジック(日割り計算するの?とか、日割りの端数はどのタイミングで計上する?とか、フィーの計算根拠はグロスNAVで、それとも当期費用控除後?)の確定を契約書とにらめっこして合理性のある形にまとめなければならないのです。監査費用に至っては毎年いくらくらいになるか、見込みベースで計算基準日ごとに期間按分したものを計上しないと最終的に出来上がる純資産価格の動きに費用計上のタイミングでぶれが生じるので好ましくない、という配慮も必要になったりします。ファンドの設立費用も最近だと5年償却が増えてきているようなので、その期間はずっと費用計上しつづけなければなりません。
この当たりはシステムでやるから気にしなくていいんじゃない?なんて声も聞こえてきそうですが、上記を全部システムのパラメーターに出来るかというとなかなか難しい。しかもファンドごとの特殊事情が常に付きまとうので、結局人の手による管理が残ってしまうのも事実だったりします。
資産の計算
これ、公開情報な市場の終値を使えばいいだけなんだから楽勝でしょ?
と思ったでしょ?保有しているのが上場株のうち流動性が高い大型株、だったらね。これが上場していても流動性が低い小型株だったら終値つかないので、どうしましょうね。気配値?それとも最終取引価格?もしその最終取引価格から取引が10営業日も取引がつかなかったら?株ならいいけど国債は?社債は?オプションは?だんだんその資産価格の第三者的公平性の担保が難しくなりますよね。といって、ファンドにとってある意味第三者であるアドミが勝手につけていい訳じゃないですよね。一応ファンドの目論見書やアドミ契約には、上記のような終値が付かなかったら、などなどの状態における価格参照ルールを決めることで、出来るだけ恣意的に価格が決まることのないようにする努力はされています。
とはいえ、悩ましいのは流動性の低い資産、特に取引量が少ない通貨ペア、が市場の終了時に一瞬だけオフマーケット価格でや苦情がついちゃった時、のような形式的に参照できる価格があるけどどうみても実勢価格からはかい離しているものをどう取り扱うか、という更なる問題も存在するのです。
とはいえ、まだ市場性がある資産ならばいいですよね。最後は誰かしらがマーケットメイクする訳ですから。未上場株やプライベートレンディング、不動産といった個別具体性の極めて高いものになると評価方法は人によって大きく分かれることも多々ある訳ですから、これらの価格の妥当性は第三者が仮に算出したとしてもファンドの財務諸表として適切かどうかの監査人の意見も反映されることになり、言い換えれば監査人との不幸で不毛な資産評価の論争が毎年行われることになってしまうのです。
純資産価格の算出へのプレッシャー
更に、算出プロセスに対する挑戦というかプレッシャーも高いのです、実は。例えば日本の公募ファンドがよく取り入れている、いわゆるファンドオブファンズ商品は、公募ファンドが外国ファンドへその資産のほとんどを投資している訳ですが、その結果、公募ファンドが純資産評価をするためには外国ファンドの評価がないと出来ないことになります。公募ファンドはだいたい毎営業日の午後3時までに純資産価格を開示することが求められているのですが、そのためには同日の正午までに外国ファンドの評価が届かないと出来ない、とされています。
前日のファンドの評価でしょ?翌朝の正午なんて余裕じゃない!
と、思うでしょ?もし外国ファンドが米国株を持っていたとします。その終値が出るのがニューヨーク時間の午後5時。日本との時差は14時間(サマータイムだと13時間)なので、東京時間の翌朝7時(サマータイムだと午前6時)。気付けば5時間しか残っていないことになります。
5時間でしょ?余裕じゃないの?
上場株を直接保有するファンドであればまだいけるかもしれません。でも、夕方5時からということはもしニューヨークに拠点のあるアドミだとしてもその作業は残業で行うことになります。しかも毎日。普通に我々が残業だといってやる仕事、正確性を求められたとすると大変ですよね。それを毎日。
では、残業させずに(かつアメリカ人クオリティではない)サービス提供となるとアジアでやるほうがよさそうですが、アジアのファンド・アドミの中心地は香港やシンガポールで時差は日本から一時間遅れ。彼らが現地時間の午前9時から作業しても手持ちの時間は2時間のみ(現地11時が日本の正午)。そんなタイトなスケジュールでエラーなく毎日行え、というのは相当のプレッシャーです。
余談ですが、これを解決するために、日本から4時間の時差のところにあるニュージーランドで評価業務を行えば、残業もない通常業務の範囲内で処理が出来るのでどうでしょう、とあちこちのファンドアドミ会社さんに呼びかけています。が、まだどこも実現できていません(笑)
では、私募は余裕か、というとそんなこともなく、当然ある程度の期限を決められている一方で資産評価等を行うにあたってその評価のためのソースが時間通り来るとは限らないですし、来ても何か足りない、ということもあるので、このあたりも多かれ少なかれ時間との戦いになるのも事実です。
保有資産の保管・移転の指示
前回の記事にて取り上げたように、アドミの仕事のもう一つ大きなところは保有する金銭や証券などの資産の保管や移転の指示を、運用会社等からの指図に基づいて行うこと、でもあります。この時、前回の記事にあったように、ファンドの資産管理を行う運用会社等がいくら指図を行ったとしても、ファンドの本来の目的に合致した指図以外の指図を盲目的に行うのは投資家への背任行為に当たるので行ってはいけない訳ですがそれを除けば(というと、あまりに簡単に聞こえますが、よく考えてください。この指図がファンドの契約書類のどれに該当するものなのか、逐次確認判断する必要がある訳です。それはそれでルーティン化するまでは手間なことには違いありません。)如何に指図に対して適切にアクションが取れるか、がこの業務のキーになるところです。
資産移転は思っているほど楽じゃない
資金移動に証券の決済、それが仕事としたら言われたものを言われたとおりにすればいいのだから楽なんじゃないの?そう思われがちですが、ヘッジファンドはもちろんの事、ただのロングオンリーであっても大量な取引を毎日するようなファンドだと当然処理能力を問われます。証券決済の締め切りまでに手続きを終わらせなければいけないわけですからSTP(straight-through processing: 証券取引の発注から、売買成立、そして決済までの一連の事務処理を人手を介さずに電子的に行う事)の導入と、そのプロセスに対してアドミならずも運用者を含めたすべての関係者が対応する必要が出てきます。
と言って、STPが導入できたらそれに任せきりで良いかというとそんなこともなく、一旦走り出したら修正が効かなくなる危険がある以上、提供された取引情報や約定情報と決済情報が常に一致しているかどうか再照合を行う監査プロセスも並行して行う必要が出てくるため、それでも常に時間との戦いになります。
では、上場株がそうならば、年に数件程度とさほど取引量が多くないはずのプライベートエクイティやベンチャーキャピタル投資のような非上場株式ならばどうか、というと、例えばgo-to-private な買収案件ならば上場廃止手続きが伴うのでその手続きが、とか、もともと非上場であれば払いこみと名義書換えのタイミングや段取り、その前に譲渡承諾を取締役界などから取り付ける、常任株主代理人の選別、などなど、資産譲渡に絡むもろもろの作業を運用者のチームと共同で対応していくことになります。
じゃあ、株や債券でもないファンドの持分は?というと、これも単純にファンドのアドミ/名義書換事務代行者にファンド名義で買ったよ、売ったよ、資金決済しておしまい、というわけには最近ではいかないのも事実。ファンド名義で買うということはファンドのいわゆる本人確認のDue diligence をCRSや FATCA 基準に合わせて証明書類を提出していくことになるのですが、これがまたかなり手間。時にはファンドの投資家や運用者、スポンサーの本人確認資料まで求められるケースも増えてきていますのでこれも時間との戦いになることもしばし。。。
そしてもっと大事なのはその結果ファンドが何を保有しているかの管理であって
投資家の異動やそれに関連して投資家の本人確認
多分今、投資家や運用者が一番「アドミ、ひどくない?」と思っているに違いないアドミの業務が本人確認の冗長的なプロセス、ではないでしょうか。とはいえ、これはアドミが悪いのではなく、US/UK FATCA やそれの派生としてのCRSが投資家やその投資資金に関して従前にないほど多くの情報をファンドに対して結果的に求めるようになったので本当に悪いのはそんな各国の税務当局(笑)、に他ならないのです。ですが、ファンドの事務委任を受けているアドミにしてみれば、その compliance の観点でどこまで資料を徴求するかがどうしても会社ごとに微妙なズレを生じるのでどうしてもコンサバな会社ほど嫌がられる傾向にあるのも事実。しかも、これを投資開始までにあれこれ出さないと投資できない、という無用なプレッシャーの中でストレスを感じながら行われるのでどうしても不幸な会話にならざるをえないのがアドミにとっては更に悪い立場に置かれざる状況にあるのです。
もう一度言いますが、アドミはファンドの事務代行に過ぎず、本源的には税務当局への対応のための手続きなのでアドミが悪いわけではないのですよ。。。
では、このビジネスを日本で立ち上げるとしたら何が必要なの?
あれ?信託銀行はどうなの?あれは信託形式のファンドを預かるのだし
はい、信託形式であれば受託者として信託会社が受託者となり、また信託業法の求めるところから、アドミ業務やカストディ業務、不動産案件ならプロパティ・マネジメント業務など資産の保全・管理業務全般を自分で行っていますし、それを求められています。これは日本の法規制から受託者に求められている要求の高さから来ているのですが、ただし、これは受託者ならば、という前提があります。
言い換えれば、会社型のファンドや有限責任組合スキームに対してもアドミ業務やカストディ業務だけを提供することも技術的には可能でしょうし、実際に信託銀行さんのカストディ業務はその単体だけでも充分海外のプレーヤーと肩を並べるほどの規模になっています。ですが、それだけのスケールを要するカストディを必要とするのは投資信託のようなロングオンリーかヘッジファンドのときがメインで、その際には会社型スキームにアドミとカストディを合わせて提供することになりますが、有限責任組合/LPSスキームを主戦場とするのが非上場株を取り扱うプライベートエクイティやベンチャーキャピタルですからカストディとして求められる機能が世界規模での証券決済よりも一つ一つの証券の全てをきちんと保有しているか、という装置産業と真逆になリ、また、会計システムの取り扱いを一つ取っても、個別投資家に対するキャリー(成功報酬)の計算というかなり柔軟性を求められるものですので、こちらも装置産業で画一的なサービスで対応、とはいかないため、なかなか本格的に踏み込めない領域と化しているところでもあります。
そう考えると、前述のPC一台でできるファンドアドミもあれば、業界標準とされるアドミシステムなどを導入して管理運営していくのもファンドアドミ。その違いはどこにあると考えるべきなのでしょう。
そこで考えてみる。世界中のファンドアドミはどうやって立ち上がって大きくなっていくのか?
世界中を見回すと、結構いろいろなサイズや特色のファンドアドミがいるものでして、例えばジャージー島なら70社程度があると言われていますが、これがルクセンブルクだと130前後とも言われています。その中には世界規模も銀行系ファンドアドミも当然ありますが、小さなファンドアドミも独立してビジネスを継続しています。一番小さいところでは、親密先のファミリーオフィスを数件扱うためだけに、数人で運営しているという会社があります。当然、そのサイズであれば導入に数千万円掛ると言われるシステムを使わなくとも、というよりExcel とカレンダーを使った手作業で管理も十分可能になります。
また、取引量が少ないファンド・オブ・ヘッジファンドやファンド・オブ・プライベートエクイティファンドといったファンド投資系の商品もカストディもシステムやネットワークも不要ですから取り扱い案件数が少ないうちはシステムがなくとも管理可能と言えるでしょう。同じことは不動産投資ファンドも同様です。
とすると、大掛かりなシステムインフラやグローバルなネットワークを要しない低流動性・低頻度取引のファンドのアドミ業務が小規模の頃の事業対象としてはスイートスポットだと言えるでしょう。また、このステージにあるならば、各顧客の顔もニーズもよくわかり、それにきめ細やかに対応しようという余裕もありますし、そうすることが顧客を掴む大きな要素でもあるのです。
そこから事業基盤を拡充していき、システムインフラ投資が出来るようになると、システムを生かした(Excel とカレンダーのようないつ壊れたりするかわからないものを使わない)より企業らしい管理業務にシフト出来るのと他方に、このシステムを最大限に活用できるように案件数と対象ファンド戦略を広げていくことになります。
そうやって顧客ベースが広がると対象となるファンド設定地や運用者・投資家の地理的分散が広がっていくため、世界中の複数拠点への進出や買収(または、買収されることで比較的大きいグローバル展開したフランチャイズの一部に組み込まれる)という形での展開が次のステージである地理的拡大を進めていくことになる、というのが想定されるファンド・アドミの企業としての成長モデルの一つと言えると思います。
成長モデルを考えたときの日本初のアドミがあまり出てこない理由
では、この成長モデルを考えたときに、日本発でアドミを始めた時に何が成長の妨げになるのか、考えてみたいと思います。
まず取っ掛かりとしての低流動性資産を対象にした、低頻度取引のファンド、が日本だとどのあたりが手ごろなのか、という問題があります。というのも、不動産投資ファンドを例にすると、確かに手ごろな事務量になると思いますが、他方で既に会計事務所さんを中心に対象となる特定目的会社に対して記帳業務や決算作成といった一般的な会社向け業務を取締役派遣などと併せて提供し続けてきたため、かなり安価な費用体系が業界の標準となってしまっています。ただし、そこには通帳管理や資金決済の執行に対する業務など上記のような通常の会社向けサービスにないその他の業務代行廻りの対費用でみた評価がその責任に見合わない形で提供されていた為、この業務から撤退しているところも増えているのも確かですが、報酬という点で上昇しているかというとなかなか難しいのが現実です。
次に未公開株取引の伴うプライベートエクイティやベンチャーキャピタルですが、不思議なことにこの二つの似た戦略にもかかわらずファンドアドミの採用という点で大きく違うという現実があります。
ベンチャーキャピタルの場合、企業ベンチャーキャピタルや大学ベンチャーキャピタルというのもあることから、全体的なファンドのスケール感があまり大きくない為にそこに対する専門性のあるリソースを運用者側で抱えられないことから「餅は餅屋に」という発想が強いようですが、プライベートエクイティの場合、ファンドのサイズ感としてはベンチャーキャピタルより大きいものの、全体に対する費用へのプレッシャーが大きいことと、運用チームに自社の経理担当を既に抱えていることからそのリソースにファンドの運営を行わせていることが一般的になっているため、追加費用として見られがちな事務の外部委託、という印象がどうしてもぬぐえないでいるのが現状にあります。
残るはファンド・オブ・ヘッジファンドやファンド・オブ・プライベートエクイティファンドのようなファンド投資のファンドですが、投資家の多くが機関投資家である以上外部委任という発想は当然に持っているのですが、リーマン危機以降、如何せん案件自体あまり多くないのが現実です。
もしヘッジファンドやロングオンリーファンドなどの上場株等を取り扱うファンドをスタートアップしたアドミが受任したとしても、システムでの対応が出来ない、カストディやプライムブローカーとのやり取りの先の作業が手作業になる、といった実務的な観点で疑問が残ることもさることながら、いまどきは投資家もかなり専門性が高くなってきていることから、 operational due diligence (実務廻りの精査)において掛る事業インフラで大量の取引を処理するということに対する懸念がどうしても発生する、という運営リスクとして見られる可能性が高いため、採用されづらいという問題が存在します。といって、起業したタイミングでシステム投資が出来るか、というと、豊富な資金力のある後ろ盾があるのならば、という限定条件が付かざるを得ません。
そう考えていくと、起業という観点でのファンドアドミを考えたときにその生まれ育つ環境としては結構厳しいものだというのが見て取れるかと思います。
また、案外理解されていないことなのですが、例えばオルタナ投資でヘッジファンド、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、不動産投資、インフラ投資、などが括られますが、これらのアドミの実務というのは、インセンティブ・フィーの計算だけの違い、という訳ではなく、それぞれの特殊性が様々なところにあるため、例えば、ヘッジファンドのアドミが出来るのだからプライベートエクイティも普通にできるだろう、ということは決してないのです。実際に業界標準とされるシステムひとつとっても、ヘッジファンド用のものとプライベートエクイティ用のものでは異なる会社がそれぞれ開発した全く別物のシステムです。それくらいワークフローから何からが異なるので、実はすでにロングオンリーを扱っているからヘッジも出来る、とかヘッジファンドの受任をしているからベンチャーキャピタルの受任も問題なくできる、ということはなく、結果として大手ですら新しい戦略に事業を拡大しようとするならば、システムや経験を持った人的リソースも手に入れる必要があるものの、日本国内に限定して話をするならば、そもそも独立系のファンドアドミの数が極めて少ないため、買収対象や人の引き抜きを含めた経験者の採用が困難なのです。
何が日本でのファンドアドミの背中を押すのか?
ではどうしたら、新しいプレーヤーが出やすくなるのでしょう。
端的に言えば、上記で挙げた足枷を解消できればいいのでしょう。それは
- アドミサービスに対する適正な報酬体系
- アドミを運用者が内製化せずに第三者が適切に行うことを求められる投資環境
- ファンドアドミの経験者もしくは周辺業務の経験者の増加
どうみても都合のいい世界ですよね(笑)
1.は特に更に圧力が掛っていますので、逆行するのですが、他方で安いけどクオリティが、という声も散見されますので、そろそろ費用対効果という観点で評価する環境に代わってほしいなぁ、とは思っています。
また、2. については、実は年金投資家によるファンド投資が AIJ 事件で取りざたされた時に、ファンドの評価報告についてアドミから直接受託者に送付されるよう求められていましたが、それでも特にプライベートエクイティの世界ではアドミ=運用者の構図が変わっていませんので、このタイミングでMadoff 事件で米国のファンドのアドミは外部委任することが求められたのと同じようになることを期待したのですが。。。
3. については仮に増えたとしてもファンドアドミのビジネスが魅力的に見えないと増加しても成り手が増えない訳ですので、ビジネスとしての魅力が高めるという自助努力も必要だということは認知しております(笑)
私もこの業界の末席を汚しておりますので、どうにかして盛り上げたいなぁ、と日々思っています。さてどうしたもんじゃろなぁ。。。